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ウクライナ危機が世界に与えるもう一つの影響

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暴騰する穀物価格

ロシアとウクライナの戦争はエネルギー価格を高騰させました。

一時原油は1バーレル129ドルまで上昇しました。

しかし、高騰したのは原油やガスだけではありません。

穀物や食用油の国際価格も急上昇しています。

小麦に関してはロシア、ウクライナ両国はそれぞれ世界で第1位と第5位の輸出国ですから、小麦を輸入している中東やアフリカの国々に与えるインパクトは半端ではありません。

この問題について、英誌Economistが「How the invasion of Ukraine will spread hunger in the Middle East and Africa」(中東、アフリカで飢餓を広めたロシアのウクライナ侵攻)と題した記事を掲載しました。

かいつまんでご紹介したいと思います。

Economist記事要約

エジプトが最後にパンの価格を上げたとき、ソ連はまだ存在していました。

1989年当時、エジプトのパン屋は、エジプトポンド1ポンドでパン20斤を販売していました。

当時、それはほぼ1ドルの価値がありました。

今日、同じ量のパンが米ドル6セントで販売されており、それはパンを作るのにかかる費用の10分の1未満です。

 

国はその差額を補うために年間450億ポンド(約3,300億円)を費やしており、これは食料補助金総額の半分以上に相当します。

この補助金を削減しようと試みた政治家はいません。

パンは何百万人ものアラブ人の主なカロリー源であり、政治において最も敏感な問題の1つです。

過去数十年の間に、パン価格の上昇は、エジプト、ヨルダン、モロッコ、チュニジアなどで暴動を引き起こしました。

ロシアのウクライナ侵攻は、小麦価格を高騰させ、中東アフリカ諸国は補助金の削減を余儀なくされるでしょう。

サハラ以南のアフリカでは、石油価格の上昇で債務が急増する中、更に予算を圧迫するでしょう。

 

エジプトでは過去にサダト大統領が、1977年にエジプトのパン補助金を廃止しようとしました。

しかし、軍によって鎮圧されなければならなかった暴動の後、彼は数日以内に彼の決定を覆しました。

2008年と2009年の食料価格の高騰は、アラブの春の反乱を引き起こし、最終的には2019年にスーダンでアルバシール政権を倒すことにつながりました。

多くのアラブとアフリカの政府は、ウクライナ紛争は彼らの戦争ではないと主張していますが、彼らはすぐにその影響を感じとるでしょう。

ロシアとウクライナはそれぞれ世界最大と5番目に大きな輸出国です。

戦争は事実上、黒海からの出荷を停止させました。

これは、世界最大の小麦購入者であるエジプトにとって悲惨なニュースです。

1億200万人を養うには、毎年2,100万トンが必要ですが、国内生産量はその半分以下です。

しかも、その輸入の約86%はロシアとウクライナからなのです(グラフを参照)。

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参照:Economist

今年の予算では、輸入に1トンあたり255ドルかかると想定しています。

先物市場の価格はすでに400ドルに達しています。

これにより、エジプトの小麦購入のための外貨は少なくとも15億ドル(GDPの0.4%)追加されるでしょう。

エジプトの強権的大統領であるシシは、パンに関する補助金を好みません。

1本のタバコの価格で20斤のパンを売るのは不可能だ。」と昨年彼は発言しました。

しかしエジプト人のほぼ3分の1は、貧困ライン以下で生活しています。

何年にもわたる増税とエネルギー補助金の削減に圧迫されて、彼らは主食にもっとお金をかける立場にありません。

 

何年もの間、アラブの独裁者はプーチン大統領との緊密な関係を模索してきました。

アメリカが人権問題について批判する一方で、プーチン氏は権力者に強くなるように促しました。

彼が10年ぶりに2015年カイロを訪れた時、シシ大統領は、ナイル川を見下ろすレストランにプーチン大統領を招待しました。

現在、シシ大統領の様な独裁者は、予算の破綻と市民の怒りに直面しています。

これはプーチン氏からの贈り物です。

ロシアと友好国を結んだ原油と小麦

ロシアとウクライナがこれほどの食料輸出国であるとは正直知りませんでした。

昔マストロヤンニとソフィアローレンが主演した「ひまわり」というウクライナを舞台にした映画を観た事があります。

確かにウクライナには肥沃な穀倉地帯というイメージがありますが、ロシアは意外でした。

そもそも旧ソ連は世界最大の穀物輸入国でした。

旧ソ連崩壊の引き金となったのは時のレーガン政権が旧ソ連への穀物輸出を削減した事です。

たかが小麦というなかれ、食べ物がなくなると政府が崩壊する良い例を示しました。

そんなロシアが世界最大の穀物輸出国に転じたのは、ロシア政府の積極的な農業近代化政策があった様です。

無機肥料の投入、機械設備の充実、優良な種子の開発などが挙げられます。

エネルギー資源に注ぐ外貨獲得手段であり、かつ戦略的な輸出物資ですので、エジプトなど友好国に優先的に穀物を回し、影響力を行使しようという狙いもあったと思います。

今回のウクライナ侵攻は、そんなロシアと友好国との関係にも大きな影響があったと思われます。

 

最後まで読んで頂き、有り難うございました。