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インドは中国を超えられるか

大歓迎されたモディ首相

インドのモディ首相は先日米国を訪問し、米国政府から最大級の厚遇を受けました。

世界一の人口を有し、クワッドの一員でもあるインドを米国は中国に対抗するために不可欠なパートナーと目している様ですが、インドは中国の代わりを果たせるだけの存在になりうるのでしょうか。

この点について米誌Foreign Policyが「Will India Surpass China to Become the Next Superpower?」(インドは中国を上回る超大国になりうるか?)と題した論文を掲載しました。

著者はハーバード大学ケネディスクールのGraham Alison教授です。

かいつまんでご紹介したいと思います。

Foreign Policy論文要約

インドが4月に中国を追い抜き、世界で最も人口の多い国になったとき、識者たちは「インドが中国を超えて次の世界超大国になるだろうか?」と色めき立ちました。

インドの出生率は中国のほぼ2倍です。

そして、インドは過去 2 年間の経済成長で中国を上回っており、前四半期の GDP 成長率はインドが 6.1% であったのに対し、中国は 4.5% でした。

一見すると、統計は有望に見えます。

 

インドのモディ首相が今週ワシントンでバイデン米大統領と会談する中、この問題の重要性はさらに高まっています。

米国の観点から見ると、世界最大の民主主義国であるインドが本当に中国を打ち負かすことができるとしたら、それは特筆すべき事でしょう。

インドは中国の天敵であり、 両国は係争中の境界線を3,000マイル以上共有しています。

中国の競争相手がアジアでより大きく強力であればあるほど、米国に有利な状況が生まれる可能性が高まります。

 

しかし、急速に台頭するインドという話を鵜呑みにする前に、私たちは立ち止まって 4 つの不都合な真実についてよく考える必要があります。

 

第一に、アナリストは過去のインドの台頭について間違いを犯しました。

1990年代、アナリストたちは、インドの若年人口の増加が経済自由化を推進し、「経済の奇跡」を生み出すだろうと吹聴しました。

2006年にダボスの世界経済フォーラムで、当時のインド貿易大臣は、インド経済は間もなく中国経済を超えるだろうと述べました。

インド経済は確かに成長しましたが、これらの予測は現実にはなりませんでした。

 

第二に、インドが世界五大経済大国のクラブに加わった過去 2 年間のインドの驚異的な成長にも関わらず、インド経済は依然として中国よりはるかに小さいのです。

2000 年代初頭、中国の製造業、輸出、GDP はインドの約 2 ~ 3 倍でした。

現在、中国の経済規模は約5倍となっており、GDPは17.7兆ドルであるのに対し、インドのGDPは3.2兆ドルです。

 

第三に、インドは経済成長を促進する科学技術の開発競争で遅れをとっています。

中国はインドのほぼ 2 倍の 理系学生が卒業しています。

中国はGDPの2%を研究開発に費やしているが、インドは0.7%しか費やしていません。

売上高で世界最大のテクノロジー企業20社のうち4社が中国企業ですが、インドに本拠のある会社は皆無です。

中国は世界の 5G インフラストラクチャの半分以上を生産していますが、インドはわずか 1% です。

中国で作られたTikTokや同様のアプリは今や世界のリーダーとなっていますが、インドはまだ世界に通用するテクノロジー製品を生み出していません。

人工知能(AI)の生産に関しては、米国の世界的なライバルは中国だけです。

中国は世界の AI 特許の 65% を保有しているのに対し、インドは 3% です。

中国のAI企業は2013年から2022年までに950億ドルの民間投資を受けているのに対し、インドは70億ドルです。

そして、一流のAI研究者は主に中国、米国、欧州出身であり、インドは遅れをとっています。

 

第四に、国家の力を評価する際、国民の数よりも重要なのは労働力の質です。

中国の労働力はインドより生産性が高く、 国際社会は、悲惨な貧困をほぼなくした中国の「貧困対策の奇跡」を称賛しています。

対照的に、インドでは依然として高レベルの貧困と栄養失調が続いています。

1980年、10億人の中国国民の90パーセントの収入は世界銀行の極度の貧困基準を下回っていましたが、 現在、その数はほぼゼロです。

しかし、インドの人口 14 億人のうち 10 パーセント以上が、世界銀行の極度の貧困ライン以下で暮らし続けています。

一方、最新の国連世界食糧安全保障と栄養状態報告書によると、2019年から2021年にかけてインドの人口の16.3%が栄養不足だったのに対し、中国では2.5%未満でした。

インドは、子どもの栄養失調率が世界で最悪の国の一つでもあります。

 

幸いなことに、未来は必ずしも過去が繰り返される訳ではありません。

しかし、国防総省が警告しているように、希望は計画ではありません。 モディ政権のインドがより良い未来を実現できるよう支援するためにできる限りのことを行う一方で、米国はアジアで最も洞察力に優れた戦略家の評価についても注意を払うべきです。

シンガポール建国の父であり長年指導者であったリー・クアンユーは、インド人を大いに尊敬していました。

リー氏は、ネルー氏やガンジー氏を含む歴代のインド首相と協力し、中国を本格的に牽制できるほどインドを強くするのを手助けしたいと考えていました。

 

しかし、リー氏が亡くなる前年の2014年に出版された一連のインタビューで説明したように、彼はしぶしぶながらもそれは起こりそうにないと結論付けました。

彼の分析では、実力主義の敵であるインドの根深いカースト制度、大規模な官僚制、そして複数の民族や宗教集団の競合する主張に対処しようとするエリートたちの消極性が組み合わさって、インドは決してそうならないだろうとの結論を導きました。

したがって、10年前、私がインドが次の中国になり得るかどうか具体的に彼に尋ねたとき、彼はこう答えました。

「インドと中国を同列に語らないでください。」

 

リー氏がこの判断を下して以来、インドは新たな指導者のもとで野心的なインフラ整備と開発計画に着手し、相当な経済成長を達成できることを証明しました。

しかし、今回は違うかもしれないという希望を持つ事は可能ですが、私個人としては、リー・クアンユーはそれに賭けないだろうと思います。

インドの抱える問題点

インド人が優秀なのは、米国のIT大手のトップに多くのインド人が登用されていることからも明らかです。

しかし、個人ではなく、国の実力としては中国との間に大きな差があり、そう簡単にこのギャップは埋まらないというのが現実の様です。

リー・クアンユーが中国を牽制するためにインドとの連携を考えていたという話は初耳でした。

マレー半島の先端にある小さな都市国家を世界で最も豊かな国の一つに変貌させた同氏は稀代の戦略家でした。

彼がインドが抱えるカースト制度や官僚制度の問題が深刻だと分析していたとすれば、インドは米国が期待するほどの存在にならないかも知れません。

 

最後まで読んで頂き、有り難うございました。