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インドはどこに行くのかートランプよりプーチンに先に電話したモディ首相

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意外に強いインドとロシアの信頼関係

中印国境での両軍衝突はインド軍に20名もの犠牲者を出し、世界を驚かせましたが、この衝突が起きた直後、インドのモディi首相はトランプ大統領に連絡する前にロシアのプーチン大統領にコンタクトをとったそうです。

そんな馬鹿な?インドは中国に敵対する米国にアプローチするのが普通じゃないか、ロシアは中国の仲間だろうと反論される方が多いと思います。

確かに、今年2月にトランプ大統領がインドを公式訪問し、モディ首相は最大限のおもてなしで歓迎したと言われています。

私も、今のインドにとってロシアより米国が大事だろうと思いました。

しかし、モディ首相がプーチン大統領に連絡したのには深い訳がありそうです。

インドとロシア(旧ソ連含む)の間には長い歴史がある様です。米誌Foreign Policyが「Why India and Russia are going to stay friends(何故インドとロシアは友人であり続けるのか)」と題した記事で、この点分析しています。かいつまんでご紹介しましょう。

Foreign Policyの分析

第二次世界大戦後のインドとソ連の関係

インドとロシアの友好関係には長い歴史があります。

1971年東パキスタン(今のバングラデシュ)独立運動を巡って、インドとパキスタンの間で13日間の戦争が起きました。この時インドを支援してくれたのはソ連だけでした。

当時のニクソン大統領やキッシンジャー補佐官はインドの協力要請を無視しました。

旧ソ連とインドの関係は、このインド・パキスタン戦争に始まった訳ではありません。50年代、60年代を通じて、ソ連は一貫してインドに経済的、軍事的援助を行ってきました。

当時のネルー首相はインドを資本主義ではなく、部分的にせよ社会主義の国にする展望を持っていました。

元駐露インド大使を務めたRonen Sen氏は、「イデオロギー的にインドにとって同じ価値観を共有できる国は米国でした。しかし、その期待が米国にとって裏切られた分、落胆は大きかったのです。」と語ります。

一方、ソ連は米国に比べ、インドの期待を上回る貢献を行ってくれました。

70年代にインドが核実験を行った時に、米国はこれを認めないと通達してきましたが、ソ連は少なくとも公式にはこの実験を平和的だと表明してくれました。

ソ連はインドの核実験に暗黙の了解を与えただけでなく、通常兵器の面でもインドを支援してきました。

70年代、80年代には中毒にかかったとまで形容されるほど、ソ連の兵器システムへの依存度が高まりました。

米国のインドへの関心は必要な時だけ高まりますが、ソ連のインドへの関心は常に安定していました。

当時のKGBの内部資料にもインドのソ連に対する重要性が記されています。

CIAがAIDSの流行を引き起こしたという陰謀説は、KGBによってインドの新聞に掲載されたという逸話は有名です。

インドとソ連の相性の良さは、お互いに道徳を押し付けないというところにもありました。

欧米の帝国主義の悪どさを身に染みてわかっているインドは、ソ連のハンガリーやチェコへの侵攻に関して口をつぐみましたし、

決定的だったのはカシミール(今回の中印の衝突もこの地域)に関するソ連そしてロシアの一貫したインドへの支援姿勢でした。

中国そして米国までもが国連のカシミール介入を決議しようとした際に、唯一拒否権を発動してくれたのはソ連でした。

ソ連崩壊後も良好な関係続く

1991年にソ連が崩壊した際には、大きな転機が訪れました。

インドも市場開放し、米国との関係が重要視される様になりました。

しかし、古い友人であるロシアとの関係は継続されました。

特に軍事面では、インドはロシアから兵器の購入を続けました。

インドの財閥も、この時期にロシアに進出し、インドの製薬業者はロシア市場ではドイツに次ぐ地位を占めるに至りました。

1998年に2回目の核実験をインドが行った時、米国との関係は冷却化しましたが、ロシアはこれを支持しました。

結果的にインドには多くのロシア製の原子力発電所が建設されることとなりました。

ロシアは攻撃型の原子力潜水艦をインドに貸与していますが、原子力潜水艦の製造ノウハウをインドに供与しようとする唯一の国です。

モディ首相もロシアへの信頼厚い

モディ首相は防衛機器の調達先多様化を目指しています。2月にトランプ大統領がインド訪問した際に、米国と30億ドルの兵器調達を決めましたが、インドの兵器の6割は未だにロシア製です。

モディ首相はロシアの最新ミサイル防衛システムであるS400の購入を決めましたが、これは米国からのF35戦闘機などの購入を阻害する恐れがある決断です。

しかしモディ首相はこのリスクは踏む価値があると判断しました。

ロシアはインドにとって信頼できるパートナーの様です。

ロシアはイランの司令官を暗殺する様な事はしないし、新しい大統領が出てきて、前政権の約束を覆す様な事はありません。

何故ならプーチンに代る新しい大統領は当分出ないからです。

インドはロシアのクリミア併合に口をつぐみました。ロシアもインドの内政には口を挟まないでしょう。

米国は違います。米国議員はインド国内の人権問題に遠慮なく介入してきます。

先日も米国の下院議員との面談をインドの外務大臣が拒否するという事件がおきました。

そして最も大事な事ですが、両国間のビジネスが、たとえうまくいかなくても、ロシアのインドに対する地政学的な重要性は変わらないという事です。

Raghavan元駐露大使は言います。「米国はインドから遠い。現在協議中のQuad(米国、日本、豪州、インド)は有効かもしれないが、他地域で関心事が起きた場合、核の傘から外れる可能性がある。」

インド、ロシアいずれも米国や中国に従属することを好みません。

彼らはお互いが協力することで、いかなる勢力にも対抗できる事を示そうとしています。

インドは中国との緊張が高まる中、米国に接近する可能性が高まっていますが、ロシアとの関係をないがしろにする事はありえません

しぶといロシアの外交戦略

この記事を読むと、インドとロシアの信頼関係は、一朝一夕にできたものではない事がわかります。

インドは、今回、中国の敵である米国に駆け込む事もできたでしょうが、それは中国に対して宣戦布告に近い意思表示になってしまいます。

中国ともパイプがあり、長い信頼関係を持つロシアのプーチン大統領に相談したという事なのだと思います。

それと、ころころ発言が変わり、いつ迄務めるかわからないトランプ大統領への信頼度が低かったのかも知れません。

それにしてもロシアはしたたかですね。もうロシアの時代は終わったと思っておられる方も多いかもしれませんが、いやいやその存在感は侮れません。

米国にとって、ロシアは表向きは敵ですが、ブロレスのヒール役(悪役レスラー)の様なもので、米国にとっては不可欠な敵役です。

ロシアがいなければ、米国は正義のヒーローを演じられませんし、ロシアの軍事的な脅威がなければ、日本を含めた友好国に米国の兵器を高い値段で売れません。

ロシアもこの役回りを心得ていて、裏では米国と手を握っているのではと思います。

トランプ大統領がプーチン大統領をサミットに呼ぶと発言して物議を醸しましたが、ロシアがいなければ、世界規模のシナリオを描くわけにはいかないのでしょう。 

ロシアの動きは、インドに限らず、朝鮮半島やシリア、ウクライナ等で鍵を握ってきますので、今後も目が離せません。

 

最後まで読んで頂き、有り難うございました。