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香港問題の本質ートランプ大統領の再選戦略

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香港に降りかかった火の粉

米通信社ロイターは「米中全面対決:火の粉を浴びる香港の不運」と題するコラムで下記の様に述べています。

  • トランプ大統領はこれまで、香港の民主主義が危機的状況を迎えていても、それほど強い対応を取らなかった。優先してきたのは中国との貿易協議の合意だった。ただ11月の大統領選を前に、政治的計算が変わったのかもしれない。新型コロナで4月の米失業率は15%近くに跳ね上がった。そしてトランプ氏は今、中国が適切な感染対策を講じなかったとして責任を追及している。
  • トランプ氏は、自身の対中強硬姿勢を再選戦略の一部に組み込んだ。野党・民主党の候補であるバイデン前副大統領を中国に弱腰だと批判するようになった。米中が政治的にぶつかり合って火花を散らす中で、香港は不運にもその火の粉を浴びてしまう恐れがある。

上記コラムの通り、トランプ大統領はこれまで、中国との貿易協議では、強行路線を貫いていましたが、中国の人権問題については、本格的に踏み込んで来ませんでした。

というのはトランプ大統領の再選戦略において、一番重要なのは経済であり、人権問題とか自治は二の次だったのです。

過去の大統領選を見てみますと、再選を果たせなかった大統領、ブッシュ父、カーターなどは、ことごとく経済で失敗しています。

トランプ大統領としては、株価の高騰、貿易戦争における勝利など経済面での成功を手柄に、再選を狙うというシナリオだったと思います。

今年の初めの段階では自信満々だったと思いますが、コロナウイルスの出現により、シナリオが大きく狂ってしまいました。

トランプ大統領は、戦略の再構築を迫られ、新たな標的として狙いをつけたのが中国だったわけです。

高まる中国への不信感

米国自身のコロナ対応にも問題があったと思いますが、中国の情報を隠蔽する体質は世界的なパンデミックを生じさせた原因であり、米国民の中国に対する不信感は高まりました。

そこにきて、今回の香港に対する中国政府の国家安全法の決議です。米国民の反中感情にまさに火に油を注いだ感があります。

トランプ大統領はこの国民感情の変化を見逃しませんでした。

トランプ大統領は香港に与えていた特別な地位の剥奪のみならず、中国寄りの発言が目立つWHO(世界保健機関)からの脱退も同時に発表しました。

ウイグル人権法

中国への厳しい措置は他にも出てきています。

中国の北西部にウイグル自治区という行政区がありますが、ここには少数民族のウイグル族が約830万人居住しています。

この民族はチュルク語系の言葉を話し、トルコ人の兄弟と言われている民族ですが、現在、中国政府の厳しい弾圧に苦しんでいます。

最近、中国政府が100万人を超えるウイグル人を強制収容所に収容している事が明るみに出ました。

米国の議会で、ウイグル人権法という法律が5月27日に下院を通過し、トランプ大統領の署名待ちという状態です。

下院は民主党が多数派ですので、中国の人権問題に関しては、米国議会では党派を問わず、中国に対する批判が高まっていると言えます。

米国商務省はウイグル民族の弾圧に関与しているとして、監視カメラ大手のハイクビジョンなど33の中国企業、団体に対して禁輸措置を決めており、ハイテク分野での技術漏洩にも手を打っています。

米中の狭間で悩む国々

5月29日に行われたトランプ大統領の演説は、新冷戦の口火を切ったとも言われますが、世界各国は今後どちらの陣営に付くか判断を迫られます。

この点、英国のファイナンシャルタイムズ元編集長が次の様に論評しています。

  • 中国の習近平国家主席が英国を公式訪問した2015年は、両国関係の「黄金時代」と言われた。しかし米国のトランプ大統領が欧州やアジアの同盟国に対して米中貿易戦争への立場を明確にするよう求め、中国政府が香港を締め付けたことなどを受け、中英関係は冷めていった。
  • 新型コロナウイルスの感染拡大は、冷え込みをさらに強めた。英国側にとっては、コロナ禍を巡り中国に非があるとの認識を持ちながら、投資家や製品・技術のサプライヤーとして頼っている気まずい構造が浮き彫りになった。

2015年に財務大臣だったオズボーン氏は中国との関係強化に注力し、「ロンドンを人民元取引の中核にする。」と宣言したほどですから、隔世の感があります。

しかし、中国は急速に成長し、今や世界第2位の経済大国です。

世界経済における存在感は相当なものがあり、各国とも米中の間で立ち位置に悩んでいる様です。

英国でさえ中国との縁を切りにくい訳ですから、他の国は推して知るべしです。ドイツなどは中立の立場を貫くかもしれません。

そういう事情もあってか、今年の秋に米国で行われるG7にはメルケル首相は出席しない模様です。

一方、トランプ大統領は「G7は時代遅れのメンバーであり、今度はロシア、韓国、インド、オーストラリアの首脳も呼ぶ。」と述べており、両陣営とも多数派工作が活発に行われそうです。

 

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