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中印国境衝突で燃え上がるインド世論

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ヒマラヤ山中での印中両軍の衝突は記憶に新しいところですが、この衝突はその後も尾を引いている様です。

両国の関係について、米紙Foreign Policy(FP)が「中国との貿易戦争がインドにとって如何に都合が悪いかというタイトルで記事を掲載しています。かいつまんでご紹介しましょう。

燃え上がる世論の前で選択肢に苦しむモディ首相

中印両国の国境線での衝突は、インド側に20名にのぼる死者を出しました。

インドでの反中感情は高まりを見せ、テレビの司会者は中国への報復を口にし、SNS上では、中国製のテレビを叩き壊す男性の映像が頻繁に流されています。

両国とも緊張を緩和するのは簡単ではありませんが、特にインドのモディ政権は苦境に立たされています。

彼に残された選択肢は多くありません。軍事的に中国に対峙するのは無謀です。

軍事支出の面では、インドは既に米国、中国についで世界第3位につけていますが、装備の面では中国に大きく見劣りします。

1962年に軍事的冒険を企てたインドが中国に屈辱的な敗戦を味わった事を、モディ首相は忘れていません。

インドは、中国のカウンターバランスとして、ここのところ政治的にも軍事的にも米国に接近を図ってきました。

しかし、米国の主導する「自由で開かれたインド太平洋戦略」に関しては逡巡していますし、米国の明らかな同盟国にはなろうとしませんでした。

これはインドのモディ首相がトランプ大統領を完全には信頼していないからだそうです。

最近発行された著書「A Very Stable Genius」には、非公式の会談で、トランプ大統領が、インドと中国が国境を接していることさえ知らなかった事にモディ首相が驚いた事が記されています。

この会談を契機にモディ首相はトランプ大統領を完全に信頼できるパートナーとは思えなくなった様です。

モディ首相は、米国にべったりになる事は避け、中国と適度な距離をとって付き合おうとの外交方針をとっていました。
しかし、今回の国境での衝突は、この外交方針そのものを根底から変更せざるを得ないほどの衝撃を与えました。

既にBoycott Chinaと呼ばれる中国製品ボイコット運動が始まっていますが、この運動は次の観点からインドにとって最悪の選択肢だそうです。

  1. インドと中国の貿易は年間925億ドル(約10兆円)に上りますが、インド側の中国との貿易赤字は、なんと57億ドル(約6兆円)に達するそうです。
  2. インドが消費する電気製品の半分は中国製だし、インドが得意とするジェネリック薬品(特許切れの薬品の生産)の原料の3分の2は中国から来るそうです。
  3. 現在、インドはコロナウイルス感染の爆発的拡大が続いており、ここ数年は経済低迷が予測されている中、中国からの輸入を制限する事は自殺行為となりかねない。

中国への依存度が高いインドは打つ手が限られる

以上がFPの要約ですが、トランプ大統領がインドと中国が国境を接している事を知らなかったというのは面白いですね。

英国のメイ前首相との面談でも、英国が核保有国であることを知らなかったと、ボルトン補佐官が回顧録で暴露しましたが、もし、FPの記述が正しいとすれば、トランプ大統領には、もう少し勉強していただく必要がありそうです。

それにしても、中国製品のインド市場への浸透は予想外に進んでいますね。

インドは将来、中国をも追い抜く経済大国になる事を期待されていますが、現時点では、中国製品への依存度が極めて高く、中国商品ボイコットなどを行うと自分で自分の首を占める事になりかねないのです。

中国包囲網を自ら作り出しかねない中国

一方、尖閣諸島における中国艦船の動きといい、最近、中国政府は領土的野心を隠そうとしていません。

ヒマラヤ山脈山中での両軍の戦いは、素手や棍棒を持って行われたと言われていますが、中国軍は武術の達人で構成された部隊を現地に派遣したと報道されています。

ブルース リーやジェット リー級の空手や少林寺の達人に対して、インド兵は為すすべもなかったでしょう。

しかし、中国の度の過ぎた国境警備は、いたずらに隣国との緊張を高め、中国包囲網といったものを形成させる理由になりかねません。

今回のインドとの衝突は、確実にインド人の心を中国から遠ざけたことを、中国は過小評価しないほうが良いと思います。

 

参照;Foreign Policy "Why a Trade War With China Is a Bad Idea for India"

https://foreignpolicy.com/2020/06/29/trade-war-china-bad-idea-india-border-skirmish-boycott/

 

最後まで読んで頂き、ありがとうございました。