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インド太平洋戦略の起源は

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日米の外交戦略の拠り所

「インド太平洋戦略」とか「自由で開かれたインド太平洋」という言葉が新聞の見出しに使われることが多くなりました。

この構想はトランプ前政権の支持を受け、その後バイデン政権になっても引き続き、外交政策の重要軸となっている様です。

そもそもこの構想の起源はどこにあるのでしょうか。

この点について、米誌Foreign Policyが​​「How the U.S. Learned to Stop Worrying About the Pacific and Love the ‘Indo-Pacific’」(​​米国が太平洋について心配するのをやめ、「インド太平洋」を愛する様になったわけ)と題する記事を掲載しました。

かいつまんでご紹介したいと思います。

Foreign Policy記事要約

2017年の初め、日本の当局者である鈴木哲(当時外務省国際情報統括官、現駐インド日本大使)と彼の米国のカウンターパートであるブライアン・フックは、米国国務省の最上階で世界地図を見ていました。

当時新しく選出された米国大統領トランプと安倍首相の蜜月関係をベースに日本は「自由で開かれたインド太平洋戦略」と題された一連の地図を提示しました。

鈴木氏はフックに、日本はこの地域の戦略を太平洋からインド洋、さらにはペルシャ湾まで広げたいと語りました。

「それは古くて狭いアジア太平洋ではありませんでした。それはより広いインド太平洋であり、特にインドの重要性を認識していた」とトランプ政権の元高官は述べました。 

このアイデアはワシントンで共感を得ました。

ティラーソン国務長官は日本のアイデアをヨーロッパの同盟国と共有しました。

トランプ政権は、冷戦時代に中立を維持したインドを引き込み、中国に対抗する方法を模索していました。

日本はトランプ政権にその方法を与えたのです。

 

4年後の政権交代後も、インド太平洋は米国の外交政策の中心であり続けています。

バイデン米大統領の最初の外国訪問は、日本とインドでした。

一方、米国とオーストラリアも含む日米豪印戦略対話(クワッドとして知られている)パートナーシップは、現在最も話題になっている外交グループの1つです。

 

インド太平洋という用語は、中国の領土拡大について、過度に中国を刺激する事なく牽制する事を可能にしましたが、一部の専門家は、米国が日本と豪州の意向に近づきすぎると、中国の台湾侵攻など西太平洋の有事にうまく対応できない恐れがあると警告しています。

「軍事的観点からは、太平洋、特に第一列島線と台湾に焦点を当てる必要があります」と、トランプ政権時代の元国防長官補佐官であるエルブリッジ コルビーは述べています。

「インド洋は米国にとって明らかに二次的な舞台であり、最も重要な焦点から注意をそらすべきではありません。」



2017年にワシントンで開催された会議での鈴木氏の発言は、「インド太平洋戦略」という用語の起源ではありませんでした。

10年前、クワッドの支持者である安倍は、インド訪問中に講演し、17世紀のムガル帝国の王子から一節を借用しました。

安倍首相は、太平洋とインド洋は「繋がっている」ことを指摘し、その深い文明のつながりを強調しました。

この安倍首相の演説はまた、対外戦争の遂行に法的な制限がある日本と、冷戦中の非同盟勢力であるインドに、直接中国を攻撃する事なく、中国の増大する軍事力について話す機会を与えました。

 

しかし、インド太平洋戦略に関して最初に具体的な行動を起こしたのは日本ではなく、オーストラリアでした。

長年、オーストラリアは西側の国としてのアイデンティティとアジアに近い地理的条件の間で引き裂かれていました。

「米国の戦略は、オーストラリアの長期的なアイデンティティ危機の恩恵を受けていると思います​​。オーストラリアは、インド太平洋の政策を成文化した最初の国でした。」と、オーストラリア国立大学のロリー・メドカーフは述べています。 

オーストラリアは、日本とは異なり、実際にはインド洋にあります。

しかし、アジアとの貿易関係も深く、太平洋を越えて米国との安全保障上のつながりもあります。

2013年、オーストラリアの防衛白書は、「インド太平洋」という言葉に関して最初にその考察を行いました。

オーストラリアのこの様な具体的な行動は、インド太平洋戦略を、安倍首相の頭の中にあったアイデアから、より大きなもの、つまり同盟国の共通政策にまで、昇華させました。

トランプチームは驚くほど迅速に動き、独自のインド太平洋戦略を構築し、2017年後半に国家安全保障戦略を作成しました。

その骨子は、アジアにおける米国の同盟システムの活性化であり、中国の西の側面にインドが含まれています。

強いインドは、志を同じくする国々と協力して、中国との釣り合いをとるだろう」とトランプ政権は読みました。

影響が出始めています。

インドの当局者は、長く敵対視しているパキスタンよりも中国関連の問題を先に米国政府と相談する様になりました。

 

現在、バイデン政権はアジアにおける米国の新しい役割を定義する必要があり、米国の財政的、政治的、軍事的限界と闘いながら、中国の台頭を抑えるために米国の軍事戦略を決定する必要があります。

しかし、米国がこの地域に如何にアプローチしようが、一部の米国の同盟国は、状況を冷静に客観的に分析しています。

「これは中国に勝つか負けるかではないと思う。中国の力を如何に抑え込める状況を作り出すことだと思います。そして、ゲームはまだ終わっていません。」とメドカーフは語りました。

インド洋に米国を引き摺り込みたい日本

昔、第二次世界大戦が始まる前に、急速にアジア地域で台頭する日本を押さえ込むために、ABCD包囲網という日本包囲網が築かれた事がありました。

ABCDはアメリカ、英国、中国、オランダの事です。

この包囲網は見事に機能し、石油など天然資源の供給を断たれた日本は、無謀な連合国との開戦に突っ走っていきます。

今回も台頭する中国に対して、シーパワーの米国、日本、豪州が待ったをかけた形だと思います。

中東の石油への依存度が高い日本はインド洋まで米国との共同戦線を広げて、この地域に米国を参戦させたいと思っているのでしょうが、米国がその作戦に乗ってくるか微妙なところです。

日本としては、豪州、インドそしてこの地域に最近関心を高めている英国も巻き込んで外交を展開していく事になるでしょう。

今後の展開に注目です。

 

最後まで読んで頂き、有り難うございました。