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イスラエルのスパイ技術輸出がもたらすリスク

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輸出されたサイバー攻撃ツール

イスラエルという国は人口が大阪府と同じ程度の小さな国ですが、勤勉なユダヤ人の国だけに、ハイテクの分野では抜きんでた技術を保有しています。

特にAI、自動運転、サイバーセキュリティーなどの最先端分野において、米国を凌駕する様な国に成長しています。

イスラエルは米国にべったりという印象を持たれがちですが、必ずしもそうではありません。

ユダヤ人の国だけあって、お金儲けには目がなく、米国と敵対する勢力とも貿易関係を有しています。(この関係を米国との駆け引きにうまく使っている感があります。)

そんなイスラエルで生まれたソフトウェアが西側の政治家やジャーナリストの盗聴に使われたというニュースが飛び込んできました。

英誌Economistが「Israel is loth to regulate its spyware export{スパイウエアの輸出を規制するのに苦しむイスラエル)と題した記事を掲載しました。

かいつまんでご紹介したいと思います。

Economist記事要約

少なくとも10の政府が、イスラエルのNSOグループによって作成された強力なソフトウェアツールである「ペガサス」を使用して、政治家、人権活動家、ジャーナリストを含む世界中の何千人もの人々のスマートフォンをハッキングしたことを国際的な報道機関が明らかにしました。

イスラエルの大臣は誰もこの報道に関してコメントしていません。

公式声明は、すべてのイスラエルのサイバー輸出は「国際的な取り決めを遵守」し、政府によって規制されていると主張しました。

輸出許可は、「合法的な使用のために、犯罪とテロ対策を防止および調査する目的でのみ、政府機関に独占的に」付与されたと語っています。

しかし、イスラエルの防衛輸出業者はこの公式表明を嘲笑しました。

「武器業者は、顧客に販売するすべてのライフルや弾丸を追跡することはできません 。ソフトウェアに関して、なぜ私たちはより高い要求に応える必要があるのでしょうか?」

 

いずれにせよ、ペガサスの顧客リストは、6月に職を失ったイスラエルの前首相であるベンジャミン ネタニヤフが関係を深めた多くの政府に符号しています。

そこには、ブラジル、ハンガリー、インドの支配者など志を同じくするポピュリスト政権や、イスラエルが最近外交関係を樹立したスンニ派アラブ政権、バーレーン、モロッコ、アラブ首長国連邦が含まれます。

更にはイランの敵であるサウジアラビアもリストに含まれています。

「サイバー監視の取引は、外国の指導者との外交パッケージに投入できる一種の甘味料です」と元NSOコンサルタントは言います。

イスラエルの新政府もサイバー産業と密接な関係があります。

首相のナフタリ・ベネットは、オンラインバンキングのセキュリティ会社の創設者として大金を稼ぎ、サイバー防衛の愛好家です。

彼の右腕で内務大臣であるアイレッド シェイキッドは、NSOの元技術幹部でした。

彼女は同社の外国政府との契約を支持しました。

NSO事件に関する公聴会が予定されていますが、それは密室の小委員会です。

 

2007年のイスラエルの防衛輸出管理法は、企業が厳格なライセンスプロセスを受けることを義務付けています。

イスラエルの主な後援者であるアメリカがイスラエルが中国に武器を売っていることについて不平をもらした後、それは可決されました。

しかし、国防当局者は一旦ライセンスが取得されると、イスラエル政府はツールがどのように使用されているかに無関心である事を認めています。

 

一部の企業は社内に倫理委員会を設置しており、そうしないと欧米でのビジネスが困難になるのではないかと懸念しています。

「アメリカのハイテク巨人などより進歩的な勢力は、イスラエルを除け者として扱い、イスラエルに研究センターを持ったり、イスラエルの企業と協力することに反対する可能性があります」と国際ビジネスの専門家は語ります。

NSOを所有するプライベート エクイティ会社であるノバルピナ キャピタルの投資家は、今回のペガサスに関する報道に対応し、ファンドの清算を考えています。

しかし、新旧を問わず、イスラエルの統治者は、殆どこの問題を憂慮していません。

相手を選ばないユダヤ商人

いやはやユダヤ人の商魂のたくましさには驚かされます。

ついこの前まで敵対していたサウジなどアラブ諸国にも盗聴に使われるソフトウエアを販売していたとは驚きです。

時を同じくして、台湾の政治家や政府高官ら100人以上の無料通信アプリ「LINE」の個人アカウントがハッキングされていたことが29日までに明らかになりました。

報道によれば、このハッキングにも「ペガサス」が使われた様です。

イスラエルという国は周りを八方、アラブ諸国に囲まれ、常に安全保障上の危機に立たされている国です。

従い、彼らが自己防衛のためにテロリストをハッキングする事は許されると思いますが、その技術を世界中にばら撒くのは避けて欲しいと思います。

悪用される危険性が十分あります。

我々が普段使っているLINEも誰かに覗かれているかもしれないと思うとぞっとします。(覗かれても大した事書いてありませんが...)

 

最後まで読んで頂き、有り難うございました。