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同盟国日本を評価する声米国で高まる

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インド太平洋地域の要

バイデン政権の外交政策における最重要地域がインド太平洋である事は、ご存知の通りですが、この地域における最も重要な同盟国はどこでしょうか。

米国では日本を再評価する動きが高まっている様です。

米誌Foreign Affairsが「Japan Is the New Leader of Asia’s Liberal Order - Washington Must Learn to Follow Its Longtime Ally in the Indo-Pacific」(日本はアジアの自由秩序の新しいリーダーです - 米国政府はインド太平洋地域において長年の同盟国に従うことを学ばなければなりません)と題した論文を掲載しました。

かいつまんでご紹介したいと思います。

Foreign Affairs論文要約

過去10年、その中でも特に過去4年間で、日本はインド太平洋のリーダーとして静かに台頭してきました。

米国が同盟国を放棄し、トランプ大統領の下で非自由主義的ポピュリズムに屈した一方で、日本は自由主義的でルールに基づく国際秩序の確固たる地位を維持してきました。

近隣諸国との関係を深め、多国間イニシアチブを拡大し、貿易とデジタルガバナンスなどの地域取り決めを設定しました。

良いタイミング、明確なリーダーシップ、革新的な国内改革の組み合わせを通じて、日本は、米国とインド太平洋の同盟国の信頼できるパートナーであるだけでなく、この地域の新たな自由秩序の建築家でもあることを証明しました。

 

好戦的な中国、北朝鮮の挑発、そして猛威を振るうパンデミックの時代に、日本の地域指導力の上昇はほとんど見過ごされてきました。

しかし、バイデン大統領の政権が擦り切れた同盟を修復しようとする中、日本はアジアにおけるアメリカの信頼回復のための鍵となっています。

長年のアジアの同盟国との関係を固める事によってのみ、米国はインド太平洋でのその傷ついた評判を修復し、将来の足場を取り戻すことができます。


20世紀後半のほとんどの間、国際問題における日本の役割は、戦後の条約上の義務によって制約されていました。

1951年、日米は平和主義国家として成文化された安全保障協定に署名しました。その結果、日本政府は受身的な外交政策を追求せざるを得ませんでした。

一部の日本の学者は、日本の戦後戦略を「カラオケ外交」と苦々しく例えました。

東京は、ワシントンが設定した曲を歌っているだけだったのです。

 

1960年代から1970年代にかけて、日本は奇跡的な経済復興を遂げ、世界第2位の経済大国になりました。

その結果、米国やその他の西側諸国は、日本に地域の安全保障においてより大きな役割を果たすように働きかけ始めました。

第一次湾岸戦争以降、中東における米国の拡大した役割により、ワシントンは、日本にアジアの安全保障上の負担をより多く求めました。

「何十年もの間、防衛に関するワシントンの東京へのメッセージは単純でした」とジャーナリストのリチャード・マグレガーは書いています。それは「もっとやれ」でした。

 

20世紀のの最初の10年間に、小泉首相そして安倍首相が率いるナショナリスト政治家グループがこの呼びかけに応えました。

政治学者のリチャード・サミュエルズが「1945年以来、日本で最も重要な政治的変化」と呼ぶ変化が生じ、日本の自衛能力が強化されました。

次第に、日本は国際舞台でより積極的な役割を果たし始めました。

自衛隊は、カンボジア、モザンビーク、ゴラン高原での国連平和維持活動に参加しました。

2015年、日本の議会は、自衛隊が国連憲章の下で集団的防衛に従事することを許可するため憲法を再解釈する法律を可決しました。

安倍首相は、この改革により日米関係は「はるかに強力」になり、「これからはお互いを守ることができる」と語りました。

 

この国内改革はアジアにおける日本のリーダーシップを可能にしましたが、しかしトランプ大統領の誕生もその一因です。

トランプ氏は就任まもなく、オバマ大統領が支援していた環太平洋パートナーシップ協定から撤退しました。

しかし、日本はこの協定を諦めず、残りの国々を説得して、環太平洋パートナーシップに関する包括的かつ進歩的な協定(CPTPP)を締結しました。

CPTPPは、貿易、知的財産、データガバナンスに関する新しい規則を確立しました。

これは、この地域に対する中国の非自由主義的ビジョンとはまったく対照的です。

バイデン氏は、CPTPPへの参加に関心を持っていることを示しました。

もしそうなら、彼は日本がアンカーとなっているリベラルな国際貿易システムに米国を再度コミットさせるでしょう。

日本は、中国と対抗できるレベルの経済援助をこの地域の国々に惜しみなく提供することにより、その評価を高めています。

2001年から2011年の間に、日本の援助機関は東南アジアと南太平洋の国々に合計127億ドルの援助を注ぎ込みました。

これは、当時の中国の援助に費やした59億ドルの2倍以上です。

それ以来、中国の援助と投資は増加していますが、日本は援助水準を維持しています。

2015年、東京は質の高いインフラのための1,100億ドルの援助プログラムを確立し、その受領者にはフィリピン(88億ドル)、インド(150億ドル)、インドネシア(120億ドル)がおり、そのすべてが中国との領海紛争を抱えており、中国の拡大主義を懸念しています。

透明性、環境の持続可能性、説明責任を優先する日本のインフラプログラムは、中国の悪名高い一帯一路構想とはまったく対照的です。

そして、中国の融資はは時折援助の罠と批判されますが、日本は真の信頼を生んでいる様です。

 

経済的リーダーシップに加えて、日本はかつて米国の誇りであり特権でもあった役割を引き受けました。

それは、非自由主義的競争相手の規範に対抗する国際規範の形成です。

安倍首相は、貿易だけでなく法と安全保障においても、リベラルな価値観を積極的に推進してきました。

彼の政権は、法の支配、航行の自由、自由な企業によって統治される「自由で開かれたインド太平洋」の概念を支援しました。

 

2019年に大阪で開催されたG20サミットで、安倍首相は新たな国際規範にもう1つの重要な貢献をしました。

それは、デジタルガバナンスの分野です。インターネットが国ごとに分断されている「サイバー主権」という中国のビジョンとは対照的に、彼はデータが国境を越えて自由かつ安全に流れる未来のビジョンを提示しました。

トランプ大統領が任期を終えるまで、アジアにおける自由主義の旗手は米国ではなく日本でした。

 

バイデン氏は、国際機関と協定に再び参加し、同盟国と多国間主義に再びコミットし、アジアを含むアメリカのリーダーシップを更新することを約束しました。

しかし、4年間トランプ政権が続いた後、アジアの多くの人々は、もはや米国を自由秩序の擁護者、あるいは信頼できるパートナーとさえ見なしていません。

一夜にしてアメリカの優位性を再び主張しようとすると、この地域の国々は反感を示すでしょう。

バイデン政権は、米国の信頼とリーダーシップを回復するためのより巧妙なアプローチを追求する必要があります。

つまり、日本との関係を強化し、地域の多国間イニシアチブについて日本と緊密に調整する必要があります。

過去4年間、日本はアジア諸国との間に信頼と善意を築いてきました。

米国はその善意にアクセスすることができますが、それは、長年の同盟国の意見に耳を傾け、それに従うことを学んだ場合に限られます。

 

ワシントンはまず東京との摩擦を減らすために努力しなければなりません。

日本が駐留米国に関する協定を迅速かつ友好的に更新することは、他のアジア諸国と北京に、日米間にスキマ風がないという強いシグナルを送るでしょう。

バイデンはまた、CPTPPに参加し、アジアの経済規範と基準を形成するために、日本、ひいては米国の能力を強化するよう努めるべきです。

最後に、日本の質の高いインフラ構想は、経済的にも思想的にも、中国の一帯一路イニシアチブに代わる競争力のあるものです。

ワシントンは、開発機関である米国国際開発金融公社の仕事を日本と連携させて、それを強化すべきです。

 

過去4年間、日本はリベラル国際主義の船を巧みに操ってきました。

米国は他国から教訓を得る事に慣れていませんが、アジアにおける4年間の不安定な米国のリーダーシップは、米国を謙虚にさせる筈です。

インド太平洋のカラオケ屋はまだアメリカ人に開放されていますが、日本に曲を選ばせる時が来ました。

千載一遇のチャンス

米国を代表する外交誌Foreing AffairsやForeign Policyに日本に関する論文が取り上げられる事は多くありません。

韓国などは積極的に論文を掲載し、自国の重要性をアピールしている様ですが、日本はこの面でも積極性に欠ける様です。

そんな中、めずらしく取り上げられたこの論文、日本の事をべた褒めしています。

確かにインド太平洋戦略上、安全保障面ではQuad、経済貿易面ではCPTPPが重要になると思いますが、いずれも日本抜きでは語れません。

特に後者はトランプ政権が離脱を決めた後、日本が面倒をみたのですから、我が国の貢献は極めて大きいと思います。(安倍首相の内政の問題について、外国人は関心ありません)

自由で開かれたインド太平洋、法の支配、自由な航行と言ったスローガンは、中国との関係に悩まされる東南アジアの国々にも強くアピールする点だと思います。

米国が対中戦略上日本に擦り寄ってくるのは、朝鮮戦争以来の事です。

更に加えて英国がCPTPPへの参加を表明するなど、ここの処、日本には追い風が吹いています。

しかし、アングロサクソンの人たちの狙いは、彼らのルールを世界中の人たちに押し付ける事ですので、うかうかしていれば、主導権を握られます。

インド太平洋のカラオケ屋ではたまには日本の歌を歌わせましょう。

 

最後まで読んで頂き、有り難うございました。