コロナで喘ぐ英国経済
英国の経済が低迷している様です。
もともとEUから離脱した事で経済の先行きが危ぶまれていましたが、今年に入ってからはコロナ感染の急拡大で経済に急ブレーキがかかってしまいました。
ジョンソン首相は年末までには予定通りEUとの交渉を纏め、Brexitを完成させると主張している様ですが、本当に経済の好転を期待できるのでしょうか。
英誌Economistが英国の経済政策のの真の問題点そして今後取るべき方策について、「Boris Johnson needs to focus on boosting economy(ボリス ジョンソンは経済成長に重点をおくべきだ。)」とのタイトルで記事を配信しました。かいつまんでご紹介したいと思います。
Economist記事要約
欧州の北部の国々は南部の国に比べて優秀であると自負しています。
しかし、コロナ感染の死亡率を見ると、英国は南欧の最悪の国と同程度の結果に甘んじる事となりました。
また、最近の経済の落ち込みについても、下記のグラフの通り、英国は主要国と比べてはるかに悪い数字を示しています。
英国の蔵相Sunak氏は、短期的に経済を立て直す政策を実行に移し、能力のある処を示しましたが、まだ十分ではありません。
政府は成長を後押しする事に重点を置いた長期的な政策を必要としています。
マーガレット サッチャー元首相が、成長への制度的障壁を一掃することにより、低迷し、組合化された経済を一変させた様に、保守党は本来、貿易、規制緩和、柔軟な労働市場を促進する傾向があります。
しかし、保守党が政権を維持した過去10年間で英国の生産性の伸びは、同レベルの国よりも低かったのです。問題は、保守党が成長戦略を優先できていない事です。
保守党は国を10年間運営しています。
多くの政治家は経済を活性化することの重要性を理解していますが、保守党の支持層は高齢化しており、多くの高齢者にとって成長戦略はあまり重要ではありません。
多くの高齢者は、不動産価格の高騰と寛大な年金によって、守られています。
彼らは若者よりも将来に関心が少なく、成長に不可欠な変化、例えば多くの移民受け入れなどを嫌います。
年金受給者の60%によって支持されましたが、25歳未満の27%しか支持しなかったBrexitは、経済にダメージを与えます。
医療サービスへの支出は、保守党が権力を握った2010年以降、GDPの6%から7%に成長し、将来の成長率に影響する教育の支出は6%から4%に減少しました。
国の年金の上昇率を、その年の国民所得成長率、インフレ率または2.5%の内一番高いものに合わせる事を保証する「トリプルロック」は、今年は特に寛大なものになるでしょう。
政府がその約束を守る場合、今年の国民所得は1.5%減少しますが、年金受給者は2.5%増を獲得します。
政府が成長志向の政策をとっても、それは老人たちの反対によって骨抜きになっていますが、英国においては、成長促進政策が緊急に必要とされています。
サッチャー首相が、英国を新たなより高い成長軌道に乗せる前は、国は長期的に衰退しているように見えました。
コロナ、Brexitを乗り越える必要がある英国政府が成長を優先しなければ、悲惨な結末を見る事になるでしょう。
我が国と英国の類似性
Economistの言わんとする処は、「保守党は成長戦略の重要性は理解しているが、保守党の支持層が高齢化した事から、彼らが反対する思い切った成長戦略を取れずにいる。サッチャーに習って、規制緩和、教育への投資など思い切った成長戦略を描くべきである。」という事だと思います。
英国の状況、日本と似通っている様に思えませんか。
自民党政権が戦後最長の好景気を続けたと自画自賛している期間、客観的に見ると他国より低い経済成長に甘んじています。
自民党も成長戦略の重要性を理解していると思いますが、彼らの支持層も高齢化しており、この支持層は英国と同じ様に成長より安定を求めるのです。(野党の成長戦略も変わりばえしませんが)
高齢者にとっては、日本の将来より安定した年金、医療サービスを受ける事の方が大事です。
しかし、日本の若い世代の将来を考えた場合、政治家は将来への投資、長期的な成長戦略を行っていくべきと思います。
ジョンソン首相の次の一手
それにしても、英国の経済の落ち込み方大きいですね。
Brexitの国民投票では、保守的な高齢者の支持を利用したジョンソン首相ですが、成長戦略を打ち出そうとする今、今度は、彼らの反対に合っている格好ですね。
まあ、したたかなジョンソン首相の事ですから、そんな環境でも、成長戦略を打ち出してくると思います。
彼の新戦略は、TPP(環太平洋パートナーシップ)への参加表明などにも既に現れており、インドやオーストラリアといった英連邦の国々と共に、成長著しいアジア太平洋地域の活力を取り込もうとしています。
しかし、コロナは彼にとって誤算だったと思います。
コロナとBrexitのダブルパンチを受けた英国を立て直すためには、彼は迅速に行動する必要があるでしょう。
最後まで読んで頂き、有り難うございました。