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バイデン氏は先ず何から着手すべきか

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バイデン政権最初の100日

バイデン氏は政権についた後、何から手をつけるでしょうか。

最初の100日がその政権の良し悪しを決めると言われますが、バイデン氏も、政権の浮沈を決めかねない政策の優先順位に関して、現在、策を練っていると思います。

そんな中、権威ある超党派の研究組織として知られる「外交問題評議会Council on Foreign Relations」のリチャード・ハース会長が外交誌「Foreign Affairs」に「Repairing the World」と題した論文を寄稿しました。

長い論文ですので,かいつまんでご紹介したいと思います。

Foreign Affairs論文要旨

米国の新大統領は、多くのの事を自ら決定できます。

しかし、次期大統領が選択できない事があります。

それは、前任者が残した様々な問題です。

バイデン氏が最初に大統領執務室に入る時、気が遠くなるほどの難問に迎えられる筈です。

彼は限られた資源と時間を有効に使うために、明確な優先順位を設定する必要があります。

 

古くからユダヤに伝わる「Tikkun olam」という教えは、「世界を修復する」事を意味します。

現在の世界は、修復が切実に必要とされています。

修復は、バイデン政権の最初の6か月から9か月の間に行う必要があり、その後、初めて、新しいものを作り上げる事が可能になります。

 

国内の状況は最悪です。

大統領就任式までに、新型コロナは30万人のアメリカ人の命を奪う可能性があります。

失業率は6から7パーセントの範囲になると予想されます。

何百万人もの人々が、家賃や住宅ローンの支払いを行う事ができなくなります。

 

アメリカ合衆国は分断されたました。

7000万人以上のアメリカ人がトランプ氏に投票しました、

彼らの多くは「選挙が盗まれた」というトランプ氏の主張に同意し、バイデン氏が正しく選ばれたと認識していません。

アメリカ社会は、富の不平等、人種、教育の問題で分裂するでしょう。

両党は、税金から警察改革、医療に至るまで対立しています。

 

国内の難問に対処している間、外の世界が辛抱強く待ってくれる訳ではありません。

外交上の問題も国内と同様に難問です。

トランプ政権もイスラエルとアラブ諸国の関係正常化など、一部正しい外交を行ないましたが、物事を悪化させた例もたくさんあります。

75年間世界安定の基盤であった同盟を弱体化させ、国際協定や機関から撤退した事が挙げられます。

世界の強権的指導者たちと親密な関係を結んだり、移民の子供たちを両親から引き離したり、イスラム教徒が多数を占める国からの旅行者を禁止したりするなど、トランプ氏が民主主義の規範に違反したことは、米国の魅力を損なうことになりました。

しかし、バイデン氏が直面する国際的な問題について、前任者に責任を転嫁してはなりません。多くはトランプ氏のずっと前から存在しました。

新型コロナ対策

最初に手をつけなければならないのは、公衆衛生の領域です。

新型コロナを封じ込めることから始めなければなりません。

バイデン政権はマスクの着用を奨励するなど迅速で包括的な対策を講じる事により、経済を復活させ、米国に対する信頼を回復させる必要があります。

バイデン政権は、世界保健機関(WHO)に問題があるからこそ再び参加すべきです。

WHOは、パンデミックを終わらせる為にも、又、癌、心臓病などの非感染性疾患に取り組むためにも必要です。

米国がWHO内の志を同じくするパートナーと協力して改革を行えば、中国が新型コロナ感染初期に行ったように、調査を妨害したり、組織の勧告を変更するよう圧力をかける事が不可能になります。

米国はまた、ワクチンの開発、製造、資金提供、割り当てのための国際的な取り組みに参加する必要があります。

米国で開発されたワクチンの一部を他国が利用できるようにすることは、世界での米国の地位を回復するだけでなく、他国の経済回復を加速させるのに役立ちます。

同盟国との関係修復

修復の2番目の優先事項は同盟国との関係です。

しかし、近年、米国が、友人のそばに立つことを躊躇していることの結果として、同盟国は米国への信頼を失っています。

同盟国に前任者と異なる保安官が現れた事を示すべきです。

修復された同盟は、米国により強力な国際的基盤を提供するでしょう。

バイデン政権は、早い段階で同盟国へのコミットメントを明示する事ができます。

ドイツからの駐留米軍の撤退を即座に止め、駐留米軍への財政支援をめぐる韓国との相違点を解決する事ができます。

アフガニスタンから米軍を撤退させるというタリバンとの合意も再検討する必要があります。

新政権はまた、フランス、ドイツ、英国と調整して、イランへの新しいアプローチを構築することもできます。

そしてアジアでは、バイデン政権は北朝鮮への最善のアプローチについて韓国と日本との協議を直ちに開始することができます。

これは北朝鮮の特定の分野における制裁の緩和を前提とします。


バイデン政権は、国際協定や機関に再び参加する事により、多国間主義を強調する事が可能です。

WHOに加えて、気候変動に関するパリ協定を先ず対象とすべきでしょう。

同様に、間もなく期限切れになるロシアとの新戦略兵器削減条約の延長を確定するために迅速に動くことができます。

 

中国とも、貿易やテクノロジーから人権、南シナ海、台湾、そして中国の近隣諸国に対する攻撃性の高まりあど、あらゆるものに対処する包括的な政策を策定するには時間がかかります。

しかし、直ちに、新政権は2つの重要なステップを踏むことができます。

これらは、同盟国と緊密に連携すれば、成功する可能性がはるかに高くなることは明らかです。

最初のステップは、潜在的な協力の分野(例えば、北朝鮮と気候変動)を決定する事です。

二つ目のステップは不一致が避けられない分野を特定し、それが本格的な衝突にエスカレートしない様に対処する事です。

 

現政権も前の政権も、米国行政府は独力で物事を進めようとし、議会の反対に会いました。

行政府は民主、共和両党の支援を取り付ける努力を行うべきです。
たとえば、中国とロシアに対抗する最善の方法や、米国を前進させる可能性のある環太平洋パートナーシップにに参加するかどうかついて、コンセンサスが見つかるかもしれません。

 

新型コロナ感染と4年間にわたる米国の外交政策が深刻な混乱を招いた結果、米国と世界の両方がダメージを受けました。

米国政府が将来、新しい外交政策を導入する為には、先ず、受けたダメージの修復作業を完了させる必要があります。

バイデン政権に対する期待

この論文の著者が議長を務めるCouncil on Foreign Relationsは米国の外交政策に大きな影響を与えると言われていますので、ハース氏の指摘する政策の多くはバイデン政権に採用されるものと思います。

トランプ政権の外交政策は確かに良い結果をもたらしたものもありましたが、「America First」に代表される利己的な政策は、米国の信頼を大きく損ねました。

先ずは民主主義国のリーダーとして、信頼と威信の修復をバイデン政権にはお願いしたいと思います。

 

最後まで読んで頂き、有り難うございました。