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武装ドローンの拡散にどう対応すべきか

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勝敗を分けた武装ドローン

ナゴルノ=カラバフ地域を巡るアゼルバイジャンとアルメニアの武力紛争はアゼルバイジャンの勝利に終わりました。

この戦争で勝敗を決したのは、戦車でもミサイルでもなく、アゼルバイジャン軍が使用した武装ドローンだと言われています。

彼らの作戦は次の通りです。

  1. 先ず「おとり」の飛行機(これも無人でドローン化されている)を敵上空に侵入させ、これをわざと攻撃させる事で、敵の対空ミサイル基地などの位置をあぶり出します。
  2. 続いて、攻撃型の武装ドローンを投入します。ここで使用されるのがイスラエル製トルコ製の武装ドローンです。前者は自爆型で相手の対空ミサイル基地に突っ込んで破壊します。後者はミサイルなどを発射し、相手を攻撃します。

ドローンと言えば、偵察が主だと思っていたのですが、技術の進化は目覚ましいもので、戦争のやり方を根本から覆す様な力を持っている様です。

米誌「Foreign Affairs」が「China Has Made Drone Warfare Global - The United States Must Join the Market or Be Left Behind」(中国は軍用ドローンを世界に拡散している。米国はこの市場に参入すべきか)と題する論文を発表しました。

長い論文ですので、かいつまんでご紹介したいと思います。

Foreign Affairs論文要旨

 ドローンによる戦争は、21世紀の最も重要な安全保障上の進展の1つです。

米国は、アルカイダなどの非国家主体への攻撃から、イランのソレイマニ少佐を殺害した昨年1月の作戦に至るまで、何千ものドローン攻撃を実施してきました。

トルコは国内でクルディスタン労働者党に対して、ナイジェリアはボコハラムに対して、そしてイラクはイスラム国に対して武装ドローンを使用しています。

アゼルバイジャンはここ数週間、アルメニアとの戦争で武装ドローンを使って大きな成果を収めました。

武装ドローンは急速に普及しています。

2011年以前は、米国、英国、イスラエルの3か国のみが保有していましたが、2011年から2019年にかけて18か国が武装ドローンを取得しました。

この18か国のうち11か国が中国から武装ドローンを購入しました。

対照的に、同じ時期に、米国はフランスにしか輸出していません。

米国には世界で最も進んだドローンがあり、関心のあるバイヤーがたくさんいますが、冷戦時の1987年に定められた輸出管理規制により、軍事ドローンの販売は大幅に制限されています。

したがって、過去10年間、中国などが武装ドローンの輸出を開始した一方で、米国は市場への参入が遅れました。

中国はドローンの輸出市場を自由に選択しています。

これらのうち、民主的国家はほとんどありません

エジプトやウズベキスタンなど、中国から軍事ドローンを購入した11か国のうち、9か国は非民主的国家でした。

この時期に非民主的国家が武装ドローンを中国から取得した理由の1つは、米国と比較して、中国が武器の使用に少ない制限を課していることです。

したがって、バイヤーは、国際法や人権に違反している場合でも、武器を自由に使用できます。

中国は「他の政府の政策や立場を問わない」のです。

一方、米国の2015年のドローン輸出政策では、受領者は「国際人道法や国際法に従ってこれらのシステムを使用する」必要があります。

国内の人々に対して違法な力を行使したりしない事を米国は求めます。

これらの理由から、ドローンは中国から多く輸出され、米国の輸出規制は、武器の拡散を妨げていません。

中国はドローンの輸出を利用して、米国のパートナーを含む世界中の国々との防衛関係を構築してきました。

たとえば、米国は、ヨルダン、イラク、アラブ首長国連邦、サウジアラビアからの軍用ドローンの要求を拒否しました。

これらの国々は代わりに中国から武装ドローンを購入しました。

この様な状況を鑑み、トランプ政権は2020年7月に1987年に定められた輸出規制を「再解釈」することを決定しました。

時速800 km未満の速度で移動するドローンは、輸出が容易になりました。

政策変更以来、トランプ政権は、台湾とアラブ首長国連邦への武装ドローンの販売を承認したことを議会に通知しました。

ドローンの脅威はどの程度か

多くの国(および非国家主体)が武装ドローンを取得するにつれて、ドローン攻撃の頻度は近い将来増加する可能性がありますが、少なくとも今のところ、それらがもたらす脅威の重大度は比較的低いままです。

検知された場合、現世代のドローンは、人が登場する航空機に比べて撃墜が比較的簡単です。

イラン、シリア、フーシは米国のドローンを撃墜しました。

いくつかの研究は、ドローンの使用が場合によっては安定性に寄与する可能性があることを示唆しています。

シミュレーションは、軍事的意思決定者が無人ドローンよりも有人航空機の撃墜に対して攻撃的な軍事的対応を好む可能性が高いことを示しています。

実際の例として、6月19日にトランプ大統領が1億3000万ドルの米軍ドローンがイラン軍に撃墜された後、イランに対する空爆の開始を撤回するという決定を行いました。

トランプ氏は「無人ドローンを撃墜されたくらいで、空爆を行うのは割りに合わない」とツイートしました。

この軍事技術の長期的な影響はまだわかっていませんが、武装したドローンが急速に増殖していく事は明らかです。

バイデン政権は、米国がその洗練されたドローン技術を販売するかどうか、そして誰に販売するかについてといった難問に回答を用意する必要があります。

ドローン悪用の恐れ

上記論文を読みますと、ドローンにおいても米中は激しい競争を行っている様です。

キーワードはやはりテクノロジーで、技術的優位性を保てるかが鍵と思われます。

心配されるのは、中国のドローンが非民主的な国家に輸出され、独裁者の圧政のツールとして使われる事です。

国民を監視したり、集会を妨害したりする事に使われる様になれば、非民主的な国家が増殖する事に繋がりかねません。

この点、民主主義国家は団結してドローンの使用に関して国際的なルールを設けるべきではないでしょうか。

 

最後まで読んで頂き、有り難うございました。