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ドイツで活躍するトルコ系移民

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トルコ系移民が経営する独BionTech社の快挙

以前英誌Economistの記事を取り上げた際に、米ファイザーとドイツの新興企業であるBioNTech社のグループがワクチン開発の先頭を走っている事をお伝えしました。

この記事で注目したいのは、ファイザーのCEOがギリシャ人でBioNTech社のCEOがトルコ系移民だいう事だけではありません。

確かにギリシャとトルコは犬猿の仲ですので、この組み合わせは興味深いですが、それ以上に私の興味を引いたのは、トルコ系移民が医学の最先端ともいうべきワクチン開発の会社のトップだと言う事でした。

第二次世界大戦後、ドイツに多くのトルコ人が移民し、その数は300万人を超えると言われています。

第二次世界大戦直後、西独の人手不足に駆り出された形で移民した訳ですが、多くは今や第三世代に入っています。

フランクフルトの空港で客待ちしているタクシー運転手の多くは、トルコ人です。

私がトルコ語で話しかけると急に機嫌が良くなり、「お客さん、今日はタダにしますよ」と気前がよくなる運転手が多いのは、やはりルーツがトルコ人だからだと思います。

ドイツの経済復興を支えた彼らは、主にブルーワーカーとして働いていましたので、トルコ系移民がワクチン開発の様な先端企業のしかも経営者になっている事は驚きでした。

英誌Economistが「How Germany's guest workers become guest entrepreneurs」(ドイツの外国人労働者はどの様にして企業家になったか」と題した記事を掲載しました。

かいつまんでご紹介したいと思います。

Economist記事要約

BioNTech社の最高経営責任者であるMr Sahin及び最高技術責任者である Ms Türeci に関するドイツの報道の多くは、彼らのルーツであるトルコに焦点を当てました。

ドイツで最も売れている大衆紙であるビルトは「移民の子孫たちによって私たちの世界は救われます。」という見出しで報じました。

彼らの話は、トルコ系移民の一般的なイメージであるケバブ屋や八百屋のおやじとは大きく異なります。

彼らは、アメリカの製薬会社であるファイザーと協力して、新型コロナに対する非常に効果的なワクチンを発見しました。

 

「他にもBioNTechの様な会社があります」と、ボンのシンクタンクであるIFMのKay氏は語ります。

移民は平均的なドイツ人よりも起業する可能性が非常に高いです。

国営開発銀行であるKFWによると、昨年企業を創設した605,000人の内、4人に1人は外国出身でした。

それらは食料品店やレストランに限りません。コソボからの難民によって設立されたSpottedは、出会い系サイトですし、1988年にイランから逃亡したEtmenan氏によって設立されたNovumは、ドイツ最大のホテルチェーンの1つになりました。

 

ドイツへの移民(Sahin氏のケース)または海外で生まれた親が少なくとも1人いる移民(Türeci氏のケース)は1960万人で、人口の24%を占めています。

別のシンクタンクであるBertelsmannFoundationの調査によると、このグループのメンバーは773,000の企業を所有しています。

これらのうち、469,000人が個人事業主です。

彼らの数は増え続けています。

一方、事業を所有するドイツ人の数は減り続け、320万人になりました。

 

「ドイツ人は自営業を嫌います」とBertelsmannFoundationのシュミット氏は言います。

多くの大卒者は、起業のリスクよりも安全な公務員としてのキャリアを好みます。

過去10年間活況を呈する労働市場は、若者が定職に就く事を容易にしました。

一方、移民の選択肢はより制限される為、職探しは移民にとってかなり厳しいものになっています。

出身国での資格の殆どはドイツでは認められませんので、ビジネスを立ち上げる事は、単純労働からの賃金以上のものを稼ぐ唯一のチャンスです。

 

新型コロナが収まり、ドイツの寛大な一時解雇制度が終了すると、労働市場はドイツ人にとっても厳しいものになると予想されます。

より多くのドイツ人が失業の代わりに自営業を選ぶかもしれません。

そうなれば、彼らは移民の隣人から学ぶことがあるかも知れません。

移民を積極的に受け入れるドイツの戦略

驚くのはドイツの移民の多さですね。

4人に1人が移民だという事は知りませんでした。

ドイツはEUの中では、移民受け入れに最も積極的です。

それはナチスが少数民族を迫害した贖罪の意識があると言われていますが、むしろ国力を維持する為に戦略的に移民を受け入れているのだと思います。

 

歴史を振り返れば、異民族に寛容でその力を上手に取り入れた国は繁栄を遂げています。

以前、オスマン帝国がユダヤ人など異民族に寛容だった事を書きましたが、モンゴル帝国も征服した異民族の中から優秀な人材を登用しています。

米国も先進国の中で唯一人口が伸び、経済成長しているのは移民のおかげです。

 

ドイツにおけるトルコ人移民が必ずしも幸せな境遇にあるとは言えません。

ドイツサッカー界のエースだったトルコ系のエジル氏は人種差別にあったと告白しています。

ネオナチの様な移民排斥を唱える政治集団も存在します。

しかし、ドイツの大部分の人たちは、トルコ系を含めた移民たちと共存していく事を受容している様です。

移民が圧倒的に少ない日本はドイツと同列には論じられませんが、少子高齢化に悩む国として、ドイツの移民政策は参考になると思われます。

 

最後まで読んで頂き、有り難うございました。