バイデン チームの顔ぶれ
バイデン政権の閣僚が発表されるにつれ、バイデン 氏のやろうとしている事がより明確になってきました。
バイデン 氏がオバマ時代に回帰し、中国に対して甘い姿勢を見せるのではないかと危惧する声も高かったのですが、どうやらそれは杞憂に終わりそうです。
欧米のメディアがバイデン チームの顔ぶれから予想される外交政策に論評を加えていますので、幾つかご紹介したいと思います。
先ずは米紙ウォールストリートジャーナル(WSJ)からです。
WSJ記事抜粋
バイデン 氏は上院外交委員会の委員長を務めるなど、歴史上、アイゼンハワー、ジョージWブッシュと共に、最も外交に経験豊富な大統領です。
彼は何をやりたいかわかっており、その目標を達成できるチームを選びつつあります。
彼らは現実主義的な見方からではなく、信念から多国間主義を支持する人々です。
彼らにとっては、多くの民主党員が文明の存亡に関わる脅威とみなすもの - 例えば、核拡散、大国による戦争や気候変動 -を制御するための道は、ルールに基づく国際機関によって具体化される国際協力の強化であり、それが唯一の道となります。
ジョン・ケリー元国務長官を「気候問題担当」の大統領特使として起用したことが明らかにしているように、国際協力に対する新チームのコミットメントを過小評価するのは大きな間違いになるでしょう。
バイデン政権のこの方針は、欧州各国から温かく受け入れられるでしょう。
しかし、米国の外交政策の焦点は引き続き、インド太平洋地域にシフトしていくでしょう。
新チームは「アジア回帰」の外交政策チームとなり、アジア方面でオバマ政権が行ったよりも、一層力強い政策を追求する公算が高いと思われます。
トランプのチームは同盟国、とりわけ欧州との弱い関係により、経済的な問題で中国に対して共同戦線を張ることができませんでした。
これはトランプ政権のインド太平洋戦略の効果を弱める致命的な欠陥だったとバイデン チームは指摘しています。
世界的にみると、何らかの形で核合意への米国の復帰を期待するイランを除けば、米国の政策変更による主な受益者は、おそらくドイツと日本になると思われます。
ドイツは米国との間で緊密な連携関係の再構築が期待できます。
独政府にとって重要な環境分野での目標に米国が改めてコミットし、北大西洋条約機構(NATO)の分担金やドイツの対米貿易黒字をめぐる論争は優先課題から外れる見込みです。
日本政府は中国からの挑発行為に際して引き続き緊密な支援を期待でき、以前よりも不安定感が少なく、かつ重商主義的な色合いの薄い貿易政策をとる政権からの支援が可能となります。
ブリンケン氏はフランスに関する知識が豊富ですが、新政権の政策シフトにおいてフランスは敗者となるかもしれません。
ドイツが、EU独自の防衛体制を構築する試みよりも、欧米間の安全保障協力を支持していることについてフランスは長い間、苛立ちを募らせてきました。
米国は信頼性を欠いているとのフランスの主張にドイツ政府が耳を傾けるようになったのは、トランプ氏が政権の座に就いたためでした。
続いて英誌Economistの記事をご紹介します。
Economist記事抜粋
新しいチームに何を期待しますか?
確かに派手なスターの登場はありませんでした。
バイデン氏は、彼のチームに、安定性と信頼性を求めました。
ブリンケン氏はごく普通の人と言うわけではありません。
バンドで演奏し、フランスの高校に通い、継父はホロコーストの生存者で、やけに若い奥さんがいますが、彼は右と左の両方の人々とうまくやっていく中道政治家として見られています。
アメリカの同盟国は、トランプ氏から受けた扱いとは全く異なる扱いを期待することができるでしょう。
ブリンケン氏は、中国との競争に同盟国が不可欠であると考えており、おそらく今後数年間で最大の外交政策上の課題となるでしょう。
彼は、ゲームのルールが公正であることを保証するために「志を同じくする国」と協力できることを期待しています。
「中国にとり、世界のGDPの25%(米国)を無視するよりも60%(米国と同盟国の総和)を無視することの方がはるかに難しい」と彼は語りました。
バイデン チームにかかる期待
上記の通り欧米のメディアの論調は概ねバイデン 政権に好意的です。
確かに対中政策一つとっても、同盟国との協力を重視するバイデン政権は中国にとってやりにくい相手と思います。
独善的だったトランプ政権が終わりを告げ、漸く、中国に対して民主主義国家が一致した政策をとる事が可能になるでしょう。
それにしても、バイデン 政権の外交政策で最も恩恵を被る国の一つが日本と言うWSJの主張には驚きました。
確かにこの10年で大きく世界の情勢は変わりました。
中国が米国のライバルとして台頭してくるにつれ、この地域の同盟国、日本の価値が高まった事は確かだと思います。
第二次世界大戦直後、米国のアジアにおける最も重要な同盟国は蒋介石の中国でした。しかし中国共産党の台頭と共に、米国はパートナーを中国から日本に変えました。
米中関係が悪化すれば、米国は日本を振り返ると言う事でしょう。
しかし、状況が変われば、米国が変わりうる事も日本は心得ておくべきでしょう。
最後まで読んで頂き、有り難うございました。