Airbnb遂に上場
民泊仲介サイトのAirbnbが、このコロナ渦の中で上場する様です。
米紙ウォールストリートジャーナルによれば、新規株式公開(IPO)の仮条件レンジをすでに引き上げていましたが、それをさらに上回る公開価格を設定する見通しだそうです。
新たな仮条件によれば、同社の評価額は420億ドル(約4兆3800億円)超となる見込みです。
日立製作所の時価総額さえ上回るこの会社どれだけ儲けているのでしょうか。
実は2019年の利益(EBITDA)は2億5千万ドル(260億円)の赤字です。
どうしてこれほど高く評価されているのでしょうか。
やはり将来性です。
しかし、どこでも会社の将来性が高く評価されて、株価に高い値段がつくわけではなさそうです。
日本と同じ様に株価の低迷に悩む欧州は、このAirbnbの上場をどの様に見ているのでしょうか。
仏紙Les Echosが「Les leçons d'Airbnb」(Airbnbから学ぶ教訓)と題して記事を掲載しました。かいつまんでご紹介したいと思います。
Les Echos記事要約
Airbnbの上場の重要性を過小評価してはなりません。
確かに、ホテル経営者から嫌われているこの新興企業は、観光業界の一社にすぎません。
しかし、その成功はあっという間で、私たち全員を驚かせる規模でした。
ガレージから優秀な発明者が生まれるなどという話に惑わされる必要はありませんが、GoogleやFacebookそしてAirbnbといった事例は、若者が画期的なイノベーションを如何に支配しているかを証明している事を認識しておく必要があります。
もはや成功するために、歴史を持った大規模な会社の幹部になるべく出世の階段を駆け上がる必要はありません。
この新しい観光の巨人の創設者が私たちに示していることは、大学卒業後、自分の成功のために自らの時間を賭けることができるということです。
Airbnbの創設から10年も経たない株式上場は、米国では、革新的なアイデアをサポートするために何年にもわたって大きな損失を被る準備ができている投資家がいることも証明しています。
人々を恐れさせるアマゾンでさえ、コンピューティングの「クラウド」への賭けに成功するまで、利益を上げることができませんでした。
少しクレイジーに見えるプロジェクトをサポートするのが上手くないヨーロッパは、これを良く頭に入れる必要があります。
すべての企業経営者がAirbnbの台頭から学ぶべき他の教訓は、デジタル時代では、少なくとも物理的な製品と同じくらいサービスというものが重要だという事です。
Airbnbの主な資産は無形であり、その強みは、無数のオーナーから提供された部屋を世界規模の需要に即座に関連付けることができ、それを何百万もの人々に提供できる事です。
フランスで、設備に投資しないAirbnbは、すべてのホテルグループを合わせたよりも多くの「部屋」を有しています。
ますます多くのセクターで、ネットワーク上のポジションを保持する人々が、旧経済」の従来型プレーヤーを凌駕するプラットフォーム経済に移行しています。
新しいプレーヤーが経済競争のルールをこれほどまで揺さぶっているとき、競争が公正であることを保証する仲裁人に権限を与えることが緊急になります。
幸いなことに、ヨーロッパは行動しようとしています。
しかし多くの消費者からそのサービスが評価されているデジタルプレーヤーに過度なペナルティを課すことなく、適切に監督する必要があるため、その任務は難しいものになりそうです。
日本と共通する欧州の悩み
上記の記事はデジタル革命に置いてきぼりをくった欧州の嘆き節といった処でしょうか。
欧州は日本と同じ悩みを抱えています。
リーマンショック時を除いて右肩上がりの活況を呈する米国株式市場と比べ、欧州株式市場は冴えません。
上記の記事が指摘する通り、突拍子もないアイデアを掲げてスタートアップが生まれ、それをベンチャーキャピタルなどが支えるという米国の新興企業へのサポート体制が欧州には欠けていると思われます。
投資文化の違いと言ってしまえばそれだけですが、物づくりが得意な欧州や日本はネットで殆どのサービスが行われる様になってしまっては、出る幕がないのかも知れません。
トヨタやフォルクスワーゲンも、後発のテスラにあっという間に時価総額で追い抜かれてしまいました。
その内、テスラは無人運転車のプラットフォーマーとして、既存自動車メーカーを過去のものにしてしまうでしょう。
ネットワーク効果という言葉がありますが、ネット上では最強の企業に顧客が集まる傾向があり、2位以下の企業は競争上不利です。
欧州や日本はこの点を肝に銘じるべきですが、巨大な自国市場を有する米国や中国に対抗するのは難しそうです。
最後まで読んで頂き、有り難うございました。