サウジアラビアが自ら引き起こした難題の数々
UAEやバーレーンと言った湾岸諸国が相次いでイスラエルと国交を正常化させました。
サウジアラビアの動向が注目を集めていましたが、彼らは当面イスラエルとの国交正常化を行わない様です。
どうもサウジはそ国内外に大きな問題を抱え、それどころではなさそうです。
同国が直面する問題に関して、英BBCが「Saudi Arabia: Three campaigns MBS cannot win」(サウジアラビア:モハメッド ビン サルマン王子が勝利を収めることができない三つの戦い)と題して、記事を掲載しました。
かいつまんでご紹介したいと思います。
BBC記事要約
サウジアラビアの指導者、特にモハメッド ビン サルマン王子(MBS)にとって、最近憂鬱な日々が続いています。
国内では彼は人気を保っていますが、国際的には、2018年にサウジアラビアのジャーナリストであるジャマル カショギ氏の殺害事件における彼の役割について、疑惑を払拭できていません。
そして、次期大統領のバイデン氏は、サウジアラビアに対して前任者よりもはるかに厳しい立場を取ることを明らかにしました。
では、危機に瀕している問題は何でしょうか。
イエメン内戦
この内戦は関係するすべての人にとって災いでしたが、何よりもイエメン自身の貧しい人々にとって大惨事でした。
この紛争を開始したのはサウジアラビアではありませんでした。
北部の山岳地帯に住む部族であるフーシが2014年後半に首都サナアに突入し、合法的な政府を倒したときに紛争が開始されました。
2015年3月、MBSはサウジ国防相として、密かにアラブ諸国の連合を結成し、フーシを数か月以内に降伏させるべく、大規模な空軍力で戦争に参加しました。
ほぼ6年後、数千人が殺害され、双方が戦争犯罪を犯しましたが、サウジ主導の連合は、イエメンからフーシを追い出すことができませんでした。
イランの助けを借りて、フーシはますます正確なミサイルと爆撃型ドローンをサウジアラビアに送り、遠く離れた石油施設を攻撃しました。
イエメン人を殺し、サウジの財源を悪化させているこの内戦に対して、国際的な批判が高まっています。
サウジは、イランに支援されているイエメンの武装民兵を受け入れることはできないと主張していますが、サウジに取って残された時間はありません。
トランプ大統領は、サウジが要求したすべての援助を与えましたが、バイデン政権は、サウジへの援助が続行される可能性は低いと指摘しています。
投獄された女性活動家達
これはサウジアラビアの指導者にとって国際広報面での大失敗でした。
13人のサウジアラビアの平和的女性活動家が、運転する権利や、男性が保護されたひどく不公平なシステムを終わらせると要求したため、収監され、恐ろしく虐待されました。
最も著名な囚人であるハスルール女史をらは、女性の運転禁止が解除される直前の2018年に逮捕されました。
サウジ当局は、ハズルール女史がスパイ行為と「外国勢力から金を受け取った」罪で有罪であると主張しているが、証拠を提出していません。
彼女の家族は、彼女が拘禁中に殴打され、電気ショックを受け、レイプの脅迫を受けたこと、そして最後に彼女を見たとき、彼女は手に負えないほど震えていたと報告しています。
イエメン戦争と同じように、これはサウジ当局が自ら掘った墓穴であり、現在、メンツを潰さずに問題を解決する方法を模索しています。
一つの有力方法は「大赦」です。
この方法が、バイデン政権によって提起されることを期待しましょう。
カタールに対するボイコット
この問題は舞台裏で、クウェート調停によって解決されるでしょうが、表面上は、問題はさらに深刻になります。
2017年、トランプ大統領がリヤドを訪問してから数日以内に、サウジアラビアはアラブ首長国連邦、バーレーン、エジプトと協力して、湾岸の隣国であるカタールにボイコットを課しました。
その理由は、カタールがイスラム教徒グループを容認できないほど支援し、テロに相当するためだと彼らは主張しました。
イエメンのフーシと同様に、カタールが簡単に崩壊し、最終的に降伏するという見当違いの予想がありました。
カタールは巨大なオフショアガス田にあり、英国だけで400億ポンド(5兆5千億円)以上も投資しており、トルコとイランからの支援もあります。
両国の対立は、、近年、中東で深刻な亀裂が発生しているということです。
一方には、これら3つの保守的なスンニ派湾岸アラブ君主制(サウジアラビア、アラブ首長国連邦、バーレーン)とその同盟国であるエジプトがあります。
反対側には、トルコ、カタールと、ムスリム同胞団やガザのハマスなど、様々な政治的イスラム主義運動があります。
カタールに対する3年半にわたるボイコットが、双方に経済的および政治的損害を与えてきたことは疑いの余地がありません。
それはまた、湾岸アラブの指導者たちがイランの核開発について心配している時に、湾岸アラブの連帯を大きく傷つけました。
バイデン政権はこの問題が解決されることを望んでいるでしょう。 何故なら、カタールには国防総省最大の海外拠点であるアルウダイド基地があります。
カタールが隣人を許すには何年もかかり、彼らが再びカタールを信頼するには何年もかかるでしょう。
サウジが恐れるムスリム同胞団
上記の記事の中で、「中東で深刻な亀裂が発生し、二つのグループに別れている事が記されていますが、この二つのグループの違いは何でしょうか。
それは統治者を選挙で選んでいる国と、そうでない国の違いです。
イランのハメネイ師は選挙で選ばれていないのではとのご批判もあろうかと思いますが、ハメネイ師はあくまで宗教指導者です。
政治のトップである大統領は曲がりなりにも選挙で選ばれています。
エジプトはシーシ大統領が軍事クーデターを起こして、選挙で選ばれたムスリム同胞団出身の大統領を投獄してしまいました。
ムスリム同胞団の中には一部過激なグループも含まれている様ですので、注意が必要ですが、エジプトやサウジ政府が同胞団を禁止しているのは、自分たちの政権があやうくなるからではないでしょうか。
トランプ大統領は米国軍事産業の大のお得意さんである湾岸君主国に甘い顔をしてきましたが、バイデン 氏はトランプ氏と違います。
女性活動家の投獄や国際的に著名なジャーナリストであるカショギ氏の暗殺事件と言った問題に対して、厳しい対応を見せるでしょう。
当分サウジにとっては厳しい時代が続きそうです。
最後まで読んで頂き、有り難うございました。