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中国の台頭に対応策に窮するEU

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増す中国の存在感

先進国では経済活動がコロナ以前の水準に戻りつつある様です。

欧州も例外ではありません。

しかし、コロナ前とコロナ後を比べれば、中国の存在感が増している様です。

この点について仏紙Les Echosが「Le grand bond des exportations chinoises vers l'Europe」(欧州向け中国輸出の急回復)と題した記事を掲載しました。

かいつまんでご紹介したいと思います。

Les Echos記事要約

欧州連合(EU)の対外貿易は、経済の再開により順調に回復しました。

今年の第2四半期には、27カ国の輸出は、パンデミックが始まる前の2019年のレベルをわずかに上回りました。

そしてこれは、特にEU最大の輸出国であるドイツで、工業生産を制約する部品の不足にもかかわらず達成されました。

しかし、輸入はさらに急速に伸びました。

それは中国に大きな利益をもたらしました。

中国のヨーロッパへの輸出は、2019年には、毎月310億ユーロ強でしたが、年初から月額360億ユーロを超えています。 

「新型コロナにより、中国製の手袋や医薬品などの商品に対する需要が高まっています。また、コンピューター、電子機器、さらには家具など、中国製の消費者製品に対する需要も高まっています」と、エコノミストのSelin Ozyurt氏は説明します。

中国の市場シェアの拡大

中国はパンデミックからすぐに回復し、工場を完全に閉鎖したことはありません。

ソシエテ ジェネラルCIBのWeiYao氏は、「多国籍企業は今日、中国が最も信頼できる生産国であり、この意味で、パンデミックは世界の工場としての中国の地位を強化した」と述べています。

中国の輸出は、ヨーロッパであろうと米国であろうと急増しています。

「電子機器とITを含む機械設備セグメントでは、中国は2020年に新型コロナからの回復が近隣諸国よりも速いことを利用して、フィリピンなどから市場シェアを獲得しました。」とクレディ・アグリコルのエコノミスト、ソフィー・ウィエヴィオルカは述べます。

中国の台頭に対する大きな恐怖

ヨーロッパ人は、中国が輸出市場で彼らと競争することを恐れるべきでしょうか?

複数のエコノミストがこれを確信しています。

たとえば自動車業界では、中国で販売されている自動車の4分の1近くがドイツのブランドです。

中国とドイツは同じ分野に特化しているため、中国とドイツの競争は真正面から進んでいます。中国製品の高級化によってさらに激化しています」とSelinOzyurt氏は言います。

「特に地球温暖化との戦いで基準が変わるため、ドイツの得意な製品の一部が数年で不要になる可能性があります。一方、中国はドイツの卓越した分野に多額の投資を行っています。たとえば、電気自動車へのシフトなどです」

「フランスの問題は中国だけでなく、近年競争力を向上させてきた他のヨーロッパ諸国も強敵として存在感を増している点です」と彼女は続けます。

欧州の対抗策

欧州は、特に半導体において、中国の高級市場への動きに刺激策で対応しようとしています。

一方、工場移転は成功する可能性がほとんどありません。

一方、7月にEU本部が提案した国境炭素税が効果を上げる可能性はあります。

中国の台頭に有効な対抗策が無いのは我が国も同じ

中国は新型コロナの封じ込めにいち早く成功し、世界の工場として機能しました。

日本企業がサプライチェーンとしている国々の中には、インドネシアやタイの様に未だにコロナ感染の影響で、工場操業が思う様にいかないところもありますので、その意味で中国はグローバルプレーヤーより信頼を得たのは間違い無いでしょう。

その上、中国は欧州企業から技術を習得した後は、その技術を高度化して、欧州企業と競合する様になっています。

高級品は欧州、それ以外は中国と棲み分けを模索していた欧州側の思惑は見事にはずれ、高級品に中国勢が進出してきている様です。

欧州企業が感じている問題は日本企業も同じ様に感じている筈です。

EUは中国から大量の安価な製品が入ってくるのを、新設の国境炭素税で防ごうとしていますが、これは形を変えた関税ですので、短期的にEU内の企業や雇用を守ることはできても、長期的にはEU企業の競争力を失わせます。

我が国も中国との経済関係は欧州以上に緊密になっており、簡単に排除できる様なものではありません。

長期的に中国とどう共存するか、同じ立場にある欧米と連携しながら戦略を立てる必要があると思います。

 

最後まで読んで頂き、有り難うございました