ドイツでの感染急激な伸びを示す
16日、ドイツでは1日当たりの新型コロナウイルス死者数が最多に上りました。
同国は16日から厳格なロックダウン(都市封鎖)に入りましが、メルケル首相は1月以降もこれを継続する可能性を示唆しました。
米ジョンズ・ホプキンズ大学のデータによると、15日のドイツ死者数は910人。これまでの最多は11日に記録した604人でした。
累計死者数は2万3544人。感染者数は新たに2万1456人増え、累計で138万人に達しました。
因みに日本の同じ時期のの1日あたりの感染者数は2,999人で死者は51名です。
日本はPCR検査をドイツの様に大規模に行っていませんので、感染者数が少ないのは当然ですが、死者数の桁が違っている点は両国の感染度の違いを物語っています。
ドイツは欧州の主要国の中では、感染者数が少なく、コロナ対策の優等生と見られていたのですが、ここのところ急速に状況が悪化している様です。
ドイツがこの様な状態に陥った理由は何でしょうか。
ウォールストリートジャーナル(WSJ)が「Germany’s Winning Covid Strategy Has Stopped Working - The country fared much better than European neighbors in the first wave, but the autumn surge has hit it harder」(ドイツの新型コロナ戦略は機能しなくなった - 第一波には隣国よりうまく対応できたが、第二波は他国より悪い結果をもたらしている)と題した記事を掲載しました。
かいつまんでご紹介したい思います。
WSJ記事要約
新型コロナが欧州全域に広がった今年春、ドイツ政府の対応は喝采を浴びました。
しかし同政府は今、制御不能の状態に陥りかけているのではないかと懸念しています。
新型コロナによる今年前半のドイツの死亡率は、世界的に見て最も低い部類に入っていました。
病院の救急用ベッドが不足することは一度もありませんでした。
これらの状況から、ドイツ政府は欧州域内で最も緩い部類のロックダウンを行いました。
しかし現在、フランスとイタリアの新規感染者数が11月半ばのピークを下回っているのに対し、ドイツの1日当たりの感染者数と死者数は、毎週のように過去最多を更新しています。
このため医療システムは限界に近づいており、政府はより強力なロックダウン措置を強いられることになりました。
一体何が起きたのでしょうか。
科学者や政治家らは、政府関係者を含む多くのドイツ人が致命的な判断ミスを犯したと指摘します。
今年の夏、比較的浅い傷で済んだあと、自分たちは安全だと考えてしまったのだと言います。
科学者らによれば、こうした誤った認識に加え、政府が11月に実施したロックダウンが緩いものだったこともあって、全国で感染が急速に再拡大する中で社会的接触を十分に減らすことができなかった様です。
11月のロックダウンでは、すべての店舗、オフィス、工場の営業が認められていました。
ライプチヒ大学のウイルス学者、ウベ・リーベルト氏は、春の成功が「国民の間にある種の油断を生んだ」と語った。
アンケートによれば、感染者が急増している現在でも、約40%のドイツ人は自分が感染する確率が比較的低い、または極めて低いと考えていることが分かりました。
1日当たりの感染者数は12月に入ってから平均約1万8500人で、今週は3万人に迫っています。
11月より多く、春のピーク時に記録した6000~7000人をはるかに上回っています。
国内のコロナによる死者の約55%は11月初め以降に死亡しています。
ドイツが春に行った最初のロックダウンは、国内の流行の度合いに対して他国よりも早い段階で行われました。
だが今週の対策強化はウイルスがかなり拡散してから行われました。
感染者数が多いことは、多くの地域の公衆衛生機関による新規感染者の接触者追跡ができなくなり、隔離命令を出して感染の連鎖を絶つことが一層困難になることも意味します。
他の多くの欧州諸国と比較すると、ドイツの感染率と死亡率が依然として低いのは確かです。
しかし、現在は一部の病院が能力の限界に近づいています。
欧州で秋に感染者数が急増してもドイツは最悪の事態を免れるだろうという見方は、当初正しいように思われました。
9、10月にドイツで感染者数が増加したものの、そのペースがフランスや英国よりもかなり緩やかだったためです。
11月2日にロックダウンが実施された際、あらゆる店舗や学校、介護施設が閉鎖されず、外出禁止令も出されなかったのは、そのためです。
後に政治家たちはこうした措置が十分ではなかったことを認めました。
ザクセン州の地区行政官、ガイスラー氏は、最近の死者数の急増が人々の行動を変えると確信して次の様に語りました。
「春にここの死者が3、4人だった頃、死因がコロナによるものかを巡って否定論者から大きな議論が巻き起こった。現在の死者数は約250人。これは大きな数字だ」
ドイツから得られる教訓
日本もドイツ同様、コロナ対策の優等生と評価されています。
しかし、ドイツ同様油断すれば、あっという間にコロナは感染してしまいます。
この感染症の怖いところは、一旦感染が拡がり始めると幾何級数的に感染者が増大するところです。
日本がこれまで大したロックダウンも行わずに、感染を免れてきたのは、島国で外国からの感染を防ぎやすい点と、マスク着用を含め国民の衛生意識が高い事が主な理由だったと思います。
しかし、衛生意識が非常に高いドイツでさえ、この様な状況に陥ることを考えれば、過信は禁物です。
「日本は特別だ。そう簡単には欧州の様にはならない」とたかをくくっていれば、落とし穴にはまります。
ワクチンが効果を発揮するまで、ある程度経済を犠牲にしてでも、コロナ対策を続ける事が賢明と思います。
一旦、欧州の様に広がってしまえば、手のつけようがありません。
最後まで読んで頂き、有り難うございました。