フランス高級ブランドを買い漁る中国人
1980年代、フランスに留学していた頃、パリの高級ブランドを買い漁っていたのは日本人でした。
シャンゼリゼー通りのルイ ヴィトンの本店の前には、入店を待つ日本人観光客の長い列が出来ていました。
観光バスが横付けするほどの人気を博していたことを昨日のことの様に思い出しますが、今は様変わりした様です。
今年はコロナの影響でパリを訪れる観光客は激減しましたが、コロナ感染が広がる前に、パリのブティックを占領していたのは中国人観光客でした。
それでは、コロナ感染が広がり、フランスを訪れる事が出来なくなった中国人は、ブランド品を購入することを諦めたでしょうか。
どうもそうではなさそうです。
仏紙Les Echosが「La Chine, seul et immense réservoir de croissance pour les géants du luxe」（高級ブランド品の成長のための唯一且つ巨大なエンジンとなった中国）と題して記事を掲載しました。
かいつまんでご紹介したいと思います。
Les Echos記事要約
新型コロナ感染拡大により、このセクターの世界最大の顧客は、海外旅行が出来なくなり、自国内で購入を余儀なくされています。
この変化により、フランス高級ブランド各社は、中国の支店網により多くの裁量を与えることを余儀なくされています。
全く象徴的です。
4月10日に再開したエルメスの広州店は売り上げを爆発させ、1日で270万ドルを売り上げました。
中国では、コロナ収束以後、高級品市場が再び調子の波に乗っています。
旅行を禁じられた中国人（世界の顧客の33％を占める）は現在、自国で買い物をしています。
それまでは、パリ、ロンドン、ミラノの店舗の売上高がの最大3分の2を占めていました。
その結果、今年、新型コロナ感染の真っ只中に、高級品の世界市場は20％から30％に急落する一方で、中国では逆に30％から45％成長する可能性があります。
一方で、中国政府の主導の下、中国製品へのシフトも生じており、この動きは加速するでしょう。
ブランド品を専門とするMadnetwork社による研究から明らかになったものです。
彼らは次の様に語ります。
「中国では購入品の大規模な国内製品へのシフトが見られます。
中国製品は、2021年から2022年までの高級品に対する中国人の総支出の50％を占めることになると予想されています。
したがって、国内市場は2019年の2.5倍になります。
それは世界の高級市場の10%から25％に相当します。」
持続可能なファッション（素材、天然染料、リサイクル可能なパッケージなど）のリーダーである中国のブランドであるIcileはこの流れに乗りました。
2020年には、中国に275店舗を展開し、売上高を10％増加させることを目標としています。
「5月以来、エコロジーファッションを求める都会の若者からの驚異的な需要復活がありました」と、副社長であるイザベル・カプロンは強調します。
3つの工場に加えて、さらに2つの工場が建設中です。
パリでデザインワークショップを立ち上げたこのブランドは、欧州で5年以内に15店の開店を予定しています。
これは欧州の高級ブランドには当てはまりません。
欧州では、観光客不足により売上高が急落しており、投資が凍結されています。
彼らは一つの市場に過度に依存することは避けるべきですが、中国市場の急成長に対応することは必要不可欠です。
中国市場では全てがものすごく早いペースで進展します。
これまでの様にパリの本社が全てを管理するスタイルでは、市場の急成長のチャンスを掴む事は出来ません。
中国の支社に白紙の小切手を与えざるを得なくなった高級ブランドの苦悩を想像する事が出来ます。
この中国での需要回復には、投資の増加が伴います。
大きなブランドは15から20の店を開き、他のブランドは5から10の店を開くことができ、2年間でネットワークが20％から30％増加すると推定されています。
「このアジアへのシフトはリスクを表していないのですか？」 との問いには「いいえ、購入場所のシフトは長期的に固定されると信じています。 2021年半ばに観光客の復帰が見込まれているとしても、本格的な空路の再開は2025年または2026年まで期待できません。」との専門家の答えが返ってきます。
中国人のブランド信仰
日本人もブランド信仰が強いので、あまり人のことを言えませんが、中国人はよりこの信仰が強い様です。
中国市場に偽物があまりに多いせいかもしれませんが、欧州のブランドに対する思いは半端ではありません。
中国市場の重要性が高まる中で、そのうち、中国製のヴィトンやエルメスが作られる様になるのではと危惧します。
彼らの最大の武器である厳しい品質管理がこの過程で失われるとすると、ブランドにとって中国生産は諸刃の剣になりかねません。
最後まで読んで頂き、有り難うございました。
