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ジョージア州決選投票の結果がバイデン政権にもたらすもの

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民主党上院も過半数を獲得

米国上院で残された2議席を争うジョージア州の決選投票の結果が出ました。

驚くなかれ、共和党の現職2名を民主党の新人議員が破り、上院での議席は50:50で両党が拮抗する事になりました。

この場合、上院議長として副大統領のハリスが票を入れる事になりますので、上院も下院と同じく民主党が過半数を制する事になります。

上院は共和党が過半数を維持するだろうと予想されていましたので、今回の選挙結果はバイデン 氏にとっては願ってもない朗報です。

米国というのは大統領が大変強い権力を持っている様に思われていますが、実は議会も相当な権力を持ち、大統領を牽制する事が可能です。

中でも上院は次の様な権利を有しています。

  1. 上院は下院が可決した法案を否決する事ができます。即ち下院が予算案を可決しても上院は否決できるのです。
  2. 上院のみに与えられた特権として、大統領が指名した連邦政府高官や大使を承認する権限と、3分の2の表決により、あらゆる条約を批准する権限があります。

もし上院の過半数を共和党に抑えられていれば、バイデン 氏は共和党と妥協せずに、自らの閣僚を決めることさえできなかった訳ですから、今頃、バイデン 氏は小躍りして喜んでいるに違いないと思います。

今回の選挙結果と政局に及ぼす影響について、英誌Foreign Policyが「Biden’s Big Day: Likely Senate Control, Support From Pence and McConnell」(バイデン氏にとって記念すべき一日:上院での過半数確保、ペンス副大統領とマコーネル共和党院内総務からの支援)と題した記事を掲載しました。

かいつまんでご紹介したいと思います。

Foreign Policy記事要旨

バイデン次期大統領は水曜日に一連の大きな勝利を享受し、トランプ氏の終焉を加速させる可能性があります。

しかし、このプロセスは静かには進みません。

トランプ支持の抗議者たちは国会議事堂の建物に行進し、警察のバリケードを押し倒し、ペンス副大統領は議員に建物から避難する様指示を出すことを余儀なくされました。

しかし、ジョージア州での二つの決選投票の結果に基づけば、バイデン氏と民主党はホワイトハウスと下院だけでなく上院も支配するようになります。

これにより、バイデン氏は野心的な国内外の政策を推進する事が可能になるでしょう。

一方、ペンス副大統領は、選挙人団のプロセスに異議を唱えず、次の様に語りました。

「どの選挙人票を数えるべきか、どれを数えるべきでないかを決定する権限は私には与えられていないというのが私の判断です。」 

そして共和党の指導者マコーネル院内総務も、大統領選挙認定を停止するための一部の共和党員による試みに強く反対しました。

ジョージア州での決選投票の結果は、バイデン氏が富裕層への課税計画など、国内の課題を推進するチャンスを高めました。

彼はまた、法人税率と相続税の共和党による引き下げを覆そうとしています。

それでも、新大統領はこれらの問題の多くで共和党の議事妨害に直面するでしょう。

現在の規則では、議論を締めくくるには60票を上回る過半数が必です。

バイデン氏は、議員として36年間、巧みな妥協家として高く評価されていますが、増税を伝統的に嫌う共和党から激しい抵抗に直面するでしょう。

マコーネルが再び指導的地位に就くと、バイデン氏は最高裁判事と閣僚候補者の承認を取り付けるのにも苦労するでしょう。

それに加えて、上院は以前とは異なり、はるかに二極化した場所になっています。

1980年代や90年代においては、NATO拡大や刑事司法改革において共和党の支持を獲得することがよくありましたが、現在はそうではありません。

1980年代後半にバイデン 氏の外交政策顧問であったキングは語りました。

「上院は二極化しており、お金によって動かされています。マコーネルがオバマ元大統領に対してとった態度と同じ様に、この人を倒すためには何でもやると考えた場合、バイデン 氏は問題を抱えることになります。共和党にとって何としても避けたいことは、カマラ・ハリスが大統領に選出されることです。」

 

一方、過去4年間、上院共和党は外交政策の問題についてトランプ大統領に挑戦することを躊躇しませんでした。

したがって、特に、トランプ氏が大きな損害を与えたNATOとの関係修復に関しては、バイデン 氏は共和党の支援を得る事が可能でしょう。

共和党上院は、たとえばロシア、イエメン、サウジアラビアに対する制裁を支持するなど、誰よりもトランプ氏の外交政策に反対したと広く見なされています。

そして、共和党員と民主党員の両方が、アメリカの主要なライバルである中国との貿易、安全保障、人権問題において、より厳しくなることで一致しています。

それに加えて、上院の共和党は現在混乱しているようです。

退任する大統領の政策の多くを覆すことは難しいでしょうが、ユタ州のロムニー議員やアラスカ州のサス議員を始め、一部の上院共和党員はますますトランプ氏に反対することをいとわないようになっています。

先週、サス議員は大統領選挙の認証を取り消そうとするトランプ大統領とそれを支援する共和党議員を厳しく非難し、それを「危険な策略」と呼びました。

 

「実際には、バイデン氏と共和党の間で外交政策に関して合意できるいくつかのポイントがあります」と、元バイデン氏補佐官、ハルツェル氏は語りました。

「最初は、トランプ氏によって行われたNATOとの損害を修復することです。 2つ目は、トランプ氏よりも洗練されたしかも多国間的な方法で、攻撃的な中国に対抗することです。同様に、3つ目は、サイバー防衛の強化や西バルカンへの米国の関与の増加など、プーチン大統領の厄介な政策に反対し続ける事です。」

それでも、次期大統領が、トランプ氏によって拒否されたイランの核合意に再び参加しようとしたり、気候変動に対してより積極的な行動を取ろうとすると、共和党の壁にぶつかるだろうと彼は述べました。

 

貿易問題に関しては、バイデン氏は、自由貿易を支持している共和党員よりも、進歩的な陣営にいる身内の民主党員とより多くの問題を抱えるでしょう。

オバマ政権の副大統領として、バイデン氏はTPPを支持しました。

これは、民主党の中道政治家や多くの共和党員が、知的財産やダンピングなどの問題に関する世界貿易機関の規則を尊重するように中国を強制する効果的な方法と見なしたからです。

トランプ氏は、TPPから撤退し、北京に対して一方的な貿易戦争を開始しましたが、ほとんど効果がありませんでした。

しかし、2020年の大統領選キャンペーンの中で、バイデンは進歩派やポピュリストの要求に応えて劇的に方針を変え、TPPに再加盟する場合、米国でより多くの製造を必要とする「強力な原産地規則」を含めるように再交渉すると述べました。

 

新型コロナに対するトランプ氏の対応は、ホワイトハウスからの混乱の高まりと相まって、選挙で多くの共和党員を脆弱にしました。

これは結果的に、バイデン氏がインフラストラクチャの改修、追加のコロナウイルス関連の救済、州および地方政府への援助などの超党派の問題についてより多くのチャンスを得たことになります。

トランプ大統領の致命的なミス

今回のジョージア州での上院選敗北は共和党にとって大変なショックだと思います。

敗北の理由はトランプ大統領の振る舞いにあると思います。

潔く負けを認めようとしないその姿勢は、選挙による円滑な政権交代という民主主義の基本を踏みにじる行為であり、さすがに一部の共和党員もこれにはついて行けなかったのではないでしょうか。

大統領の利己的な行為は結果的に決選投票での敗北に繋がりました。

一方、バイデン 氏が自分の思う様な政策を行う事が容易になった事は喜ばしいことです。

しかし、バイデン 氏が信念の人ではなく、妥協の達人であるという点が若干気になります。

例えば、米中二国間の交渉において、気候変動の問題で中国の譲歩と引き換えに日本の安全保障上の問題を犠牲にするとか、民主党内の進歩派に妥協するために、TPPへの加入を断念すると言った可能性が危惧されます。

彼の周りには優秀なスタッフがたくさん居ますので、杞憂かも知れませんが、妥協に妥協を重ねて芯がぶれる事の無いようにお願いしたいと思います。

 

最後まで読んで頂き、有り難うございました。