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暗雲漂うオリンピック - 外国はどう見ているか

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IOCが決める開催の可否

非常事態宣言は首都圏のみならず、多くの地方自治体に拡大されました。

ワクチンの接種も未だ始まっていない日本で、本当に今夏オリンピックが開催できるのか正直言ってかなり疑問に思っている方も多いと思います。

日本政府は開催するとの意思を明らかにしていますが、厳密に言えば、オリンピックの開催の可否を決めるのはホスト国の日本ではなく、IOCです。

要すればIOCの理事たちがどう思っているかが肝心なのです。

東京オリンピックを外国人がどの様に見ているのか、米誌Foreign Policyが「Tokyo Wants the Olympics to Happen Even if the Public Doesn’t」(東京は国民が望んでいないオリンピックを実行しようとしている)と題した記事を掲載しました。

かいつまんでご紹介したいと思います。

Foreign Policy記事要旨

東京2020オリンピック・パラリンピックは、今年の7月と8月に延期されましたが、このイベントは、日本の最高の姿を示し、世界がコロナ感染が峠を越すことを祝うものになるでしょうか、はたまた、日本人の多くがキャンセルを望み、何千人ものアスリートや観客がコロナウイルスの危険にさらされる不必要なイベントになるのでしょうか。

公式には、今年の夏、開催されることになっています。

菅首相は新年のメッセージで、オリンピックは「世界の統一を象徴する」

「安全・安心なイベントを実現するために、準備をしっかり進めていきます。」と述べました。

彼は、再度非常事態宣言を発したにもかかわらず、自信を持っています。

国際基準によると、その措置は驚くほど緩やかなままです。

人々は不必要な旅行を避けるように奨励され、テレワークを促され、レストランやバーは午後8時までに閉店するように求められています。

 

オリンピックのもう一人の熱心な支持者は、小池都知事です。

彼女は、アジアのハブとしてのかつての栄光を東京に取り戻そうとしています。

中国の締め付けのため、香港の魅力が薄れ、シンガポールが外国人にとっても高額になりすぎたため、東京はハイテク企業やフィンテック企業を対象としたマーケティングプログラムを開始しました。

彼女にとってオリンピックはその一端を披露する最高のチャンスなのです。

 

小池氏や他の政府関係者は、オリンピックに懐かしさを感じています。

1964年の東京オリンピックは、今日でも日本のターニングポイントとして語られています。 

しかし、あまり注目されていないのは、この時に作られた道路など多くのインフラが耐久性に欠けていた事です。

また、経済成長が環境よりも優先されたため、当時のアスリートがひどく汚染された空気に対処しなければならなかったという事実もめったに触れられません。

 

今回、オリンピックの開催に反対する人はたくさんいます。

テンプル大学のキングストン教授は、オリンピックを強行する事は「クレイジー」だと語りました。

彼は、日本の予防接種は3月まで開始される予定もないと述べました。

また、アスリートには予防接種は必須ではありません。

多くの貧しい国々で危険にさらされている高齢者などが、ワクチン接種を待っている時に、健康な若者にワクチンを提供するという倫理的な問題もあります。

批判は彼だけではありません。共同通信による1月10日の世論調査では、計画通りに進めるべきだと答えたのは14%に過ぎませんでした。

35%が中止を望んでいる一方、45%は再度の延期を求めていることがわかりました。

ただし、世界最大のスポーツイベントを再延期することは選択肢のようには見えません。

組織委員会の森喜朗前首相は1月12日、これ以上の遅延は不可能だと述べました。 

 

国民の支援が弱い点は、東京大会にとって新しい問題ではありません。

しかし、当初の世論調査では、東京の人々の47%が支持していましたが、昨年7月の調査では支持率は24%に低下しました。

否定的な見方は、冬に再び新型コロナ感染者が増加する中、広がっています。

 

批評家が提起したもう1つの問題は、オリンピックの費用が上昇し続けていることです。

当初の入札では、日本は73億ドルの費用で「コンパクトな大会」を売り込みました。

これは、約150億ドルのロンドン2012大会から大幅に減少しました。

遅れやその他の問題により、東京組織委員会は現在、総支出を154億ドルとしていますが、実際の数字ははるかに高いとされています。 

主催者はまた、アスリートやスポーツイベントに絞り込む事ででコストを削減しようとしていると述べています。

森委員長は、観客なしで試合を進めることができると語りました。

彼は、これが過去1年間でスポーツ界の標準になったと述べました。

 

無駄を削ぎ落としたオリンピックは将来の前触れであり、オリンピックの多額の財政的および社会的負担に耐えることができる都市がまもなくなくなるだろうと言う人々への答えかもしれません。

何年もの間膨大な紙幣を印刷している国にとってみると、オリンピックの追加コストは取るに足らないものです。

今年度の政府による借入額は約1兆8000億ドルと見込まれ、リーマンショック後の2009年の過去最高額の2倍以上になり、世界で最も負債の多い政府(GDPの約230パーセント)の負債を更に増大させるでしょう。

もしオリンピックが中止されると、次の世界的なスポーツイベントは、北京で開催される2022年の冬季オリンピックとなります。

それは日本が見たくないアジアのライバルへのバトンパスであり、数十億ドルは支払うべき小さな代償です。

 

しかし、オリンピックの最終的な運命は、日本にかかっているわけではありません。

昨年3月にオリンピックを延期するという決定は、いくつかの国際競技連盟が参加しないことを明らかにした後に行われました。

感染対策のために幾つかの競技の開催を中止したとしても、東京オリンピックそのものが中止される可能性があります。

オリンピックの運命

オリンピックはこれまで、何度も危機に晒されてきました。

第二次世界大戦直前には、東京オリンピックが中止になり、1980年にはソ連がアフガニスタンに進攻した事に抗議し、多くの西側諸国がモスクワオリンピックをボイコットしました。

ミュンヘンオリンピックでは、イスラエルの多くの選手が選手村でテロリストによって殺害されました。

しかし、オリンピックはこれらに耐えてきました。

今度の敵はコロナウイルスですが、これは相当な難敵だと思います。

もし、東京オリンピックが中止される様な事になると、コロナ感染者が国際的に見ると比較的少ない日本でさえ、開催できないという事になります。

新しい感染症は今後も出現すると思われ、そうなると開催国に手を上げる国はいなくなり、米国のテレビ局など巨大なスポンサーも手を引くでしょう。

これはオリンピックにとどめを打つ事になると思われます。

 

最後まで読んで頂き、有り難うございました。