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脱炭素時代がもたらす銅価格の急騰

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意外に好調なコロナ下の世界経済

新型コロナの感染が始まった昨年の今頃は、この感染症が世界経済に与える後遺症に対する悲観論が主流でした。

リーマンショックを超える大不況が世界を襲うと唱える人も多く、それが何時来るかというのが関心事でした。

しかし、今やその様な悲観論を唱える人は少数派です。

米国をはじめとする先進国で大規模な財政支出が行なわれた結果、経済は崩壊するどころか株価など経済指標はむしろオーバーヒートの兆しさえ見せています。

ここで気になるのはインフレですが、最近銅の価格が急上昇しています。

銅市況は「Dr. Cupper」と呼ばれて、世界経済の状態を診断するのに良く使われる指標です。

最近の銅価格の上昇に関して、英誌Economistが「The broader lesson from booming copper prices - Shortages in commodity markets offer a paradigm for the post-virus economy」(銅価格の高騰から得られる幅広い教訓 - 商品の不足は、コロナ後の経済のパラダイムを提供する)と題した記事を掲載しました。

かいつまんでご紹介したいと思います。

Economist記事要約

商品市場は、冷え込みの兆候をほとんど示していません。

鉄鉱石の価格は過去最高です。 アメリカの住宅ブームは、木材価格を新たなピークに押し上げました。

トウモロコシと大豆の価格は2013年以来最高です。

ボトルネックはいたるところにあります。

トウモロコシの生産は、乾燥した天候によって打撃を受けています。

工業用金属の供給は、コロナで打撃を受けた南米の鉱山での生産の遅れにより抑制されてきました。

典型的な例はであり、産業や建設で幅広い用途があります。

「DrCopper」は、世界経済の重要な変化を診断する能力があるため、市場で注目されています。

そして5月7日、その価格はロンドン金属取引所で過去最高に達しました。

 

欧米の財政刺激策は、経済の緑化に大きく傾いており、それが銅需要に有利に働きます。

より大きな疑問符が供給能力にかかっています。

銅が新しいスーパーサイクル(何年かに一度度訪れる長期の上昇局面とその後の下降局面)に入るのではと予測する向きもあります。

一部のアナリストは、現在の銅不足が構造的な問題であると信じています。

ゴールドマンサックスからの最近のレポートによると、銅が新しいスーパーサイクルに入り、需要が供給を上回る長い期間に入るため、価格は2025年までに1トンあたり15,000ドルに上昇すると予測されています。

急速な需要の伸びに拍車をかけるのは、今世紀最初の10年間にスーパーサイクルを生んだ中国の都市化からではなく、より豊かな国々の緑化からです。

柔軟で費用効果の高い熱と電気の伝導体として、銅はグリーンテクノロジーへにおいて重要な素材です。

電気自動車の製造には、ガソリン車の4〜5倍の銅が必要です。

銅は、EV充電ステーションのケーブル、およびソーラーパネルと風力タービンにも使われます。

現在、銅の「グリーン」関連需要は年間100万トン、つまり供給量のわずか3%です。

ゴールドマンサックスは、2030年までに540万トンに達すると考えています。

 

世界最大の原材料消費国である中国の政策立案者は、すでにブレーキをかけ始めてています。

中国で需要が盛り上がらなければ、スーパーサイクルはあり得ません。

そして、高い商品価格はしばしば彼ら自身の宿敵です。

農産物の価格を抑えるためには、より多くの作物を育てれば事足ります。

石油市場では、価格が許せばシェールオイルの生産量が増加する可能性があります。

しかし、銅の供給ははるかに柔軟性がありません。

既存の銅鉱山の生産量を拡大するには2〜3年かかり、新しい銅鉱山を開発するには10年以上かかります。

また、2010年代初頭のコモディティの破綻に見舞われた鉱業会社は、新たな供給への投資よりも配当の支払いに重点を置いてきました。

「資本規律」は業界のスローガンです。この考え方を打ち砕くには、銅価格のさらなる上昇が必要です。

 

中央銀行の見解は、今日の供給不足は一時的なもので、インフレは一時的なものになるだろうというものです。

最近の歴史は彼らが正しかった事を示しています。

供給の問題は一般的にインフレを生じませんでした。

しかし、過去の成長の遅い景気循環で形成された資本規律の習慣は、活況を呈している経済には明らかに適していません。

今後、銅の価格推移は、供給が需要にどれだけ対応しているかを示すでしょう。

Dr,Cupperの最も重要な診断はまだこれからです。

忍び寄るインフレの影

各国政府は景気刺激策や救済策として大量のお金を市場に流通させました。

この膨大なお金は行き場を求めて、株式市場や商品市場になだれ込んでいるものと思われます。

これが一時的なものであれば良いのですが、既にニュージーランドなど一部の国では不動産市場の急騰などインフレが生じ始めています。

最近の市場の流れは、上記の政府財政出動だけでなく、バイアメリカに代表されるグローバリゼーションへ逆行する動きとか、労働者の賃金上昇に理解のあるバイデン 政権の誕生等もあり、インフレが生じる条件がいくつも整いつつあるので心配です。

それにしても、脱炭素の時代に銅は時流に乗った素材と言えそうですね。

再生可能エネルギーに大量の銅を使うとは知りませんでした。

風が吹けば桶屋が儲かるといいますが、まさに風が吹けば銅屋が儲かると言えそうです。

 

最後まで読んで頂き、有り難うございました。