減速する中国経済
中国経済は今年減速を記録しました。
日経によれば、第3四半期の成長率が4.9%に低下した様です。
日本の成長率に比べれば相当高いですが、高成長が当たり前の中国ではこれは急ブレーキがかかった様な印象を国民に与えていると思います。
この経済原則の原因は何でしょうか。
英誌Economistが「A triple shock slows China’s growth - Power cuts, the pandemic and a property slowdown: all have taken a toll」(トリプルショックが中国の成長を遅らせる:停電、パンデミック、不動産の減速)と題した記事を掲載しました。
かいつまんでご紹介したいと思います。
Economist記事要約
中国の発電量のほぼ3分の2を占める石炭の不足は、ここ10年で最悪の停電の一因となっています。
そして、停電は中国の成長を減速させました。
中国経済は、停電だけでなく、不動産開発者であるエバーグランデの財政難によって生じた不動産市場の悪化及び悪化したパンデミックという三重のショックに見舞われました。
10月18日に発表された数字は、第3四半期の経済成長のペースが前年と比較して4.9%に低下したことを示しています。
9月の工業生産は前年比3.1%の伸びにとどまり、世界金融危機以降最も低くなりました。
最初にエネルギー危機を見てみましょう。
石炭不足の原因は、構造的および偶発的な二つのカテゴリーに分類されます。
不測の事態には、7月の河南省と今月の山西省での洪水が含まれ、一部の鉱山が閉鎖を余儀なくされました。
さらに、中国の石炭生産量の約4分の1を占める内モンゴルでは、以前に採炭の拡大を承認した当局者の一部が汚職に関与した事から、動きが取れなくなっています。
中国で3番目に大きな石炭生産国である陝西省は、習近平大統領が出席した9月の全国陸上競技イベントに向けて、空をきれいに保つために生産を遅らせました。
また、昨年全国で100件以上の労働災害が発生した後、976の鉱山を精査した安全検査官によっても採炭の拡大が抑制されています。
石炭危機のより深刻な理由は、大気汚染による無数の犠牲者と炭素排出の大部分の原因となっている燃料への依存を減らそうという中国の政策が背景にあります。
エネルギーコンサルタントのフィッシュマン氏は、「明らかにバスを間違った方向に運転している。当局は近年、新しい鉱山や既存の鉱山の拡張を承認することを躊躇しています。」と語ります、
供給が逼迫すると、価格が上昇することになり、顧客は消費を節約する必要があります。
しかし、石炭の価格高騰に起因する高い発電コストを、発電所は転嫁することができませんでした。
電力の大部分を購入するグリッド会社に請求できる価格は、めったに変更されない規制価格を最大10%上回って変動するだけでした。
また、エンドユーザーが支払う料金は、同様に柔軟性のない国の指定価格に基づいていました。
一部の発電所は単に運転を停止し、発電することを拒否しました。
経済へのもう一つのショックはパンデミックから来ました。
7月に南京で始まったクラスターの発生は、局地的な封鎖を促し、小売支出、特に飲食と旅行を抑制しました。
旅行サイトのFlightMasterによると、航空会社は、9月にはその3分の2しか運航していませんでした。
最後のショックは、成長、雇用、金融の永続的な原動力である不動産セクターに生じました。
規制当局は、マンションの投機的な需要を抑制し、住宅建設業者の過剰な借り入れを制限しようとしています。
経済的リスクを制限するためのその試みは、いくつかの既存の会社に危機をもたらしました。
負債が3,000億ドルの巨大な開発者であるエバーグランデは、9月24日にドル債の支払いを行わいませんでした。
現在、一部の住宅購入者は、るプロジェクトの完工前に開発者に現金を渡すことに神経質になっています。
このような状況を背景に、中国のデベロッパーは今年9月に開始した住宅の数が前年より13.5%少なくなり、床面積で測定した売上高も同様の割合で減少しました。
さまざまな産業にとっての不動産市場の重要性を説明するかのように、セメント(昨年と比較して9月に13%減少)と鉄鋼(14.8%減少)の生産の急激な減少を報告しました。
10月15日の記者会見で、中国の中央銀行は、Evergrande社の問題を健全な業界における特異な事例として説明しました。
ほとんどのエコノミストは、中国の前年比成長率は、今年の最後の3か月でさらに減速し、4%以下になると考えています。
中国は新型コロナに対する厳しい措置を維持し、不動産の低迷はさらに続くに違いありません。
中国経済の高度成長は持続可能か
中国経済は今後これまでの様に高度成長を続けていけるでしょうか。
Economist誌はかなり否定的ですが、これは中国を目の敵にする最近の欧米メディアの風潮が影響しています。
しかし、その点を割り引いて考えても、中国経済は現在大きな壁に直面している様に思います。
Economistが取り上げた三つの危機は全てに共通点があります。
それは中央政府が介入して問題を解決しようとしている点です。
北京の優秀な官僚は、自分たちが解決すれば全ては解決すると自信を持っていると思いますが、彼らの下手な介入は、エネルギー価格の高騰を招き、不動産市場を混乱させています。
中国経済は市場経済を積極的に取り入れていますが、市場経済の自律的な調整機能を阻害する様な介入は逆効果となります。
新型コロナ対策についても、中央政府は厳格な隔離政策をとっており、外国人は入国に際して、長期間収容所で隔離生活を余儀なくされます。
これも中央政府の政策ですが、外国との交流を事実上放棄する様な政策は、経済に悪影響を与える事は間違いありません。
中国の現在の問題は、中央政府が自らの介入をいかに自制できるかにかかっている様なきがしますが、自信満々の官僚たちは今後も介入を繰り返す事になると予測されます。
最後まで読んで頂き、有り難うございました。