人類の祖先はアフリカに出現
昨年読んだ本の中で最も印象に残ったのはユヴァル・ノア・ハラリの『サピエンス全史』でした。
この本によれば、人類の祖先は東アフリカに出現したそうです。
既にその頃には他の類人猿も生息していたのですが、ホモサピエンスだけが生き残りました。
その理由についてもこの本では丁寧に説明しています。
アフリカで人類の祖先が生まれたという事実を認めたがらない人たちも存在します。
そんな人たちが一番多いのではと思われる英国の雑誌Economistが最近始まったアフリカでのゲノム解析プロジェクトに関して「Why the African genome project is so useful」アフリカのゲノムプロジェクトが有益な理由)と題した記事を掲載しました。
かいつまんでご紹介したいと思います。
Economist記事要約
人種差別について最も気のめいることの一つは、それが極めて表面的であるということです。
世界のほとんどの地域で、それはつまるところ白黒の問題でしかありません。
ただし、人の肌の色には生物学的意義はほとんどありません。
それは、真皮を癌の原因となる紫外線から守ることと、ビタミンDの合成における紫外線の有益な役割を促進することの間の単なるバランスです。
祖先が赤道から遠く離れるほど、彼らの肌は薄くなりました。
しかし、十分に遡ると、すべての祖先は、ホモサピエンスが生まれた大陸であるアフリカに住んでいました。
今日生きているほとんどの非アフリカ人は、彼らの祖先を、約6万年前のアフリカ人にまでさかのぼります。
確かに、英国で見つかった種の最も古いものは、彼のアフリカの先祖の暗い肌を保持していました。
アフリカは人類が育った場所であり、今日まで人間の遺伝的多様性の大部分が見られる場所です。
アフリカの遺伝的豊かさを探求する真剣な取り組みが始まりました。
大陸全体の取り組みである300万アフリカゲノム(3MAG)プロジェクトは、ヨーロッパ、北アメリカ、およびアジアの一部ですでに行われていることをアフリカで行うことを提案しています。
つまり、そこに住む人々の遺伝的多様性をカタログ化して分析することです。
それは、ホモサピエンスがどのように進化したかを解明するのに役立つため、科学的に魅力的です。
しかし、それは医学的にも重要です。
それは人種差別の白黒の言い訳を封じるのを助けるかもしれません。
遺伝的多様性は、遺伝性疾患の多様性をもたらします。
嚢胞性線維症は、ヨーロッパよりもアフリカではまれですが、ヨーロッパ版とは異なる突然変異によって引き起こされることが多く、したがって、西洋で開発されたテストでは見逃されてしまいます。
ガーナで遺伝性難聴の40%を占める突然変異は、南アフリカでは見つかりません等々。
それはまた、病気に対する多様な遺伝的反応をもたらします。
たとえば、免疫系のいくつかの分子の詳細は、地理的に異なります。
アフリカでの突然変異を理解することは、感染に対する免疫の理解を向上させ、アフリカ人と非アフリカ人双方に有益です。
より多くの遺伝情報は人類の進化にも光を当てるでしょう。
アフリカからの初期のホモサピエンスの移民は、旅行中に他の種の人間に遭遇しました。
これらの他の種の人間のうちの少なくとも2つ、ネアンデルタール人とデニソワ人は新参者と交配し、それらの遺伝子のいくつかは現代のアジア人とヨーロッパ人にまだ見られ、病気から彼らを守ることを含むさまざまな仕事をしています。
予備的な分析によると、アフリカに残された人々は、同様にさらに別の種の人間と交配しましたが、そのうちの1つは化石の記録が残っていません。
これには皮肉があります。
外国人排斥は、おそらく人々がいる限り存在してきました。
しかし、人種差別主義者の議論は、19世紀に自然人類学と優生学への熱意によって強化されました。
前者は、遺伝的に受け継がれている肌の色、頭の形、顔の特徴などの目に見える特徴に基づいて人間を分類しようとしました。
彼らは分類するだけでなく、ランク付けしました。
白人のヨーロッパ人は自分たちを一番上に置き、黒い肌のアフリカ人は一番下に置きます。
そのミックスに優生学を追加すると、結果は非常に有毒なものになりました。
3MAGプロジェクトは、単独で、これらの不幸な遺産と彼らが強化した偏見を覆すことはできません。
それらを生み出した思考は、まだあまりにも多くの人の心に深く根付いています。
しかし、心を開いている人々にとって、21世紀のアフリカの科学者のグループは、人間の真の輝かしい遺伝的多様性が他のどの大陸よりも豊富に自分たちの大陸にあることを明らかにし、誤った方向に進んだビクトリア朝時代のヨーロッパの紳士の教義に対する見事な反論となるでしょう。
研究結果に大きな期待が
面白いですね。
アフリカでのゲノム分析が進めば、人類がどの様に生まれ、それがどの様に進化したかかなり詳細に分析できるというわけです。
これはヒトラーが唱えたアーリア人種最優秀説を木っ端微塵に打ち砕いてくれるかも知れません。
ゲノム分析は人種差別論者に科学的反論をあたえるだけでなく、様々な遺伝性疾患の原因追及も可能になると言うのですから一石二鳥です。
アフリカ人は新型コロナの感染度が他地域に比べると低いと言う統計的データが出ていますが、その理由も解析してくれるかも知れません。
ゲノム分析は一つ間違えば、遺伝子組み換えなど害をもたらす可能性もありますが、今回の3MAGプロジェクトにそんな懸念は不要の様です。
最後まで読んで頂き、有り難うございました。