欧州からの入国を原則禁止する米国
新型コロナの世界的な感染拡大そして様々な変異株の出現は世界の旅行業界に空前絶後の打撃を与えました。
筆者もコロナ渦で日本に長期間の足止めを余儀なくされています。
いつになれば、昔の様に自由に世界中を飛び回る事ができるのでしょうか。
ワクチンの出現は朗報です。
しかし、ワクチンパスポートについては、各国の取り上げ方がばらばらで、米国はワクチン接種が進んだEUや英国からの入国を原則禁止しています。
英誌Economistが「Most covid-19 travel restrictions should be scrapped」(殆どの新型コロナに関する渡航制限は廃止すべきだ)と題する記事を掲載しました。
かいつまんでご紹介したいと思います。
Economist記事要約
海外からの観光客の到着は、パンデミックの前に比べて85%減少しています。
世界の国境のほぼ3分の1は閉鎖されたままです。
パンデミック以前は、旅行産業は先進国のGDPの4.4%、雇用の7%近くを占めていました。
タイやカリブ海などの観光スポットでは、この比率は更に高かったのです。
ビジネス旅行者は、企業のために新しい市場を征服し、同時にコンシェルジュとタクシー運転手の雇用を創出しました。
留学生は、キャンパスに異なる視点をもたらし、新しいアイデアを故郷に持ち帰りました。
昨年、約2億8000万人が生まれた国の外に住んでいました。
国境の閉鎖はしばしば彼らが愛する人を訪問することを不可能にしました。
WhatsAppを介して死にかけている両親に別れを告げる人もいます。
今日の渡航禁止令は、外から入ってくるコロナに対して住民を保護することを目的としていますが、うまく機能していません。
いくつかの国、主に島国と独裁政権は、厳格な制限を通じてウイルスを防ぐことに成功しましたが、一方で迅速にワクチン接種を行うインセンティブを失うという点で犠牲を払っています。
たとえば、英国人の68%と比較して、ニュージーランド人は21%しかワクチン接種されていません。
したがって、孤立させる方策を取った国々は、再び国境を開けるのが難しくなっています
ほとんどの国は非合理的なルールを採用しました。
アメリカは、最も近い同盟国かつ貿易相手国であり、世界で最もワクチン接種が進んだ地域である英国とEUからの旅行者を禁止し、デルタの変異種が蔓延している東南アジアからの旅行者を受けれいています。
タイは一部の国からの入国を禁止しており、他のすべての旅行者は2週間の検疫を受ける必要があります。
しかし、8月10日に特定された21,038人の新規感染者のうち、輸入されたのは19件のみでした。
ウイルスの変異種が地元の人々に広がり始めると、感染は数週間ごとに倍増します。
入国禁止は、感染者の増加にほとんど影響を与えません。
多くの国がワクチン接種を受けた旅行者の入国を容易にし始めています。
これは良い考えですが、まずいやり方で実施されています。
いくつかの国は、彼らが認めるワクチンの種類について不必要にこだわります。
インド製のアストラゼネカワクチンを市民に約500万回注射した英国は、同じワクチンを接種したインド人の検疫を免除することを拒否しています。
英国は他の国にワクチンを寄付しましたが、そのワクチンを接種された人々を免除することはありません。
しばらくの間、中国は中国製のワクチンを投与された人だけに立ち入りを許可しました。
世界的な旅行を規制するより良い方法があります。
最初の原則は、デフォルトで国境を開放することです。
これはすべてを自由にすることを意味するものではありませんが、新しい変異種の国内への侵入を遅らせる事に的を絞り、完全にシャットアウトすると言う不可能な目標設定はやめた方が良いです。
デルタはどこにでもあるので、そのような変異種の感染が一旦国内で始まれば、制限は無意味になり、廃止する必要があります。
2つ目は、すべての国が世界保健機関によって承認されたワクチンを受け入れることです。
どのワクチンを接種するかを選択できる人はほとんどいません。
ロシアのスプートニクVワクチンをを受けたフィリピン人だけを禁止し、ファイザーを打ったフィリピン人を受け入れると、旅行は宝くじに変わります。
選択の余地のないことに基づいて人々を差別することは不公平です。
また、一部のワクチンを二流のように見せることで、世界的なワクチン接種の取り組みを弱体化させています。
3つ目は、ルールに透明性があり普遍的であることです。
多くの場合、政治的便宜が科学に勝っています。西側諸国が世界の残りの国々を締め出すのであれば、締め出された国々はそれに気づき、決して忘れないでしょう。
移動の権利は、すべての自由の中で最も貴重なものの1つです。
制限が明らかに命を救う場合にのみ、採用する必要があります。
そして安全になったらすぐに撤廃する必要があります。
それは今やるべきです。
ワクチン接種の必要性
国境を原則開放しようという上記記事に完全には同意できませんが、世界中がワクチンの接種を進め、同じ基準で世界中を渡航できる様にすると言う点には同意できます。
そのためには、一にも二にもワクチン接種を世界規模で加速化する必要があります。
現在、先進国と発展途上国の間にはワクチンの接種率に大きな差があります。
インド由来のデルタ株が世界を席巻した様に、今後アフリカなどから新たな変異株が生まれる危険性があります。
ワクチンの接種は、その様な危険な変異株にかかった際の重症化を防ぐのみならず、発展途上国で新たな変異種の発生を未然に防ぐと言う効果もあります。
先進国だけでなく、発展途上国にもワクチン接種は必要です。
最後まで読んで頂き、有り難うございました。