ロシアの真の狙い
台湾海峡が米中の対決の舞台とすれば、ロシアと西側の戦いの場は現在ウクライナです。
ロシアはウクライナ国境に10万人の兵を集結させ、ウクライナに脅威を与えているというのが西側メディアのもっぱらの報道ですが、実態はどうなっているのでしょうか。
米誌Foreign Affairsが「What Putin Really Wants in Ukraine - Russia Seeks to Stop NATO’s Expansion, Not to Annex More Territory」(ウクライナに関してプーチンが本当に望んでいること - 領土の併合ではなく、NATOの拡大の阻止が狙い)と題した記事を掲載しました。
かいつまんでご紹介したいと思います。
Economist記事要約
2021年が終わりに近づくと、ロシアは、ウクライナでの大規模な軍事紛争の可能性を食い止めるために必要な条件を米国に提示しました。
ロシア政府は、旧ソ連領土におけるNATOの東方拡大の正式な停止を求めました。
ウクライナへの西側の軍事援助の終了、およびヨーロッパにおける中距離ミサイルの禁止等メッセージは明らかでした。
これらの問題に外交的に対処できない場合、ロシアは軍事行動に訴えざるをえないと主張しています。
ロシアは10万人近くの軍をウクライナとの国境に派遣しました。
米国と他のNATO諸国はロシアの動きを非難しましたが、同時に、NATO加盟国ではないウクライナを軍事的に守る事はないと発表しました。
プーチンの引くレッドライン(超えてはならない一線)
西側とロシアがウクライナに帰する重要性には、大きな非対称性があります。
西側諸国は2008年にNATO加盟の見通しをウクライナまで拡大しましたが、正式な加盟予定はありませんでした。
結局のところ、ウクライナのために軍隊を配備することに対して、米国国民の支援はほとんどないでしょう。
対照的に、ロシアはウクライナを重要な国家安全保障上の利益として扱い、その利益が脅かされた場合に軍事力を使用する準備ができていると公言しています。
これは、ロシアのウクライナ侵攻が差し迫っていることを意味するものではありません。
プーチンを無謀な指導者として描写したがる西側メディアが多いですが、彼は実際、力の使用に関しては慎重です。
プーチンはクリミアやシリアでの作戦でわかる通り、リスク回避的ではありませんが、損得の計算はしっかりします。
彼は、単にその指導者が西側を向いているからという理由で、ウクライナを侵略することはありません。
とは言うものの、ロシアがウクライナに軍事侵攻するシナリオがいくつかあります。
2018年、プーチンは、ウクライナがドンバス地域の領土を力で取り戻そうとすると、軍事的対応を行うと公に宣言しました。
もう1つのロシアのレッドラインは、ウクライナのNATOへの加盟、またはその領土への西側の軍事基地と長距離兵器システムの配置です。
プーチンはこの点で決して妥協しません。
しかし、今のところ、ウクライナをNATOに加盟させることについて、米国や他のNATO加盟国からの支持はほとんどありません。
ロシアがウクライナに侵攻する様な事になれば、ヨーロッパを超えて大きな影響を与える可能性があります。
より厳しい西側の経済制裁および金融制裁が予想され、ロシアは中国に頼るかもしれません。
プーチン大統領と習近平主席は、米国の制裁から自国を守るための財政的メカニズムについてすでに話し合っています。
その場合、2022年2月の冬季オリンピック時のプーチンの中国訪問は、表敬訪問以上のものになる可能性があります。
そうすれば、米国は現在の中国とロシアの関係がより緊密な同盟に変わるのを見る事になるでしょう。
西側ではウクライナ国境近くのロシア軍の増強に焦点が当てられてきましたが、これはNATO諸国が黒海地域とウクライナでの軍事活動を拡大したときに起こりました。
6月、イギリスの駆逐艦がクリミア沖の領海を航行しましたが、英国はクリミアがロシアに属していると認識せず、ロシア軍の発砲を促しました。
緊張が高まるにつれ、西側の軍事顧問、インストラクター、武器、弾薬がウクライナに流れ込みました。
プーチン大統領が彼が気にかけているのはウクライナへのNATO拡大を防ぐことです。
プーチンの行動は、彼の真の目標がウクライナを征服してロシアに吸収することではなく、ヨーロッパ東部の冷戦後の体制を変えることであることを示唆しています。
彼がNATOをウクライナ、ジョージア、モルドバから遠ざけ、米国の中距離弾道ミサイルをヨーロッパから遠ざけることができれば、冷戦が終わった後にロシアの安全保障が受けた損害の一部を修復できると彼は考えています。
それはプーチンが2024年に再選されるために役立つ事になるでしょう。
最後の砦ウクライナ
ロシアはペレストロイカ以降、旧ソ連時代その衛星国だった中東欧の国々をNATO側に取り込まれ、元は同じ国であったバルト三国も同様にNATOに加盟してしまいました。
過去に西側の国々に散々蹂躙されたロシア人にとって、ウクライナとベラルーシは最後に残された砦であり、これらがNATOに取り込まれる事は絶対避けたい事態なのだと思います。
それにつけても、欧米の送り込む「軍事顧問」という名称の怪しげなプロ集団の存在が気になります。
彼らは多くの紛争地域に送り込てきましたが、戦争で食っている人たちですので、戦線拡大に走りがちです。
彼ら傭兵軍団が雇い主の思惑とは裏腹に、戦線を拡大してしまうリスクは誰がとるのでしょうか。
軍事顧問は過去にベトナムやイラクやアフガニスタンにも送り込まれました。
非常に心配です。
バイデン 政権としては、プーチン政権と会話を続けるべきでしょう。
ロシアが中国と組んだ場合、相当やっかいです。
プーチン大統領とは休戦協定を結び、主たるライバルである中国と向き合うのがとるべき手段かと思います。
ウクライナは米国にとって核心的利益ではありません。
最後まで読んで頂き、有り難うございました。