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コロナが残した爪痕

医療システムに今も残る影響

コロナは中国を除いて、峠は超えた様に思われます。

筆者が現在滞在しているトルコでは、もはやマスクをしている人はほとんど皆無で、地下鉄乗車時に筆者がマスクを着用しようものなら、この人何やっているんだという様な視線が飛んできます。

しかしどうもコロナはいまも医療システムに大きな影響を及ぼしている様です。

英誌Economistがこの点について「Why health-care services are in chaos everywhere - Now is an especially bad time to suffer a heart attack」(世界中で医療サービスが混乱している理由 - 今心臓発作を起こしてはいけません)と題した記事を掲載しました。

かいつまんでご紹介したいと思います。

Economist記事概要

パンデミック時の都市封鎖(ロックダウン)には、医療システムが崩壊するのを防ぐという 大きな目的がありました。

各国政府は、感染拡大の間隔を空け、病院の受け入れ能力を再構築するための時間を稼ごうとしました。

現在、中国以外では、コロナは人々の心にあまり重くのしかかっておらず、もうコロナは終わった様な印象を受けます。

しかし先進国の多くでは、この病気が蔓延し始めて以来、どの時点よりも医療制度が崩壊に近づいています

失業率や国内総生産(GDP)とは異なり、各国のヘルスケア パフォーマンスに関する比較可能な数値はほとんど手に入りません。

そのため、少誌は、国、地域、さらには個々の病院によって作成された統計を調べて、何が起こっているのかを分析しました。

その結果は、患者、医師、看護師がパンデミックの残酷な後遺症を経験していることを示唆しています。

 

高品質のデータが入手可能な英国から始めます。

国営の国民保健サービス(NHS)は、悲惨な状況にあります。

パンデミックが発生する直前に、脳卒中や心臓発作など緊急の患者が救急車を待つ時間は約20分でした。

現在、彼らは 1 時間半以上待っています。

患者の入院を決定してから病棟に到着するまでの長い「トロリー待機」の数は急増しています。

 

他の国では統計はそれほど包括的ではありませんが、同様に悲惨な状況の様です。

2020 年初頭に新型コロナウイルス患者が殺到したイタリアの病院は、再び苦境に陥っています。

ペルガモ市内で乳房超音波検査を必要としている人は、最長で 2 年間待たなければならない様です。

カナダでは、待機時間は史上最高に達し、紹介から治療までの平均待ち時間は半年です。

最もリッチで有能なシステムでさえ、困難に直面しています。

スイスでは、パンデミックのいかなる時点よりも無料の集中治療室のベッドが少なくなっています。

ドイツでも同様の問題が発生しており、患者の急増により集中治療室の収容能力が低下しています。

シンガポールの患者は、2021 年末にはクリニックで診察を受けるまでに約 9 時間待っていましたが、2022 年 10 月には、患者は 13 時間待たされています。

アメリカでも平均病院稼働率が初めて80%を超えました。

パンデミックの最悪の時期でさえ、小児病棟がストレスにさらされていると報告した州はほとんどありませんでしたが、 11月初旬には、17の州がその様な状況に陥っています。

 

医療の質の低下は、通常の年に予想されるよりも多い「超過死亡」の驚くべき増加をもたらしました。

多くの先進国では、2022 年は 2021 年よりも致命的であることが証明されました。

現在、ヨーロッパ全体での毎月の死亡者数は、予想よりも約 10% 高くなっています。

ドイツは死亡率が大幅に上昇している最中です。

9 月以来、毎週の死亡率は通常より 10% 以上高くなっています。

12月初旬には23%高かった。

 

何が起こっているのでしょう?

国レベルでも地域レベルでも、政治家が責任を負っています。

しかし、混乱を引き起こしている要因は国を超えて共通しています。また、少なくとも短期的には、政府が克服することはほとんど不可能かもしれません。

OECD 諸国では、パンデミック前は 9% を下回っていた医療費が現在、GDP の 10% を大きく下回ることはありません。

ほとんどすべての国が 2019 年よりも GDP に占める支出を増やしています。

人口の高齢化に合わせて数値を調整しても、これらの調査結果に意味のある変化はありません。

 

したがって、医療制度が直面している差し迫った問題は、現金不足が原因ではありません。

 ほとんどすべての豊かな国で、これまで以上に多くの人々が医療に従事しています。

2021 年の病院での総雇用は、調査した 6 つの OECD 諸国のパンデミックの前の年よりも 9% 増加しました。 

おそらく、本当の問題はスタッフの数ではなく、彼らがどれほど効率的に働いているかです。

ケンブリッジ大学のダイアン・コイルによる最近の論文は、英国におけるコロナ対策の影響を考察しています。

保護キットを交換するための「着脱」プロトコルと、新型コロナウイルス感染症の患者に対処した後の清掃要件の両方が、今日でも多くの国で実施されているため、すべてが遅くなります。

コロナと通常患者の分離により、ベッドの割り当てが制限されます。

 

一方、医療スタッフは 3 年間の厳しい年月を経て「燃え尽き症候群」となっている人も多いです。

医療従事者が疲れ果てている場合、彼らのサービスの質は低下します。

 

生産性は低下しましたが、混乱を説明するのに必要なほどには低下していません。

これは他に理由があることを示唆しています。

需要の爆発です。

 

ロックダウンから抜け出すと、人々はこれまで以上に多くの支援を必要とします。

これは、免疫に関係しています。

人々は対人接触にさらされることなく2年間過ごしました。

それ以来、呼吸器合胞体ウイルスなどの固有病原体が開花しました。

多くの人が今、インフルエンザにかかっています。

 

一方、パンデミックは、他の悪影響も与えました。

2020年から2021年にかけて、多くの人が新型コロナウイルスに感染することを恐れて、治療を受けるのを遅らせました。

イタリアでは、2018-19 年と比較して 2020 年にがんの診断が約 40% 減少しました。

治療を遅らせた人々の多くは、2020年に治療を受けた場合よりも病気が悪化している可能性が高いため、より多くのリソースを必要とします。

オーストラリアでは、今後 20 年間で結腸直腸癌による死亡者数が、パンデミック前よりも 10% 近く高くなる可能性があると推定されています。

 

コロナも負担をを増やし続けています。

この病気により、NHS で利用可能なベッド数が 2 ~ 7% 減少していると推定されます。

新型コロナウイルス陽性の患者の治療が必要となると、病院の他の患者へのサービスは低下します。

ワーウィック大学の研究によると、新型コロナウイルスによる死者が 30 人ほど増えるごとに、新型コロナウイルス以外の患者が 1 人死亡しており、これは「医療の質の低下が原因」です。

 

豊かな国に住んでいる限り、現在の問題はいずれ解決されるでしょう。

しかし、人口の高齢化と新型コロナウイルスの脅威が絶え間なく存在する現在、パンデミック前のヘルスケアは、失われた黄金時代のもののように見えるかもしれません。

何はともあれ自衛を

筆者のイスタンブールの住居の前に大きな病院があるのですが、最近やけに患者の車が多く、渋滞を引き起こしています。

トルコが推進している医療ツーリズムの影響で外人の患者が増えたのかなと思っていましたが、どうもパンデミックの間、医療を敬遠していた患者が殺到している様です。

皆さん、日本を含めた世界中で同様の問題が生じています。

現在は病気になるには最悪の時期です。

食事、運動など健康に気をつけて病気にならないよう気をつけましょう。

 

最後まで読んで頂き、有難うございました。