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米国に背を向け始めた中東

サウジの豹変

ここのところ中東における米国の地盤沈下は著しいものがあります。

中東の盟主であるサウジアラビアは米国の古くからの同盟国であり、両国はエネルギー、安全保障の両面で密接な関係を維持してきましたが、現在両国間には明らかに隙間風が吹いています。

そんな中、中東の有力メディアの一つであるアルジャジーラに​​「The Middle East: Goodbye America, hello China? - The US is losing ground in the region and it has only itself to blame.」(​​中東: さようならアメリカ、こんにちは中国? - この地域で地位を失いつつある責任は米国自身にある)という衝撃的なタイトルの社説が掲載されました。かいつまんでご紹介したいと思います。

アルジャジーラ社説要約

中東における自国の影響力の低下を挽回する試みとして、ブリンケン米国務長官は今週、サウジアラビアへの3日間の訪問に乗り出しました。

しかし、サウジや湾岸諸国との「戦略的協力」を進めることは難儀でしょう。

昨年7月、バイデン大統領はサウジで開催された湾岸協力会議サミットに出席し、米国は「中国、ロシア、イランによって埋められる空白を放置せず、立ち去るつもりはない」と誓いました。

しかし、まさにそれが起こっているのです。

米国の反対にもかかわらず、この1年で地域の同盟国はハイブリッド型になりました。中国やイランとの関係は改善し、ロシアとの強い関係は維持されました。

バイデン政権は、中国が仲介したサウジとイランの国交回復に向けた最近の合意の重要性を表向きには軽視していますが、石油資源が豊富な湾岸地域や中東地域で中国の影響力が増大していることに内心は穏やかでなさそうです。

過去 20 年間にわたり、米国は石油とガスの生産を増やし、実質的にエネルギーを自給できるようになりました。

もはや湾岸石油をそれほど必要としないかもしれませんが、紛争が起きた場合に中国への重要なエネルギー供給を遮断し、同盟国のためにエネルギー供給を確保できるように、同地域の責任者であることに固執しています。

ブリンケン氏は次の様に先月警告しました。

「中国は今日我々が直面している最も重大な地政学的な課題を提供する国であり、自由で開かれ、安全で繁栄した国際秩序という我々のビジョンに挑戦する意図と、それに挑戦する能力を備えた国だ」。

しかし、この地域の独裁者にとっては、実のところ、ワシントンの民主主義よりも北京の独裁主義の方が容易で、より適しているのかもしれません。

中東やその他地域におけるロシアの影響力も米国を不安にさせている。

バイデン政権はロシアとの共謀さえも疑われる一部の中東諸国の態度にうんざりし、忍耐力が限界に来ていることを明らかにしています。

米国政府は中東諸国に対し、ロシアの制裁回避を支援しない様、そしてどちらかの側を選ぶよう要求し、さもなくば米国やG7諸国の怒りに直面するだろうと警告しています。

しかし無駄でした。

 

サウジアラビアはこれまでのところ、市場価格を引き下げ、西側諸国の対ロシア制裁の影響を緩和させるために原油生産を大幅に増やすという米国の要請を拒否しています。

ロシアと良好な関係を維持し、ウクライナ支援の足を引っ張ってきました。

サウジアラビアのムハンマド・ビン・サルマン皇太子の米国に対する中指を突き立てる行為は、同地域での彼の人気を高めました。

昨年、リヤドの傲慢と思われる行為を罰するとのバイデンの脅しにも拘らず、サウジは引き続き中国の習近平国家主席を二国間会談や中国・GCC首脳会議、中国・アラブ首脳会談に招待しました。

その後、サウジアラビアは、西側諸国がイランに対する制裁を強化しているのと同じように、中国の支援の下でイランとの関係を正常化し、米国を明らかに軽蔑しながら、シリアとの関係修復を進めました。

 

しかし、米国との関係に対するこの新たな態度はサウジだけでありません。

それは地域的な現象です。 米国のもう一つの同盟国であるアラブ首長国連邦も、中国との緊密な関係を築き、フランスとの戦略的関係を改善し、イラン、ロシア、インドとの関係強化に取り組んできました。

これは時として、米国との関係を犠牲にしました。

これは商業関係を見れば明らかです。

2000 年から 2021 年の間に、中東と中国の間の貿易は 152 億ドルから 2,843 億ドルに増加しました。

同じ期間に、米国との貿易は634億ドルから984億ドルにしか増加していません

 

サウジアラビア、UAE、エジプトを含む中東6カ国は最近、中国主導のBRICSグループへの参加を要請しており、このグループにはロシア、インド、ブラジル、南アフリカも含まれています。

これは、西側諸国がロシアに対して課している制裁を強化し続けているにもかかわらずです。

 

もちろん、アメリカは過去 30 年間、中東において支配的な戦略的大国であり、現在もそれは変わりません。

しかし、次の30年で何が起こるでしょうか?

中東地域では、アメリカにノーと言うのが非常に人気のある立場です。

なぜなら、アメリカは人権と民主主義に対して口先だけの偽善的な帝国大国であると国民の大多数が信じているからです。

これは、パレスチナに対する米国の外交政策で特に顕著であり、パレスチナ人の植民地化を行い占領者であるイスラエルを米国は断固として無条件に支持しています。

 

ブリンケン長官はリヤド訪問の際、サウジアラビアに対し、イスラエルの関係正常化を求める圧力をかける可能性が高く、

伝えられるところによると、民間核開発計画や安全保障関連の条件を軟化させるだろうと予想されています。

 

UAE、バーレーン、モロッコ、スーダンは、米国製F-35のアブダビへの売却、西サハラに対するモロッコの主張の米国の承認などの米国の譲歩と引き換えに、パレスチナ人の犠牲でイスラエルとの関係を彼らは正常化しました。

すべては米国政府が自ら「譲歩」をして数十年にわたるイスラエルのパレスチナ占領を終わらせる必要がないようにするためです。

しかし、パレスチナの大義は、アメリカは距離を置くべき二枚舌の大国であるとアラブ国民に確信させている唯一の問題ではありません。

衛星テレビとソーシャルメディアのおかげで、この地域の人々はイラクでの米国の犯罪とアフガニスタンでの屈辱的な撤退を自分の目で見ており、米国が文明の守護者であるなどとは考えておらず、ましてや無敵の権力であるとは考えていません。

9/11攻撃以来、過去20年間に渡って米国が中東に介入してきた過去は、明らかに米国に有利なものではありません。

 

ドーハに本拠を置くアラブ研究政策研究センターがアラブ14か国で実施した2022年の世論調査で、回答者の78パーセントがこの地域における最大の脅威と不安定の原因は米国であると信じている様です。

対照的に、イランとロシアについて同様に考えた人はわずか57%です。

 

元米国政府高官のスティーブン・サイモンは、その適切なタイトルの著書『大いなる妄想:中東におけるアメリカの野望の興亡』の中で、数百万人のアラブ人とイスラム教徒の死をもたらした戦争で米国は約5兆~7兆ドルを浪費したと推定しています。

さらに、これらの紛争により数千人の米兵が死亡、数万人が負傷し、約3万人の米退役軍人の自殺につながった。

 

したがって、多くの中東人(そしてアメリカ人)が、この地域の米国からの切り離しに同意するのは偶然ではありません。

このような事態の展開は、双方にとって厄介な長期的な影響をもたらす重大な結果をもたらすでしょうが、それは米国が外交政策を変更するかどうか、またどのように変更するかによって決まるでしょう。

西側のメディアとの違い

日本にいると米国は対ロシアでも対中国でも西側先進国のリーダーとして頼もしい存在という報道が多いですが、ところ変われば米国への見方は大きく変わります。

おそらく中南米やアフリカなどでも中東と同様に米国に愛想を尽かした国が多くあるものと思われます。

そんな流れを読んだ中国が経済の力を武器に味方を増やしているのが現状と思われます。

筆者も米国文化の影響のもと育った世代ですので、米国への憧れと期待はありますが、このまま米国が態度を変えなければ、多くの国が米国から離れていくことになると思います。

 

最後まで読んで頂き、有り難うございました。