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もう一つの危機 - イスラエルとイラン

イランの核開発

イランは中国の仲介を得てサウジと歴史的な外交正常化を果たしました。

長年の間対立していた両国の和解が中東に安定をもたらすと考えるのは早計で、中東にはもう一つの火種であるイランとイスラエルの対立があります。

この点について米誌Timeが「Will Israel Attack Iran? What to Know About Netanyahu’s Military Posturing」(イスラエルはイランを攻撃するのか? ネタニヤフ首相の軍事姿勢について知っておくべきこと)と題した記事を掲載しました。

かいつまんでご紹介したいと思います。

Time記事要約

今月初め、イスラエルのネタニヤフ首相は地下壕で安全保障内閣の戦時模擬会議を開催しました。

イスラエル北部の都市では長期にわたる紛争に備えて避難所が準備されようとしています。

そして軍はロケットを迎撃するための新しいレーザーシステムの開発に余念がありません。

イスラエルは何年もの間、核武装したイランを存亡の脅威と考えてきました。

 

しかし、ここ数か月で多くの変化がありました。

イランは外交的孤立から抜け出し、ロシアと重要な軍事同盟を築き、サウジアラビアとの国交を回復し、同盟国にイスラエルへのミサイル発射を促しています。

また、核爆弾を製造する計画を否定しながら、ウランをほぼ核兵器に使用する事ができるレベルまで濃縮しました。

 

これらの展開と、ネタニヤフ首相の司法制度改革の試みによって引き起こされたイスラエルの政治危機により、イスラエル政府は毎日警告を発し、イランの脅威を十分に感じた場合には単独であっても躊躇せずに行動することを国民に知らしめなければならない状況に追い込まれています。

 

元米国中東特使のデニス・ロス氏は、「イランは防衛を強化している。つまりイスラエルは攻撃の選択肢を失う可能性がある」と述べました。

「この問題に取り組み、イスラエル人と長い間話し合ってきた者として、私が個人的に確信していることの一つは、彼らは決して選択肢を失うことを許さないということだ。 」

 

しかし、イスラエルが決定的な打撃を与える能力には疑問があり、特にイランの核開発計画に対する外交的解決を望んでいる米国と協力せず単独で行動した場合には、疑問が残ります。

米国とイランは新たな核合意を密かに模索しているという最近の報道を否定しましたが、イランは今週、両国は捕虜交換について合意に近づいていると述べました。

 

イスラエル専門家の間では、ネタニヤフ首相がイランを攻撃することに懐疑的な見方があります。

国内の混乱、特に司法機関を弱体化させる計画に対する広範な怒りから国民の注意をそらすためにイランの脅威を持ち出していると考える人も多い様です。

 

しかし、野党の政治家も、イランに関してはネタニヤフ首相を支持していると述べています。

「この件に関して、イスラエルには連合も野党も存在しない」と野党指導者のラピッド氏は語りました。

イスラエル当局者らは内心、主要同盟国なしで任務を遂行できるかどうかを懸念しています。

イスラエルの戦闘機は1981年にイラクの原子炉を破壊し、2007年にはシリアの原子炉を破壊しました。

そしてイランに対しても同じことをする可能性があります。

イスラエルはネタニヤフ政権以前に二度そうしそうになりました。

 

イランへの攻撃は石油市場を混乱させ、地域的な大火災に発展し、サウジアラビアやアラブ首長国連邦などの国や湾岸を通る航路に影響を与える可能性があります。

また、イランの支援を受けるヒズボラやハマスなどからイスラエルに対する大規模な反発を引き起こす可能性もあります。

そのため、一部の投資家は不安を感じています。 

イランとロシアとの軍事関係の強化も、イスラエルにとって懸念材料となっています。

 

イスラエルによる攻撃の可能性が高まっていることは、この地域の国々を不安にさせています。

サウジアラビアは昨年まで、イラン支援のフーシ派民兵組織による無人機やミサイル攻撃に苦しんでいました。

サウジが中国の仲介によりイランと和解したのは「近隣諸国との緊張を緩和し、開発に集中する」ためと見られています。

複数のイスラエル当局者によると、イランとサウジの接近がもたらしたプラスの効果の一つは、米国が中国の役割に脅威を感じ、リヤドとの和解に向けた努力を強化したことだといいます。

それはイスラエルの大きな目標であるサウジアラビアとの外交関係樹立を助ける可能性があります。

イスラエルと米国の両国は、サウジとイスラエルの合意が、イスラエルの安全を強化し、イランの直接攻撃を思いとどまらせる可能性があると考えています。

しかしサウジ当局は、パレスチナ独立国家の樹立(ネタニヤフ首相は近い将来実現する可能性は非常に低いと述べている)が前提条件であると公に述べています。

 

今のところ、イスラエルは軍事衝突の可能性を真剣に検討しています。

 

米国が2018年にイランとの核合意から離脱して以来、イランはウランの処理を加速させています。 国際原子力機関(IAEA)は最近、核兵器に使用される純度90%をわずかに下回る、純度84%レベルまで濃縮された少量の核物質を検出しました。

 

IAEAは5月下旬、これは偶然の副産物だというイランの説明で十分だと述べました。 ネタニヤフ首相はIAEAを「降伏」していると非難し、イランは嘘をついていると述べました。

これは、イスラエルが最も恐れている問題について、イスラエルが国際的に孤立していると感じている新たな一例となりました。

ウクライナとイスラエル同時に支援可能か

イスラエルは上記記事に述べられている通り、過去にイラクとシリアの原子炉を空爆しました。

イランの核関連設備を果たして攻撃するでしょうか。

イスラエルは真剣に検討していると思われます。

しかし大きな障害があります。

中東の地図を見て頂ければわかる通り、イラク、シリアはイスラエルから近距離にありますが、イランはかなり遠く、イランの核施設が広大な国土に分散され、地下に隠されているので、強力な空軍を誇るイスラエルとしてもこれらを攻撃するのは至難の業です。

もう一つの問題は米国の支援です。

イスラエルがイランと戦争を始めた場合、米国は直接参戦しないまでも、強力な軍事的支援を期待されるはずです。

しかしウクライナにさえも十分な弾薬を供給できず、クラスター爆弾を送らざるを得なくなった米国が十分な軍事支援をイスラエルに行えるのでしょうか。

イスラエルがイランの核設備に先制攻撃を行わない様、必死で説得を行っているものと思われますが、自国の安全保障については極めて敏感なイスラエルが聞く耳を持つかどうか予断を許しません。

 

最後まで読んで頂き、有難うございました。