MIYOSHIN海外ニュース

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英国に関する大きな誤解

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英国の料理はまずいか

英国の料理はまずい。動物の餌程度だ。」という厳しい評価を昨日のブログでご披露しましたが、これはあくまでもフランス人の一般的な意見ですので、念のため付け加えます。じゃあ私がどう見ているかというと、フランス人ほど辛口ではありませんが、フランスと比べると大きな差があると思っています。そもそも美味しいものを食べようという気持ちが英国人には欠如している様に思われます。また、新しい食べ物に挑戦しようという好奇心にも欠けています。イギリス人は生まれた時から食べ慣れたものしか口に入れようとしませんが、フランス人は寿司が美味しいと聞けばチャレンジする人が多い様に思います。

ロンドンのレストランは特別か

じゃあロンドンに住むと毎日まずいもので満足しないといけないかというと、これは違うんですね。ロンドンだけは特別なんです。ご存知の通り、ロンドンは多くの外国人が集まる国際都市です。しかも国際的な金融ハブですので、世界からこの街にお金が集まります。お金の集まるところに優秀なシェフは集まりますので、ロンドンには美味しい店がたくさんあるんです。しかし以前はこうじゃありませんでした。英国人料理人が作るスパゲッテイなどアルデンテなどとは程遠い仕上がりで、仕方なく中国やインド料理屋に行って辛抱するのが関の山だったんです、ところがEUのシェンゲン協定が1995年に発効してから状況が一変しました。EU加盟国内では、労働者の移動が自由、すなわちフランス人やイタリア人のシェフが、労働ビザを取得せずにロンドンで働ける様になったのです。今、ロンドンに行ってフレンチレストランに行けば、シェフのみならず、ウェーターに至るまで全員フランス人が働いています。以前ロンドンの知人から「欧州で1週間同じ街に滞在すると、どこが一番美味しいか。」と聞かれ、迷わず「パリ」と答えたら、一蹴されました。「2−3日なら確かにパリだろう。しかし1週間滞在するとパリにはロンドンの様な多様性が少ない。ロンドンには仏、伊、スペイン、中華、インド、タイ、日本なんでもありだ。」と彼は言うわけです。確かにロンドンの方が飽きないと思います。(英国料理だけ食べなければという条件付きですが。)一方、今後ブレグジットした後、ロンドンのレストランがどうなるか心配です。ビザなしで働いていたフランスやイタリアのシェフが母国に帰国する様な事態になれば、ロンドンのレストランレベルは見る影もなく低下します。まあ、英国人は金儲けうまいですから、客を集める必要があるとなれば、シェフにはビザを出すでしょうね。

英国に優秀なエンジニアはいるのか

別の分野にも英国に関する誤解があります。「イギリスは金融を中心としたサービスの国であって、優秀な物作りのエンジニアは少ない。」と言う見方があり、かく言う私も実はそう信じていました。これも識者に言わせれば、間違っている様です。以前勤めていた会社に英国人顧問が居て、彼と話している際に話題が車の話になりました。私がトヨタやホンダの話を得意げにしていたら、彼からこんなコメントが返ってきました。「F1レースというのがありますよね。世界最高峰のレースですが、日本のメーカーさんが車体メーカーとして優勝した事ありますか。一回もありませんよ。F1レースというのは同じコースを何十周かしてタイムを争いますが、このレースに勝つためには一回のレースにギリギリ耐えられる様な華奢な車体を作る必要があります。トヨタさんなどは何十回も使える様な頑丈な車体を設計してしまう。それでは勝てないのです。」確かにF1の車体メーカーはマクラーレンを初めとして英国に多く存在する。日本のメーカーはホンダがエンジンを供給しているが、車体メーカーとしては参戦できていません。イギリスにも当然優秀なエンジニアが存在するのです。最近では、掃除機で有名なダイソンや孫さんが3兆円で買収した半導体回路設計で世界一のARMなどが英国企業ですが、確かに他社とは一線を隠すユニークな技術を持っていますね。ただドイツの様に同じものを大量生産するのは不得意の様で、ボンドの愛車として有名なアストンマーチンやジャガーといった高級車メーカーは皆外資の傘下に入ってしまいました。ブレグジットで広大なEU市場へのアクセスが制限される将来、英国メーカーがどの様に生き残りを図るのか注目されます。この観点でいうと、ダイソンが最近シンガポールに本社を移した事はブレグジットと無縁とは言えないと思います。