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ドイツに関する大きな誤解

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ベルリンの壁

ドイツという国は誰もが認める欧州の中心国です。この国も日本の中では誤解されている部分があるので、触れてみたいと思います。少し歴史をひもといてみましょう。

ベルリンの壁というのがありましたよね。若い方はご存知ないかも知れませんが、東西冷戦を象徴するものでした。私は東西冷戦が終わった事は個人的には大変残念でした。というのもスパイ小説が大好きで、東西冷戦のさなか、決死の覚悟で敵国に侵入するスパイの活躍に胸躍らせていたからです。そんなスパイの活躍の中心地がそうベルリンだったのです。ベルリンは西ドイツと東ドイツのちょうど境界線に位置しており、ベルリンの壁は西ドイツと東ドイツの国境線の一部だと、若い頃私は信じていましたが、実は全く違うんですね。ベルリンという街は東ドイツの領内にあり、そのベルリンの街を東西に分けるのがベルリンの壁でした。従い西ドイツからベルリンに行こうとすれば飛行機で離れ小島の様な西ベルリンに飛ぶしかない訳です。壁が存在した頃にベルリンを訪れた事があります。壁の向こうに行かなくとも、西ベルリン側には幾つか壁の向こう側を眺められるやぐらの様なものがあり、そこから東ベルリン側が見学できました。心なしか貧相な格好した東ドイツの人たちが歩いているのが見えました。思い切って東ベルリンにも入りましたが、検問所の検査が異様に厳重だったのが印象的でした。当時、西ドイツに亡命する人が後を立ちませんでしたから、トランクどころか車の底も特別な鏡で丹念に検査していました。壁を超えて逃亡する市民を東ドイツ軍は容赦無く射殺しましたので、壁には弾丸の後も生々しく残っていました。東ベルリンに入ると急に街並みが暗く、車が貧相になったのに気付きました。信号で車が停車する直前にガタガタと揺れるので、現地の人に聞いてみると、アスファルトの質が悪く、ブレーキの摩擦で信号前の舗装が荒れているとの事でした。西ドイツの繁栄ぶりは当時東ドイツの国民には一切知らされていなかったのですが、大きな経済格差を感じました。

二度の世界大戦の震源地ドイツ

その後、ドイツ統一を経て、人口の面でも欧州最大になったドイツですが、経済面では欧州では比肩するものがないほど強大な存在です。ドイツの凄さはやはり国民の教育レベルの高さ、規律などがあいまって、圧倒的な生産性を発揮する点です。過去の二回の世界大戦は二回ともドイツから始まってドイツの敗戦で終わりました。ドイツは第一次世界大戦で負けた際にベルサイユ条約でとんでもない高額な賠償金を課せられます。この高額な賠償金がドイツ経済を疲弊させ、ハイパーインフレを招き、ナチスの台頭を許したというのが、現在の世界史の解釈となっています。この時課された賠償金は戦争前1913年の国民総生産の2.5倍というとんでもない金額だった様です。賠償金の他にも厳しい軍備の制限も課されましたし、当時最大のエネルギー源である石炭の産出地であるアルザス、ロレーヌ地方をフランスに割譲させられています。こんな無茶なペナルティーを呑まされれば、普通の国なら再建などありえません。しかしナチスの台頭からほんのわずかな時間で、その軍備を世界レベルにまで引き上げました。まさにドイツ恐るべしです。私は長い間第二次世界大戦の主戦場は映画「史上最大の作戦」で有名なノルマンジー上陸作戦だと信じていたのですが、これは大きな間違いでした。投じられた資源、死傷者数何れをとっても、最大の戦線はドイツとロシアの間で繰り広げられた東方戦線であり、そのピークはスターリングラードの争奪戦でした。要するにドイツはロシアと欧米との挟み撃ちにあい、二方面作戦を余儀なくされながら、長期間戦い続けた訳です。これだけの軍需をどうやって満たしていけたのか。戦時中のドイツの生産量を見て驚きました。彼らは戦争を始めてから、厳しい空襲などに遭いながらも、生産量を増やし続けました。なんと生産量のピークは1944年、終戦の一年前です。日本と比べると良くわかりますが、働き手を兵隊に取られた日本国内の生産力は早期に低下して行っています。ドイツは強制収容所の人間を働かせたんじゃないかとの批判もありますが、それを差し引いてもドイツの生産力は凄いです。この時代に軍需相になったアルベルト シュペーアという人がいますが、彼は徹底的な部品の共通化を行って生産力向上を達成した様です。ドイツ人というのは綿密な計算の下に、大量生産を効率的に行う事に長けているのです。

EUの舵取りを任されるドイツ

ドイツは英国が離脱した後のEUの名実ともにリーダーとなった訳で、今後の彼らの舵取りが注目されます。しかし難題が山積です。確かにドイツ人は優秀で勤勉です。でも学業優秀で模範生だけど、あんまり他の生徒の面倒見が良くなくて、他人に厳しいやつって他の生徒から嫌われますよね。ドイツ人というのは欧州の他の国からはそういう風に見られがちです。これからEUの一体化を維持して行くためには、ドイツファーストではないリーダーとしての対応が求められるでしょう。資産の分散運用を考え、ユーロをちょっと買ってみようなどど考えられているのであれば、ドイツによるEUの舵取りを観察されることをお勧めします。