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インドと中国がヒマラヤ山中の国境線で衝突

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ヒマラヤ山脈での衝突

インドと中国の国境線においての衝突で、多くの死者が出ました。

インド側の発表では、インド軍の死者は20名に上ったとの事ですが、中国側にも多くの死傷者が出た模様です。(中国はこの手の紛争において自国の死傷者を発表しない事が多い。)

このニュースを伝えたフランスの通信社AFPの記事を読んでいて、ある表現に目が止まりました。

こう書かれていたのです。「インド軍は当初、死者数を3人と発表。だが、その後の発表で、衝突により重傷を負った17人が、高高度地域で氷点下の気温にさらされ、けがが原因で亡くなった。」

氷点下の気温にさらされるって、本当かと思い、調べてみました。

今回、両国が紛争を起こした場所は、中国のチベット自治区と国境を接するGalwan峡谷という地域で、ヒマラヤ山脈の奥深く、AFPが伝える通り、高高度に位置していました。

こんな場所であれば、凍死も十分ありえます。

両軍兵士の戦いは、銃は使われず、素手や投石での戦いとなり、6時間余りも続いたそうです。

そもそも、中印の国境紛争は歴史が古く、以前、私のブログでも取り上げましたが、1962年には大規模な交戦に発展し、その際は中国側の勝利に終わっています。

それ以後、小競り合いはありましたが、1975年を最後に、死者は出ていませんでした。

 

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今回の衝突の理由

ここのところ、両国の国境を巡る争いは、緊張度を高めていましたが、その理由について、米Foregin Policyが解説していましたので、ご紹介します。

  1. そもそも中印の国境線は英国政府により引かれたもので、当時、ヒマラヤ王国であったチベット、ネパール、ブータン、シッキム(現在のインドの一部)は、現在も、英国政府の引いた曖昧な国境線に悩まされています
  2. 高高度の山岳地帯に国境線があるため、正確な国境線の位置を特定するのが、非常に難しいのが特徴です。中印の国境線は、世界で最も長い表示の無い国境線です。
  3. 更にやっかいなのは、積雪、地滑り、氷河の融解などにより、国境線が物理的に変化する事です。世界の気候変動により、この問題は更に深刻になりました。今回の事件も、両国軍が相手が領土侵犯したと訴えていますが、どちらも自分たちの正確な位置を把握できていない可能性があります。

境界線がはっきりしない国境というのが、世の中に存在するんですね。

しかし、両国の国境は、非常に重要な意味がある様です。というのもインドの14億人の国民はヒマラヤ山脈の水源に依存しており、この水源が国境線に絡んでいるのです。

ヒマラヤ山脈において、より高地を抑えた方が戦略的に優位に立ちますので、両国とも簡単には引き下がれない様です。

ここに来て、死者をも出す紛争に発展した理由については、やはりインドと中国の最近の関係悪化が背景にあると思われます。

中国は一帯一路政策の上で、インドの隣国パキスタンを同盟国として、パキスタンの港に大型の投資を行ない、インドを刺激しました。

インドは、6月初めの段階で、コロナ感染者が20万人を超え、経済にも甚大な影響を与えています。

コロナは、中国が元凶だとインド人は認識していますので、インド国民の対中感情は悪化し、最近は、中国商品をボイコットする様な動きも出ている様です。

今後の展望

当面、両国の対立が、大規模な紛争に発展する可能性は小さい様です。

両者が交戦した場合、中国が勝利を収める可能性が高いと推測されています。何故なら、インドの国民総生産は、中国の5分の1でしかないのです。

インドは、強大な中国に対して、単独では勝利が望めません。従い、中国の敵である米国との関係を強化しています。

しかし、将来、スーパーパワーとして中国の向こうを張る可能性があるのは、インドです。

米国は、中国に成長率で大きく劣りますが、インドは2014年から2018年の間、成長率で中国を上回っています。中国も意識せざるをえないのが、急成長する人口大国インドなのです。

 

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。