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本格的な戦争に発展も - アゼルバイジャンとアルメニアの衝突

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紛争の経緯ー紛争の真の原因は

アゼルバイジャンアルメニアと言っても、日本人には馴染みがない国ですが、両国ともソ連崩壊後独立した国です。

この二国間に27日、軍事衝突が起こり、既に20名を超える死者が出ています。

今後、本格的な戦争に発展することが危惧されています。

先ず、この紛争が何故起きているのかご説明したいと思います。

紛争の歴史

今回、紛争が生じているのはNagorno-Karabakh(ナゴルノ カラバフ)という地域です。下の地図をご覧ください。アゼルバイジャンの中に緑色の飛び地としてあるのがナゴルノ カラバフです。

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出典:Economist

この地域は1917年にロシア帝国が崩壊した直後、当時のボリシェビキ政権の分割統治政策に基づいて自治州として創設されました。

今振り返ると、現在の問題はこの決定が遠因となっています。

アゼルバイジャン人はトルコ語系イスラム教徒で、アルメニア人はロシア正教徒ですが、アゼルバイジャンの中に飛び地として存在するナゴルノカラバフ地域は住民の大多数がアルメニア系です。

この地域を巡るアゼルバイジャン人とアルメニア人の武力衝突はソ連崩壊直前から始まり、1980年代の衝突では、2万から3万人の死者を生んだと言われています。

アゼルバイジャン、アルメニアの両国は1991年にソ連が崩壊した後、独立を果たしました。

しかしナゴルノ カラバフは独立国として認められず、アゼルバイジャンの中に残りました。

同地域の住民は独立を求めて武力闘争を続け、1994年にロシアの仲介で停戦協定が成立し、この地域は実質的にアルメニアの支配下に入りました。

しかし、国際的には、現在もナゴルノカラバクはアゼルバイジャン領であり、独立を認めた国は皆無です。(アルメニアもこの地域の独立を認めていません。)

アゼルバイジャンにしてみると、この地域はアゼルバイジャンの油をトルコへ運ぶ石油パイプラインの通り道であり、戦略的にも重要です。

実質的な支配権を取り戻すべく、最近も2016年に武力衝突を起こし、数十名の兵士が犠牲となっています。

背後に大国の存在

今回の武力衝突の背後にはアルメニア、アゼルバイジャン双方にサポーターがついています。

アルメニアの一番の支援者はロシアです。

ロシアとアルメニアの間には相互防衛条約があります。

しかしロシアはアゼルバイジャンにも武器を供与している事もあり、今回は調停役として立ち回りたい様です。

アルメニアには意外な応援団がいます。

それはフランスです。フランスにはアルメニア人のかなり大きなコミュニティがあり、政治的にも大きな影響力を持っています。

マクロン大統領は「我々は常にアルメニア人とともにある。」とのメッセージをツイッターで発信しました。

アゼルバイジャンの背後にいるのはトルコです。

この両者は同じトルコ語系の民族ですし、兄弟の様な存在です。

私も以前アゼルバイジャンを訪れた事がありますが、トルコ語がそのまま通用する事に驚きました。

各国のメディアの反応は

フランスの経済紙「Les Echos」は次の様に本来アルメニアを支援する筈のロシアへの疑念をあらわにしています。

「ロシアの今回の紛争における立ち位置は微妙です。

相互防衛条約を結んでいるアルメニアを表向きは支援していますが、アゼルバイジャンにも武器を供与して、良い関係を維持しています。」

またこうも表現して、ナゴルノカラバフの独立を応援しています。

「この地域の15万人の住民の大多数は、アゼルバイジャンからの独立を求めて投票しました。」

一方、英国はどう見ているかと言えば、彼らは戦線拡大がエネルギー市場へ与える影響を危惧している様です。

Economistは次の様に述べています。

「今回の武力衝突により、両国は戒厳令と動員令を発令し、本格的な戦争に発展する崖っぷちにあります。

背後のロシアとトルコを巻き込むリスクもあります。

既にこの両国はシリアとリビアで代理戦争に巻き込まれていますが、この地域が3番目の舞台になる可能性があります。」

BBCはエネルギー市場に関する懸念を次の様に表現しています、。

「この地域には、カスピ海の原油や天然ガスを欧州市場へ運ぶパイプラインが延びています。

この地域での戦闘は、エネルギー市場に影響を及ぼします。」

トルコ紙「Hürriiyet」はエルドアン大統領が英国のジョンソン首相と電話会談を行い、この問題を協議した事を次の様に伝えました。

「エルドアン首相は、地域の諸問題にバランスのとれた公平な姿勢を示す英国との対話に関心を持っていると語った。」

パクス アメリカーナの終焉か

最近の地中海から中東にかけての動きを見ていると、米国の影が薄くなった事に気付きます。

アメリカが抜けてぽっかり空いた穴に、ロシア、フランス、トルコなどが首を突っ込む様になりました。

アメリカは大統領選で忙しいのもあるのでしょうが、大統領選が終わっても以前の様に世界の警察官としての役割は期待できそうもありません。

地域紛争は圧倒的に軍事力が強い国が介入すれば終わります。

パクス アメリカーナの終焉は今後、様々な地域で紛争をエスカレートさせる可能性があります。

アメリカの代わりに地域紛争に首を突っ込んでいる国には共通点があります。

ロシア、フランス、トルコいずれも国内に問題を抱えている点です。

政権の支持率も低下しています。

政府は、国民の目を内政から外交に向けさせようとしているのだと思います。

軍事介入は愛国主義を呼び起こし、一時的な支持率上昇に繋がる可能性がありますが、紛争を解決する際には、外交努力を優先して頂きたいと思います。

 

最後まで読んで頂き、有り難うございました。