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人間的な生活を取り戻そう - パリの新しい試み

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都市生活の非人間性

フランスには「Metro-Boulot-Dodo」(地下鉄、労働、眠り)という表現があります。

これは地下鉄に乗って会社に行き、くたくたになって後は眠るだけの都市住民の生活を形容するものです。

フランス人は生来人生を楽しむ民族ですので、こんな非人間的な生活は耐えられないのです。

朝はゆっくり起きて、美味しい食事をワインと共に楽しみ、家族や友人とゆったりした時間を過ごすというのが彼らの理想とする生活スタイルです。

語学学校でこの表現を学んだ時、日本に似た表現があるかなと思いましたが、見つかりませんでした。

やはり日本とフランスではライフスタイルに大きな違いがありそうです。

そんなフランスでは、コロナ感染が拡大し、最近では第二波が襲っている様ですが、コロナ感染を契機に、都市住民の生活を見直そうとの動きが広がっている様です。

仏紙「Les Echos」が「La ville de quart d’heure, nouvelle lubie urbaine?」(15分の街、新しい都市の流行か?)と題した記事を記載しましたので、かいつまんでご紹介したいと思います。

Les Echos記事要約

あなたは徒歩或いは自転車に乗って、15分以内で職場に行く事を望むでしょうか。

買い物は同じビルの中で済まし、通りの向こうの学校に子供を連れて行くなんて事は、もう夢物語ではありません。

幾つかの大都市はそれを約束しています。

パリはその内の一つです。

6月に再選された社会党出身の市長アンヌ イダルゴは、 「家から15分以内に必要なものがすべて見つかる様にします」と約束しました。

そのスローガンは「15分の街」です。

このスローガンはソルボンヌ大学のモレノ教授の発案ですが、同教授は都市住民を通勤地獄から開放したいと考えています。

パリジャンの平均通勤時間(片道)はおよそ49分です。「15分の街」というスローガンは大きな反響を得ても不思議ではありません。

15分の都市は、市民が移動しない街になります。

市民たちは日常生活に不可欠な6つの機能、住居、労働、医療、購買、教育、娯楽を徒歩或いは自転車で15分以内に見出すことが可能になります。

しかし、こういったより穏やかでより環境に優しい街の実現には少々辛抱が必要です。

現在の都市は余りに都心に偏っている為、目標の達成には2050年まで待つ必要があります。

この様な試みはパリだけではありません。オーストラリアのメルボルンでは「20分の街」という試みが始まっています。

フランス北部の都市ナントでの試みは15年前に始まりました。工業地帯であった市内のプレーリーオーデュック地区を市民の居住地区に一から改造し、15分の街を実現したのです。

しかしナントの様に、既存の市街を破壊して一から始める事は必要条件ではありません。

多くの都市は既に既存の街並みを持っています。

現在、都市計画者たちは既存の設備を複数の目的に使う事を検討しています。

例えば学校の校庭は週末市民に開放されます。

駐車場の一部は屋外レストランとして使用することも可能です。

「15分の街」という構想に疑いを持つ人も多いです。

中には「レジ係や地下鉄の管制官などはテレワークを行う事は無理だ。15分の街を享受出来るのはホワイトカラーの高給取りだけだ。」と批判する人もいます。
しかし、15分の都市というアイデアは、都市の中に沢山の村を作り、都市の住民に「村の精神」を持ち込む事になります。

これこそがパリやメルボルンの市民が待ち望んでいる事です。

日本にも「15分の街」を

「村の精神」とは何でしょうか。

フランスは豊かな農業国です。

田舎には広々した空間、ゆったりした時間、優しい人間関係があります。

パリジャン、パリジェンヌは決して優しい人たちではありませんが、田舎に行くと優しいフランス人に出会えます。

やはり住む環境が人間の性格を変えるのだと思います。

パリに住んでいる人たちも、地方から上京してきた人が多く、出来るものなら田舎の様な生活を送り、「村の精神」を取り戻したいと思っているのではないでしょうか。

世界で最も美味しいと言われるフランスの農産物、乳製品、ワインに囲まれて、家族や隣人と仲良く人生を過ごすというのがフランス人の夢なのだと思います。

都市の利便性は確かに魅力だが、ぎすぎすした都市生活や通勤地獄はごめんだと考えている日本人も多いと思います。

コロナの影響でテレワークが普及した今、東京もパリの様に「15分の街」を展開し、「村の精神」を取り戻しては如何でしょうか。

 

最後まで読んで頂き、有り難うございました。