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フランスとトルコの対立に仲裁役として介入するプーチン大統領

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米国のユーラシア大陸からの撤退がもたらすもの

「世界の警察官をやめる」と宣言したのは、オバマ大統領でしたが、トランプ政権もその流れを引き継いで、各国に駐留する米軍を相次いで削減しています。

一万人を超える兵力を抱えていたアフガニスタンでは来月4500人まで減らす予定です。

米軍が撤退した後の空白は誰が埋めるのでしょうか。

北アフリカから中東にかけて、最近、フランスとトルコが事あるごとに対立し始めました。

マクロン大統領は、欧州で最大のイスラム信者を抱えるフランスにおいて、「イスラム社会は危機に瀕している。」と語りました。

これに噛み付いたのが、トルコのエルドアン大統領です。彼は次の様に語りました。

「マクロン大統領の発言は無礼であることはおろか、明らかな挑発である。植民地の知事のように振舞うのはもうやめて、責任感ある政治家らしく行動するよう、彼に期待している。」

 

現在、フランス、トルコの両国は至る所で対立しています。主なものだけでも次の様なものが挙げられます。

  1. アゼルバイジャンとアルメニアのナゴルノ=カラバフ自治州を巡る紛争
  2. シリア内戦
  3. リビア内戦
  4. キプロス沖の天然ガス開発を巡る紛争

漁夫の利を狙うプーチン大統領

この二国の対立を横目で見て、ほくそ笑んでいるのが、ロシアのプーチン大統領です。

歴史的に見るとロシアとフランスは深い縁があります。

文化的にも影響しあっており、例えばフランス料理が今の様にオードブルからメインそしてデザートの順番で供される様になったのは、ロシア宮廷料理の影響を受けたと言われています。

イタリアで生まれてフランスで育ち、ロシアで花開いたと言われるバレエもフランスから帝政ロシアに取り入れられました。

サンクトペテルスブルグのエルミタージュ美術館に行けば、フランス印象派の絵画が所狭しと並べられており、当時のロシア王室が如何にフランス文化にかぶれていたか理解できます。

現在もマクロン大統領とプーチン大統領の間にはホットラインがあると言われています。

 

一方、プーチン大統領はエルドアン大統領との間にも太いパイプを持っています。

ロシアとトルコは歴史的に見るとクリミア戦争を初めとして露土戦争を11回も戦い、現在もNATOのメンバーであるトルコとロシアは敵対している様に見えますが、実際は違います。

両大統領は2015年にロシア戦闘機をトルコ軍が撃墜した時を除いて、非常に良好な関係を保っています。

おそらく、両大統領は、北アフリカ、中央アジア、中東に至る広大な地域の重要な問題は、常に協議していると思います。

前述のアゼルバイジャン・アルメニアの武力衝突に関しても、表向きはアゼルバイジャンをトルコが支援し、アルメニアをフランスとロシアが支援するという形になっていますが、裏では、プーチンとエルドアン両大統領の間でシナリオが描かれているものと推測します。

プーチン大統領の本件に関する対処は非常に巧妙でした。

武力衝突が始まってから、トルコとフランスは直ちにそれぞれアゼルバイジャン、アルメニアの支援を公表しました。

しかし、ロシア政府はアクションを起こしませんでした。

双方に多数の死傷者が出始めてから、漸く仲裁役として登場し、停戦を両国に勧めましたが、プーチン大統領の腹は、反露を旗印にしている現在のアルメニア政権にお灸を据えようとしているのだと思います。

「アルメニアよ、俺のいうことを聞かなければ、痛い目に合うぞ。」てなもんです。

恐らく事前に、落とし所をエルドアン大統領と合意済みではないかと思います。

ひょっとするとプーチン大統領は今のアルメニアの首相の首を挿げ替えようとしているのかもしれません。

シリア内戦も同じで、クルド人武装勢力との対話を始めたフランスとそれに反発するトルコの間にアサド政権を支援するロシアが首を突っ込むというパターンになっています。

トルコとロシアの間には様々な問題があります。しかし、多くの問題があるという事は、交渉材料がそれだけ転がっているとも言えます。

プーチン大統領の政策そのものには賛成できませんが、彼の外交手腕は相当なものです。

米国が撤退した後に生まれた空白を実に巧みに利用しています。

プーチン大統領がトルコの新聞社Hürriyetのインタビューに答えて下記の様に発言しています。


「満足できるレベルではないにしても、ロシアは良い関係をフランスとの間に築いています。

一方、トルコとの協力関係はますます高まっています。

エルドアン大統領の姿勢は一見厳しいように見えるかもしれませんが、彼は交渉において柔軟であることを、私は知っています。」

 

「トルコ、ロシア二国間の貿易額は200億ドル(2兆1千億円)を超えます。

エルドアン大統領は、様々な圧力にもかかわらず独立した外交政策を維持しています。

彼はやると決めた事はやります。そのようなパートナーは信頼が置けます。」

 

トルコの新聞社へのリップサービスもあったかも知れませんが、プーチン大統領がエルドアン大統領に信頼を置いていることが窺えます。

今後米国の影が薄くなるユーラシア大陸の各所で、プーチン大統領は老舗マフィアの親分の様に首を突っ込んでくるものと思われます。

これは世界の警察官米国が撤退すれば避けられない事態です。

プーチン大統領は、一帯一路を掲げてユーラシア大陸に覇を唱えようとする中国を思う様にさせるとは思えず、中露の対立がこれから顕在化する可能性も高いでしょう。

 

最後まで読んで頂き、有り難うございました。