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需要が急拡大する半導体業界におけるアームの躍進

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コロナ感染下、需要拡大する半導体業界

12月第1週の世界半導体販売額は前年比で10%を超える伸びを見せ、1週間で100億ドル(1兆400億円)を記録しました。

世界の半導体産業はコロナ禍においても活況を見せています。

新型コロナ感染が広がる中、人と接触しない技術が重視され、テレワークに利用されるコンピュータ需要やネットショッピング、物に触れずに機械を操作する技術などが重宝されていますが、これら全て半導体で解決できます。

前世紀が石油の時代とするなら、今世紀は間違いなくデータの世紀と言えるでしょうが、データの世紀において半導体は主人公の一人なのです。

しかし成長著しい半導体業界において新旧プレイヤーの競争は大変厳しいものがあります。

この業界においては長らくインテルが王者の位置を保ってきましたが、どうも異変が起きている様です。

半導体業界の勢力図の変化についてウォールストリートジャーナル(WSJ)が「Intel Not Inside: How Mobile Chips Overtook the Semiconductor Giant」(インテル入っていない:いかにしてアームがインテルを追い越したか)と題した記事を掲載しました。

かいつまんでご紹介したいと思います。

WSJ記事要約

米半導体大手インテルが設計し製造したマイクロチップはかつて、ほぼ全てのパソコンやクラウドコンピューティングの中核をなすほど支配的でした。

だがここ何年も、競合他社の後塵を拝しています。

アップルは最近、自社の新型パソコンシリーズ「Mac」へのインテル製チップ搭載を終了すると発表しました。

自社の設計品に切り替えるとの事です。

インテル長年のパートナーであるマイクロソフトも、自社のタブレット端末「サーフェス・プロX」に独自のチップを搭載しました。

こうした動きの背景には、省電性能がかつてないほど求められていることがあります。

この基準はバッテリーで動く機器にとって明らかに重要ですが、世界の消費電力の1%を占めるクラウドコンピューティングにとっても同じです。

このようなニーズを満たすため、電子機器メーカーはインテル製より自社製品によりカスタマイズしやすいマイクロチップを選択しています。

カスタムメードのチップ製造で先頭を走るのは製造企業ではありません。

半導体の基本設計図を提供する英国のアームです。

同社がライセンス供与する会社は計500社余り。すでにスマホやタブレット端末、ノートパソコン向けプロセッサーの市場シェアは9割に上ります。

画像処理半導体(GPU)と人工知能(AI)の市場を支配し、時価総額で現在最大の米半導体メーカーであるエヌビディアは、このアームをソフトバンクグループから400億ドル(現金と株式)で買収することで合意しました。

 

アップル創業者のスティーブ・ジョブズ氏は2006年、同社がインテル製チップに切り替えると発表しました。

当時採用していたチップの製造元であるIBMがついてこられなかったためです。

だが同時期にインテルは致命的なミスを犯しました。

「iPhone(アイフォーン)」に搭載するチップを製造してほしいというアップルの依頼を断ったのです。

アップルはアームの設計に基づいて独自チップの開発に乗り出し、2010年に発表されたiPhone4に初めて搭載しました。

これが、アーム支配の流れを作りました。

このような戦い――インテルの垂直統合的アプローチとアームのより柔軟な戦略――はクラウド、即ち、データセンターでも繰り広げられています。

クラウドサービス最大手アマゾンは独自に開発したアームチップを使っています。

インテル製と比べ、クラウドアプリの性能が40%上回り、コストも20%低いとしています。

 

にもかかわらず、インテルのクラウドサーバー向けチップ需要は衰えていません。

ここ1年間の売上高は前年同期比11%増でした。

新型コロナの世界的流行によりパソコンとサーバーの需要が爆発的に増えたためです。

同社はこの勢いに乗じて新規ビジネスへの参入をもくろんでいます。

そうした分野にはAI、GPU、5G(次世代通信規格)自動運転などが含まれます。

インテルのスワンCEOは、「あらゆる半導体製品」のシェア3割を目指すべきと繰り返し述べています。

インテルの新しい試みがうまくいかなくても、インテルが巨大な生産能力を維持する事ができれば、この先何年も同社が重要な企業であり続けることは間違いないでしょう。

あらゆる種類のプロセッサーの需要が爆発すれば、最も強力なライバルさえ、インテルを締め出すのに十分な供給を行うことは難しいでしょう。

アームの価値

アップル愛好家の私にとって、アップルがスマホのみならずパソコンにもインテル製品の代わりに、自社開発のチップを採用するというニュースは驚きでした。

しかもその省電性と演算速度は従来のインテル製品をはるかに上回る様です。

この様な高性能のチップの設計図を提供しているのが英アーム社です。

この会社孫さんが3兆円で買収した時、ほとんどの人が高い買い物だと批判したのを覚えています。

ソフトバンクグループの社外取締役を務める日本電産の永守会長は3300億円でも買わないと発言しました。

その様な反対を押し切って購入した孫会長はさすが目利きです。

彼はあの時点で、アームの価値を読み切っていたのでしょう。

We Workでは失敗しても、自らの得意分野であるIT分野においては間違いませんでした。

それにつけても、以前は半導体といえば、日本のお家芸だったのですが、全く影が薄いのが心配です。

唯一救いは世界最高速のスーパーコンピューターが富士通製である事です。

因みにこのコンピューターで使われているチップもアームの設計図に基づいています。

 

最後まで読んで頂き、有り難うございました。