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サムスン財閥第三世代が打った大きな賭け

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韓国の星 - サムスン

サムスン電子は言わずとしれた韓国最大の企業ですが、その時価総額は今や日本で最大のトヨタ自動車の2倍以上です。

この会社はスマートフォンで世界最大のメーカーですが、しかしその製品群の中で最も高い価値を持つのは半導体事業であり、世界のメモリー市場において支配的な地位を占めています。

現在同社は創業者の孫にあたる李在鎔によって支配されていますが、同氏がサムスン電子の将来を左右するかもしれない大きな決断を行った様です。

この点について英誌Economistが「Samsung Electronics wants to dominate cutting-edge chipmaking - The South Korean dynasty’s third generation is taking on TSMC and Intel. Can it succeed?」(サムスン電子は最先端のチップ製造で市場支配を目論む - 韓国財閥の第3世代はTSMCとIntelを追い抜くつもりだが、成功の可能性は?)と題した記事を掲載しました。

かいつまんでご紹介したいと思います。

Economist記事要約

サムスン電子(SE)は巨大です。

この韓国のハイテク企業はサムスン財閥の最高の宝です。

世界のどの企業よりも多くのスマートフォンを製造しているだけでなく、様々な電気製品も製造しています。

同社は、電子デバイスにデータを記憶させるために使用され、世界的な半導体不足によって価格が押し上げられているメモリチップの製造を支配しています。

年間売上高は2,000億ドル(22兆円)で、歴史上最も時価総額の高い企業であるAppleの売上高と大差なく、1,000億ドル(11兆円)の現金を有しています。

 

現在、SEとその親会社(名前は「3つ星」を意味します)の両方が、重要な新しい局面に入ろうとしています。

1938年にサムスンを設立した家族の末裔である李在鎔は賄賂スキャンダルに関与したとして有罪判決を受け服役していましたが、8月に刑務所から釈放されました。

現在、 彼は昨年亡くなった父の李健熙から継承した帝国を完全に支配しています。

 

李氏はついに会社の壮大な計画を打ち出しました。

彼は、すでにメモリやスマートフォンにおいてそうである様に、情報処理に使用される最先端のロジックチップで市場を支配する存在になりたいと考えています。

これにより、台湾のTSMCアメリカのINTELなどのチップ製造大国と対決し、世界で最も戦略的な業界の1つをめぐる激しい国際競争に突入します。

 

10月7日に、2022年に3ナノメートル(10億分の1メートル)の半導体を備えた新しいアーキテクチャに基づいて、世界で最も先進的なロジックマイクロプロセッサのいくつかを製造することが確認され、アナリストを驚かせました。

今年は、事業全体の設備投資に370億ドルもの投資を行うと予測されています。

また、アメリカのチップ設計者であるNvidiaや電気自動車メーカーのTeslaなどの新規顧客を獲得しています。

 

李氏の賭けの結果に影響を受けるのはサムスンだけではありません。

サムスン財閥の経済への重要性を考え、李氏の仮釈放が国益であると大統領が正当化した韓国にとっても重要です。

そしてそれは世界の半導体産業に影響を及ぼします。

 

SEは2つの主要な事業に分けられます。

1つ目は「セット」を作成します。スマートフォン、テレビ、家電製品です。

2つ目は、サムスンの製品のみならずAppleなどの外部顧客にも販売する半導体です。

セット事業は成長の原動力ではありませんが、サムスンの価値あるブランドを強化する上でより大きな役割を果たしています。

 

階層の最上位には半導体があります。

歴史的に、メモリチップに力を入れてきました。

メモリチップの中で、ドラムチップ(デスクトップの一時ストレージに使用)の世界市場の44%を占めています。

メモリ事業は、収入の20%強をもたらしますが、営業利益のほぼ半分をもたらします。

調査会社のOmdiaは、世界のメモリチップ市場は2020年から2025年の間に毎年2桁の速度で拡大すると予測しています。

しかし、メモリが成熟した市場であると懸念する幹部もおり、一部の投資家は、メモリチップの需要が年末にかけて軟化する可能性があることを懸念しています。

 

李氏最先端のロジックチップへの賭けは、5500億ドルの世界の半導体市場の70%を占める非メモリチップにおいて、急成長している収益性の高い市場の大きなシェアを獲得することです。

李氏は、顧客向けのプロセッサを製造する「ファウンドリ」ビジネスにおいて、メモリ内の約40%の市場シェアを獲得するという目標を設定しました。

テクノロジー自体は、少なくとも最後の2世代の最先端プロセッサーでTSMCに遅れをとっています。

これらの問題を認識した李氏は、明らかに自分自身の変革を加速させたいと考えています。

同社は、研究開発(R&D)の能力を利用して、たとえば新しい高度なチップアーキテクチャなど、次世代のロジックチップを開発しようとしています。

同社はまた、テキサスで最先端のロジックチップを製造するために、170億ドル相当の工場を検討しており、アジア企業にチップ製造を米国国内で行わせたいというアメリカの願望に応えようとしています。

一方で、今年西安にある2番目のメモリチップ工場も完成させています。

米中の緊張が高まっているにもかかわらず、SEは巨大な隣人をあきらめる可能性はありません。

これは、米国の顧客を放棄せずに、中国の顧客を維持する事において、SEが細心の注意を払う必要があることを意味します。

一方、助け舟は、半導体の地政学から来る可能性があります。

中国がその領土の一部と見なしている台湾への軍事的圧力を強めるにつれて、台湾企業であるTSMCの将来に対する懸念が高まっています。

顧客の間で、TSMCへの過度の依存を避けようとする動きが見られます。

TSMCの最大のライバルとして、サムスンが漁夫の利を得る可能性があります。

サムスン電子がTSMCに匹敵するロジックチップメーカーになるのであれば、李氏の力量は評価すべきでしょう。 

見直すべき隣人の能力

1990年代初めに韓国を訪れた私は、タクシーに乗った瞬間に日本との技術格差を感じたものです。

現代自動車の車だったかと思いますが、ダッシュボードに使われたプラスチックは安物とひと目でわかる代物でした。

その頃の韓国は日本の技術者を週末に招待し、日本の技術を必死で吸収しようとしていました。

新日本製鐵の電磁鋼板の技術がもれたのもこの頃と思いますが、その頃の韓国は日本の技術を盗んででも自分のものにしようとしていました。

筆者も韓国人のそんな態度に嫌悪感を覚えていたものです。

この頃の見方を引きずっているのか、現在も韓国は「日本を真似してのし上がってきた国」であるいった見方が未だに散見されますが、これが本当に正しいのか一度良く見直すべきではないでしょうか。

先日このブログでご紹介した様に、イカゲームに代表される韓国のドラマ、映画の世界的な評価はうなぎ上りですし、BTSの様に米国のヒットチャート上位を賑わせる様な人気グループは我が国にありません。

サムスン電子は時価総額では我が国最大のトヨタ自動車の2倍近く、一人当たりのGDPも購買力平価では韓国は日本を上回りました。

この様な地位を他国の真似だけで達成できるはずもなく、日本企業が現在苦しんでいるオリジナリティの面でも韓国は日本の一歩先を行っているかもしれません。

韓国を先入観を捨てて見直す必要があると思います。

少なくとも上から目線で韓国を見る余裕はもはや我が国にはないと思います。

 

昨年イスタンブールのトルコ語を教える学校でサムスンから派遣された留学生と同じクラスになりました。

彼女は2年間のトルコ滞在において何をするかフリーハンドを与えられており、結構な予算を与えられて、トルコについて学習し、人脈を築いていくというのが与えられた責務だそうです。

サムスンからはこの様な留学生が世界各国に派遣されている様で、こんな人材育成システムを持つ会社を過小評価してはなりません。

サムスン恐るべしと感じた次第です。

 

最後まで読んで頂き、有り難うございました。