中国よりなのはWHOだけではない
コロナ感染が武漢で広がり始めた頃に世界保健機構(WHO)のテドロス事務局長は、感染拡大初期の中国の対応を称賛し、中国人の入国を禁止する措置はやりすぎだと発言し、その後世界中から批判を受けました。
国連関連機関の中国よりの姿勢はWHOだけではありません。
中国は随分前から国際機関への影響力強化を狙って、用意周到に手を打ってきました。
その中の一つである国連人事理事会への中国の働きかけに関して、英誌Economistが「Sensing change in Washington, China is mustering allies at the UN - Joe Biden may show more interest than Donald Trump in the body’s human-rights debates」(米国政権交代を受け、中国は国連での同盟国に協力を呼びかけている - バイデン氏はトランプ大統領より人権に興味を示すだろう)と題して記事を掲載しました。
かいつまんでご紹介致します。
Economist記事要約
2018年にアメリカが国連人権理事会から撤退したとき、中国は遺憾の意を表明しました。
誰もそれを中国の本心とは思いませんでした。
人権理事会は、中国にとって大きな屈辱になる様なトピックを扱っています。
この理事会に世界で最も強力な民主主義国家が存在しないことで、中国の人権虐待が非難を免れる可能性が高くなりました。
しかし、バイデン氏がアメリカの大統領に就任する準備をしている今、中国は今後直面するトラブルを恐れています。
その証拠に、誰をこの理事会の理事長にするかに関しての確執が始まっています。
ロシアとサウジアラビアに後押しされた中国は、この理事会の理事長の最有力候補であるフィジーを妨害しようと試みています。
バイデン氏がすぐにアメリカをこの理事会に参加させることを想定して、理事会の民主主義国メンバーはフィジーを支援する戦いを重要と考えています。
誰が理事会を率いるのかという問題は些細なことに思えるかもしれません。
結局のところ、議題を設定するのは、理事長ではなく、47か国のメンバーです。
そして、メンバーは中国に挑戦するのに苦労してきました。
理事会は、中国の新疆ウイグル自治区でのウイグル人の大量収容または香港の自由の剥奪に関する決議をまだ可決していません。
トランプ政権は、アメリカを理事会から撤退させました。
しかし、理事長は、多くの権限を持ち、特別報告者の任命を行う事ができます。
6月、理事会によって任命された50人以上の特別報告者と専門家が、新疆、チベット、香港での権利侵害について中国を非難する声明に署名し、中国を激怒させました。
次の理事長は、国連総会によるその作業の5年間のレビューにおいて大きな役割を果たします。
これは、メンバーシップの基準を改訂するなど、アメリカが望んでいる改革をもたらす可能性があります。
重要なのは、人権の評判が悪い国から理事長を任命することは、西側ですでに問題とされている理事会のイメージにさらに大きなダメージを与える可能性があるということです。
2003年、理事会の前身である国連人権委員会がリビアを委員長に選出しました。
これは3年後の委員会の解散の原因となりました。
同様のことが再び起こった場合、バイデン氏がアメリカの理事会への復帰を支持することは困難になるかもしれません。
もしそうなれば、中国にとって勝利となるでしょう。
中国は、この組織を人権に関する規範を再定義するキャンペーンの橋頭堡と見なしています。
彼らは、人権の意味を弱めるために組織を利用し、個人の権利よりも国家主導の開発を優先させ、虐待を犯したときに国に説明を求めるのではなく、国家間の敬意のある「対話」を重要視しました。
また、特定の国に対する決議に激しく反対し、各国が他国の問題に干渉してはならないと主張します。
10月、39の国連加盟国が新疆ウイグル自治区での虐待を非難する声明に署名しました。
これは1年前の23か国から増加しています。
中国を擁護する声明に署名した国は50か国以上から45か国に減少しました。
2021年、理事長はフィジーと中国が所属する国連のアジア太平洋グループのメンバーの中から選ばれる事になっています。
フィジーの代表者は、人権に対する姿勢で広く尊敬されています。
これまでフィジーは対抗馬が現れる事なく選出されると思われていました。
しかし11月、バーレーンが正式に理事長候補として名乗りを挙げました。
その後、シリアはフィジーの立候補に反対しました。
外交官は、これらの動きは中国とその支援国によって画策されたと分析しています。
その後、中国にも受け入れられる第3の候補者、ウズベキスタンが出現しました。
フィジーとその太平洋諸島の隣人たちはいじめられていると感じました。
民主主義国は国連関連組織を重視すべき
Economist記事が記載する様に、中国は国連人権理事会と言った人権侵害を糾弾すべき組織にも、長い時間をかけて、自らの影響力を増大させ、香港やウイグルの人権問題が国連で非難されない様に手を打ってきました。
「それぞれの国にはそれぞれの事情や固有の歴史伝統がある。内政干渉はやめよう。」と唱えて、アフリカや中南米の独裁者を味方につけています。
トランプ大統領は国連関連機関を軽視し、脱退さえ躊躇しませんでしたが、国連から身を引くのは中国を喜ばせるだけだと思います。
バイデン新政権が、国連関連機関に復帰し、人権の問題を、真剣に取り上げてくれる事を願います。
最後まで読んで頂き、有り難うございました。