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ワクチンの特許放棄を支援し始めたバイデン 政権

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発展途上国で猛威を振るうコロナ

コロナは一部先進国で感染者数が低下し始めましたが、インドをはじめとした発展途上国では勢いを増しており、感染者は1.5億人を超え、死者数も300万人を突破しました。

発展途上国はワクチンの配布が先進国に偏っていると不満を募らせており、昨年よりインドと南アは製薬会社にワクチンの知的財産権を放棄する様求めていました。

トランプ政権や英国、EUはこれに対して反対を表明していましたが、先日、バイデン政権の通商代表がインド及び南アの提案に支持を表明しました。

一方で、製薬会社は強く反発している様です。

最近の動きについて英国のBBCとEconomistが記事を掲載しました。

かいつまんでご紹介したいと思います。

BBC記事抜粋

それは本当に特別な瞬間です。

バイデン政権の通商代表部は、ホワイトハウスが新型コロナワクチンのメーカーが所有する知的財産権の放棄を支持するとの声明を発表しました。

このキャンペーンは、NGO、一部の米議会民主党員、およびインドや南アフリカなどの発展途上国の間で行われていましたが、最近までは、英米、EUは、WTO(世界貿易機関)における交渉の動きに抵抗していました。

米国通商代表キャサリン・タイは製薬会社と面談し、先月のテレビ会議で英国国際貿易大臣のリズ・トラスに問題を提起しました。

先月のBBCとのインタビューで、WTO長官はBBCに対し、ワクチンメーカーが世界に供給できなかった場合、ノウハウを移転しなければならないと語りました。

製薬会社は、ボトルネックは特許ではなく、製造能力であると強く主張しています。

しかし、インドと南アフリカはこれに同意ぜず、南アフリカのラマポーザ大統領は、彼が「ワクチンアパルトヘイト」と呼んで非難しています。

Economist記事要約

人類への奉仕の為に特許を廃止すべきでしょうか?

コロナで死亡した人は、昨年12月以来利用可能となった数百万のワクチンのうちの1つでも接種していれば、死を免れたかもしれません。

ワクチンの不足は、特に貧しい国の人々が苦しむことを意味します。

5月5日、米国政府は新型コロナ関連の医薬品とワクチンに関する製薬会社の知的財産(IP)権を放棄するよう一部の発展途上国が世界貿易機関に求めた呼びかけを支持すると述べました。

我々のアンケートに対して、マリアナ マッツカート、ジャヤティ ゴーシュ、エルスト レエレの3人の学者が特許に反対し、「より多くの企業がワクチンを製造できるようにすべきだ。私たちの人間性を肯定し、知識の共有と協力のための新しい解決策を受け入れる勇気がない限り、危機は終わらない」と述べています。

一方、業界団体であるバイオテクノロジー イノベーション協会の会長であるヒースは、知的財産を守ることを主張しました。

「科学の最大の成果の1つである新型コロナワクチンの開発速度は低下します。私たちは、それを可能にした知的財産システムを台無しにする事なく、正しく評価する必要があります」と彼女は述べています。

何をすべきかというこの問題は物議を醸します。

私たちのコラムニストは次の様に述べています。「新型コロナの経験は、健康上の緊急事態における知的財産権の見直しが遅れていることを示唆している。」

米国の決断

これは非常に難しい問題だと思います。

今回のワクチンの開発は世界に感染が広がる中、非常に短期間に開発されました。

開発の裏には涙ぐましい科学者や製薬会社の努力があった筈です。

彼らのモチベーションを支えたのは、患者を救うという人類愛もあったでしょうが、やはり成功の暁に得られる莫大な特許報酬があった事は否めません。

もし特許が強制的に放棄されるのであれば、今後新型コロナの様な新しい感染症が蔓延しても、科学者や製薬会社は同じ様なモチベーションを維持できないでしょう。

しかし、一方でインドや南アでワクチンが足りないのも問題です。

製薬会社に特許を納得づくで放棄させる手段はないものでしょうか。

筆者はバイデン政権は特許を買い上げるつもりではないかと睨んでいます。

中国がワクチン外交を展開するのを横目で見ていた米国は国内向けワクチン調達の見通しが立った今、自らワクチン外交に打って出ようとしています。

米国にはファイザーだけでなく、モデルナやジョンソン ジョンソンといった複数のワクチンメーカーが存在します。

その中にはバイデン 政権と歩調を合わせ、特許を一定の価格で放棄することを選ぶ会社もあるのではと推測します。

製薬会社のモチベーションを維持する事も一人でも多くの人命を救うことも大事です。

この二つが両立する解決策を実現して欲しいものです。

 

最後まで読んで頂き、有り難うございました。