インド変異株の脅威
現在日本で最も心配されているのは、インドの新型コロナ変異株です。
この変異株は英国の変異株を上回る感染力を持ち、重症化する恐れも高いと言われています。
各国とも水際対策を強化して、この変異株をシャットアウトしようと試みています。
日本は漸くワクチン接種が本格的に始まるところですが、ワクチンがインドの変異株に有効か気になるところです。
英国はインドとの関係も深く、既に感染者が出ている様ですが、この国は感染者の追跡システムが先進国の中でも最も進んでいると言われる国です。
インド変異株の英国での現状について、英誌Economistが「How much should you worry about the “Indian variant”?」(インド変異株をどの程度恐る必要があるか)と題する記事を掲載しました。
かいつまんでご紹介したいと思います。
Economist記事要約
突然変異は、ウイルスが自分自身をコピーするたびに発生しますが、、そのほとんどは、ウイルスが感染する人に影響を与えません。
しかし、そうなるケースがあります。
B.1.617として知られる新型コロナウイルスの変異株は、ここ数ヶ月インド全土での新型コロナ感染拡大に大きな役割を果たしたと見られています。
何百万もの人々がそれに感染し、数十万人が亡くなっています。
「617」変異株は現在44か国に広がっています。
それがどれほど危険なものであるかを理解するために、ウイルス監視システムが世界で最高水準にある英国に目を向けることは有益です。
そして、それは世界の他の人々が変異株を理解する助けになると思われます。
COVID-19 Genomics UKコンソーシアムは、2月に最初に英国でインド変異株を検出しましたが、症例は数ヶ月間少ないままでした。
しかし現在上昇しています。
さらに変異したB.1.617.2の毎週の感染は、過去7日間で520から1,313に2倍以上になりました。
5月6日、政府は617.2を「懸念される変異株」にアップグレードしました。
これは最高レベルの警報です。
5月11日、世界保健機関がそれに続きました。
世界はインドに大きな打撃を与えた変異株についてどれだけ警戒する必要があるのでしょうか?
3つの質問に答えることで、その脅威をある程度理解することができます。
それはどれほど危険ですか。どのくらい伝染しますか? そして、最も重要なことは、ワクチンは効果がありますか? です。
先ず、危険性から始めましょう。
617.2(およびその全ての変異株)に関する答えは、誰も正確には理解できていないということです。
コロナウイルスが進化するにつれて危険になっているのかどうかという疑問は、科学界で議論の対象です。
しばらくの間、解決する可能性は低いと思われます。
各変異体によって引き起こされる病気の重症度を正確に比較分析することは困難です。
英国の病院は現在、様々な変異種がもたらす脅威を理解しようと努力しています。
現状、新しい変異株が少なくとも他の変異株と同じくらい危険であると仮定することが賢明です。
伝染性に関する答えはより明確です。
遺伝学者と疫学者は、どの異変株がどの場所に出現するかを追跡できるため、それぞれがどれほどのスピードで広がっているかをある程度把握できます。
すべての変異株は、2020年初頭に世界中に蔓延した元のウイルスよりも伝染性が高いです。
617.2が他の変異株よりも伝染性が高いという強力な証拠は現在ありませんが、617.2が古いウイルスを凌駕し始めている処を見るとその可能性は否定できません。
英国では英国由来の変異株(B.1.1.7)が今のところ、まだ支配的です。(チャートご参照)
伝染性はワクチン接種の影響も加味して検討する必要があります。
イングランド北西部のボルトンやブラックバーンのようなインド変異株のホットスポットでの患者の大部分は若い人々です。
そのほとんどはまだワクチン接種を受けていませんが、ワクチン接種された60歳以上の人々は殆どインド変異株に感染していません。
これは朗報です。
インド医学研究評議会によって実施された、小規模な研究でも、インド製のワクチンCovaxinがをインド変異株の感染を防止した事を示しています。
しかし、ドイツでの同様の研究では、ファイザーBioNTechワクチンがインド変異株に効かなかった例が報告されています。
これらはラボでのテスト結果ですが、実症例がいくつか出始めています。
ロンドンの介護施設で2回目のアストラゼネカワクチンを摂取した15人が617.2に感染した際、4人が病院に行き、誰も死亡しませんでした。
インドのデリーにある介護施設で、予防接種を受けたスタッフが33人617.2に感染しましたが、深刻な病気になった人はいませんでした。
それでも、英国政府は新しい異変株の拡散に警戒する必要あります。
発生が拡大すると、社会を開放する計画の再検討が必要になります。
社会の解放を一時停止または元に戻すことは、政治的に困難です。
世界の他の地域も細心の注意を払う必要があります。
現在、一連の証拠は、パニックに陥る必要はありませんが警戒する必要がある事を示しています。
注目すべき数字は、現在英国で1日約120人の新型コロナによる入院患者が発生しています。
それらが横ばいまたは減少したままである場合、それは617.2がワクチンを打ち負かしていないことを意味します。
水際対策の必要性
インド変異株への警戒は怠ってはいけない様に思います。
既に日本でも感染例が出ましたが、日本は、同じ島国のニュージーランドや台湾の様に水際対策をうまく行なうべきと思います。
インドからの渡航者の日本入国は最近になって漸く管理が強化されましたが、ついこの間までは、緩い管理国のグループに分類されていました。
当時すでにインドでの感染が爆発し、異変株の存在が確認されていたにもかかわらず、なかなかインドからの渡航者の入国管理を強化しなかったのは疑問です。
恐らくインドとの外交関係等難しい問題があったのでしょうが、感染症は一刻を争います。機敏な判断が必要と思います。
最後まで読んで頂き、有り難うございました。