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韓国大統領選が重要な理由を米誌に寄稿した韓国系学者

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国際情勢を左右する大統領選

韓国大統領選挙が目前に迫って来ました。

お隣の韓国と我が国との関係は現在お世辞にも良いとは言えません。

しかし、重要な隣国です。

誰が大統領になるかによって、アジアの情勢も大きく変わる可能性がありますので、大統領選挙から目を離せません。

米国の外交誌であるForeign Policy韓国系学者であるVictor Cha氏が「Why South Korea’s Presidential Election Matters to the U.S.」(韓国大統領選が米国にとって重要な訳)と題した論文を寄稿しました。

かいつまんでご紹介したいと思います。

Foreign Policy論文要約

アメリカ人は、3月9日に予定されている韓国の大統領選挙に注意を払う必要があります。

 

北朝鮮に対するスタンス以外にも、与野党の間に大きな外交政策の違いがあります。

今回は、重要な同盟問題すなわちエネルギーと気候変動、中国との関係そして、韓国が米国、日本、インド、オーストラリアで構成される日米豪印戦略対話(クワッドと呼ばれる)に加わるかどうかにおいてスタンスが異なります。

 

つまり、野党の保守的な「国民の力党」を代表する元検察総長兼弁護士の尹錫淳氏と、元知事であり、与党の進歩的な「民主党」の候補者である李在明氏のどちらが勝利するかどうかはインド太平洋地域全体に大きな相違を生じるでしょう。

 

韓国では、進歩的か保守的かの尺度は主に北朝鮮に対する態度によって定義されます。

現在の韓国の文在寅大統領のような進歩派は、北朝鮮との関わりを重視しており、北朝鮮の核兵器計画を北朝鮮政権の不安と政治的孤立の現れと見なしています。

彼らは平和宣言の進展と南北の経済的および人道的プロジェクトを支援するでしょう。

一方、保守派は北朝鮮の意図に対してより懐疑的な見方をしており、より厳しい方針を取っています。

両党の違いは、米国との合同軍事演習を再開するかどうかなど、他の外交政策においても顕著です。

トランプ大統領と金正恩主席の2018年のシンガポール首脳会談後、韓国政府は一方的にこれらの演習をキャンセルしました。

進歩的な与党候補は、北朝鮮の強硬策の引き金となるかもしれないそのような演習の再開を約束していません。

保守党の候補者は、演習の無期限の停止は、半島での抑止力の信頼性を損ない、北朝鮮の誤算を招く可能性があり米韓軍の準備を低下させると主張しています。

これは米国にとって重要な問題です。

 

もう一つの問題は、戦時中の作戦指揮権の韓国への移管です。 「OPCON移管」として知られるものですが、米国ではなく韓国が北朝鮮との戦争を支配することを意味します。

米国は、原則としてOPCONの移管を適時に完了することに同意する一方で、韓国が移管を実施するために必要な運用上の要件を満たしていることを確認したいと考えています。

与党の進歩党は早期の移管を提唱していますが、十分な準備を怠れば同盟を危険にさらす可能性があります。

 

3番目の問題はエネルギーと気候変動に関係しています。

与党は、2011年の福島第一原発事故後、民間原子力産業の段階的廃止を支持しましたが、野党はその計画に反対しています。

原発は、韓国のような国が2050年までにカーボンゼロの目標を達成するために重要です。

現政権以前、韓国は、アラブ首長国連邦への原子炉の受注で、主要な原子力エネルギープレーヤーの1つとして浮上していました。

野党候補が現在の原発政策を逆転させれば、国は再び重要なプレーヤーになる可能性があります。

米国にとって、韓国のような同盟国が原子炉と燃料の安全性と安全性に関する世界の民間原子力エネルギー市場の基準を形成する事が期待されます。

そうでなければロシアと中国が市場を支配することになります。

 

中国との関係については、与野党間に大きなギャップがあります。

保守派は「戦略的明晰さ」と民主的価値観に基づく政策を求め、中国の経済的重要性を認めながら、2016年に米国が迎撃ミサイル防衛システム(THAAD)設置する計画を発表した後、中国が韓国に課した非公式だが痛烈な制裁などの強制的な戦術に反発しています。

対照的に、与党は、中国との戦略的競争に移行しようとするバイデン政権に加わることにより慎重です。

彼らは、北京冬季オリンピックに対するバイデン政権の外交的ボイコットを支持せず、米国との追加のミサイル防衛協力に慎重です。

彼らは依然として中国を北朝鮮との関わりにおいて重要であると見ています。

THAAD制裁の記憶は簡単には消えませんが、進歩派は、経済制裁と安全保障上の優先事項のバランスを取る事が重要であると考えています。

 

両者の違いは、クワッドで最も明白です。

信頼できる筋の情報によれば、韓国は2021年3月の最初のクワッドサミットに招待されましたが、辞退した様です。

与党の大統領候補は、韓国のクワッドへの加盟の可能性について沈黙を守っています。

対照的に、野党の候補者は、韓国は即時にクワッドメンバーシップを求めるだろうと公然と述べています。

 

韓国はメモリチップ、電池、感染対策用個人防護具などの重要なグローバルサプライヤーであるため、韓国が実際にクワッドメンバーになるかどうかは、現在の米国政権にとって非常に重要です。

この国を米国の同盟国の外に置くことは、コロナワクチンの製造、次世代ワイヤレスネットワーク、および気候変動への取り組みに関連するサプライチェーンに影響を与えるでしょう。

 

今回の選挙は初めて、これらすべての問題について韓国で真の国民的議論を引き起こし、その結果はは米国とそのアジア政策にとって非常に重要なものなるでしょう。

韓国の良いところは素直に認めるべき

韓国大統領選は両陣営のスキャンダルが噴出し、泥仕合の様相を呈しており、その事は日本のマスコミでもよく取り上げられています。

韓国を批判するのは簡単ですが、韓国経済がしたたかに実力をつけてきた事は素直に認める必要があります。

そして米国の外交誌であるForeign PolicyやForeign Affairsなどにも、今回の様に韓国系の学者が頻繁に寄稿している一方で、日本の学者の論文が掲載される事はほとんどありません。

国際世論に訴える韓国と内向きの我が国の間に今後大きな差が生じる可能性があります。

日本の立場を外向きに発信する学者や政治家が現れることを期待したいと思います。

 

最後まで読んで頂き、有り難うございました。