巨大IT企業の肥大化
GAFAのサービスを毎日使っておられる方も少なくないと思いますが、私もその一人です。
彼らのサービスは年々洗練されてきており、もはや彼らのサービスなしには生活が成り立たないところまで来てしまった感があります。
私の日常生活を見ても、アマゾンで買い物を行い、アップルのパソコンとスマホを使い、Facebookでブログをシェアしています。
しかし、なんと言ってもGoogleへの依存度が高い様な気がします。
今原稿を書いているのもGoogleドキュメントですし、検索エンジンは手放せません。
Googleマップ無しでは外出もできません。
確かにGAFAは人々の暮らしを便利にしました。
しかし、一方で彼らが我々をコントロールしているのではないかとの疑念は高まっています。
私が何を検索し、どの様な商品を購入し、誰とチャットし、どの様な記事を書いているか全て彼らは把握分析しています。
関心を持っている商品の宣伝がふいに画面に現れるという経験をを皆さんされていると思いますが、Googleはユーザーの個人情報を分析した上で、ピンポイントの広告を打ってくるわけです。
巨大IT企業(米国ではBig Techと呼ぶ様です)の影響力が政治の分野において問題視され始めました。
米誌Foreign Affairsが「How to Save Democracy From Technology
Ending Big Tech’s Information Monopoly」(如何にBig Techから民主主義を守るか - 彼らの情報独占を阻止するには)と題する論文を記載しました。
長い論文ですので、かいつまんでご紹介したいと思います。
Foreign Affairs記事要約
米国経済で起こっている多くの変革の中で、巨大IT企業の成長ほど顕著なものはありません。
アマゾン、アップル、フェイスブック、グーグル、ツイッターは、新型コロナ大流行の前にすでに強力でしたが、日常生活の多くがオンラインに移行するにつれて、さらに強力になりました。
デジタル市場は他の市場とは異なります。
この市場で重要なのはデータです。
アマゾンやグーグルなどの企業が数億人のユーザーに関するデータを蓄積すると、まったく新しい市場に参入し、同様のデータを持たない企業を打ち負かすことができます。
彼らは「ネットワーク効果」から大きな恩恵を受けています。
ネットワークが大きくなるほど、ユーザーにとってより有用になり、単一の企業が市場を支配するようになります。
先行者は、一旦ポジションを固めると、それ以上の競争を不可能にします。
FacebookがInstagramとWhatsAppを購入したように、彼らは潜在的なライバルを呑み込むことができます。
しかし、注目すべきは巨大IT企業が、経済的損害よりもはるかに憂慮すべき政治的損害を引き起こす点です。
彼らの本当のリスクは、彼らが市場を歪めることではありません。
彼らが民主主義を脅かしているということです。
2016年以来、アメリカ人は情報を形作るテクノロジー企業の力に目覚めました。
彼らが作るプラットフォームにより、詐欺師はフェイクニュースを捏造し、過激派は陰謀説を推し進めることができました、
不透明なアルゴリズムにより。彼らは特定の声を増幅したり削除したりすることができるため、民主的な政治的議論に悪影響を及ぼします。
巨大IT企業が故意或いは無意識のうちに選挙結果を左右する可能性があります。
ルパート・マードック(保守派の富豪)がフォックスニュースなどを通じて政治的影響力を行使していますが、その支配の効果は限界があります。
しかし、マードックがFacebookやGoogleをコントロールした場合、ランキングや検索アルゴリズムを巧妙に調整して、ユーザーが見たり読んだりするものを恣意的にコントロールし、政治的見解に影響を与える可能性があります。
巨大IT企業(特にAmazon、Facebook、Google)は、人々の友人や家族が誰であるか、人々の収入や所有物、そして彼らの生活の最もプライベートな部分について知っています。
腐敗した意図を持ったIT企業が政府と協力して、個人情報を悪用した場合を想像してみてください。
彼らの権力を制御する一つの方法は政府の規制です。
たとえばドイツでは、フェイクニュースの伝播を犯罪とする法律が可決されています。
しかし、米国のように二極化した国で機能する可能性は低いです。
巨大IT企業の力を制御する別のアプローチは、より大きな競争を促進することです。
しかし、スタンダードオイルやAT&Tが分割された方法でFacebookやGoogleを分割できないでしょう。
分割によって生まれたFacebookの子供がすぐに親に取って代わる可能性が非常に高いです。
そんな中、あまり注目されていませんが、ミドルウェア(コンピューターの制御を行うOSと処理を行うアプリの中間に位置するソフトウェア)は巨大IT企業の力を制御する有効な解決法です。
ミドルウェアを使用する事によって、ユーザーは情報をどの様なソースから得るか、そして悪質な情報をシャットアウトするフィルタリングの方法を選択できます。
このアプローチは、ヘイトスピーチや陰謀説の伝播を妨げるものではありませんが、その範囲を制限します。
今日、プラットフォームが提供するコンテンツは、人工知能プログラムによって生成された不透明なアルゴリズムによって決定されます。
ミドルウェアを使用すると、ユーザーはコントロールを自分の手に取り戻せます。
彼らは、目に見えない人工知能プログラムではなく、彼らが見たいものを自ら決定するでしょう。
世界の運命を変えかねないGAFA
今回の米国大統領選では、共和、民主両党共、SNSでの情報拡散を重視し、専門家を起用して、政治キャンペーンを繰り広げました。
しかし、ツイートなどで拡散しやすいメッセージというのは、人間の負の感情である、嫌悪、怒り、劣等感、差別感などに働きかける方が反響が大きく、これが必要以上に政党間の対立を煽り、二極化を生み出したと思います。
ネット上では、抑制の効いたバランスのとれた政治的主張は埋もれがちです。
トランプ大統領が米国の労働者に呼びかけたのも、彼らの不平等感や有色人種への嫌悪感を刺激する物でした。
SNSを使った選挙工作は米国に限ったものではありません。
英国でもブレグジットを決める国民投票の際に、SNSの専門家であるカミングス顧問を起用して、「Take back control」というスローガンを拡散させたのが、予想外の投票結果になった主因と言われています。
SNSは国の運命をも左右しかねないのです。
巨大IT企業が選挙結果を左右する様な力を持った今、民主主義国家は、言論の自由を保ちつつ、巨大IT企業の持つ潜在的な邪悪性をいかにコントロールするかという難題に解決策を用意する必要があります。
最後まで読んで頂き、有り難うございました。