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トルコに関する大きな誤解ー勝者によって描かれる歴史

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トルコは難民を何故受け入れるのか

トルコは隣国シリアからの難民を400万人近く受け入れています。トルコの総人口の5%にも匹敵する難民を受容するというこの事実、日本ではあまり知られていませんが本当に凄い事です。

何故これだけ多くの難民をトルコ人は受け入れるのでしょう。

もちろん国境を封鎖するという手段もありますが、受け入れる理由はトルコ人が異民族に寛容だからだと思います。この寛容さはオスマントルコ帝国に原点があると思われます。

剣かコーランかは本当か

オスマントルコ帝国は、征服した国の民に剣かコーランかと改宗を迫ったとの印象をもたれていますが、事実は異なります。実は彼らは非常に宗教に寛容だったのです。

オスマントルコは15世紀半ばにコンスタンチノープルを攻め落とし、大帝国の礎を築いた後、1923年にその長い歴史の幕を下ろしていますが、最盛期は中東からエジプトを含む北アフリカ、欧州はウクライナ、ハンガリーまでも含む大帝国でした。

400年以上に亘って、帝国は長い平和な時代を謳歌しています。現在、内戦が各所で続く中東の情勢とは大きく異なります。

コンスタンチノープル陥落

ビザンティン帝国の首都コンスタンチノープルを、1453年に攻め落とした攻城戦は塩野七生さんの小説にも詳細が描かれています。

この時、若干21歳の征服王メフメット二世はコンスタンチノープルを攻め落とした後に、当時市街に住んでいた異教徒たちに改宗を迫っていません。人頭税さえ払えば、キリスト教徒やユダヤ教徒に宗教の自由を保証したのです。

アヤソフィア寺院に対する措置

征服の後、彼はギリシャ正教の総本山であるアヤソフィア寺院を訪れ、この当時世界最大のキリスト教寺院であったアヤソフィアをモスクに変える事を宣言します。彼が本当の乱暴者であれば、アヤソフィアは破壊されていたでしょう。

イスラム教では偶像崇拝が禁止されていますから、アヤソフィアの壁面にびっしり描かれていたモザイク画は全て剥がされる運命にありました。しかしメフメット2世はそうしませんでした。これらのモザイク画の上に漆喰を塗って隠したのです。

モザイク画は第二次世界大戦後米国の研究者によって発見され、観光客にとって現在最大の見所となっています。

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多様性に富んだオスマントルコ時代のイスタンブール

コンスタンチノープルはオスマントルコによる征服後も、多くの非イスラム教徒が住み続けました。オスマントルコ帝国が終焉を迎える20世紀初めまでイスラム教徒6割、非イスラム教徒4割だったそうですから、オスマントルコ時代は現在のイスタンブールより遥かに異教徒比率が高いまさにコスモポリタンな都市だったと言えます。ジェノバやベネツィアといったイタリア商人やユダヤ商人も活発に商売を行っていたそうです。

西欧の書いた歴史

オスマントルコが宗教的に寛容でなかった事を認めたくないのは、欧州の列強がオスマントルコ帝国傘下の民族のの独立運動を煽った事が背景にあります。

有名な映画「アラビアのロレンス」では、オスマントルコの圧政下、中東の諸部族を英国士官ロレンスが叱咤激励して独立を助けるなんて美談に仕上げていますが、これは欧州側のキャンペーンです。

19世期に入り、産業革命を経て力をつけてきた欧州列強の格好の餌食となったのがオスマントルコ帝国でした。英仏露独が死にかけた象に群がるハイエナのように次々とオスマントルコ帝国の領地を侵食していきます。当時、英国はフランスとの間で悪名高きサイクス・ピコ協約を結び、中東の山分けを画策していた事が明らかになっています。現在、中東が抱える様々な問題はこの協約が原因の一つとして挙げられます

オスマントルコ帝国の再評価

自国の国益を優先し、中東の安定を省みなかった当時の英国の政策は非難されるべきと思いますが、英国にやりたい放題を許した中東も脇が甘いとしか言いようがありません。

国際政治は弱肉強食ですので、隙を見せたらやられます。相手の善意に期待するなんてことは、外交の世界では自国の運命を相手に委ねるようなものです。英国が一枚上手だったという事でしょう。

ただ、歴史的評価は別物ですので、勝者が描いた歴史を鵜呑みにするのではなく、客観的に検証するのは重要な事だと思います。あれだけ長く平和な時代が続いたオスマントルコ帝国の治世は再評価する価値があると思っています。中東やバルカン諸国といった、宗教や人種間の争いが絶えない地域において、如何に平和を維持できたのか、オスマントルコ帝国を研究する事で糸口が見えてくるのではと思います。

 

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