MIYOSHIN海外ニュース

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中国AI技術の進展とその限界

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既に営業開始した無人運転タクシー

中国は猛烈な勢いでAI技術を進展させている様です。

北京市では既に無人運転タクシーが営業を開始している様ですので、西側諸国をこの分野では凌駕している様に思えます。

実際のところ、彼らの技術はどこまで進んでいるのでしょうか、

米中対立が進み、西側の技術を以前の様に安易に入手できない中、問題は生じていないのでしょうか。

この点について英誌Economistが「Can China create a world-beating AI industry?」(中国は世界をリードするAI産業を作り出せるか)と題した記事を掲載しました。

かいつまんでご紹介したいと思います。

Economist記事要約

2017年に中国共産党は技術経済マスタープランの中心にAIを置きました。

その計画は良いスタートを切っている様です。

電子商取引企業であるJD.comのロジスティクス部門は、上海近郊で世界で最も先進的な自動倉庫の1つを運営しています。

5月、中国の検索大手であるBaiduは、北京で自動運転タクシーを開始しました。 SenseTimeの「スマートシティ」AIモデル(交通事故から違法に駐車された車まですべてを追跡する都市監視カメラ)は、中国および海外の100を超える都市に配備されています。

中国は、他のどの国よりも多くのAI支援産業用ロボットを配備しています。

そして2020年には、この分野での論文発行でアメリカを上回りました。

上場している中国の最も著名な5つのAI関連企業は、合計で約1,200億ドル(13.5兆円)の価値があります。

 

確かに、中国のAIは進歩を遂げている様ですが、投資と最先端のイノベーションの両方の点で、アメリカに遅れをとっています。

中国の5年前のAIマスタープランは、いくつかの目標を設定しました。

たとえば、2025年までに、技術の「主要なブレークスルー」を達成し、一部のアプリケーションで世界をリードするとしました。

この目的達成のために、国は様々な形(補助金、減税、政府調達)でAI企業を支援してきました。

国はまた、AI企業に直接投資しています。

ウイグル人の少数民族に対する弾圧を理由に制裁対象となったSenseTimeは中国政府の基金より直接投資を受け入れました。

しかし、中国のAI産業は未だに西側に後れを取っています。

出版された論文数は確かに多いですが、引用された論文の数はそれほどではありません。

それは、次の3つの理由で持続する可能性があります。

 

第一に、資本が効率的に配分されていない可能性があります。

ランカスター大学のZengJinghanは、補助金を吸い上げるためにAIを開発していると虚偽の報告を行う企業が存在すると主張しています。

コンサルタント会社であるデロイトは、2018年の自称AIスタートアップの99%が偽物であると推定しました。

そのような大騒ぎは公的資金だけでなく、人的資本も浪費すると予想されています。

 

中国の2番目の問題は、世界最高のAI研究家を採用できないことです。

シカゴを拠点とするシンクタンクであるMacroPoloによる2020年の調査によると、この分野のトップクラスの研究者の半数以上が母国以外で働いています。

アメリカとヨーロッパは、彼らにとり中国より魅力的に見える様です。

世界のトップAIタレントの約3分の1は中国出身ですが、実際に中国で働いているのは10分の1にすぎません。

 

党にとってさらに問題なのは、そのマスタープランがAIに不可欠な最先端の半導体を無視したことです。

事実上そのような半導体の全てがアメリカ製であるか、アメリカ製の機器で作られています。

そのため、トランプが採用し、バイデンが延長した中国企業への禁輸により、中国が追いつくには何年もかかるでしょう。

 

これらの課題は、今後数年間、中国のすべてのハイテク産業を悩ませ続けるでしょう。

現在彼らが置かれた状況を考えれば、彼らが当面できる事は、新境地を開拓するのではなく、既存のテクノロジーを改善することです。

いくら税金を中国政府が注ぎ込んだところで、この状況を変える事はできません。

海亀は母国に帰るか

少し前まで、中国は多くの留学生を米国に派遣していました。

その数は20万人以上と言われています。同時期の日本人留学生は2万人に満たない数ですから10倍以上の留学生を送っていたわけです。

米中対立の煽りを受けて、中国の留学生は減少していくと思いますが、この20万人の中国人留学生が母国に帰り、米国で学んだ技術を普及させていった事が、中国のAI技術の発展に大きく貢献した事は想像に難くありません。

しかし上記のEconomist記事によれば、米国でAIを研究した中国人留学生は母国に帰らず、欧米に留まっている模様です。

中国が米国との技術競争に勝利するためには、少なくとも中国人留学生を母国に帰還させる必要があるでしょう。

外国で勉強し、その後母国に帰る学生のことを中国語で「海亀」と呼ぶそうですが、この海亀の数が、米中の技術競争の勝敗を分ける事になるかもしれません。

 

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フランスから見た日本のオミクロン対策

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ジレンマに悩む日本

我が国でもオミクロン株の感染が広がっています。

全国の新規感染者数は22日、5万人を超えました

一足先にオミクロン株の洗礼を受けた欧米の国々は日本政府のオミクロン対策をどの様に見ているのでしょうか。

仏紙Les Echosが「Zéro risque ou zéro croissance : le dilemme japonais face à Omicron」(ゼロコロナか経済成長か:オミクロン株のジレンマに直面する日本)と題した記事を掲載しました。

かいつまんでご紹介したいと思います。

Les Echos記事要約

東京で深夜営業は不可能となりました。

オミクロン株の急速な拡大を懸念して、政府は東京都と他の十数の都道府県を「緊急事態宣言」に近い状態に置きました。

これらの地域の知事は、「人間との接触」を制限するために、レストラン、バー、その他のナイトライフ施設を夕方早く閉店するよう呼びかけることができます。

レストラン等のオーナーが公的資金によって補償される一方で、一連の制限は、経済を圧迫し始めています。

それは、岸田政権のオミクロン対策に疑問を投げかけています。

 

極めて少ないPCRテスト

1億2600万人の人口を持つ国は、今週の金曜日に47,000を超える新規症例を特定しました。

記録的な数字をマークしていますが、流行の正確な範囲については何も述べていません。

常にクラスターを特定することだけを求めており、フランスが毎日200万人近くをテストする一方で、日本でのテストは25万人にも達しません。

 

今のところ、対策がなまぬるいと批判される事を恐れる日本の指導者は、西側各国で既に確認されている重症化率の低さを無視して、デルタ株と同様にオミクロン株を扱っています。

岸田首相は、すべての感染者に10日間の隔離を課し、感染者と同居の濃厚接触者には最大20日間の隔離を課しました。

 

労働力不足

この処置により、少子高齢化によってすでに弾力性を失っている労働市場から毎日何十万人もの人々が、「撤退」してます。

全てのセクターが影響を受けています。

20日に世界一の自動車メーカーであるトヨタは、労働者と下請け業者の従業員の感染により、国内11工場の21の生産ラインを数日停止する事を発表しました。

 

サービス部門でも、懸念が高まっています。

東京の原宿地区にある大手携帯電話会社の従業員は、「感染者は一人しか出ませんでしたが、店内を消毒してチーム全体を検査するために2日間閉店する必要がありました」と述べています。

政府は、観光セクターを支援することを目的とした「Go-To Travel」キャンペーンを延期したばかりです。

そして、「現在の不確実性は、企業が投資をすることを思いとどまらせるでしょう」と専門家は警告します。

日本経済は昨年第4四半期に回復した後、再び低迷する可能性があります。

 

コロナの法的​​位置付け

強い影響力を持つ元首相の安倍晋三氏は、インタビューで、経済活動を解放するためにコロナの法的位置付けを変更する事を提案しました。

彼は、現在感染者が出るたびに展開される非常に厳格な管理および医療処置に言及し、 「私たちは季節性インフルエンザのようにコロナを扱う事ができるでしょう。」と主張し、ワクチンと治療が今では重症化を予防していると述べました。

日本は非常に高齢化していますが、80%がワクチン接種を受けています

21日夜の時点で、日本ではウイルスによる重症者は287人に過ぎず、1日あたりの死亡者数は12人未満です。

 

「緩和」する必要

この「緩和」という概念が一部の経済エリートによって支持されている一方、専門家は慎重なままです。

「このウイルスの重症度を下げるのはまだ時期尚早です」と、感染症専門医で神戸大学の講師である岩田健太郎教授は言います。

「緩和は医療制度にあまりにも多くの影響を与えるでしょう」と彼は説明します。

「突然、すべての病院がコロナ患者の受け入れを余儀なくされることになります。現在、彼らはコロナに適応した全国で450の医療施設によってのみ受け入れられています」と研究者は指摘します。

「さらに、オミクロンが単純なインフルエンザのように扱われた場合、患者は医療費の30%を自己負担する必要があり、高価な治療費を払えない人も出るでしょう。」と岩田教授は付け加えます。

 

政府は、他人に感染させるリスクのない感染者を「無視」すれば、450の医療センターの仕事を軽減することができます。

彼らは医療センターによってテストされることなく、医師によってオンラインで聴診する事が可能でしょう。

そろそろWithコロナへの移行を

「同居の濃厚接触者は最長20日間の隔離が必要だ。」との記述にちょっと驚きました。

これはフランス人記者の事実誤認かと思い、調べたところ間違いではありませんでした。

感染者と同居している人間は、感染者の療養期間が終了してから更に10日間隔離が必要の様です。

20日間も出勤、登校ができないとなると、確かに社会生活に大きな影響が出かねません。

それとPCRテストの数、日本はこんなに少ないんですね。

実際の感染者数はもっと多い可能性があります。

 

日本は高齢化していますので、用心は必要ですが、そろそろWithコロナを考える時期に来ていると思います。

しかし岸田政権は慎重姿勢を崩さないでしょう。

6月に参院選挙があり、岸田首相の任期がそこで決定する事を考えれば、同首相は安全策をとる可能性が高いと思われます。

菅政権のコロナ対策が最近見直されていますが、同政権はワクチンを大量にかき集める事に成功する一方で、Go toトラベルなどで経済を回そうとの意欲も持っていました。

結果的にGo toトラベルは不評で、政権の命取りの一つになってしまいましたが、人流を制限する一方では、経済が死んでしまう事を前政権は理解していたと思います。

 

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ウクライナへの軍事援助は役に立つのか

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ウクライナをめぐる米露の睨み合い

ロシアとウクライナの紛争は今も続いています。

プーチン大統領は本気で米国に譲歩を迫っている様で、ロシアが米国に要求している内容もウクライナをNATOに加盟させない事と明確です。

米国は金融制裁をちらつかせて、ロシアを思いとどまらせようとしていますが、どうなるでしょうか。

一方で、米国はウクライナに対してスティンガー対空ミサイル(歩兵が肩に担いでヘリコプターなどを狙う)など武器供給を最近決定しました。

この様な動きに対して米誌Foreign Policyが「The West’s Weapons Won’t Make Any Difference to Ukraine - U.S. military equipment wouldn’t realistically help Ukrainians—or intimidate Putin.」(ウクライナに何の違いももたらさない​​​​西側の軍事援助- ウクライナを助けたり、プーチンを威嚇する事ができない米国兵器)と題した論文を掲載しました。著者は米国シンクタンクRand CorporationのSamuel Charap氏です。

Foreign Policy論文要約

ロシア軍がウクライナとの国境に集結する中、米国政府は、ウクライナの防衛を如何に支援するかにますます焦点を合わせています。

今週、バイデン政権はウクライナへのスティンガー対空ミサイルの供給を承認しました。

 

一部の人々は、ウクライナへの米国の軍事支援がロシアが攻撃を開始するのを思いとどまらせる可能性があると主張しています。

また、ウクライナが勝つことは期待できないが、ロシアに高い代償を払わせる事ができる、すなわち、ロシア軍の人的損害を増やす事によりロシア国内でプーチン大統領に対する批判を引き起こす事が可能だとする声もあります。

これらの議論はどれも説得力がありません。

それはウクライナとの安全保障協力をやめるべきだという意味ではありません。

軍事援助がこの危機を解決するための効果的な手段ではないと申し上げたいのです。

 

2014年以来、ロシアによるクリミアの併合とドンバスの侵略に続いて、米国はウクライナに25億ドルを超える軍事援助を提供してきました。

この支援は主に、ドンバスでのロシアが支援する分離主義勢力との紛争におけるウクライナの能力を改善することを目的としています。

しかし重要なことは、ウクライナ軍はドンバスでロシア軍と戦っているわけではない点です。

確かに、ロシアはウクライナにおける分離主義勢力を武装させ、訓練してきました。

しかし、ウクライナ政府自身も説明していますが、反乱軍の大多数はウクライナの人々で構成されており、ロシア軍の兵士ではありません。

 

今回、報告された大規模なロシア軍の国境近くへの集結は、過去7年間の小競り合いとは根本的に異なることを示唆しています。

ロシアには、数万人の要員、数千台の装甲車両、数百機の戦闘機が関与する大規模な共同攻撃作戦を実行する能力があります。

その気になれば、壊滅的な空爆とミサイル攻撃を皮切りに、ウクライナの奥深くに侵入して、基地、飛行場、および兵站部隊を攻撃するでしょう。

 

要するに、今回ロシアが企図する戦争はウクライナにおける現状の小競り合いとは全く異なるのです。

それはロシアを抑止するという米国の軍事援助の正当性を損ないます。

ウクライナ軍はドンバスでの小規模の紛争で戦うように形作られているため、ロシア正規軍の脅威に対する抑止力はありません。

米国の提供する兵器にも抑止力はありません。

ロシアが大規模な戦争を開始し、西側からの莫大な経済制裁を受ける覚悟があるのであれば、米国の軍事援助が何であれ、それを阻止することはできないでしょう。

 

戦争が始まると、ウクライナ軍はほぼ即座に絶望的な状況に陥ります。

ドンバスにあるウクライナの要塞は、現代のマジノ線(第二次世界大戦前に構築されたフランスの要塞、難攻不落と言われたがヒトラーに簡単に突破された。無用の長物の例え)のように見えるかもしれません。

簡単に迂回され、破壊されます。

 

ウクライナの国土が大きいという事は、陸軍が広い地域を移動する必要があることを意味します。

機動戦は、はるかに優れた訓練と装備を備えたロシア軍に有利です。

ロシア軍は、シリアでの戦闘で、無人機による長距離攻撃や偵察を実践してきました。

そのパイロットはシリアで実戦を経験しています。

ウクライナ軍は主に古いソ連製兵器を運用しており、ロシア軍はその弱点を熟知しています。

要するに、軍事バランスはロシアに圧倒的に有利ですので、米国が提供するかもしれない軍事援助は、紛争の結果を決定する上でほとんど無意味になるでしょう。

 

今回の軍事援助は、ウクライナがロシアに占領された場合、ウクライナの反乱軍がロシアの占領軍に代償を払わせる事が可能だとの議論もあります。

多くの人が、1979年のソ連侵攻後のアフガニスタンのムジャヒディンに対する米国の援助の類似性を念頭に置いています。

ロシアが敵対的なウクライナ人の多い地域で長期占領を試みた場合、これらの形態の支援は、ロシアに問題を生じさせる可能性があります。

しかし、ウクライナ蜂起軍への米国の支援は、紛争が始まる前に議論されるべきではなく、長期にわたる紛争中の最後の手段であるべきです。

 

平時であれば、米国がウクライナに軍事支援を提供するのには多くの正当な理由があります。

しかし、現在は平時ではありません。

軍事援助は今や危機の解決には役に立ちません。

侵略の危険にさらされている米国のパートナーを助けることは道徳的に正当化されるかもしれません。

しかし、ウクライナに対する潜在的な脅威の規模を考えると、米国が支援できる最も効果的な方法は、外交的解決策を見つけることです。

駆け引き上手のプーチン大統領

プーチン大統領は究極の現実主義者であり、彼はウクライナへの侵攻の損得を冷静に分析している筈です。

冷戦後徐々に旧共産圏の国々をNATOに侵食されたロシアにしてみれば、ウクライナは最後の砦であり、この国がNATOに加盟することだけは何としても食い止めなければならないと考えているでしょう。

そしてバイデン 政権がウクライナに対してできる事が限定的な今こそ、絶好の攻め時だと考えているものと思われます。

勿論、ロシアがウクライナに侵攻すれば、西側から厳しい経済制裁を課されることはプーチン氏は十分認識しており、彼はぎりぎりまで外交交渉を続けようと思っている筈です。

しかし振り上げた拳はおろしません。

それは外交交渉に役立ちます。

この点、ロシアに比べて米国の対応は不手際が目立ちます。

「ウクライナに軍隊は派遣しない」とか「小規模の侵攻ならロシアへの制裁は厳しいものにならない」とか、ロシアとの交渉を不利にする声明を続け様に発していますが、この調子で行けば、ロシアに足下を見られるのは必至です。

 

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米国ビッグテックの野望と脅威

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MAAMAとは

GAFAという言葉は米国のビッグテックを称する言葉として有名でしたが、マイクロソフトの復権と共にGAFAMという言葉に変わり、更にFacebookがMetaと改称した事により、最近は「MAAMA」という言葉が使われる様になった様です。

彼らの時価総額は優に日本の会社全体の時価総額を上回り、トップのアップルは3兆ドルを超えています。

彼らの投資意欲は衰えを知らず、先日はマイクロソフトがビデオゲーム会社を8兆円近い金額で買収し、話題になりました。

彼らが抱える問題とその戦略について英紙Economistが「Big tech’s supersized ambitions - From metaverses to quantum computing」(ビッグテックの巨大な野望 - メタバースから量子コンピューターまで)と題した記事を掲載しました。

かいつまんでご紹介したいと思います。

Economist記事要約

ビッグテック企業の野心と貪欲さに限界はあるのでしょうか?

10月、Mark ZuckerbergはFacebookの名前をMetaと変更しました。

1月18日、マイクロソフトは、ビデオゲーム会社であるActivision Blizzardを690億ドル(7.8兆円)で買収しました。

これらの決定は、アメリカの5大企業であるAlphabet、Amazon、Apple、Meta、Microsoftでの大規模な新規投資の一部であり、彼らを総称してMAAMAと呼んでいます。

彼らは過去1年間に2800億ドルを投資しました。これは、米国の投資の9%に相当し、5年前の4%から倍増しました。

 

彼らは過去の巨大企業の衰退の歴史に目を向けています。

フェアチャイルドセミコンダクターは1950年代に支配しましたが、現在は存在していません。

かつて携帯電話では無敵に見えたノキアは、スマートフォンへの移行に失敗しました。

パンデミックは、ビッグテックの売り上げを一気に押し上げましたが、彼らすべてが次に来るものに備えようとしています。

問題は、それが何になるか誰にもわからないということです。

しかし、それはおそらく、人々を情報やサービスに接続する手段として、スマートフォンに取って代わる新しいデバイスを伴うでしょう。

これは、AppleがMetaやMicrosoftに対抗してVR(仮想現実)ヘッドセットを開発する理由を説明しています。

Alphabet、Apple、Amazonはすべて自動運転車に巨額の投資をしました。

そして、新しいデバイスに高度な処理能力を提供するために、特殊な半導体の設計や量子コンピューティングなどの新しいアプローチの追求に莫大な金額が費やされています。

 

MAAMAのもう1つの優先事項は、ユーザーを引き込むことで毎月の使用料を引き出すことができるプラットフォームを作成し、ネットワーク効果を利用してさらに顧客を増やすことです。

Alphabet、Amazon、Microsoftが運営するクラウドコンピューティングプラットフォームは、文字通り、他社のコンピューティング環境をホストするために定額払いを請求します。

 

これらの企業があまりにも強力であることを顧客は警戒するかもしれません。

1つの見方は、彼らの大規模な顧客基盤と、AIをトレーニングするための膨大なデータの蓄積が、競合先が乗り越えられない利点を与えるというものです。

しかし、これらの新しい分野はすべて、当面は競争が確保されている様に見えます。

Epic Gamesが作成した「Fortnite」には世界中で3億人以上のプレーヤーがいますし、半導体会社のNvidiaもこの分野に参入しています。

Microsoftは今回のActivision買収で、ゲームの市場シェアを10〜15%に引き上げるだけであり、独占ではありません。

自動運転車では、ビッグテックはテスラ、GM、フォルクスワーゲンなどと戦わなければなりません。

世界の新興企業は2021年に6,210億ドルのベンチャー資金を調達し、ビッグテックが投資した額をはるかに上回っています。

さらに、将来、ビッグテックの有する集中型プラットフォームによって支配される可能性が低くなるという推測があります。

今日のAIの主流である深層学習技術は、大量のデータに依存していますが、将来はWeb3と呼ばれるユーザーが所有および運用する分散型ブロックチェーンサービスが普及すると予想されています。

現時点では、Web3は多くのエネルギーを消費し、見た目ほど分散化されているとは限りません。

しかし、分散型ファイナンス(DeFi)という分野では、急速な進展が既に見られています。

 

それにもかかわらず、規制当局は先手を打って取り締まりたいとの誘惑に駆られるかも知れません。

現在アメリカの独占禁止法の最高責任者であるリナ・カーンは、大手ハイテク企業が隣接分野に進出することを禁止することを推奨しました。

しかし、現時点では軽い規制が最善のポリシーです。

テクノロジーへの投資は生産性の向上に関連しており、ビッグテックが再投資したキャッシュフローのシェアは10年前からほぼ2倍になっています。

それはまだ危険ではありません。

歴史は、テクノロジーの巨人が新しいテクノロジーを習得できなかったために衰退した事を示唆しています。

現在の巨人がその運命を回避するために新しい分野に移動するために何十億ドルも費やしたいのであれば、それを止める理由はありません。

我が国はどう対処すれば良いのか

上記の記事の中でWeb3に関しての記述がありますが、これはもう少しかみ砕いてご説明する必要があると思います。

現在、我々はアップルやGoogleといったビッグテックの用意したプラットフォームで情報をやり取りしており、彼らは吸い上げた膨大なデータをAIを使って解析する事により、他社を寄せ付けないアドバンテージを得ているのが現状です。

しかし、Web3と呼ばれる次世代のインターネットシステムはブロックチェーンを使った分散型になり、ビッグテックがデータを一方的に吸い上げるわけではなくなります。

これがゲームチェンジャーになるのではと期待されているわけです。

 

それにしても、1980年代に一斉を風靡した日本企業の名前は上記の記事には一切出てきません。

最近日本企業の影は薄くなるばかりです。

米国以外の企業が全て埋没しているかといえばそうではありません。

韓国のサムスンや映画、音楽は世界市場で存在感を示しています。

先日日本の芸能プロダクション、エイベックス社の会長さんが韓国の芸能市場における成功について「韓国は自国の市場が小さいので、最初から世界市場で勝負しようと国際スタンダードを採用している。日本は中途半端に自国市場があるので、ドラマの長さなども日本しか使わない仕様になっている。」と語っていました。

ここでもガラパゴス化極まれりです。

全部がそうとは言いませんが、そろそろ日本も茹でガエル状態から脱する必要がありそうです。

本日の日経は、円の実力は50年前の水準に低下したと報道しています。

 

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とっておきのアネクドート(続編その8)

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お硬い話題が続いたので、久しぶりにロシアのアネクドート(小噺)を取り上げます。

最近は強権主義の国が増えてきていますが、そういう国では政府や高官をからかっただけで侮辱したと罪に問われるケースもある様です。

旧ソ連時代のアネクドートは罪に問われないギリギリの線を狙っており、庶民の知恵が感じられます。

アネクドート

1980年のモスクワオリンピックで、ブレジネフ書記長はスピーチを開始します。 「O!」 —拍手。 「O!」 —大喝采。 「O !!!」 —聴衆全員が立ち上がり、拍手喝采します。

補佐官が書記長に駆け寄り、ささやきます。

「ブレジネフ同志、これらはオリンピックのロゴ(五輪の輪)です。すべてを読む必要はありません。」

注)ブレジネフ氏は原稿を棒読みするので知られていました。

 

ブレジネフがイギリスを訪問した際、サッチャー首相はゲストに「チャーチルに対するあなたの見方はどうですか?」と尋ねました。

「チャーチルとは誰?」 ブレジネフは答えました。

大使館に戻ると、ソビエトの使節は次のように述べました。

「おめでとうございます、ブレジネフ同志、あなたはサッチャーに敬意を表しました。 彼女はもう愚かな質問をすることはないでしょう。」

「サッチャーとは誰?」 とブレジネフは答えました。

 

男は妻と小さな子供と一緒にドライブしていました。

民兵が彼らを引っ張って、飲酒検査を受けさせました。

「あなたは酔っています」と民兵は主張しました。

男は飲酒検知器が壊れていると抗議し、警官に子供を検査するように要求しました。

子供も酔っ払っているとの結果が出ると、警官は肩をすくめ、「確かに検知器は壊れている様だ」と言って、彼らを開放しました。

男は妻に「ほら、子供にウォッカを数杯飲ませても害はないと言っただろう」と言いました。

 

英国の科学者は、ロシア人観光客のように振る舞う2週間の実験を実施しました。

その結果、彼らはアルコールが最初の3日間だけ有害であることに気づきました。

翌週には、アルコールが有用になり、後で必要になる事を発見しました。

 

アメリカの犬、ポーランドの犬、ソビエトの犬が一緒に座っています。

アメリカの犬は、「私の国では、十分に長く吠えると、買主に聞こえて肉が与えられます」と言います。

ポーランドの犬は「肉とは何ですか?」と聞きました。

ソビエトの犬は「吠えるとはどういう事ですか?」と聞きました。

 

地方共産党会議は、社会主義革命の記念日を祝うために開催されました。

会長はスピーチをします。

「 革命後の党の驚くべき成果を見てみましょう。 たとえば、このマリア、革命前の彼女は読み書きのできない農民でした。 彼女は服を1つしか持っておらず、靴も持っていませんでした。 それが今、模範的な乳搾り女です。 イワンを見てください。 彼はこの村で最も貧しかった。 彼には馬も牛も斧さえもありませんでした。 それが今、靴を履いたトラクターの運転手です! そして、セメノビッチ・アレクセイエフ–彼は厄介なフーリガンであり、酔っぱらっいの与太郎でした。 彼は手当たり次第何でも盗むので、信用する人は誰もいませんでした。 それが今、党の書記長です!」

 

フランス人、日本人、ロシア人が外国人に捕らえられています。

彼らを独房に閉じ込め、2つの鋼球を使って彼を驚かせるように要求しました–勝者は解放され、残りは処刑されます。

1週間後、フランス人は鋼玉でジャグリングを行いました。

日本人は石庭を作りました。

しかし、ロシア人が勝者と判定されました。

彼は一つのボールを壊し、もう一つのボールを失いました。

 

1937年のスターリンによる粛清の嵐の時代に生きた2匹のウサギの会話。

最初のうさぎ:「そんなに急いでどこへ行くんですか?」

2番目のウサギ:「聞いてませんか? すべてのラクダが去勢されるという噂が流れています。」

最初のウサギ:「あなたはラクダではありません。」

2番目のウサギ:「彼らがあなたを捕まえて去勢した後、あなたがラクダではないことを証明しても意味がありません。」

 

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急拡大するサイバー攻撃の脅威

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麻痺する社会インフラ

パンデミックの最中にハッカーは医療システムを攻撃し、英国をはじめとする多くの病院が機能不全に陥りました。

全てのものがインターネットに繋がるIOTの時代、医療、運輸、金融など全てのインフラが攻撃対象となっており、我々の生活は麻痺しかねません。

しかも、ハッカーに対して身代金を払った企業は泣き寝入りするケースが多く、その被害は表に出てきません。

従って公表されているサイバー攻撃は氷山の一角であると推測されます。

現在のサイバー対策にどの様な問題があり、それをどう解決すべきかについて米誌Foreign Affairsが「How to Cyberproof the Private Sector」(民間企業をサイバー攻撃から守る方法)と題した論文を掲載しました。

著者のRaj M Shah氏はResilience Insurance社の創始者で、サイバーセキュリティーの専門家ですが、米国防総省の元顧問という経歴をお持ちです。

Foreign Affairs論文要約

世界中でサイバー攻撃が発生する中、民間企業はサイバーセキュリティへの支出を劇的に増加させました。

最近の調査によると、従業員数が1,000人を超える企業は、2021年4月までの1年間に平均1300万ドル以上(約15億円)をサイバー防衛に費やし、わずか2年前から3倍以上に増加させました。

その支出はもっともです。

昨年の夏、米国の石油パイプラインへのサイバー攻撃により、OPECの石油禁輸を連想させる様なダメージが発生しました。 

しかしこの支出の増加は脅威を回避するという点で、あまり役に立っていません。

サイバー攻撃の大部分は、フィッシングや既知の脆弱性のパッチの適用が遅いなどの基本的なエラーが原因であり、攻撃者は低コストのやり方で高価なサイバー防御システムに侵入しています。

企業は、進化するサイバー脅威への対応が遅すぎ、脆弱なソフトウェア製品を調達しており、セキュリティ支出を正しく割り当てていません。

 

しかし、より大きな欠陥は、標的となる民間企業が現在のサイバー脅威に関するタイムリーで包括的な情報を入手できないことです。

何故なら特定の攻撃に関するインテリジェンス、および特定の防御の有効性は、サイバーセキュリティ会社によって秘匿される傾向があるからです。

これらの問題に対処するために、米国政府は、サイバー脅威に関するインテリジェンスデータの共有を促進する必要があります。

しかし、それだけでは不十分です。

包括的なサイバー防御戦略には、企業自身が脅威に迅速に対応し、最善の防御を実施する事が必要になります。

 

イスラエルの企業Cyber​​sixgillは、企業の情報セキュリティ責任者の90%が古いインテリジェンスデータに基づいてサイバーセキュリティの意思決定を行っていると推定しています。

また、情報共有がほとんどないため、サイバー攻撃者は同じ脆弱性を何度も突いて、世界中の何千もの企業に損害を与えることが可能です。

一方、企業は、評判を損なうことや訴訟にさらされることを恐れて、サイバー攻撃が発生してもそれを開示することを躊躇する傾向があります。

その躊躇により、ハッカーは他の会社に対して同じ方法を再利用できます。

また、サイバーセキュリティー会社も、同様に、特定のセキュリティ防御の有効性に関する情報を共有することを望んでいません。

その結果、多くの企業は、データではなく、マーケティングや口コミに基づいてサイバーセキュリティ投資の決定を下しています。

 

この問題は克服できないものではありません。

20年前、航空業界は、航空会社に墜落やニアミスに関する情報を共有させる際に同様の困難に直面しました。

しかし、2007年に、連邦航空局(FAA)は共有(ASIAS)プログラムと呼ばれる自主的な情報共有機関を設立しました。

現在、米国が運営する航空会社の99%から安全性データを受け取っています。

この成功にはいくつかの理由があります。

ASIASと共有されるすべてのデータは、完全な匿名性が保たれます。

同時に、航空会社は、ASIASと積極的にデータを共有する場合にのみ、FAAの監査を免除されます。

これはフリーライダー(データを共有しない会社)を排除する意味で重要な条件です。

この手法により、安全性が高まりました。

今世紀の最初の7年間に16件の死亡事故が発生したのに対し、その後の10年は2件のみです。

 

サイバーセキュリティー庁(CISA)は、連邦航空局(FAA)のこの成功モデルを真似しようとしました。

しかし、情報提供者の数が極めて少ないため、期待された機能を発揮できませんでした。

CISAは、自社の脅威データを積極的に共有している企業のみがデータを利用できるようにする必要があります。

そうすれば、多くの企業が同業他社の1つが攻撃されたときに特定の防御を迅速に強化できるようになります。

これにより、サイバー攻撃を開始する難しさとコストが大幅に増加します。



サイバー脅威への企業の対応を強化するために、一部の専門家は政府による監視の強化を求めています。

しかし、政府の規制は絶えず変化する脅威に対してあまり効果的ではありません。

新しい攻撃法は、一部の規制を一夜にして時代遅れにする可能性があります。

 

一方、政府はサイバー保険業界と提携することができます。

サイバー保険業界は、サイバー侵害に対する請求の規模と頻度を減らすために、企業に費用対効果の高いセキュリティ対策を実施させることに強い関心を持っています。 

すでに、多くのサイバー保険会社は、絶えず変化するリスクに対応する変動価格モデルを採用しています。

たとえば、ランサムウェア攻撃がより頻繁かつ破壊的になるにつれて、サイバー保険料は昨年の間に96%上昇しました。

この様な保険料の急上昇は、脆弱性を改善し、サイバーセキュリティ予算を効率的に割り当てるよう企業に圧力をかけます。

変化する脅威に機敏に対応する人は、保険料が下がるのを目にするでしょう。

火災保険会社が建築基準法の改善と消防署の数の増加を促進するのと同様に、サイバー保険会社は企業に最も効果的で最新のセキュリティ基準と慣行を採用させることができます。

政府機関や企業に最低レベルのサイバー保険を義務付けることにより、政府は効果的なサイバーセキュリティを急速に広めることができます。

 

現在、重大な障壁が、サイバー保険の広範な使用を妨げています。

マカフィーは世界経済がサイバー攻撃から受ける損失は年間1兆ドル(約115兆円)を超えると集計していますが、サイバー保険市場全体で年間保険料は55億ドル(約6千億円)しかありません。

ランサムウェアやサプライチェーン攻撃の急増に伴い、多くの保険会社が市場から撤退しています。 

最近の調査によると、77%の企業が、できるだけ広範囲なサイバー保険に加入したいと考えている様ですが、多くの保険会社は、保険範囲の拡大に消極的です。

更に、民間保険会社は最も深刻なサイバー攻撃、特に国家によって行われる可能性のある大規模なデジタルネットワークを狙った攻撃に対して保険を提供できません。

たとえば、米国経済の大部分が依存しているクラウドインフラへの直接攻撃は、1兆ドル近くの費用がかかる可能性があります。

保険業界は、そのような損失を吸収するための集合的なリソースを欠いています。

 

この問題の1つの解決策は、政府を最後の砦の保険会社にすることです。

パンデミックが発生した時、政府の救済により多くの企業が破産しませんでした。

同様に、真に壊滅的なサイバー攻撃が発生した場合、民間企業は政府の支援を受ける必要があるかもしれません。

ただし、前提条件が必要です。

政府の救済を受けられることを企業が知っている場合、サイバーセキュリティに投資するインセンティブが低下します。

代わりに、政府は、厳格なサイバーセキュリティ基準を満たし、最低限の民間保険を付保した企業にのみバックストップを提供する必要があります。

如何に増大するサイバー攻撃の脅威に備えるか

マカフィーの試算では、世界のサイバー攻撃損害額は年間1兆ドル(115兆円)に達する様ですが、これは驚くべき数字ですね。

日本の国家予算を上回ります。

地球温暖化のリスクも金融業界や保険業界が吸収できるリスクの上限を超える可能性があると言われますが、サイバー攻撃も同様のリスクをはらんでいると思います。

しかしこの論文の提唱する情報の共有は、この業界ではなかなか難しい様に思います。

ワクチンの製造ノウハウを無償でシェアすべきとの話も結局実現しませんでしたが、サイバー対策を専門とする会社にしてみれば、彼らのノウハウは飯の種です。

航空会社の事故データ共有とは若干性質が異なる様に思います。

ここのところをどう解決するかが今後の最大の難問だと思います。

上記論文では民間企業の防御に焦点を当てていますが、我々個人の資産もハッカーに狙われています。

デジタル化は世の流れですが、サイバー攻撃のリスクは高まります。

十分気をつけましょう。

 

最後まで読んで頂き、有り難うございました。

カザフスタン暴動の真相とは

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プーチン大統領の即断

市民デモから始まったカザフスタンの暴動事件は、カザフスタン政府の要請に答えたロシア政府が即座に空挺部隊を現地に派遣しました。

暴動は鎮圧された様です。

燃料高騰をきっかけに始まった今回の事件の真相は何だったのか。

この点について英誌Economistが「Central Asia will remain unstable, however many troops Russia sends - Events in Kazakhstan are not what they seem」(不安定な中央アジアに送られるロシアの軍隊 しかしカザフスタンでの出来事の本質はそこではない)と題した記事を掲載しました。

かいつまんでご紹介したいと思います。

Economist記事要約

先週、旧ソ連における自由と民主主義の新たな後退、そしてプーチン大統領の新たな軍事的示威活動が見られました。

それはカザフスタンの最近の出来事を読む一つの方法であり、そこにはいくつかの真実があります。

 

燃料価格の高騰に対する不満が、腐敗した独裁政権に対する広範な抗議行動にエスカレートし、その後、政府の建物に対して暴徒が攻撃を始めた時、当局はこれに反撃を開始しました。

彼らは警官隊に警告なしに発砲する事を命じただけでなく、ロシアのプーチン大統領に空挺部隊を派遣することを要請しました。

カザフ人の権利は激しく踏みにじられ、プーチン氏は再びこの地域の王者としての地位を確認しました。

彼は、旧ソ連ではこれ以上「カラー革命」を許さないだろうと宣言しました。

これは腐敗した抑圧的な政府が、市民による平和的な抗議を常に打ち砕くことができるようにすることを意味します。

 

しかし、この見方は誤解を招く可能性があります。

確かに、権威主義体制は権力に固執して武力を行使し、プーチン氏は地域でのロシアの優位性を主張しています。

しかし、それは今回の暴動が実はカザフスタンのエリート間の権力闘争であった事を覆い隠します。

今週まで、カザフスタンの大統領、トカエフ氏は、彼の前任者であるナザルバエフ氏によって構築されたシステムを守るための単なる中継ぎと見なされていました。

しかしデモ隊が非難したのはナザルバエフ氏であり、混乱によって明らかに最も弱体化したのはナザルバエフ氏です。

彼の取り巻きは、市民のデモを自分の目的のために利用したとして非難され、政府の上級職から解任され、ナザルバエフ氏自身も国家安全保障評議会の議長から解任されました。

今回の事件の結果、穏やかな改革派のトカエフ氏にとって、ナザルバエフ氏が遺した歪んだ国家を彼の意に沿ったものに作り替える事が容易になった事は間違いありません。

 

同様に、プーチン氏がキングメーカーとして支援を要請された事は彼にとって喜ばしいことですが、カザフスタンと更に言えば中央アジアの国々が、今後、彼にとって問題の原因になる可能性を忘れてはなりません。

一つには、彼はナザルバエフ氏を真似て、彼と仲間の利益を保護するような引退の形を作り上げようとしていた節があります。

しかし、今回の事件はそれが難しいことを示唆しています。

さらに、カザフのエリート間の権力闘争は、中央アジアがいかに手に負えないかを示しています。

この地域は、多くの言語と民族があり分裂した地域です。

中央アジアの7,500万人の人々のほとんどは、少なくとも名目上はイスラム教徒ですので、世俗的な政府は、信心深い国民が彼らに反旗を翻すのではないかと恐れています。

影響力を増したロシア

今回のカザフの騒乱がカザフ政府内の権力闘争に発展したとの分析は正しいと思います。

ひょっとするとトカエフ大統領は最初からシナリオを書いて、事前にプーチン大統領から協力の約束を取り付けていたかもしれません。

今回、ナザルバエフ大統領の右腕と言われたマシモフ元首相が逮捕されたり、前大統領の長女ダリガ氏が一昨年国会議長を解任されたりした事を考えると、トカエフ大統領は周到にナザルバエフ氏から権力を奪い取ろうと工作してきたふしがあります。

 

一方、「プーチン大統領は今回の権力闘争の勝者では必ずしもない」との分析はどうかなと思います。

カザフスタンは中央アジアの中では、圧倒的にロシア系住民の数が多い事(約2割)で知られています。

ロシア系住民が多いと言う意味ではウクライナと似ています。

そんなカザフスタンの初代大統領となったナザルバエフ前大統領は、慎重にかつ巧妙にロシアの影響力を排除しようと動いてきました。

公用語にカザフ語を加えたり、ロシアとのバランスをとるために中国が提唱する上海条約機構に加盟したり、西側の投資を引き込んだのもロシア離れの一環です。

しかし、今回トカエフ大統領はプーチン氏に軍隊の派遣を要請しました。

これはロシアにとってみれば渡りに船だったと思います。

今後、トカエフ大統領はロシアに足を向けて寝れません。

以前ナザルバエフ前大統領が目指したロシアから一歩距離を置いたカザフスタンは実現不可能になったのではないでしょうか。

今後、注目は中国の出方です。

既に習近平主席は、今回の暴動に関して政府による鎮圧を肯定する声明を発表した様ですが、中国にとってもカザフスタンは長い国境線を共有する重要な隣国です。

しかも国境を挟んでウイグル系の民族が両国に居住しており、カザフスタンの安定は中国にとっても重要です。

一帯一路の重要拠点であるカザフスタンにおいてロシアの影響力が増していくことに、中国がどう対処するか注目されます。

 

最後まで読んで頂き、有り難うございました。



コロナで変化を迫られる宗教界

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コロナの直撃を受けた宗教界

新型コロナは様々な業界に大きな影響を与えました。

一番大きな被害を受けたのは、航空産業やホテル業かも知れませんが、どうやら宗教界も例外では無い様です。

英誌Economistが「The world’s religions face a post-pandemic reckoning」(パンデミック後の審判に直面する世界の宗教)と題した記事を掲載しました。

かいつまんでご紹介したいと思います。

Economist記事要約

コロナ感染の広がりと共に、教会は信者を維持する事がこれまで以上に困難になっている事が明らかになりました。

パンデミックはオンラインサービスへの移行を加速させ、かつて忠実だった多くの信者に教会に行かなくなる言い訳を与えました。

多くの宗教団体は一晩で教会のドアを閉め、サービスをズームに移しました。

現在、教会が再開されるにつれて、彼らは何人の信者が戻ってくるか確信が持てません。

おそらく、戻ってくる人が少なければ、すでに目立っていた2つの傾向が強まる可能性があります。

多くの宗教団体は、十分に活用されていない財産を売り払うでしょう。

そして、より多くの教会が合併されるでしょう。

 

経済学者は、宗教団体をまるで企業のように分析してきました。

1776年、アダム スミスは、「国富論」で、教会は肉屋、パン屋、醸造所に似た企業であると主張しました。

自由で競争の激しい市場であり、寄付やボランティアに頼って目的を達成するため、聖職者は「熱意」と「工夫」で、教会を信者で埋める必要があります。

合併、買収、破産は避けられません。

 

今日、宗教の市場は、おそらくこれまで以上に流動的です。

需要側では、西側世界の教会は、パンデミックのずっと前に始まった世界的な世俗化に苦しんでいます。

米国では、キリスト教徒として特定される市民の割合は、2000年の82%から2020年には75%未満に低下しています。

最新の世論調査によると、アメリカ人の約30%が、少なくとも週に1回は宗教的奉仕に参加していると述べています。

それは他の先進国と比較して高いですが、20年前の45%から着実に下がっています。

 

米国には約1,200のキリスト教宗派があり、競争は激化しています。

信者を獲得するために彼らはあらゆる方法で崇拝を魅力的にする必要があります。

ギャラップの調査によると、アメリカ人の4分の3は、音楽が要因であると述べています。 85%が社会活動を魅力だと考えています。

 

パンデミックは、世界中の教会の革新に拍車をかけています。

たとえば、英国のミルトンキーンズクリスチャンセンターは、オンラインと対面の両方で宗教教育コースと祈りのグループを開発しました。

しかし、多くの教会は追いついていません。

一部の聖職者は、ロックダウン中にオンラインに移行しませんでした。

一方、サービスのストリーミング化は信者の教会変更を容易にしました。

米国の世論調査では、14%が教会を切り替え、18%が複数の教会に出席し、32%が教会に行くのを完全にやめました。

 

一方で、教会はそのバランスシートに関心を払う必要があります。

客が来ないショッピングモールや空いているオフィスの家主の様に彼らの財産を再考する必要があります。

何世紀にもわたって、宗教は財産の形で地上の富を蓄積してきました。

バチカン市国は何千もの建物を所有しており、そのうちのいくつかはロンドンとパリのおしゃれな場所にあります。

モルモン教会はおそらく1,000億ドル相当(11兆円)の財産を米国に有していると言われています。

寺院、シナゴーグ、モスクそれらはすべて、不動産価格の上昇を注意深く見守っています。

これは、信者の教会礼拝が減少し、寄付が減少するにつれて、ますます重要になっています。

英国の教会の建物は、過去10年間で年間200以上の割合で閉鎖されています。

今後数年でさらに数百が売却または取り壊される可能性があります。

アメリカでさえ、何万もの建物が永遠にドアを閉める危険にさらされています。

アメリカのシナゴーグのほぼ3分の1は、過去20年間に閉鎖されました。

広大な赤レンガのゴシック建築であるベルリンの聖マリア教会は、この傾向を反映しています。

何世紀にもわたるフレスコ画で満たされる空間に信者はまばらです。

そのホーベルク神父は、ほとんどのドイツ人は教会が時代遅れだと思っていると言います。

一方、世界中で、光熱費と修理費用の高騰は法外になりつつあります。

英国国教会は、今後5年間の修理には、10億ポンド(13億ドル)(2020年の年収の7倍以上)が必要であると述べています。。

多くのモスク、特に西側のモスクは財政難に陥っています。

彼らは多くの場合、教会よりも多くの信者を引き付けますが、収入は十分でありません。

 

インターネットは祝福と呪いの両方でした。

2020年のカンタベリー大主教による仮想説教は、推定500万人の人々に聞かれました。これは、パンデミック前の英国の毎週の教会に通う人々の5倍以上の数です。

しかし、オンラインでの参加には代償が伴います。

信者が教会を訪ねるのをやめると、教会の建物は不要になります。

したがって、宗教団体は以前よりも早く不動産を売却するか教会を合併させる事を検討し始めました。

教会が合併する傾向は、コロナの前に始まりましたが、ペースは上がるでしょう。

ウイルスは宗教界を大きく変えています。

生き残りを賭けた競争

アダムスミスの教会の定義が興味深いですね。

確かに教会は他の多くの宗教や同じ宗教の隣の教区の教会との厳しい競争に晒されています。

信者の獲得、維持には相当な努力が必要と思われます。

そして宗教サービスは最もオンライン化が難しいものの一つではないでしょうか。

教会やモスクにおけるあの厳粛な雰囲気やお香の香りなど、オンラインでは再現する事が不可能です。

懺悔をZoomで行う事も難しい様な気がします。

しかし以前の形の礼拝はソーシャルディスタンスの確保という意味で不可能になりつつあります。

今後宗教界がどの様な方向に向かっていくのか注目です。

ひょっとするとメタバースに行くかもしれませんね。

 

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ユーラシアグループが予言する中国リスクとは

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今年の10大リスク

米国のシンクタンク、ユーラシアグループが年初に発表する「今年の10大リスク」は我が国のマスコミにも頻繁に取り上げられます。

今年はそのトップに「中国のゼロコロナ失敗」が挙げられました。

中国のコロナ対策は今のところ成功し、死者数や感染者数は14億人の人口を持つ国としては不釣り合いに少ないのに、何故ゼロコロナ失敗が大きなリスクとみなされるのでしょうか。

この点について仏紙「Les Echos」が「La politique zéro Covid de la Chine mise à rude épreuve」(厳しい試練に直面する中国のゼロコロナ政策)と題した記事を掲載しました。

かいつまんでご紹介したいと思います。

Les Echos記事要約

彼の名前は公表されたことがありません。

中国の保健当局は、武漢の生鮮食品市場に頻繁に出入りした61歳の男性であると漠然と示しています。

2年前の1月11日、中国は武漢での不審な肺炎の最初の死を発表しました。

2年後、新型コロナの感染により、世界中で550万人が命を落としました。

そして、前例のない速度でワクチンを開発したにもかかわらず、地球はまだこのコロナとの戦いを終えていません。

 

武漢では、中国の他の地域と同様に、パンデミックは2020年の春からほぼ抑え込まれており、公式の死者は4,636人のままです。

武漢の封じ込めが終わって以来、世界で最も人口の多い国は、2人の死者を追加しただけです。

しかし、中国は、流行が再発することを恐れており、オミクロン変異株の拡大を恐れています。

北京オリンピックと旧正月の開催は、国内で大規模な移動が行われると予想され、当局は警戒を怠っていません。



中国は2020年3月からゼロコロナの方針を採用し、国境を閉鎖しました。

国内では、正常な日常生活への復帰は、最初から厳格な管理の下に実現されてきました。

兵馬俑で知られる西安の1300万人の住民は、たった150人の感染が出た事から、2週間以上アパートに閉じ込められました。

北京から遠くない天津では、日曜日から1,400万人の住民が検査を受け、20人が陽性であり、そのうち少なくとも2人はオミクロン変異体が発見されました。

春以降、中国では散発的な感染が発生しており、ゼロコロナ戦略に負担がかかっています。

コロナのわずかな症例も排除するという頑固さは、これまでのところ保健面で成功していますが、経済的或いは社会的コストが増大しています。

閉じ込められた住民は食糧不足を訴え、空腹の住民はコーヒーを卵に、タバコをインスタントラーメンに交換しました。

大規模な多国籍企業も影響を受けています。

サムスンとマイクロンの2大半導体メーカーは、西安工場の操業を調整しなければならなかったと述べ、それは彼らのグローバルなサプライチェーンに損害を与えました。

 

中国は12億人の住民に中国製ワクチンを接種しましたが、ゼロコロナ政策から逸脱することを拒否しています。

人口14億人と不十分な病院システムを考えると、北京大学の研究者はこれらの制限を緩和すると国が「とてつもない感染」に苦しむだろうと警告しました。

経済的には、ゼロコロナ政策は全国的な流行からの復帰よりもコストが低いと中国は信じています。

「中国製のワクチンがオミクロンの拡散を防ぐのに効果がないと予想されるため、中国はゼロコロナ政策を変更しようとしないだろう」と、米国のシンクタンクであるユーラシアグループは予測しています。

Withコロナを排除する中国

中国は今後オリンピックを控えていることもあり、オミクロン変異株の感染に晒されます。

もし市中感染が始まれば、感染力が強いオミクロンは瞬く間に感染を拡げる可能性があります。

中国製のワクチンはメッセンジャーRNA型では無いため、オミクロンに対して有効では無いのではと推測されています。

もしユーラシアグループの予測が当たるとすれば、影響は海外にも広がり、我が国も無傷では収まりません。

中国は今や我が国の最大の貿易相手国であり、市場としてもサプライチェーンとしても重要です。

中国からの部品供給が止まれば、自動車が日本で作れないという事態も十分ありえます。

中国にファイザーやモデルナがmRNA型のワクチンを供給するという可能性もありますが、そうなれば、我が国に入ってくるワクチンは激減します。

いずれにせよ中国のゼロコロナ政策の成否は世界中に甚大な影響を与えることは間違いありません。

 

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三分の一の大使が依然空席な米国

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大使を決められない米国

バイデン 大統領は就任後一年が経ちましたが、未だに多くの大使が派遣されない異常事態となっています。

日本は漸く新しい大使が上院で承認されましたが、多くの国で大使は以前空席です。

それが小国かと思ったらそうではありません。

英国、ドイツ、イタリアも空席だというのだから驚きです。

この問題について英誌Economistが「Can Joe Biden’s relentless diplomacy work without diplomats?」(バイデン 大統領の厳しい外交は外交官なしに可能か)との記事を掲載しました。

Economist記事要約

ロシアのウクライナ侵攻を回避するためのアメリカの外交キャンペーンは今週、米露の高官の会談で山場を迎えます。

バイデン大統領の外交チームは、心配になる程上級外交官を欠いています。

彼らは、まだドイツ、英国、イタリアなど欧州の主要国に大使を派遣していません。

大統領就任からほぼ1年が経ち、驚くべきことにウクライナにも2019年以来大使がいません。

ヨーロッパだけではありません。

イランとの核交渉が難航し、中東で問題が生じていますが、、サウジアラビア、アラブ首長国連邦、カタールなど、主要な湾岸諸国のいずれにも大使がいません。

中国との争いがアメリカの最大の地政学的関心事であるアジアでは、インド、フィリピン、タイ、または地域グループであるASEANへの大使もいません。

また、韓国には数万人の米軍が配備されていますが、アメリカ大使はいません。

ワシントンの国務省には、近東、国際安全保障と核不拡散、また軍備管理のための次官補がいません。

テロ対策コーディネーターや法律顧問もいません。

トランプ氏が2020年にスティーブ・リニックを解雇して以来、監察官のポストは空席のままです。

 

「これは大きな問題だ」

「私たちには完全な国家安全保障および外交政策チームが現場にいないという事実によって妨げられています。」とアメリカ国務長官のアントニー・ブリンケンは12月14日に警告しました。

年末に漸く30人の大使が承認されました。

その中には、中国大使、日本大使、EU大使などの大物が含まれます。

それでも、まだ合計190人の大使のうち68人のポストが空席です。

 

ここ数十年、すべての大統領は、同じ問題に苦労してきました。

彼らは約4,000人の政治任命者を決定する必要があり、、そのうち約1,200人は上院によって承認されなければなりません。

上院の確認を必要とするポストが多いため、特に国務省は苦しんでいます。

大きな問題は、共和党の上院議員による妨害です。

彼らは数十人の大使の指名を遅らせたり阻止しました。

民主党は「Build Back Better」法案など、優先議決事項がある場合は、外交官承認にわずかな時間しか与えられません。

大使がいない事による被害の大きさを評価するのは難しいです。

多くの仕事は国務長官と相手のリーダーの間で直接行われています。

他の役人が仕事を引き受けることができます。

しかし、どんなに専門的であっても、臨時代理大使は、大統領の指名した大使が持つ影響力を欠いている可能性があります。

昨年夏に原子力潜水艦をオーストラリアに提供するという米英の取り決めについてフランスに事前に伝えなかった不手際は、大使不在の結果かもしれません。

 

2001年9月11日の同時多発テロに関する超党派の調査では、国家安全保障の地位に主要な要員を任命するのが遅れたことが、アメリカが彼らを阻止できなかった一因となっていることがわかりました。

当時半分の要員が指名されていませんでしたが、現在その数は3分の2に増えています。

 

多くの国では、長期にわたる大使の欠員は苛立たしいものであり、米国が撤退するのではとの疑いを生じます。

バイデン氏がウクライナへの大使を指名することさえできない事は、ウクライナ側の懸念を強めています。

おそらくプーチン大統領も同様に認識しているでしょう。

機能不全に陥った米国

この状態は俄かに信じがたいですね。

これだけ多くの主要国の大使を欠いて外交が成り立つのでしょうか。

政治的任命者である米国の大使はお飾りで、実際は生え抜きの官僚が外交を行うのだから問題ないとの意見もあるかも知れませんが、やはり大使と臨時代理大使では重みが違います。

更に驚くのは、この大使や重要な政治任命者の人事が政党の党利党略の対象になってしまっている事です。

これは米国の政治システムが機能不全に陥っている様に思います。

米国大丈夫でしょうか。

他国に付け入る隙を与えている様な気がします。

 

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内戦が生じる理由

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アメリカの政治学者の分析

新年早々、カザフスタンでは全国にデモが広がり、政府はロシアの軍隊を導入してまで、鎮静化を図っています。

今年も幾つかの国で紛争が生じ、中には内戦に発展するケースもあるでしょう。

米国の政治学者バーバラ・ウォルターの著作である「How Civil Wars Start」(内戦が始まる理由)について、英誌Economistが書評を掲載しました。

この著作についてかいつまんでご紹介したいと思います。

Economist書評要約

バーバラ・ウォルターは内戦を引き起こす原因について鋭く分析しています。

独裁政権と自由民主主義の間のどこかにある時が、内戦に対して最も脆弱です。

民主主義が機能している場合、人々は武器を取る必要がありません。

本格的な独裁政権では、行動を起こせば殺される可能性があります。

独裁政権が緩んだ時、危険な道は開きます。

「民主主義と独裁のどちらを取るかと言われれば、ほとんどの人が民主主義を受け入れるでしょう」

「しかし、民主主義への道は危険な道です。」とウォルター女史は書いています。

 

二番目の危険因子は派閥主義です。

冷戦の終結以来、おそらく内戦の75%は、政治的グループではなく、民族的グループと宗教的グループの間で戦われてきました。

ここで重要なのは、国の多様性ではなく、政治がアイデンティティを中心に展開しているかどうかです。

自分たちの支持を得るために他のグループへの恐れをかき立てる政治指導者は、特に危険です。

旧ユーゴスラビアを思い起こしてください。

冷戦が終結すると、彼らは共産主義を捨て、民主主義に向かって動き始めました。

しかしすぐに崩壊し、ミロシェビッチなどの「民族扇動家」にリードされる様になりました。

 

彼は真の民族主義者ではありませんでした。

元共産主義者だった彼は、支持を得る最も簡単な方法だったので、セルビア民族主義に切り替えました。

スピーチの中で、彼はセルビアの歴史的偉大さを祝い、セルビア人に対して行われた過去の残虐行為に対して復讐を誓いました。

彼の信者は、彼の敵であるクロアチアの大物であるトゥジマンの行動によって増大しました。

トゥジマンの殺すセルビア人がが多ければ多いほど、彼らは保護のためにミロシェビッチに頼り、逆もまた然りです。

彼らは創造的な嘘つきです。

たとえば、セルビアのテレビはかつて、セルビアの子供たちがサラエボ動物園でライオンに餌として与えられていると主張していました。

元々、彼らは、セルビア人、クロアチア人、イスラム教徒などが自由に混ざり合い、結婚した都市に住んでいました。

それらのグループがお互いを殺し始めるとは想像もしていませんでした。

 

大規模なグループが権力や特権を失うことを恐れている場合、別のリスク要因が発生します。

ウォルター女史は、この理由で発生した例をいくつか挙げています。

サダム・フセインの下でイラクを支配していたスンニ派アラブ人は、彼が倒された後、権力を失いました。

彼らの一部はテロ組織イスラム国を創設しました。

2014年のキエフでの革命後、民族的にロシア人であると考えていたウクライナの一部は、新ウクライナ政府に反抗しました。

 

苦しんでいるグループの最も不満を持っているメンバーは武器を取るかもしれません。

ソーシャルメディアは流血へのエスカレーションを加速させる可能性があります。

ウォルター女史は、Facebookが2015年にミャンマーで使用可能になった後、仏教過激派の声がどのように増幅されたかを説明します。

ロヒンギャは大量虐殺に見舞われ、ミャンマーは現在、複雑な内戦に巻き込まれています。

 

これらはすべて説得力があり、たとえばエチオピアで今日起こっている事、またはレバノンで起こっている事への有用なガイドです。

難しい民主主義への道

確かに中途半端に民主化への道を開いた国は不安定になりがちです。

ミャンマーはその例ですが、フェイスブックの導入が事態を悪化させたとは知りませんでした。

確かにSNSによる情報の拡散は、人々の怒りや誤解をあっという間にエスカレートさせかねません。

意図的にフェイクニュースを流す輩も多く、これらは対立感情を煽り立て、危険な状況を生みやすいと思います。

現在、カザフスタンで生じている内紛も心配です。

この国は中央アジアの中で最も積極的に西側のシステムを導入した国ですが、貧富の差の広がりから、国民の不満が渦巻いています。

ウォルター女史の説によれば、独裁と民主主義のちょうど間にある一番危険な状態と言えるでしょう。

 

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中央アジアの優等生カザフスタンで全国に拡がった抗議活動

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全国に暴動拡がる

カザフスタンという国をご存知でしょうか。

1991年に旧ソ連から独立した中央アジアの国々の一つですが、国土は日本の7倍もあります。

天然資源に恵まれ、独立後も中央アジアの中で最も経済的に発展した国です。

私も仕事で何度も足を向けましたが、記憶に残っているのは冬の寒さでした。

彼らが新しい首都に定めたヌルスルタン(2019年まではアスタナと呼ばれていました。)はシベリアの一部と言っても良い地域で冬の寒さは格別です。

昔シベリアに抑留された日本軍兵士は今のカザフスタンの鉱山でも働かされたと聞きますが、冬の労働は苛酷を極めたと思います。

そんなカザフスタンで、暴動が生じた様です。

この暴動に関して英誌Economistが「Kazakhstan’s president vows to cling on despite nationwide protests」(全国に広がる抗議活動にも拘らず政権に固執するカザフスタン大統領)と題した記事を掲載しました。

かいつまんでご紹介したいと思います。

Economist記事要約

カザフスタン政府が3年前に液化石油ガス(LPG)への補助金を廃止することを決議した時、その決定はほとんど注目を集めませんでした。

国の指導者たちは、この決定が、体制そのものを脅かすとは予想できませんでした。

当局は、非効率なセクターへの補助金を廃止せざるを得なかったと説明しました。

しかし 燃料生産者は、赤字で売らざるを得ない状況下、供給を増やすインセンティブを持っていませんでした。

1月1日、市場に委ねられたLPG価格は急騰し、 車の燃料として使用する燃料のコストは、昨年末から倍増しました。

石油が豊富な西部ジャナオゼンですぐに抗議行動が起こり、瞬く間に国中に広がりました。

そして要求は燃料価格に止まらず、政権交代へと拡大しました。

1月5日までに、抗議者たちは最大の都市であるアルマトイの建物を襲撃し、空港を一時的に占領しました。

大統領は首相を解任し、非常事態を宣言しました。

 

中央アジアの中では安定していると定評のあったカザフスタンでは、大規模な抗議行動はめったにありませんでした

これは主に、国の権威主義的な統治者が抗議活動を厳しく取り締まっているためです。

従って、今回の抗議活動の広がりは驚きです。

莫大な石油の富は国民の生活水準を改善させませんでした。

インフレや失業率の上昇など、より広範な経済的不満は高まり、その後、「老いぼれ」の叫び声に変わりました。

「老いぼれ」は、ソ連が崩壊したときにカザフスタンを独立に導き、現在は長老政治家として君臨する、八十代の元大統領であるナザルバエフ氏を指します。

彼は自ら選んだ後継者であるトカエフ大統領と協力して統治しています。

一部の抗議者は、ナザルバエフ氏が国家の指導者としての地位を剥奪されることを望んでいます。

彼には、訴追からの免責を含む幅広い権限と特権が与えられています。

 

支配層の傲慢さが露出したきらびやかな首都ヌルスルタンは前大統領にちなんで名付けられました。

ナザルバエフ氏の一族郎党が天然資源からの収入を懐に入れる一方で、市民は高い生活費とわずかな賃金に苦しみ、長い間静かな不満がありました。

平均給与は年間7,000ドル未満です。

産業の多様化を政府が公約したにもかかわらず、経済は天然資源に大きく依存しています。

 

「老いぼれ」は、ナザルバエフ氏だけでなく、政府全体を対象として、より広い意味を帯びています。

2019年に大統領に就任したトカエフ氏は、民主的な改革を唱え、彼が「耳を傾ける国家」と呼ぶものを作ることを約束しましたが、変化をもたらすことができませんでした。

市民の自由に対する厳しい制限が残っており、野党は存在しません

抗議者たちは、政府を追認するだけの議会を非難し、現在政府が任命している地方自治体の指導者を選挙で選ぶ様求めています。

 

ロシア政府も心配して見守っています。

プーチン大統領に近いコメンテーターは、西側がカザフスタンで革命を促進しようとしていると示唆しています。

この計画の目的は、ロシアがウクライナ問題でNATOと話し合う準備をしている時に、ロシアを不安定にする事だとしています。

1月5日遅く、ロシアを含めた旧ソ連6か国の軍事同盟である集団安全保障条約機構は、平和維持軍を介入させると述べました。

これは、1994年の結成以来初めてのことです。

 

トカエフ氏は内部の挑発者、外部の扇動を今回の暴動の理由としました。

1月5日のテレビ演説で、彼は「何が起こっても、私は首都に留まる」と述べました。

しかし、その発言が国民が聞きたい内容であったかどうかは不明です。

トカエフ氏の言う「耳を傾ける国家」は難聴である事が判明しました。

市場主義経済は万能か

カザフスタンはこれまで中央アジアの国々の中では、最も経済成長し、政府も安定していると見られていました。

それだけに今回の全国に広がった抗議活動は驚きです。

この国は石油資源に恵まれていましたので、外資特に欧米のオイルメジャーが油田開発に巨額の投資を行いました。

当時のナザルバエフ大統領は外国資本に門戸を開き、市場経済の導入を中央アジアの中で最も積極的に進めました。

中央アジアの優等生と言われた国でしたが、問題はどこにあったのでしょうか。

社会主義経済の国であったカザフスタンの様な国に一気に資本主義、市場経済を導入すると、極端な貧富の差が生じがちです。

カザフスタンも例外ではありませんでした。

大統領の取り巻きは大金持ちになる一方で、国民はインフレや失業に喘いでいる訳です。

西側の国なら経済がダメになれば、政権交代もありえますが、野党も存在しないカザフスタンではそれも望めません。

同じ様に急激な市場経済導入を経験したロシアの国民も、旧ソ連時代の生活の方が良かったという人が多い様ですので、政権交代が可能な体制が整わない中で、市場経済を導入するのは無理がある様です。

西側もそろそろ気づかないといけないと思います。

Economistなど欧米のメディアは、今回のカザフの抗議活動から国民が欧米の様なシステムを望んでいると理解している様ですが、実際、カザフスタンの国民が望んでいるのは、旧ソ連時代の様な、「皆が貧しいが、配給品でなんとか暮らしていける社会」かも知れません。

 

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独ビオンテック社創業者が語るmRNA療法の将来

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世界を救ったビオンテック社

米製薬大手ファイザーが販売しているコロナワクチンは、独ビオンテック社との間で共同開発されたものです。

このビオンテック社がmRNA技術を長年に亘って研究してきた事が、新型コロナの感染拡大を食い止めた訳ですが、同社の創業者である​​Ugur SahinOzlem Tureci英誌Economistに今後のmRNA技術の可能性に関して投稿しました。

トルコ系移民である彼らの「Ugur Sahin and Ozlem Tureci on the future of mRNA therapies」(ウール シャヒン、オズレム ツレジmRNA療法の将来について語る)と題した記事をご紹介したいと思います。

Economist寄稿文要約

複数のコロナワクチンの急速な開発は、医薬品開発において前例のない成果です。

しかし、これから更に良いニュースがあります。

メッセンジャーRNA(mRNA)技術に基づくワクチンの開発は、他の疾患の治療法の開発における新時代の到来を告げるものです。

 

mRNAの飛躍的進歩は、有望な概念をバイオ医薬品プラットフォームに変換するのに役立った30年にわたる科学的協力によって可能になりました。

15年以内に、新たに承認される薬剤の3分の1がmRNAに基づく様になると私たちは信じています。

複雑で時間のかかる発酵プロセスに頼って薬を製造するのではなく、mRNA療法は、患者自身の細胞を薬工場に変えます。

各mRNA分子は、特定の目的のタンパク質を製造するように細胞に指示するレシピです。

私たちの新型コロナワクチンは、細胞にコロナウイルスの外側のコーティングに見られる「スパイク」タンパク質を製造するよう促し、免疫系を刺激して、ウイルスを認識して防御できるようにしました。

 

この技術は、40年以上前の組換えDNA技術(インスリンなどのヒトタンパク質医薬品の生産を可能にした)、または実験用発酵槽でのモノクローナル抗体の発足に匹敵する、製薬業界のターニングポイントです。

この技術を薬に応用することは、業界を変革することを約束します。

mRNAに基づくコロナワクチンの開発は、感染症の予防におけるこのアプローチの有効性と安全性を証明しています。

安全で効果的なワクチンがパンデミックの真っ只中に12か月以内に開発され、その後大規模に製造されたという事実は、mRNAワクチンが将来の感染症対策プログラムで重要な役割を果たすことを示唆しています。

 

それはまた、mRNAワクチンが他の感染症に対して展開される道を開きます。

そのような病気に対するワクチンの多くは、mRNAを使用して再処方され、より効率的になる可能性があります。

私たちは、mRNAテクノロジーの多様性が、さらに進んで、不治の病と戦う機会を提供すると信じています。

ビオンテック社では、現在、新型コロナを超えて、低所得国で多くの死者を出しているマラリア、結核、HIVなどの病気に対処するためのmRNAワクチンプログラムに協力しています。

mRNAテクノロジーは、これらの病気との戦いに希望を生み出しています。

これらの疾患の最初のmRNAワクチン候補は、2022年と2023年に臨床試験に入ると予想されています。

 

現在、先進国での加齢性疾患や低所得国での手頃な価格の基礎治療薬の必要性の高まりなど、世界は困難な健康問題に直面しています。

これらは、用途が広く費用対効果が高く、希少疾患の治療と標的化の個別化を可能にする持続可能なイノベーションによってのみ克服することができます。

これらのニーズはmRNAによって完全に対処できると信じています。

 

mRNAテクノロジーの豊富なツールボックスには、ますます多様化するフォーマットが含まれています。

細胞内で増殖する機能を備えたものもあれば、体内のさまざまな臓器や細胞にmRNAを送達するためのさまざまな方法があります。

将来的には、mRNA薬は、個別化された癌治療、再生医療、およびアレルギー、自己免疫状態、炎症性疾患などのさまざまな疾患に使用される可能性があります。

バイオテクノロジーと製薬の展望を再定義する新しいヘルステクノロジー産業の出現に向けた準備が整いました。

成功の鍵となるのは、当局や国際機関が市場への新しい破壊者を歓迎し、支援することです。

イノベーションへの投資をさらに奨励し、相互協力の文化を育むことによってのみ、この新しい産業は公衆衛生の変革者となるでしょう。

この新世代のハイテク製薬会社は、2022年以降、世界中の人々の健康を大きく改善させる可能性があります。

mRNAが救った多くの命

mRNAベースのワクチンがもし開発されていなかったら、現在世界はどうなっていたでしょうか。

おそらく遥かに多くの犠牲者が出て、各国とも遥かに長いロックダウンを余儀なくされていたでしょう。

経済にも甚大な影響が出て、株価は暴落したかもしれません。

貧困を理由に亡くなる方も多かったでしょう。

そんな惨劇を救ったのはビオンテックやモデルナというmRNAを地道に研究してきた会社の知見でした。

mRNAは不治の病を直す可能性があると言われています。

日本の様な高齢化が進んだ国においては、アルツハイマー病の様な認知症に効く薬が開発されるといいですね。

既に研究開発が進んでいる様ですので、期待しましょう。

 

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クラウド業界が通信業界に侵食する可能性

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クラウド業界の通信業界への参入

昨年、5Gの運用サービスが世界中で開始されました。

しかし、どの国でもその利用はかなり限られている様です。

映画がほんの数秒でダウンロードできると言われても、現在ストリーミングで十分に鑑賞できているのに、敢えて5Gを利用する価値を消費者が感じていないというのが実情だと思います。

しかし、通信業界には今年大きな動きが生じるかもしれません。

5Gでは膨大なデータの処理が必要になってきますが、この扱いに長けたクラウドコンピューティング業界が通信業界に参入してくる可能性がある様です。

英誌Economistが「Will the cloud business eat the 5G telecoms industry? (クラウドビジネスは5Gで通信業界を食い荒らす事ができるか?)と題する記事を掲載しました。

かいつまんでご紹介したいと思います。

Economist記事要約

これまで、アメリカで実際に5Gネットワ​​ークに接続する機会は限られていました。

現在3大キャリアの1つであるT-mobileだけが、幅広い5G接続を提供しています。

しかし AT&Tとベライゾンが、ついに今週5Gサービスを開始することを発表しました。

 

しかし、業界の話題となっているのは、5G通信に別のプレーヤーが登場したことです。

今後数か月以内に、衛星テレビサービスで最もよく知られているDish Networksが、アメリカで4番目の大手通信会社を立ち上げると予想されています。。

さらに重要なのは、Dishのネットワークは、ほぼ完全にクラウドコンピューティングに依存するアメリカで最初の通信ネットワークになることです。

アンテナとケーブルを除いて、そのサービスは主に、アマゾンののクラウドコンピューティング部門であるアマゾンウェブサービス(AWS)で実行されます。

これによりクラウドコンピューティングが通信業界を「食い荒らす」かもしれません。

この試みが成功した場合、米国だけでなく、年間収益が約1兆ドルの世界のモバイル通信市場を塗り替える可能性があります。

そして、それは通信をクラウドビジネスと密接に結びつけるでしょう。

 

現在、AWSやマイクロソフトのAzureなどのコンピューティングクラウドは急速に成熟しており、最終的にはモバイルネットワークにデータを供給するという厳しいタスクに対処できるようになっています。

モバイルテクノロジーの最新基準である5Gは、最初から交換機やその他のハードウェアのコレクションとしてではなく、ソフトウェアまたは「仮想化」に変換できる一連のサービスとして考案されました。

これはすべて、Dishのネットワークで実現されます。

従来のモバイルネットワークで使用されていた大きな基地局の代わりに、その技術はアンテナポストに取り付けられた細いボックスに収容されています。

これらはAWSクラウドに直接接続されており、同社が通信機器メーカーから購入しているのはソフトウェアだけです。

その結果、Dishのネットワークの構築とオペレーションは安価になります。

Dishはこの「クラウド化」において先端を走っていますが、世界中の他の通信事業者もそれほど遅れをとっていません。

6月、アメリカ最大の携帯電話会社であるAT&Tは、5Gネットワ​​ークのコアを強化するテクノロジーをマイクロソフトに販売し、マイクロソフトはAzureクラウド上のAT&Tでそれを実行します。

インドのテクノロジーの巨人であるRelianceJioは、クラウドベースの5Gネットワ​​ークを構築するという野心的な計画を立てています。

大手クラウドプロバイダーのAWS、マイクロソフト、グーグルは各社とも通信会社と提携を始め、対応を開始しています。

 

新規参入者もまた、ビジネスを開始しています。

日本のオンライン大手である楽天は、すでに日本でクラウドベースのネットワークを構築しています。

楽天は、クラウド運用をアマゾンなどビッグテックにアウトソーシングするのではなく、独自に構築し、楽天シンフォニーという子会社を立ち上げ、他の事業者にシステムを提供しています。

彼らは、ドイツのWebホスティング会社である1&1がネットワークを構築する事を支援しています。

「私たちは通信会社のクラウドにはなりたくありませんが、彼らが自分でそれを構築できるようにします」と楽天シンフォニーの責任者であるターリク アミンは説明します。

 

既存のモバイルネットワークは一夜にして置き換えられることはありません。

楽天のネットワークは遅れに直面し、Dishは当初昨年末に立ち上げられる予定でした。

いくつかの技術的な障壁が残っています。

5G基地局の制御は非常に複雑で、何百ものパラメータを監視する必要があります。

少なくともしばらくの間、必要な制御ソフトウェアは、アンテナの近くの特殊な機器で実行する必要があるかもしれません。

先駆者である楽天

菅前政権が実現した公約の中で出色だったのは通信料金の低減でした。

それを実現させたのは、楽天に通信ライセンスを与え、通信各社の価格競争を激化させた事でした。

その楽天ですが他通信大手と一つ異なる点があります。

同社は、いち早くネットワークの仮想化を実現し、実際に通信キャリアとしてそのネットワークを運用してきました、

この点では、世界の先駆者の一人と言って良いと思います。

以前、楽天の本社を訪れた際に、インド人と思われるエンジニア集団をたくさん見かけました。

国籍を問わず優秀な人材を登用する同社のカルチャーが感じられました。

自前のクラウドサービスを利用する楽天がAWSなどビッグテックに対抗できるかという点に不安はありますが、今後の楽天の動きに注目です。

 

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原子力と天然ガスをグリーンなエネルギーに分類したEUの舞台裏

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EUが下した注目すべき判断

地球温暖化対策において、世界をリードしているのはEUである事は衆目の一致するところです。

EUで決められたカーボンニュートラルの到達目標は世界各国に大きな影響を与えました。

そんなEUが先日注目すべき決定を下しました。

それは原子力と天然ガスを持続可能なエネルギーとして分類したのです。

単に分類しただけではないかと思われるかも知れませんが、このEUの決定は、プロジェクトへの融資が可能になるという点で非常に大きな意味を持ちます。

仏紙Les Echosがこの点について「Nucléaire, gaz : Bruxelles lève enfin le voile sur son projet de label « vert »」(EUは遂に原子力と天然ガスにグリーンラベルを与えた」と題する記事を掲載しました。

かいつまんでご紹介したいと思います。

Les Echos記事要約

これは、フランスの原子力発電の将来にとって極めて重要な決定です。

EUはついにグリーンラベル分類法に関する草案を発表しました。

これにより、原子力発電所またはガス発電所への投資は「持続可能な」投資として分類できるようになる予定です。

この分類法の目的は、温室効果ガスの削減に貢献する活動に民間および公的機関の資金を振り向けることです。

この草案は何ヶ月も議論されていましたが、大晦日深夜に加盟国に連絡されました。

 

炭素を排出しない電力源である原子力産業の再開を望んでいるフランスは、ヨーロッパの分類法に原子力を含める様長い間主張してきました。

フランスのエネルギー会社は今回のEUの決定に満足しています。

EUが発表した条件により、大規模な改修の継続と、新しい原子炉の建設(輸出を含む)の両方でグリーン資金を調達する事が可能になります。

ポーランドやチェコ共和国などの中欧諸国も、そのような内容を求めていました。

彼らの非常に汚染された石炭火力発電所を取り替えなければならない状況下、原子力発電プロジェクトにとって資金調達コストの削減が可能になります。

 

逆に、ドイツは長い間、ヨーロッパの分類法に原子力を含めることに反対してきました。

彼らの見方では、廃棄物処理や事故のリスクに関する不確実性は、グリーンラベルの基準を満たしていません。

ドイツは、今年の終わりに原子力発電を段階的に廃止することを公約しました。

12月31日、国は電力網から最後の6つの原子炉のうち3つを切断しました。

ドイツは日曜日に原子力をグリーンエネルギーとして認定するプロジェクトに反対を表明し、この点での立場は「変わらず、政府は原子力を持続可能なものとして認定することはできないと確信している」と述べました。

委員会によって協議された加盟国および専門家は、現在、この文書の変更を要求するために約2週間の猶予があります。

最終テキストの公開は1月中旬に予定されています。

しかし、文章はあまり変わらないはずです。

ドイツが直面する難問

ドイツは言わずと知れた欧州随一の経済大国であり、その競争力の高い製造業は欧州の屋台骨を支えています。

しかし、そこにはアキレス腱があります。

それは高価なエネルギーコストです。

ドイツは欧州の先陣を切って地球温暖化対策を講じ、再生可能エネルギーの大胆な導入を進めました。

その過程で主要な電源であった石炭焚き発電所の閉鎖を進めました。

一方で、ドイツは地球温暖化対策上有効な原子力も廃止を決定しました。

この結果、不安定な電源である再生可能エネルギーを補完するベース電源としてガス焚き発電所しか残らなくなってしまったのです。

そこへウクライナ問題に端を発する天然ガス価格の高騰がドイツを襲います。

エネルギー価格の高騰はそこで作られる製品のコスト高に繋がります。

今回のEUの決定は、ひょっとするとフランスの原子力発電所から電力を融通してもらっているドイツが裏でフランスと手を握ったのではないかと思います。

ドイツ政府の原子力に依然反対だとの声明は政治的ジェスチャーの可能性があります。

 

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