MIYOSHIN海外ニュース

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とっておきのアネクドート(続編その3)

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極寒の夜を彩るアネクドート

ここの処真面目な話題が続いたので、久しぶりにアネクドートをご紹介したいと思います。

これから冬本番ですが、今日モスクワの気温を調べて見たら最高気温マイナス11度、最低気温マイナス17度でした。

やはり寒いですね。

しかし昔モスクワに足繁く通っていた時は、このくらい温度が下がった方がモスクワの街は雪が硬く引き締まり、美しかった様な気がします。

ダイヤモンドダストが舞う様はこの世のものとも思えないくらい美しいものです。

長く寒い冬を過ごすロシアの人たちは、この季節、暖炉を囲みながら面白いアネクドートを披露し合あっていました。

アネクドート選

フルシチョフが訪問した模範的養豚場で仔豚たちに囲まれている写真の添え書き。

「右から 3 番目…フルシチョフ」(1961 年)

 

レーニンは、どうすればこの国を統治できるかを示した。

スターリンは、いかにして統治すべきかを示した。

フルシチョフは、どんな馬鹿でも統治するそぶりのできることを示した。

ブレジネフは、全ての馬鹿が統治できるわけではないことを示した。

ゴルバチョフは、馬鹿でなくともいかに統治が難しいかを示した。

エリツィンは、結局この国は統治できないことを示した。

 

ある男が塀に「フルシチョフはバカ」と落書きした。

この男は逮捕され、懲役 11 年となった。うち 1 年は国の財産である壁を汚したため。残り 10 年は国家機密漏洩罪で。

男が 1 年目の刑期を終えた頃、フルシチョフがイギリスを公式訪問した。

まもなくこの落書き男は釈放された。それは国家機密がもはや秘密ではなくなったからだ。

 

「ロシア式ビジネスって何ですか?」

「ウォッカのケースを盗んで、売って、その金で飲むことです」

 

「ニンニクをつまみにウォッカを飲むのは体に良いですか?」

「大変有益です。真っ暗闇の中でも塀の下からあなたを見つけやすくなり ますから」

 

「給料だけで生活できますか?」 

「試したことがないので分かりません」

 

「共産主義ってのは、船旅に似てるな。」

「どんなところが?」

「展望だけは素晴らしいんだが、どこに向かってるんだかさっぱりわからない。その上吐き気がする。おまけに降りられない」

 

このウォッカは南京虫の臭いがするという人をペシミストという。

この南京虫はウォッカの臭いがするという人をオプティミストという。

 

ブレジネフが悪夢にうなされて目を覚ました。

側近が驚いて駈け寄り、いったいどんな夢を見たのかと訊ねた。

「世界中が共産主義国家になった夢だ。」

「それは素晴らしい!!」

「バカ言え。そんなことになったら、我が国はどこから穀物を買うのだ。」

 

「この男は何をしたんだね」

「亡命を企てました」

「なら刑務所に入れるべきだろう、何だって精神病院に入れたりしたんだ」

「こいつ、ロシアに亡命しようとしたんです」

フルシチョフとウォッカ 

今回ご紹介した小話にはフルシチョフウォッカに関する話題が多いですね。

フルシチョフ政権時代にアネクドートが急に増えたそうですが、やはりスターリンの時代と比べると多少なりとも言論が自由になった事が影響しているのでしょう。

スターリン時代はそれこそ壁に耳あり、障子に目ありで監視されていましたので、フルシチョフ時代には多少なりとも安心してアネクドートを話せる様になったのでしょう。

ウォッカはロシアの国民酒です。

しかし憂さ晴らしに飲む事が多かったせいか、ロシアはこの酒のせいで様々な社会問題を引き起こしました。

ロシアの女性は結婚相手に求める条件としてウォッカを飲まない事を一番に挙げるそうです。

何せロシアの男性と女性の平均寿命の差は世界最大で10歳以上ありますから、ウォッカの健康への悪影響がいかに大きいか物語っています。

しかし、ロシアのウォッカは美味しいです。

しかも極寒の夜のウオッカの一杯はなにものにも変えがたいものです。

皆さん是非お試し下さい。

つまみはキャビアが一番ですが、ラードの塩漬けなど塩辛いものなら何でももいけますよ。

 

最後まで読んで頂き、有り難うございました。

カショギ氏殺害事件のCIA報告書は公開されるか - バイデン 氏の決断は如何に

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カショギ氏殺害の真の犯人は

昨日のブログでも触れましたが、2018年10月にイスタンブールで行われた国際ジャーナリストであるジャマル カショギ氏の殺害事件は、サウジアラビア政府の独裁的な体質とそれを庇った米国政府のダブルスタンダードを浮き彫りにした事件でした。

この事件、日本ではあまり報道されなかったのでご存知ない方も多いと思いますので、簡単にご説明します。

カショギ氏はサウジ人ですが、彼の祖父はサウジアラビアの初代国王の主治医を務めたと言いますから、大変な名家の出身と言えます。

ジャーナリストとして活躍していましたが、リベラルな論調がサウジ保守派の怒りを買い、殺害される前年2017年に米国に事実上亡命し、ワシントンポスト紙などに投稿していました。

彼は婚約者がトルコ人だった事もあり、イスタンブールを訪れた2018年10月にイスタンブールのサウジアラビア総領事館を訪れた後、姿を消しました。

その後の捜査で、総領事館内でサウジ アラビアの工作員によって殺害されたことが明らかになりました。

批判者を他国で暗殺する手法はマレーシアで実の兄を暗殺した北朝鮮の金正恩と変わりません。

大勢の政府工作員が関与したこの事件、その後ろ盾はサウジの事実上の統治者むハンマド ビン サルマン皇太子である事は明らかですが、トランプ政権は彼を擁護しました。

この問題について、米誌Foreign Policyが「Biden Should Release the CIA Report on Jamal Khashoggi’s Killers - Trump has protected Saudi Crown Prince Mohammed bin Salman despite the U.S. intelligence community’s conclusion that he ordered the assassination of a U.S. resident. The new administration should reveal the truth.」(バイデン 氏はジャマルカショギ氏の真の殺害者に関するCIA報告書を公にすべきだ - トランプ氏は米国居住者であるカショギ氏の殺害を命じたのがサウジのムハンマドビンサルマン皇太子であるとの報告書を握り潰したが、新政権は真実を明らかにすべきである)と題した論文を掲載しました。

かいつまんでご紹介したいと思います。

Foreign Policy論文要旨

2018年10月にサウジアラビアの工作員がイスタンブールのサウジ領事館でジャーナリストのジャマルカショギを残酷に殺害してから6週間後、CIAはサウジアラビア皇太子ムハンマドビンサルマンが暗殺を命じたという結論を漏らしました。

それ以来、米国議会は、トランプ政権に犯人に関する米国諜報機関の調査結果を明らかにするよう試みましたが成功しませんでした。

次期大統領のバイデン氏は、大統領に就任した際に、この情報を公開する必要があります。

CIAの報告を公表することは、米国居住者の暗殺に関する説明責任を果たすでしょう。

バイデン政権が自発的に動かない場合、米国の裁判所はそれを強制する可能性があります。

2018年10月2日のカショギの殺害以来、トランプ米大統領とその政権は、モハメッド ビン サルマン皇太子が犯罪に関与したとの追求から守るためにできる限りのことをしました。

しかし、トランプ政権が過去のものを過去のものとする努力は、かなりの抵抗に直面しました。

議会は公聴会を開き、殺害を非難し、サウジアラビア皇太子がその責任を負うべきだと宣言する決議を可決しました。

議員たちは2019年に、サウジアラビアへの軍事援助を停止する法案を可決しました。

トランプ大統領はこの法案に拒否権を行使し、独裁的なサウジ政権に武器を流し続けました。

これに応えて、2019年12月、議会はその年の国防授権法に、カショギ氏の殺害に関与した個人を特定する機密扱いでない報告書を提出するよう行政に要求する条項を挿入しました。

法案の可決は、アメリカ国民が殺人者の身元を知る権利を持っているという珍しい超党派のコンセンサスを表しています。

 

議会の努力にも拘らず、トランプと彼の部下はモハメッド ビン サルマンを見捨てるつもりはありませんでした。

立法期限の1か月後の2020年2月、国家情報長官(ODNI)は、カショギの殺害に関する報告書を議会に提出しました。

これには、皇太子の極めて重要な役割に関するCIAの情報が含まれていると伝えられています。

しかし、ODNIは、機密扱いでないレポートを提出するという法的義務を拒否し、そうすれば情報源と方法が危険にさらされると主張しました。

 

トランプ政権が議会に反対したため、「開かれた社会の正義イニシアチブ」は、情報公開法に基づいて2020年8月にODNIを訴え、報告書の公開を求めました。

政府は議会と同じ法的姿勢を法廷で採用し、カショギの殺人者に関する情報を公開すると機密情報が明らかになり、米国の国家安全保障に害を及ぼすと主張しました。

政府の国家安全保障の議論は、複数の理由で根本的に欠陥があります。

政府は、報告書の適切な部分を編集して、どのように結論に達したのかを隠しながら、殺人者の身元を明らかにすることができます。

トランプ氏自身はすでに、「尻拭いをした」方法を自慢して、殺害における皇太子の役割をほのめかしています。

さらに、米国居住者の殺害における皇太子とサウジ政権の役割を明らかにする証拠を保護することは、彼らと他の独裁者に、米国政府が彼らを守ってくれると信じるように促すだけです。

また、地域の不安定さの主な原因であり、本質的に脆弱である残忍な独裁者と同じ側に立つ事は、長期的なセキュリティコストがかかります。

彼らは常に反対意見を抑え、押しつぶそうとしているからです。

米国当局は彼らを保護することによって彼らの虐待に貢献しているだけでなく、彼らが将来大衆の抵抗に直面するとき、米国政府は政権の片棒を担いだ事になります。

 

連邦判事は、国家安全保障上の利益に関する主張に関して、米国政府が公益のために情報を公開する義務を免れるべきではないとしています。

2020年12月8日、米国地方裁判所のPaul Engelmayer裁判官は、CIAとODNIに、カショギの殺害のオーディオテープとこの問題に関するCIAの報告の2つの項目の存在を開示し、差し控えの根拠を説明するよう命じました。

最終的には、行政府が国家安全保障上の理由で、議会が公に要求している情報を隠そうとした場合、米国の司法はその発言権を持つことになります。

バイデン政権は、カショギ氏の殺害に対する説明責任の約束を守り、関連情報を公開する必要があります。

バイデン氏の決断

バイデン 大統領がCIA報告書を公にするかどうか見ものですね。

もし公開すれば米国政権の性格が完全に変わった事を世界中に示す事になります。

公開しなければ、やはりバイデン 氏は圧力に弱い優柔不断の政治家という事になるでしょう。

バイデン 氏が米国のダブルスタンダードに終止符を打つ事を期待しましょう。

 

最後まで読んで頂き、有り難うございました。

トランプ政権の中東政策は成功したのか

 

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大統領選直前の歴史的合意

大統領選挙直前に、トランプ大統領はイスラエルとUAEの国交正常化を仲介し、脚光を浴びました。

大統領選を意識した派手な演出でしたが、トランプ政権の中東政策は成功したのでしょうか。

米紙Foreign Affairsが「Biden Doesn’t Need a New Middle East Policy」(バイデン 氏に新しい中東政策は必要ない)と題した論文を掲載しました。

著者は2010年から2年間駐イラク米国大使を務めたJAMES F. JEFFREY氏です。

かいつまんでご紹介したいと思います。

Foreign Affairs論文要旨

過去8人の米国大統領と同様に、トランプ大統領の外交政策の多くは中東によって支配されました。

「永遠の戦争」を終わらせ、アジアに軸足を移すという話にもかかわらず、中核的な国益は繰り返し米国をこの地域に引き戻してきました。

 

多くの点で、中東におけるトランプの優先順位は、大量破壊兵器の排除、米国のパートナーの支援、テロとの戦い、石油ガスの輸出促進という二人の前任者とほとんど変わりませんでした。

しかし、その方法では、顕著なパラダイムシフトを演出しました。

ブッシュ大統領とオバマ大統領はどちらも、政治的および軍事的に中東に介入することで、米国はイスラム教徒のテロと地域の不安定さ解決できるという誤った信念に基づいて、中東で改革キャンペーンを追求しました。

トランプ氏の政策的見解を理解することはしばしば困難でしたが、明確な結果をもたらしました。

トランプは、アメリカの目的を制限し、差し迫った地域の脅威に対応するが、それ以外は主にパートナーを通じて活動することにより、アメリカの利益を前進させながら、前任者が遭遇した落とし穴を回避しました。

この新しいパラダイムは、中東での課題を封じ込める事に成功しました。

 

新しい戦略

トランプ政権によって起草された2017年の文書は、中東における米国政策の青写真を提供しました。

中東に関してその最初の原則は、地域の問題への関与を回避する一方で、深刻なロの脅威を打ち砕きながらイランとロシアを封じ込めることになりました。

 次の原則、地域の同盟国やパートナーとの協力はより複雑でした。

それは手段であり、目的ではありませんでした。

結局、それは合理的な妥協案、つまり大規模な部隊の撤退に決着し、残りの部隊はテロ対策とイランに焦点を合わせた任務に専念しました。

その第二の原則の一部として、トランプはまた、シリアでのイランとロシアに対するイスラエルとトルコの軍事行動を支持し、テヘランに立ち向かうために主に湾岸諸国、ヨルダン、イラク、イスラエルに依存することを明らかにしました。

米国は、必要に応じてこれらの努力を軍事的に補完し、武器を販売したり、テロリストを標的にしたり、シリアのアサド大統領による化学兵器の使用を罰したりしました。

しかし、特にアメリカ人の命が失われなかったとき、政権は一般的に軍事力の使用について慎重でした。

一方、行動を決定したとき、米軍はアサド、テロリストグループ、ロシアの傭兵、イランが支援する民兵を効果的に標的にしました。

 

同盟国に余分な負担を負わせる事と引き換えに、トランプ政権は、ジャーナリストのカショギ氏が殺害されたにもかかわらず、エジプト、トルコ、さらにはサウジアラビアを含む重要なパートナーの国内政治に口を差し挟みませんでした。

政権はまた、パレスチナ問題に関してはイスラエルを公然と支持し、武器移転、ゴラン高原、エルサレム、西サハラに関する長年の米国の政策を覆えしました。

これらの政策は、イスラエルといくつかのアラブ諸国との間に歴史的なアブラハム合意(イスラエルとUAEの国交正常化)を生み出しました。

 

イランの挑戦

トランプは、オバマ政権によって仲介された2015年のイラン核合意は悪い取引であると信じていました。

その期間は限られており、地域の同盟国は、イランの不安定な行動に対処できないと不満を述べました。

最終的に、米国は合意を離脱しました。

トランプのイランに対する「最大圧力」キャンペーンは、イランに核活動、ミサイルプログラム、および地域での行動を含むより広範な交渉を強制するように設計されました。

米国の政策は、イラン経済とその冒険主義の両方に真の影響を及ぼしました。

イランは引き続き石油とガスを割引価格で国外に密輸しましたが、制裁措置により、イラク、レバノン、シリアの同盟国に提供できる資金援助が制限されました。

中国もロシアもイランを救済する気はなく、ヨーロッパ人はこの制裁に反対しましたが、米国に報復することはできなませんでした。

オバマとトランプの交渉姿勢には、根本的な違いがありました。

トランプの中心的な優先事項は、イランの地域の冒険主義を阻止し、核能力を可能な限り制限することでした。

この条件が満たされる限り取引可能というスタンスです。

合意の達成そのものを優先したオバマ政権とは異なり、トランプはイランを全体的な脅威と見なしました。

したがって、彼は有利な条件を強制するか、そうでない場合はイランを深刻に弱体化させるために、厳しい措置を取りました。

彼の政策が機能したかどうかについての結論はまだ出ていません。

時間とバイデン政権自身の意思決定が、「最大圧力」が将来への扉を開くのか、それとも単にイランを核爆弾に近づけ、交渉による妥協から遠ざけるのかを決定するでしょう。

 

シリアとイラク

トランプは、特にシリアとイラクでのイランの勢力拡大に対抗するため努力しました。

2017年後半までに、トランプ政権は、同盟国やパートナーと協力しながら地域の脅威に対抗するという原則に基づいて、独自のシリア政策を策定しました。

シリアでは、イランを追い出し、イスラム国を永久に打ち負かし、内戦を解決しました。

2020年までに、米国は直接のコミットメントを削減しながら、パートナーと弾力性のある連合を構築しました。

トルコとシリアの反政府勢力は、米国と協力し、米国が支援するイスラエルのイランの標的に対する攻撃は、アサド政権の軍事的選択肢をさらに制限した。

一方、米国は、国連の政治的努力を支援し、外交的に孤立したアサド政権に対する制裁を通じて国の経済を押しつぶした大規模な国際外交連合を主導しました。

 

当然のことながら、米国の政策はワシントンをモスクワと対立させました。

モスクワはシリアを中東で外交的かつ軍事的に再関与する主要な場所と見なしました。

米国はシリア北東部でのロシアの軍事および傭兵活動に繰り返し対応し、トルコが国の北西部でのシリアとロシアの侵攻をかわすのを支援しました。

しかし、北東部にある米国のシリアにおけるクルド人パートナーとトルコの間の対立は、米国との関係を複雑にしました。

 

イラクでは、米国はそのイスラム国に対する軍事的努力をイランに対するより大きな闘争から切り離そうとしました。

しかし、テヘランに忠誠を誓う地元民兵は、米軍に対するキャンペーンを強化し始めました。

トランプは最終的に報復し、イランのソレイマニ司令官を殺害しました。

米軍はイラクに残っていますが、ヒズボラのような民兵は依然として脅威です。

イラクは依然として米国とイランの間で最も不安定な前線です。

 

過去4年間で、トランプ政権は中東で2つの大きな成功を収めました。

それは、アブラハム合意と、イラクとシリアでのイスラム国の崩壊です。

また、シリアやその他の地域でのロシアのさらなる拡大に対抗し、地域の安定に対するイランの永続的で多面的な脅威を取り除く事に、成功しました。

トランプはイランの核開発計画を解決しませんでしたが、オバマも解決しませんでした。

最近の中東の基準では、これらは立派な政策成果となっています。

トランプは、地域の同盟国と緊密に協力しながら、米国の直接的な費用を削減することに成功しました。

現在、多くの地域同盟国は、イランの経済と地域の冒険主義に対する米国の継続的な圧力を、合意への即時の復帰以上に望んでいます。

バイデンはこれらの優先順位のバランスを慎重にとる必要があります。

トランプの中東外交は本当に成功したのか

上記が米国の大方の見方なのでしょうか。

確かにトランプ政権は中東で成果を上げている様に見えます。

イスラエルとUAEやバーレーンの国交樹立など誰もが予想もしていませんでした。

しかし、湾岸諸国がイスラエルとの国交回復に踏み切ったのは、米国の中東離れが現実のものとなり、アラブ諸国にしてみると、イスラエルとイランの両国を敵にまわすのは無理だと判断しただけという見方もできます。

またパレスチナ問題は既に湾岸諸国にとってはお荷物になっていて、パレスチナの為にイスラエルと事を構えようなどと考えている国はいなくなっていたという現実もあります。

トランプ政権の中東外交は、戦争を起こさなかったと言う意味で一定の評価ができますが、中東最大の問題であるイランの問題には手付かずに終わりましたし、シリア一つとって見てもロシアと組んだアサド政権は相変わらず勢力を維持しており、手放しで褒めるわけにはいきません。

トランプ政権時代に、米国の中東離れは加速し、代わりにロシアや中国が存在感を増しました。

米国にとって中東はエネルギー資源の供給先として核心的利益だったわけですが、もはや中東は、自国兵士の命を賭けて守る地域ではなくなったという現実があります。

今後益々米国の影は薄くなっていくでしょう。

しかし、我が国にとって中東は重要です。日本政府は米国を何とか説得して、中東からエネルギー資源を運ぶシーレーンを守っていく必要があるでしょう。

 

一方、米国の中東政策で問題視されるのは、米国が警察国家、独裁国家と言っても良い様な国々を同盟国と呼んで支援している点です。

サウジアラビアが政府批判を行った国際的なジャーナリストであるカショギ氏を暗殺したことは記憶に新しいですが、アラブ諸国の多くに民主主義はありません。

米国に尻尾を振ってくれる国なら何をしようが目を瞑る米国のダブルスタンダードには呆れます。

唯一、自由なマスコミが存在するのがカタールであり、ここには有名なアルジャジーラという国際放送局があります。

しかし、自国の専制主義を批判されたくない他の湾岸諸国はカタールとそのマスコミを敵視しています。

バイデン 政権には、こういった問題にメスを入れてもらいたいですね。

そうでなければ、自由の旗手としての米国の看板に傷がつくのは間違いがありません。

 

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イノベーションが花開くか - 今後10年を占う

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技術革新の時代到来か

昨年2020年は新型コロナに振り回された一年でしたが、2020年代というのはどの様な10年になるのでしょうか。

新型コロナは社会に大きな損害をもたらしました。

一方、その過程でテレワークやオンラインショッピングなど社会のデジタル化を加速させました。

社会様式を変えるだけのインパクトを感染症は持っていたという事になります。

今後10年間がどうなるかについて、英誌Economistが「Why a dawn of technological optimisum is growing」(何故テクノロジーの夜明けに関する楽観論が高まっているのか)と題して記事を掲載しました。

かいつまんでご紹介したいと思います。

Economist記事要約

過去10年間、イノベーションの成長速度は多くの経済学者を失望させました。

生産性の伸びは鈍く、最も人気のある新しい発明であるスマートフォンとソーシャルメディアはあまり役に立たなかったようです。

強力な独占企業の出現や世論の撹乱など、それらの副作用が痛々しいほど明らかになりました。

自動運転車などの有望なテクノロジーは行き詰まった様に見えます。

タカ派は権威主義的な中国が西側を追い越そうとしていると警告し、一部の悲観的な人々は世界がついに有用なアイデアを使い果たしていると警告しました。

 

しかし、今、技術的な希望の夜明けが始まっています。

新型コロナワクチンは予想されたより遥かに速く開発されました。

目覚ましい進歩、技術投資ブーム、パンデミック時のデジタル技術の採用が組み合わさって、新しい発展の時代への期待が高まっています。

楽観主義者は「華々しい20年代」を予測しています。

この10年間で癌治療などに多くの進歩が見られたため、技術的ユートピアの予想は誇張されがちですが、特に政府が新しいテクノロジーの発展を支援する場合、生活水準を引き上げる可能性のあるイノベーションが現実になる可能性があります。

 

資本主義の歴史では、急速な技術の進歩が当たり前でした。

18世紀は機械化された工場が産業革命をもたらしました。

19世紀には鉄道と電気。 20世紀には自動車、飛行機、近代医学、洗濯機のおかげで女性が解放されました。

1970年代には、進歩は一旦鈍化しましたが、1990年代にパソコンが採用された後、効率が大幅に向上しました。

しかし、2000年以降、成長は再度鈍化しました。

この「停滞の時代」が終わろうとしていると考える理由は3つあります。 

1つ目は、変革の可能性を秘めた発見の急増です。

 ファイザー-BioNTechおよびモデルナワクチン開発の原動力となった「メッセンジャーRNA」技術の開発、および患者に特化した抗体治療の成功は、科学が医学に如何に力を与え続けているかを示しています。

人間は、病気の治療、遺伝子の編集、実験室での肉の生産など、生物学を自分の意志に合わせて応用する事ができるようになっています。

人工知能はさまざまな状況で印象的な進歩を見せています。

Alphabetの一部であるDeepMindによって作成されたプログラムは、タンパク質の形状を予測する優れた能力を示しています。

昨年の夏、Openaiはこれまでで最高の自然言語アルゴリズムであるgpt-3を発表しました。

そして10月以来、無人タクシーがアリゾナ州フェニックス周辺で一般市民を運んでいます。

再生可能エネルギーの価格が大幅に下落したことで、政府はグリーン投資が報われると確信しています。

中国でさえ、2060年までにカーボンニュートラルを約束しています。

 

楽観的な理由の2つ目は、テクノロジーへの投資が急増していることです。

 2020年の第2四半期と第3四半期に、アメリカの非住宅民間部門は、10年以上ぶりに、建物や産業機器よりもコンピューター、ソフトウェア、研究開発(r&d)に多くを投資しました。

政府は科学者により多くの現金を与えることに熱心です。

何年にもわたって縮小してきた24か国の公的研究開発費は、2017年に再び増加し始めました。

テクノロジーに対する投資家の熱意は、現在、医療診断、ロジスティクス、バイオテクノロジー、半導体にまで及んでいます。

テスラの社長であり、ロケット会社も経営しているイーロン マスクが世界一の金持ちであるという事が市場の楽観的な見方を反映しています。

 

三つ目の理由は、新技術の急速な採用です。

労働者がビデオ会議に参加し、消費者が電子商取引に参加しただけではありません。新型コロナ感染は、デジタル決済、遠隔医療、産業オートメーションの採用を加速させました。

逆境はしばしば社会を前進させることを思い出させてくれました。

気候変動との戦いと米中の大国間の競争は、さらに大胆な一歩を踏み出させる可能性があります。

 

残念ながら、イノベーションは経済が成長する際の構造的な問題を解決しません。

社会が豊かになるにつれ、自動化が難しいために生産性の向上が不十分なレストランでの食事など、労働集約的なサービスに収入の大部分を費やしています。

人口の高齢化は、労働者を生産性の低い在宅ケアに引き込み続けるでしょう。

グリーンエネルギーが化石燃料よりも安くなる可能性がない限り、脱炭素経済は長期的な成長を後押ししません。

 

それでも、イノベーションの新たな波が、21世紀に経済のダイナミズムを生む事が期待できます。

それは生活水準の大幅な上昇につながります。

ヘルスケアや教育を含む多くのサービス産業は、イノベーションから大きな恩恵を受けるため、さらに多くのことが達成可能です。

最終的には、合成生物学、人工知能、ロボット工学が、すべてのことが行われる方法を覆す可能性があります。

 

最終的にどのイノベーションが成功するかは民間セクターが決定しますが、政府も重要な役割を果たします。

彼らは、より多くの大型プロジェクトでリスクを負う必要があります。

国は、研究開発に対してより多くの助成金を提供すると共に、イノベーションが経済全体にどれだけ急速に拡散するかに大きな影響を及ぼします。

政府は、規制とロビー活動が改革を遅らせないようにする必要があります。

これは、一部には、それによって生計を立てている人々に適切なセーフティネットを提供することを含みます。

イノベーションは一握りの企業に集中します。

経済全体が新しいテクノロジーを利用することを保証するには、強力な独占禁止法の施行とより緩い知的財産制度が必要になります。

政府がこの課題に立ち向かえば、より速い成長とより高い生活水準が達成できます。

2020年代は苦痛の叫びから始まりましたが、適切な政策があれば、今後10年まだ明るい未来を切り開く事ができます。

日本はこの波に乗れるか

翻って日本はこの時代の流れに乗っていく事が可能でしょうか。

正直言ってかなり心配です。

日本では変革に対して、常に抵抗があります。

その抵抗勢力、守旧派と言っても良いかもしれませんが、なかなか手強いので、改革勢力は常に押し戻されてしまいます。

日本の歴史を振り返ると、思い切った改革が行われた時期が2回あります。

それは明治維新終戦直後です。

二回とも旧来の支配層が外圧によって取り除かれ、30代、40代の若いリーダー達にバトンタッチされ、改革が成功しました。

要するに黒船の来襲や敗戦といった大きな外圧が掛からなければ、日本は変わらないのです。

印鑑を廃止しようという運動一つとってみても、印鑑保護団体の様な圧力集団が登場して、骨抜きにしてしまうのを見ていると、かなり日本の将来は厳しいなと思います。

しかし、日本の次世代の事を考えれば、年配の人も含めて改革を応援する姿勢が必要と思います。

 

最後まで読んで頂き、有り難うございました。

フランス紙が分析する米国株式好調の理由

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絶好調の米国株式市場

日本の株式市場はここの処好調です。

しかし、これは日本に限った事ではなく、世界的な現象の様です。

中でも米国は史上最高値を更新するなど、コロナ感染であれほど多くの犠牲者を出しながら、別世界の様な好調ぶりを見せています。

何故これほど米国株式市場は好調なのか、今日はフランスの経済紙Les Echosの「Bourse : 3 raisons pour investir sur les actions américaines」(株式市場:米国株式に投資する3つの理由)と題された論説をご紹介したいと思います。

Les Echos論説要約

2020年において、米国と欧州の株式の対比が際立っています。

S&P 500インデックス(米国の代表的株式指数)は、18.4%上昇しましたが、S&P350ヨーロッパは、5.89%の増加(ドル換算ベース)にとどまりました。

2018年と2019年もそうでしたが、米欧株式の差は更に拡大しました。

このような場合、米国の株式は高すぎると考え、来年の欧州市場の上昇に賭ける専門家が常にいます。

しかしその様な賭けはめったに当たりません。

確かに、有名な「価格収益率」(PER)などを見ると、歴史的に見てアメリカの株は高いと言えます。

過去10年間の平均利益をとってみれば、S&P 500は利益のほぼ34倍を支払うという結論に達します。

これほどの伸びを見せたのは1999年から2000年のインターネットバブルまで遡らなければなりません。

しかし、米国株式には次にあげる様な三つの優位性を有しています。

  • 米国企業の危機対応能力

まず、先を見据えると、欧州に対する米国の株式価格の高値感はそれほど明白ではありません。

米国企業は危機への抵抗力が高く、2021年には利益がより強く回復するはずです。

いわゆる「フォワード」PER、つまり米国企業の現在の株式価格と2021年の予想利益の比率はヨーロッパの22.6倍に対して、22.9倍であり殆ど同じレベルです。

金利は歴史的に低いレベルにあり、すぐに上昇する見込みはありません。

この様な状況では、投資家は債券を購入するために株式を売ろうとはしません。

債券は確かに安全ですが、実際の収益はマイナスになることがよくあります。

高い株価は、差し迫った株式市場の崩壊と同義ではありません。

むしろ、恐れられるのは、高い株価と記録的な収益(サイクルの終わりを示す)の組み合わせです。

新型コロナの危機に注意は必要ですが、現時点では明らかにその様な兆候は認められません。

 

1996年アメリカのFRB(連邦準備制度理事会)トップを務めていたグリーンスパン氏の有名な発言を思い出すことができます。

彼は、インターネットバブルの危険について警鐘を鳴らすため、市場の不合理な熱狂について話しました。

しかし、S&Pはその後3年間でほぼ倍増し、1996年末のレベルに戻ることはありませんでした。

  • 最も多様化した市場

アメリカ市場は地球上で最も深くそして最も多様性に富んだ市場であり続けます。

ヨーロッパ市場はバリュー株に富んでいますが、米国市場はもちろんテクノロジー関連だけでなく、健康と消費財のグロース株で溢れています。

これらの企業は、巨大国内市場の恩恵を受けているため、多くのヨーロッパ企業よりも国際市場への依存度が低くなっています。

これは、新型コロナ感染が続いている時期において重要なポイントです。

  • 巨大な国内市場

米国の株式市場は、ヨーロッパ以外の市場では最も有望に思える中国市場に対して決定的な利点を有しています。

中国の問題は、ジャック・マーの最近の「失踪」によって暗示されています。

中国政府に対して批判を行った後、電子商取引の巨人アリババのトップの消息は不明です。

これは、国の開放性の限界を示しており、投資家にとって測定が困難なリスクをはらんでいます。

 

アメリカ市場へのアプローチは、ETFを通じて市場全体のパフォーマンスを享受する「パッシブ」戦略か、積極運用されているファンドのどちらかを選択できます。

ETFには、明らかにコストが低いという利点があります。

ファンドは、短期的に大きな利益を得られる可能性があります。

しかし、アメリカのETFをコンスタントに打ち負かすことは大変難しい事です。

先進国の中で抜きん出る米国株式市場

日本も欧州とよく似た成熟国家です。

少子高齢化が進んでいる点も共通しています。

それでは日欧と米国との違いは何でしょうか。

それは米国が先進国の中で唯一人口が増加している国だと言う点だと思います。

これが米国株式市場が一人勝ちしている理由では無いでしょうか。

もう一つ理由を挙げるとすると、株主の発言力が非常に強い事が挙げられます。

「物言う株主」が経営陣に強い圧力をかけて生産性や効率性を向上させる文化が米国には定着していると思います。

会社の総務部が書いた筋書き通りに株主総会が進められる日本の株主総会とは大きな違いがあります。

米国に何かと批判的なフランス人も、株式に関しては、米国の軍門に降るしかないところを見ると、今後も米国株式市場は強そうですね。

(株式市場は誰も正確には予測できませんので、投資はご自身の判断で行って下さい。)

 

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暗雲漂うオリンピック - 外国はどう見ているか

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IOCが決める開催の可否

非常事態宣言は首都圏のみならず、多くの地方自治体に拡大されました。

ワクチンの接種も未だ始まっていない日本で、本当に今夏オリンピックが開催できるのか正直言ってかなり疑問に思っている方も多いと思います。

日本政府は開催するとの意思を明らかにしていますが、厳密に言えば、オリンピックの開催の可否を決めるのはホスト国の日本ではなく、IOCです。

要すればIOCの理事たちがどう思っているかが肝心なのです。

東京オリンピックを外国人がどの様に見ているのか、米誌Foreign Policyが「Tokyo Wants the Olympics to Happen Even if the Public Doesn’t」(東京は国民が望んでいないオリンピックを実行しようとしている)と題した記事を掲載しました。

かいつまんでご紹介したいと思います。

Foreign Policy記事要旨

東京2020オリンピック・パラリンピックは、今年の7月と8月に延期されましたが、このイベントは、日本の最高の姿を示し、世界がコロナ感染が峠を越すことを祝うものになるでしょうか、はたまた、日本人の多くがキャンセルを望み、何千人ものアスリートや観客がコロナウイルスの危険にさらされる不必要なイベントになるのでしょうか。

公式には、今年の夏、開催されることになっています。

菅首相は新年のメッセージで、オリンピックは「世界の統一を象徴する」

「安全・安心なイベントを実現するために、準備をしっかり進めていきます。」と述べました。

彼は、再度非常事態宣言を発したにもかかわらず、自信を持っています。

国際基準によると、その措置は驚くほど緩やかなままです。

人々は不必要な旅行を避けるように奨励され、テレワークを促され、レストランやバーは午後8時までに閉店するように求められています。

 

オリンピックのもう一人の熱心な支持者は、小池都知事です。

彼女は、アジアのハブとしてのかつての栄光を東京に取り戻そうとしています。

中国の締め付けのため、香港の魅力が薄れ、シンガポールが外国人にとっても高額になりすぎたため、東京はハイテク企業やフィンテック企業を対象としたマーケティングプログラムを開始しました。

彼女にとってオリンピックはその一端を披露する最高のチャンスなのです。

 

小池氏や他の政府関係者は、オリンピックに懐かしさを感じています。

1964年の東京オリンピックは、今日でも日本のターニングポイントとして語られています。 

しかし、あまり注目されていないのは、この時に作られた道路など多くのインフラが耐久性に欠けていた事です。

また、経済成長が環境よりも優先されたため、当時のアスリートがひどく汚染された空気に対処しなければならなかったという事実もめったに触れられません。

 

今回、オリンピックの開催に反対する人はたくさんいます。

テンプル大学のキングストン教授は、オリンピックを強行する事は「クレイジー」だと語りました。

彼は、日本の予防接種は3月まで開始される予定もないと述べました。

また、アスリートには予防接種は必須ではありません。

多くの貧しい国々で危険にさらされている高齢者などが、ワクチン接種を待っている時に、健康な若者にワクチンを提供するという倫理的な問題もあります。

批判は彼だけではありません。共同通信による1月10日の世論調査では、計画通りに進めるべきだと答えたのは14%に過ぎませんでした。

35%が中止を望んでいる一方、45%は再度の延期を求めていることがわかりました。

ただし、世界最大のスポーツイベントを再延期することは選択肢のようには見えません。

組織委員会の森喜朗前首相は1月12日、これ以上の遅延は不可能だと述べました。 

 

国民の支援が弱い点は、東京大会にとって新しい問題ではありません。

しかし、当初の世論調査では、東京の人々の47%が支持していましたが、昨年7月の調査では支持率は24%に低下しました。

否定的な見方は、冬に再び新型コロナ感染者が増加する中、広がっています。

 

批評家が提起したもう1つの問題は、オリンピックの費用が上昇し続けていることです。

当初の入札では、日本は73億ドルの費用で「コンパクトな大会」を売り込みました。

これは、約150億ドルのロンドン2012大会から大幅に減少しました。

遅れやその他の問題により、東京組織委員会は現在、総支出を154億ドルとしていますが、実際の数字ははるかに高いとされています。 

主催者はまた、アスリートやスポーツイベントに絞り込む事ででコストを削減しようとしていると述べています。

森委員長は、観客なしで試合を進めることができると語りました。

彼は、これが過去1年間でスポーツ界の標準になったと述べました。

 

無駄を削ぎ落としたオリンピックは将来の前触れであり、オリンピックの多額の財政的および社会的負担に耐えることができる都市がまもなくなくなるだろうと言う人々への答えかもしれません。

何年もの間膨大な紙幣を印刷している国にとってみると、オリンピックの追加コストは取るに足らないものです。

今年度の政府による借入額は約1兆8000億ドルと見込まれ、リーマンショック後の2009年の過去最高額の2倍以上になり、世界で最も負債の多い政府(GDPの約230パーセント)の負債を更に増大させるでしょう。

もしオリンピックが中止されると、次の世界的なスポーツイベントは、北京で開催される2022年の冬季オリンピックとなります。

それは日本が見たくないアジアのライバルへのバトンパスであり、数十億ドルは支払うべき小さな代償です。

 

しかし、オリンピックの最終的な運命は、日本にかかっているわけではありません。

昨年3月にオリンピックを延期するという決定は、いくつかの国際競技連盟が参加しないことを明らかにした後に行われました。

感染対策のために幾つかの競技の開催を中止したとしても、東京オリンピックそのものが中止される可能性があります。

オリンピックの運命

オリンピックはこれまで、何度も危機に晒されてきました。

第二次世界大戦直前には、東京オリンピックが中止になり、1980年にはソ連がアフガニスタンに進攻した事に抗議し、多くの西側諸国がモスクワオリンピックをボイコットしました。

ミュンヘンオリンピックでは、イスラエルの多くの選手が選手村でテロリストによって殺害されました。

しかし、オリンピックはこれらに耐えてきました。

今度の敵はコロナウイルスですが、これは相当な難敵だと思います。

もし、東京オリンピックが中止される様な事になると、コロナ感染者が国際的に見ると比較的少ない日本でさえ、開催できないという事になります。

新しい感染症は今後も出現すると思われ、そうなると開催国に手を上げる国はいなくなり、米国のテレビ局など巨大なスポンサーも手を引くでしょう。

これはオリンピックにとどめを打つ事になると思われます。

 

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中東湾岸諸国を席巻する中国製ワクチン

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中東でワクチン接種進む

日本での感染者数はここのところ急速に増加しています。

非常事態宣言を出さざるを得ない状況に追い込まれた日本ですが、こうなるとワクチンに対する期待が否が応でも増します。

二月末から接種が開始されるとの日本政府説明ですが、世界には日本より遥かに速いスピードで接種を行っている国があります。

先日ご紹介したイスラエルがトップを走っていますが、その後を追っているのが、意外にも中東のアラブ首長国連邦バーレーンの様です。

彼らは何と中国製のワクチンを使用していると伝えられています。

英誌Economistが「Bahrain and the UAE are relying on a Chinese-made vaccine」(バーレーンとアラブ首長国連邦は中国産ワクチンに依存している)と題して記事を掲載しました。

かいつまんでご紹介したいと思います。

Economist記事要旨

至る所にあるマスクのほかに、ドバイへの訪問者は感染の痕跡を見つける事が難しいでしょう。

バーやショッピングモールは多くの客を迎えています。

昨年春に5分の4が空だったホテルは、12月に70%の稼働率を記録しました。

観光客は自国でのロックダウンから逃れるためにドバイに群がりました。

ドバイは集団免疫への道を順調に進んでいるようです。

ドバイが属しているアラブ首長国連邦(UAE)は、一人当たりの予防接種で世界第2位にランクされています。

1月13日までに、イスラエルに次いで、100人の居住者ごとにほぼ13回の投与が行われました(グラフを参照)。

UAEは4月までに人口の半分に接種することを目指しています。

別の湾岸諸国であるバーレーンは、3番目にランクされています。

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出典:Economist

彼らの初期の成功の理由は、どちらも小さな国である事です。

バーレーンの居住者は200万人未満、アラブ首長国連邦は一千万人未満です。

両国の居住者は、アプリで接種を申請できます。

多くの欧米諸国では、予防接種の順番を規定する詳細な規則があり、配布が遅くなる可能性があります。

バーレーンとアラブ首長国連邦は、すべての来場者にそれらを提供しています。

おそらく他国との最大の違いは、バーレーンとアラブ首長国連邦が、中国国営企業であるシノファームが製造したワクチンに依存していることです。

彼らは早い段階で、他の国では懐疑的に見られていた中国製品を採用し、集団免疫の推進を加速させました。

それはまた、ワクチン外交をくり広げる中国との関係を深めました。

主に湾岸諸国のおかげで中国製ワクチンは信頼を得ようとしています。

UAEは、7月に31,000人のボランティアにより後期試験を開始しました。

バーレーンも8月に治験を開始しました。

両者は、86%の効果があると宣言した後、12月にそれを承認しました。

しかし、彼らはその承認を裏付けるデータを公表していません。

湾岸の当局者は、それはシノファームの決定により 「私たちにはこの種の情報を開示する権利はありません」と言います。

このワクチンに対して、一部の国は依然として懐疑的です。

たとえば、ブラジルの科学者は1月12日に、Sinovacによって製造された別の中国のワクチンは50%しか効果がなく、最初に報告された78%をはるかに下回ると発表しました。
中国製ワクチンの接種に関して、これら湾岸諸国が警察国家であることも役立ちます。

UAE政府は、ワクチンについての「うわさ」を広める行為を罰すると警告しています。

アラブ首長国連邦の首都であるアブダビは、地域全体にワクチンを配布するためのハブになることを目指しています。

UAEが最も関係が深いのは中国です。

今年後半には、シノファームのワクチンの投与から製造に移行します。

それは、接種へのアクセスが不均一になる地域でのワクチン外交を活発化させます。

エジプトは、湾岸諸国全体の人口の2倍にあたる1億人に接種を必要としています。

事実上破産しているレバノンは、来月ファイザーからわずか60,000回分のワクチンを接種する予定です。

アラブ首長国連邦でのシノファームのワクチン製造は、中東全体での採用につながる可能性があります。

それは中国を喜ばせるでしょう、

長い間西洋のパートナーであった湾岸諸国は、近年、中国との関係を強化することを目指してきました。

アラブ主張国連邦の国営通信会社は、Huaweiに5G契約を授与しました。

同国はリビアで中国製の攻撃ドローンを使用するなど、軍事関係も拡大しています。

アラブ首長国連邦がシノファームを採用することで、彼らはさらに近づきます。

この関係において、ソーシャルディスタンスはありません。

中東における中国プレゼンスの高まり

これほど中国が湾岸諸国に接近し、湾岸諸国もそれを受け入れているとは知りませんでした。

米国ではシェールオイルの開発が進み、エネルギー資源の自立を達成したため、米国にとっての中東の存在意義は薄れました。

一方で、経済成長著しい中国にとって、資源国の中東は益々重要になってきています。

この関係がワクチン外交においても如実に現れた格好です。

新型コロナは元を正せば、中国が広めたのではないかと非難したい気持ちはわかります。

私もそう言いたいですが、世界的に感染が広がる状況下、コロナを収束させるためには中国製だろうがロシア製だろうが役に立つものは何でも使うしかありません。

一番大事な事は、コロナの感染拡大を食い止める事です。

 

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アップルカーの出現は自動車メーカーの下請け化を促すか

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アップルカーが現実に

アップルが車を売り出すというニュースが波紋を呼んでいます。

アップルの名前を冠した車ですから、おそらく通常の車とはかなり異なるはずです。

個人的には完全に雑音を消した車を実現して欲しいですね。

すでに様々なイヤフォンの開発を通じてノイズキャンセリングの技術を、アップルは蓄積していると思いますので、その気になれば殆ど雑音が耳に入ってこない車を作る事ができるのではないでしょうか。

アップルのノイズキャンセリングはイヤーカップの外側と内側に設置したマイクが外部の音を検出し、これと逆の位相の音を合成する事で無音の状態を作る「アクティブノイズキャンセリング」という技術を使っています。

ゆくゆくは無人運転者になっていくのでしょうから、車で移動中に映画を観たり、睡眠を取ったりという楽しみ方も可能になってくるでしょう。

その際にノイズキャンセリングの技術は非常に重要になると思います。

2014年に、アップルがヘッドフォンメーカーのBeats を買収しましたが、アップルカーを最終的に作るための布石だったのかも知れません。

アップルカーの計画に関して米紙ウォールストリートジャーナル(WSJ)が「Making an Apple EV Is a Poisoned Chalice for Car Companies」(アップルカーの委託生産は自動車メーカーにとって自殺行為か)と題して記事を掲載しました、

かいつまんでご紹介したいと思います。

WSJ記事要旨

「アップルカー」が世に出るなら、大きな出来事でしょう。

しかし、委託生産メーカーが得る報酬は僅かなものとなるでしょう。

韓国の現代自動車の株価は11日、アップルと自動運転電気自動車(EV)開発で契約締結を計画しているとの報道を受け、9%上昇しました。

アップルは2014年に自動車開発構想を開始しましたが、このプロジェクトの進捗(しんちょく)はこれまで断続的で、アップルがこの件を公に認めたことはほぼありません。

ロイター通信は先月、アップルが自動運転車として高機能なものを目指すのであれば、2024年発売というのは、かなり野心的な目標だと報じました。

現代自は、アイフォーンの組み立てを請け負っている台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業傘下の富士康科技集団(フォックスコン・テクノロジー・グループ)のような役割を果たす生産パートナーとなる公算が大きいと見られています。

「アップル」ブランドの自動車に関わるという魅力、そしてそれに伴って予想される生産台数を考えても、現代自の時価総額が7日の終値以降約150億ドル(約1兆5600億円)膨らんだことを正当化するのは困難です。

協議がまとまらないリスクや、想定外に長く赤字になるリスクがあるだけでなく、委託生産は特別に魅力的な事業ではないからです。

同じくアップルのパートナー候補とみられているカナダの マグナ・インターナショナル は、ジャガーなどの電気自動車を組み立てていますが、この組み立て事業はあまり収益性が良くありません。

マグナの「完成車」部門の営業利益率は2019年が2.1%、2018年が1.1%となっており、同社部品部門に比べて低いです。

それでは、ライバルとなる可能性のある企業のEV生産に名乗りを挙げる大手自動車メーカーがあるのはどうしてでしょうか。

現代自とアップルの協議だけでなく、 ゼネラル・モーターズ (GM)は昨年、米新興EVメーカーのニコラのピックアップトラック生産で合意しました。

GMのケースでは、この取り決めは、GMブランドが付くか否かにかかわらず、同社のEV技術のコストをより広範囲な自動車に広げ、新たな成長軌道を敷くための方法でした。

現代自は先月、自社開発のEVプラットフォームを発表しており、アップルとの協議でGMと同様の計算をしているのかもしれません。

この2つの自動車メーカーは先見性があるとみられるようになり、株価の上昇は過去最高に迫る勢いです。

 

現在、自動車業界の多くの活動は、 テスラ の時価総額が8,340億ドル(約87兆円)となったことに動機付けられています。

もし、この数字を合理的に説明するということが可能だとすれば、それはテスラのブランドと製品開発の価値に関するものでしょうが、それら一番価値の高い部分を外注したいと思う新興EV企業はありません。

自動車メーカーにとって、組み立て契約は、アップルのような強力なブランドであっても、行き詰まる恐れのある成長戦略です。

自動車メーカーの下請け化

アップルカーのニュースは、これから自動車産業が経験する激しい変革期の前触れだと思います。

Googleも無人運転車を独自に開発しようとしていますが、テスラを含め、資金力のあるこれら巨大IT会社が、無人運転車を開発し、製造はコストの安いメーカーに委託するという、iPhoneの製造パターンが自動車産業に持ち込まれる事になるでしょう。

内燃機関という開発に膨大なお金と経験が必要なコンポーネントがあったからこそ、自動車メーカーは新規参入者を排除でき、大きな利益をあげる事ができました。

しかし、電気自動車は製造が遥かに簡単です。

むしろ無人運転を司るソフトウェアが重要になりますので、IT大手が圧倒的に有利です。

日本の自動車メーカーもこれからこの100年に一度の大変革に直面する事になります。

各社がどの様に対応するか注目です。

 

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英国で新しい治療薬見つかる-日本の研究開発の成果か

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英国で良い治験結果

非常事態宣言が出され、日本の感染者数も拡大が止まりません。

怖いのは医療崩壊であり、日本の医療体制もかなり逼迫してきている様です。

そんな中、特効薬に関するニュースが英国から飛び込んできました。英誌Economistが「Another life-saving treatment is found for covid-19」(新型コロナの新しい治療法が見つかりました)と題する記事を掲載しました。

かいつまんでご紹介したいと思います。

Economist記事要約

新型コロナに関する良いニュースは、最近では入手困難です。

感染者の絶え間ない急増は、世界中の病院を圧迫しています。

しかし、本日発表された2つの薬の臨床試験の結果は、患者と病院の両方の状況を改善しそうです。

トシリズマブサリルマブと呼ばれる2つの薬は、現在、関節炎患者の炎症を軽減するために使用されています。

免疫系がオーバードライブ状態になり、臓器を破壊する過炎症は、新型コロナ患者が死に至る一つのパターンです。

新型コロナに適した抗炎症薬としては、デキサメタゾンがすでに発見されています。

それは全面的に免疫システムを弱める安価なステロイドです。

対照的に、トシリズマブとサリルマブはより標的を絞る事が可能です。

それらは両方とも、免疫応答を引き起こすタンパク質であるインターロイキン-6の効果をブロックする抗体でできており、新型コロナ患者で効果が顕著です。

トシリズマブとサリルマブの臨床試験では、集中治療室(ICU)への移送を必要とするほどの重症で入院した800人の患者が対象となりました。

治験は6か国で実施され、参加者のほとんどは英国にいました。

800人の患者の半分は標準治療に加えて2つの薬のうちの1つを受け、残りの半分は標準治療(デキサメタゾンを含む)のみを受けました。

トシリズマブまたはサリルマブも投与されたグループの患者の27%と比較して、標準治療グループの患者は36%が死亡しました。

言い換えれば、死亡率を約4分の1削減しました。

さらに、これらの薬で治療された患者はより早く回復し、7〜10日早く退院しました。

入院期間の短縮により、多くのICU病床が解放されます。

英国やアメリカのように、多くの病院で病床が不足している場所では、歓迎すべきニュースです。

2つの薬剤は同等に機能するように見えますが、結果はより古く、より広く利用可能な薬剤であるトシリズマブの方が確実であり、したがって、試験の新治療群の参加者の大多数に与えられました。

薬は安くはないので、発展途上国には負担が重いかもしれません。

英国では、静脈内治療のコースの費用は750〜1,000ポンド(約1,000〜1,400ドル)です。

ICU滞在期間の短縮は、この費用を相殺する以上の価値があります。

ICUでの1日の費用は、英国の国民保健サービス(NHS)で患者1人あたり約2,000ポンドです。

そして、一般的に、集中治療に費やす日数が少ない患者は、その後の回復が早く、リハビリが少なくて済みます。

NHSは、ICUの患者に直ちにトシリズマブの使用を開始します。

病院はすでに薬を保有しており、政府は供給を増やすためにそれを作る製薬会社であるロシュと協力しています。

今のところ、英国はトシリズマブとサリルマブの両方の輸出を禁止しています。

新型コロナによる死亡が続く中、試験結果は、患者、疲れ果てた医療従事者、そして封鎖されている何百万人もの人々に希望の光をもたらします。

日本の研究開発の成果

トシリズマブは岸本忠三・元大阪大学長と中外製薬が開発し、「アクテムラ」の商品名で知られています。

日本の研究開発が新型コロナの患者の命を救う事に役立っているのは大変嬉しい事ですね。

ワクチンも大事ですが、特効薬も大事です。

ノーベル賞受賞者の本庶教授が指摘されてた通り、コロナにかかっても死ななければ怖くないんです。

この特効薬により死亡率が大きく低下するという事になれば、希望の光が見えてきます。

今後の進展を見守りましょう。

 

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感染症に対する16世紀医師の驚くべき先見性

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ソーシャルディスタンスの重要性

昨年の流行語大賞は「三密」だそうですが、それ以外にも感染症に関する都市封鎖、ソーシャルディスタンスなどの言葉が飛び交いました。

これらは今回の新型コロナ感染が作り出した言葉ではもちろんありません。

人類の感染症に対する戦いには長い歴史があります。

感染症の中でも「黒死病」として最も恐れられたペストに対して、どの様に戦ってきたか、英BBCが「The 432-year-old manual on social distancing」(432年前のソーシャルディスタンスに関するマニュアル」と題して興味深い記事を掲載しました。

中世イタリアに出現した驚くべき医師のエピソード、かいつまんでご紹介したいと思います。

BBC記事要約

1582年11月中旬の真夜中でした。サルデーニャ島のアルゲーロ港の船着場に船乗りが足を踏み入れました。

不幸な船員は、地中海を横切って約500Km離れたマルセイユから到着したと考えられています。

疫病は1年間そこで猛威を振るっていました。そして彼は疫病を一緒に持ってきたようです。

彼はすでに鼠径部の腫れに苦しんでいました。

どういうわけか、この船乗りはペストの検疫官をかいくぐり、街に入る事ができました。

彼は数日のうちに死にましたが、ペストの発生が始まりました。

この時点で、アルゲーロの人々の多くはすでに運命づけられていました。

当時の公式記録に基づけば、この流行により6,000人が死亡し、150人しか生きていないと推定されます。

実際には、この流行により、市内の人口の60%が死亡したと考えられています。 (誇張は当時の政府による税金回避の試みだったかもしれません。)

集団墓地が作られ、その一部は今日まで残っています。

 

その後、周辺の地域では感染は拡がりましたが、驚くべき事に、伝染はアルゲーロの街から、8ヶ月以内に消えました。

これはすべて一人の男と彼の先見の明のある社会的距離(ソーシャルディスタンス)の概念によるものと考えられています。

 

「この小さな街でこれだけ知識豊富な医師が見つかった事は驚くべきことです」と、この主題に関する論文を共同執筆したオスロ大学の名誉教授であるベネディクトウは言います。

「ピサやフィレンツェなどの大きな商業都市では、より厳密な対策が導入されることが期待できます。しかし、この医師はこの時代の最先端を走っていました。それは非常に印象的です。」

歴史上最も悪名高いペストの記録は、もちろん、1346年にヨーロッパとアジアを襲い、世界中で推定5,000万人が死亡したペストでした。

フィレンツェでは、イタリアの詩人ペトラルカが、次のように書いています。

「後世の人々は、私たちの証言を真実とは思わず寓話と見なすだろう。」

ペストの犠牲者の遺体は、今日でもロンドンのトンネルプロジェクトなどで発掘されています。

記録によると、ファリンドンだけで50,000体が見つかりました。

ペストは1346年の大爆発の後、それほど壊滅的な感染は二度と生じませんでしたが、数世紀の間、定期的に感染が起こりました。

1670年まで3年に1回パリで生じ、1563年にはロンドンの人口の24%が死亡したと考えられています。

これは現代科学が生まれる前の時代であり、当時の理解では、病気は「悪い空気」によって引き起こされ、酢が最先端の治療薬でした。

疫病の治療法は、自分の尿を浴びるなど奇妙なものがありました。

人気のある方法の1つは、生きた鶏の尻で患部をこすって「毒」を取り除くことでした。




当時、アルゲーロ市は感染に対する十分な備えがありませんでした。

市は、不十分な衛生システムや「古臭い」医療文化に悩まされていました。

この時、50代の医師であるQuintoTiberioAngelerio(アンジェレリオ)が現れます。

当時サルデーニャ島には大学がなかったので、彼は海外で教育を受けていました。

アルゲーロの住民にとって幸運なことに、彼は1575年にシチリア島を襲ったペストを体験した直後でした。

数年後、彼はマニュアルを発行し、彼が市に課した57の規則を詳述しました。

アルゲーロの最初の患者は船で到着し、その後、2人の女性が体に独特の傷を負って死亡しました。

アンジェレリオは何が起こっているのかすぐに理解しました。

彼は直ちに患者を検疫する許可を求めましたが、彼は何度も妨害されました。

最初は優柔不断な治安判事、次に上院が彼の報告を拒否しました。

アンジェレリオは必死になりました。

彼には総督に上訴する勇気がありました。

最終的に彼らの同意を得て、彼は市壁の周りに三重の防疫線を設置し、外部の人々との接触を防ぎました。

当初、この措置は非常に人気がなく、市民は彼をリンチしたいと考えていました。

しかし、より多くの人々が亡くなると、市民は理解し、彼は発生を封じ込める仕事を完全に任されました。

数年後、彼はマニュアルEctypa Pestilentis Status Algheriae Sardiniaeを発行し、彼が市に課した57の規則を詳述しました。主なものは次の通りです。

封鎖

まず、市民は家を出たり、家を移動したりしないようにアドバイスされました。

すべての会議、ダンス、娯楽も禁止されました。

買い物をするために1世帯につき1人だけが外出すべきであると規定しました。

封鎖はアルゲーロ市に固有のものではありませんでした。

たとえば、フィレンツェでは、1631年の春に市の完全な検疫を課しましたそして今日と同じように、ルール違反は一般的でした。

家族のメンバーがペストを持っている疑いがあり、病院に運ばれた場合、人々は40日間自己隔することとなりました。

これが「検疫」という言葉の由来です。「quarantagiorni」はイタリア語で「40日」を意味します。

物理的な距離

次は6フィートのルールです。

アンジェレリオは、「外出を許可された人は、長さ6フィートの杖を持っていなければなりません。人々はこの距離を互いに保つことが義務付けられています。 」と規定しました。

新型コロナ感染が始まってから、世界中の多くの国が驚くほど似たような方針を採用し、可能な限り人々を2メートル(6.6フィート)離しておくことを推奨しました。

英国、フランス、シンガポール、韓国、ドイツを含む多くの場所で、最小距離はその後1メートルまたは1.5メートルに短縮されました。

しかし、16世紀の政策は正しかった可能性があることが判明しました。

ある研究では、1メートルでのリスクは、2メートルでのリスクよりも2倍から10倍高い可能性があると推定されています。

 

ルネッサンスは、ミケランジェロ、ドナテッロ、ラファエル、ダヴィンチら天才を輩出し、古典哲学、文学、特に芸術の黄金時代として広く記憶されています。

しかし、それはまた科学においても大きな飛躍をもたらしました。

コペルニクスが、地球が太陽の周りを回転し、ダヴィンチはパラシュート、ヘリコプター、装甲車両、初期のロボットを作る計画を立てました。

その後、1500年頃、病気は「悪い空気」によって引き起こされるという考えに基づいて、この瘴気によって汚染された物体に触れることで人々が病気になる可能性があると考える科学者が生まれました。

ベネディクトウは語ります。 「アンジェレリオは、病気が接触によって広まったことを理解していました。」

一例は、家の所有者が家を消毒し、白塗りし、換気し、「水をやる」必要があるという彼の規定です。

彼は、高価な家具は洗ったり、風にさらしたり、オーブンで消毒したりすることができますが、特に価値のないものは燃やすべきだと説明しました。
健康パスポート

ペストが発生するのを防ぐための一般的な方法の1つは、都市に入ろうとする人の健康状態を注意深くチェックすることでした。

場合によっては、当局は、ペスト患者でないことが認定されている場合、制限にもかかわらずゲートを通過できるようにする物理的な文書を発行しました。

新型コロナの感染が始まったとき、この「健康パスポート」の概念が復活しました。

最近、ロンドン、ニューヨーク、香港、シンガポールを含むいくつかの国際空港が、ユーザーの検査結果と予防接種記録を表示できるデジタル文書「CommonPass」を試しています。

感染状況を簡単に確認して、海外旅行をより安全かつ効率的にすることが目的です。

 

興味深いことに、免疫の科学的概念が出現する何世紀も前にアルゲーロでの感染が発生しましたが、アンジェレリオは、すでに疫病を経験して生き残った人々に特定の任務を割り当てました。

彼は、このグループの中から墓掘りを雇うべきだと主張しました。彼らは、感染者の遺体を扱うことが期待されていたので、リスクの高い仕事です。

検疫

イタリアは、ペストの疑いのある人々を隔離する初期のパイオニアであり、ラザレットと呼ばれるペスト患者のための病院は、1423年、ヴェネツィアに最初に設立されました。

すぐに、患者と、感染した人と接触した人々のために別々の施設ができました。

1576年までに、市には前者に最大8,000人、後者に約10,000人が滞在していました。

「彼らには莫大な金額が費やされました。それは指摘べきことの1つです。そして、食べ物がかなり良かったという証拠があります。」と研究者は語ります。

ペストの管理者は、ベッド、家具、食べ物など、施設に出入りするすべてのものを追跡していました。

最も貧しい人々は治療に対する支払いを免除されました。

病気の患者が自宅から運ばれることもありましたが、乳母がいない孤児の赤ちゃんには、ヤギの乳が哺乳瓶で与えられました。

 

16世紀の発生に対して講じられた対策と、今日私たちが精通している種類との間のすべての類似点について、いくつかの決定的な違いがあります。

当時、サルデーニャでは、迷信と宗教は依然としてアンジェレリオの疫学計画の重要な要素でした。

ペストは神の罰であると国民に伝え、彼らに最善の道徳的行動をとるよう警告しました。

彼の指示のいくつかは単に効果がなかっただけではありませんでした。

市民は困惑していました。

一例として、「七面鳥と猫は殺されて海に投げ込まれなければならない」という指示があります。

これは、流行に対する驚くほど一般的な反応でした。

作家のダニエル デフォーは、1665年のロンドンでの疫病の際に、市長が40,000匹の犬と20万匹の猫の虐殺を命じ、特別な犬殺し屋が任命されたと報告しました。

しかし、ネズミはペストの保因者として知られているため、ネズミの捕食者の大量処刑は、意図したものとは逆の効果をもたらした可能性があります。 


アンジェロ市での感染は8か月続き、その後、60年間、新たなペストの流行をありませんでした。

しかし、その後再度発生した時、彼らが最初にしたことは、アンジェレリオのマニュアルに目を向けることでした。

マニュアルに従い、検疫、隔離、商品や家屋の消毒を紹介し、市内に衛生的な非常線を設置しました。

驚くべき先見性

このイタリアの医師には驚かされます。

顕微鏡もワクチンもなく、免疫という概念さえなく、しかも宗教や迷信が支配していた16世紀に、現在我々が施している措置をほとんど編み出し、実践しています。

その洞察力は称賛に値しますが、その実施にあたって相当な抵抗があったにもかかわらず、最後は関係者を説得して全権を委任されているのですから、実行力においても優れた人物だったと推測します。

もう一つ感心するのは、当時すでに社会的弱者に対する救済措置がなされていた点です。

多くのペスト患者は疫病神の様に忌み嫌われたと思いますが、既にこの時点で患者やその家族に対して救いの手が差し伸べられている点は注目に値します。

イタリアが感染症予防において、当時世界の先端を走っていたのには理由があると思います。

当時、イタリアの都市国家ベネチアやジェノバは世界交易の正に中心であり、地中海の貿易を支配していました。

私の暮らしたイスタンブールにはジェノバやベネチアの商人の居住区が今でも残っていますが、彼らは当時オスマン帝国とも盛んにビジネスを行っていたのです。

交易を行うという事は、当然人と人が接触します。

イタリアの商人が感染症の運び屋になった事は容易に想像できます。

感染症対策の要諦が今も昔も変わらず、ソーシャルディスタンスだというのがこの記事を読んで良くわかりました。

 

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トランプ支持者の国会乱入を容認する共和党支持者 - 変容した共和党支持層

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国会乱入の衝撃

昨日のトランプ支持者の国会議事堂乱入には驚きました。

死者も4名出たとの事ですので、これは米国政治史に汚名を刻んだ出来事と言えるでしょう。

この日国会では大統領選の選挙人投票が行われており、その最中にデモ隊が警官のバリケードを突破して押し行ったのですから、普通では考えられない出来事です。

しかも、トランプ大統領はデモ隊を前にして、国会への乱入を扇動する様な演説を行っており、大統領の責任も問われるべきと考えます。

この様な民主主義の根幹を揺るがす様な事件を前にして、さすがの共和党支持者たちも呆れ果てただろうと思ったのですが、どうもそうではなさそうです。

英誌Economistが「Nearly half of Republicans support yesterday’s invasion of the US Capitol- Some Trump supporters, meanwhile, are blaming the violence on Antifa」(共和党支持者の約半数が昨日起きたトランプ支持者の国会乱入を支持している - 一方、トランプ支持者の一部はAntifa『左翼過激派』による暴力だと批判している)と題した記事を掲載しました。

かいつまんでご紹介したいと思います。

Economist記事要約

アメリカの大統領が彼の支持者に国会議事堂を襲撃するように扇動することによって彼の在任期間を終えるのは衝撃的です-特に再選キャンペーンで対立候補がアメリカを無法状態に陥らせることを恐れると彼が主張していただけに、意外ですが驚くことではありません。

1月6日、トランプ支持者の群衆が警察を圧倒して議会を占領した後も、トランプ大統領は、11月の大統領選挙が「盗まれ」、「詐欺的」であると主張して、彼らを動機付けた陰謀説を唱え続けました。

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出典:Economist

昨日1人の女性が射殺され、他の3人が「救急措置」で死亡したという騒乱についてのトランプ氏の意見も、トランプ氏に投票した多くの人々によって共有されているようです。

世論調査であるYouGovによる1,397人のアメリカ人有権者の調査では、反対するよりも多くの共和党員がトランプ支持者の行動を支持すると述べました(それぞれ45%から43%)。

対照的に、ほぼすべての民主党支持者と、無党派有権者の3人に2人は暴力に反対だと述べました(上記グラフを参照)。

ニュースについての意見だけでなく、根底にある事実の理解についても、両者の意見は分かれています。

ビデオは、暴徒が警察官を攻撃し、窓を壊していることを示しました。

襲撃の後、銃、パイプ爆弾、モロトフカクテルが見つかりました。

しかし、共和党の回答者の58%は、抗議は「より暴力的」ではなく「より平和的」であると述べました。

民主党員においてはわずか4%しか同じ様な見方をしていません。

共和党の有権者は、右翼のメディアによって作られたストーリーにさらされているため、今後数日で彼らの意見は変わる可能性があります。

二つの保守的なニュース局であるFoxNewsとNewsmaxのコメンテーターは、暴力が発生したことを否定していませんが、代わりに加害者の正体について疑問を投げかけています。

「これらの人々はトランプの支持者のようには見えません」と、Newsmaxの司会者であるグレッグ・ケリーは語りました。

「アジテーターが誰であるか知りたいのです」とショーン・ハニティーはフォックスでのプログラム中に発言しました。

いくつかの共和党の政治家が同様の主張をしました。

そして、共和党議員であるMoBrooksとMattGaetzは両方とも、トランプ支持者を装った左翼のアンティファ運動のメンバーが暴力を振るったと主張しています。

 

これらは信じがたい議論です。

何故なら今回の事件は大統領自身が先導したものだからです。

「1月6日のワシントンでの大抗議」とトランプ氏は12月19日にツイートしました。 「そこに行こう。大胆に行動せよ!」。

共和党の変質

多くの識者が指摘する様に、現在の共和党は昔の共和党ではなくなっています。

トランプ大統領は、2016年の大統領選においては全くのダークホースで、共和党の候補にさえ選ばれるとは予想されていませんでした。

しかし、彼はラストベルトと呼ばれる経済が低迷している地域の恵まれない白人に焦点を当て、「白人、男性、低学歴」というそれまでの共和党では主流では無い支持層を新たに掘り起こしました。

これが彼を大統領に押し上げた訳ですが、同時に共和党の支持層も新たな支持者が加わる事により変容しました。

今やこの新たな支持層がなければ、各議員も選挙で勝てない訳で、これが共和党の中でトランプ大統領への求心力が高まった原因となっていると思います。

トランプ大統領が共和党の支持層に引き起こした大きな変容は、トランプ大統領がたとえ失脚したとしても、その影響は色濃く残っていくでしょう。

新たなトランプが登場して、グローバリズムに背を向け、アメリカファーストを唱える可能性は十分にあります。

何故なら前述の白人、男性、低学歴の人たちがそれを望んでいるからです。

 

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ジョージア州決選投票の結果がバイデン政権にもたらすもの

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民主党上院も過半数を獲得

米国上院で残された2議席を争うジョージア州の決選投票の結果が出ました。

驚くなかれ、共和党の現職2名を民主党の新人議員が破り、上院での議席は50:50で両党が拮抗する事になりました。

この場合、上院議長として副大統領のハリスが票を入れる事になりますので、上院も下院と同じく民主党が過半数を制する事になります。

上院は共和党が過半数を維持するだろうと予想されていましたので、今回の選挙結果はバイデン 氏にとっては願ってもない朗報です。

米国というのは大統領が大変強い権力を持っている様に思われていますが、実は議会も相当な権力を持ち、大統領を牽制する事が可能です。

中でも上院は次の様な権利を有しています。

  1. 上院は下院が可決した法案を否決する事ができます。即ち下院が予算案を可決しても上院は否決できるのです。
  2. 上院のみに与えられた特権として、大統領が指名した連邦政府高官や大使を承認する権限と、3分の2の表決により、あらゆる条約を批准する権限があります。

もし上院の過半数を共和党に抑えられていれば、バイデン 氏は共和党と妥協せずに、自らの閣僚を決めることさえできなかった訳ですから、今頃、バイデン 氏は小躍りして喜んでいるに違いないと思います。

今回の選挙結果と政局に及ぼす影響について、英誌Foreign Policyが「Biden’s Big Day: Likely Senate Control, Support From Pence and McConnell」(バイデン氏にとって記念すべき一日:上院での過半数確保、ペンス副大統領とマコーネル共和党院内総務からの支援)と題した記事を掲載しました。

かいつまんでご紹介したいと思います。

Foreign Policy記事要旨

バイデン次期大統領は水曜日に一連の大きな勝利を享受し、トランプ氏の終焉を加速させる可能性があります。

しかし、このプロセスは静かには進みません。

トランプ支持の抗議者たちは国会議事堂の建物に行進し、警察のバリケードを押し倒し、ペンス副大統領は議員に建物から避難する様指示を出すことを余儀なくされました。

しかし、ジョージア州での二つの決選投票の結果に基づけば、バイデン氏と民主党はホワイトハウスと下院だけでなく上院も支配するようになります。

これにより、バイデン氏は野心的な国内外の政策を推進する事が可能になるでしょう。

一方、ペンス副大統領は、選挙人団のプロセスに異議を唱えず、次の様に語りました。

「どの選挙人票を数えるべきか、どれを数えるべきでないかを決定する権限は私には与えられていないというのが私の判断です。」 

そして共和党の指導者マコーネル院内総務も、大統領選挙認定を停止するための一部の共和党員による試みに強く反対しました。

ジョージア州での決選投票の結果は、バイデン氏が富裕層への課税計画など、国内の課題を推進するチャンスを高めました。

彼はまた、法人税率と相続税の共和党による引き下げを覆そうとしています。

それでも、新大統領はこれらの問題の多くで共和党の議事妨害に直面するでしょう。

現在の規則では、議論を締めくくるには60票を上回る過半数が必です。

バイデン氏は、議員として36年間、巧みな妥協家として高く評価されていますが、増税を伝統的に嫌う共和党から激しい抵抗に直面するでしょう。

マコーネルが再び指導的地位に就くと、バイデン氏は最高裁判事と閣僚候補者の承認を取り付けるのにも苦労するでしょう。

それに加えて、上院は以前とは異なり、はるかに二極化した場所になっています。

1980年代や90年代においては、NATO拡大や刑事司法改革において共和党の支持を獲得することがよくありましたが、現在はそうではありません。

1980年代後半にバイデン 氏の外交政策顧問であったキングは語りました。

「上院は二極化しており、お金によって動かされています。マコーネルがオバマ元大統領に対してとった態度と同じ様に、この人を倒すためには何でもやると考えた場合、バイデン 氏は問題を抱えることになります。共和党にとって何としても避けたいことは、カマラ・ハリスが大統領に選出されることです。」

 

一方、過去4年間、上院共和党は外交政策の問題についてトランプ大統領に挑戦することを躊躇しませんでした。

したがって、特に、トランプ氏が大きな損害を与えたNATOとの関係修復に関しては、バイデン 氏は共和党の支援を得る事が可能でしょう。

共和党上院は、たとえばロシア、イエメン、サウジアラビアに対する制裁を支持するなど、誰よりもトランプ氏の外交政策に反対したと広く見なされています。

そして、共和党員と民主党員の両方が、アメリカの主要なライバルである中国との貿易、安全保障、人権問題において、より厳しくなることで一致しています。

それに加えて、上院の共和党は現在混乱しているようです。

退任する大統領の政策の多くを覆すことは難しいでしょうが、ユタ州のロムニー議員やアラスカ州のサス議員を始め、一部の上院共和党員はますますトランプ氏に反対することをいとわないようになっています。

先週、サス議員は大統領選挙の認証を取り消そうとするトランプ大統領とそれを支援する共和党議員を厳しく非難し、それを「危険な策略」と呼びました。

 

「実際には、バイデン氏と共和党の間で外交政策に関して合意できるいくつかのポイントがあります」と、元バイデン氏補佐官、ハルツェル氏は語りました。

「最初は、トランプ氏によって行われたNATOとの損害を修復することです。 2つ目は、トランプ氏よりも洗練されたしかも多国間的な方法で、攻撃的な中国に対抗することです。同様に、3つ目は、サイバー防衛の強化や西バルカンへの米国の関与の増加など、プーチン大統領の厄介な政策に反対し続ける事です。」

それでも、次期大統領が、トランプ氏によって拒否されたイランの核合意に再び参加しようとしたり、気候変動に対してより積極的な行動を取ろうとすると、共和党の壁にぶつかるだろうと彼は述べました。

 

貿易問題に関しては、バイデン氏は、自由貿易を支持している共和党員よりも、進歩的な陣営にいる身内の民主党員とより多くの問題を抱えるでしょう。

オバマ政権の副大統領として、バイデン氏はTPPを支持しました。

これは、民主党の中道政治家や多くの共和党員が、知的財産やダンピングなどの問題に関する世界貿易機関の規則を尊重するように中国を強制する効果的な方法と見なしたからです。

トランプ氏は、TPPから撤退し、北京に対して一方的な貿易戦争を開始しましたが、ほとんど効果がありませんでした。

しかし、2020年の大統領選キャンペーンの中で、バイデンは進歩派やポピュリストの要求に応えて劇的に方針を変え、TPPに再加盟する場合、米国でより多くの製造を必要とする「強力な原産地規則」を含めるように再交渉すると述べました。

 

新型コロナに対するトランプ氏の対応は、ホワイトハウスからの混乱の高まりと相まって、選挙で多くの共和党員を脆弱にしました。

これは結果的に、バイデン氏がインフラストラクチャの改修、追加のコロナウイルス関連の救済、州および地方政府への援助などの超党派の問題についてより多くのチャンスを得たことになります。

トランプ大統領の致命的なミス

今回のジョージア州での上院選敗北は共和党にとって大変なショックだと思います。

敗北の理由はトランプ大統領の振る舞いにあると思います。

潔く負けを認めようとしないその姿勢は、選挙による円滑な政権交代という民主主義の基本を踏みにじる行為であり、さすがに一部の共和党員もこれにはついて行けなかったのではないでしょうか。

大統領の利己的な行為は結果的に決選投票での敗北に繋がりました。

一方、バイデン 氏が自分の思う様な政策を行う事が容易になった事は喜ばしいことです。

しかし、バイデン 氏が信念の人ではなく、妥協の達人であるという点が若干気になります。

例えば、米中二国間の交渉において、気候変動の問題で中国の譲歩と引き換えに日本の安全保障上の問題を犠牲にするとか、民主党内の進歩派に妥協するために、TPPへの加入を断念すると言った可能性が危惧されます。

彼の周りには優秀なスタッフがたくさん居ますので、杞憂かも知れませんが、妥協に妥協を重ねて芯がぶれる事の無いようにお願いしたいと思います。

 

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仮想通貨ビットコインの急騰

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ビットコイン急騰の背景

仮想通貨ビットコインの値上がりが注目を集めています。

1月3日には34,000ドルを超えました。

この急騰の背景には何があるのでしょうか。

ビットコインは「サトシ ナカモト」という人物がブロックチェーン理論を使って発明した仮想通貨です。

名前から想像すると日本人の様ですが、どうもこの人物は架空の人物で、日本人かどうかは不明です。

謎に包まれた仮想通貨ビットコインはこれまで乱高下を繰り返してきましたが、今度こそ市場から評価されて、ドルやユーロの代替通過として市場に受けいられれていくものでしょうか。

英誌Economistが「The price of bitcoin has soared to record heights」(ビットコインの価格は記録的な高騰を見せた)と題した記事を掲載しました。

かいつまんでご紹介したいと思います。

Economist記事要約

12年前の2009年1月3日、英紙タイムズのトップページ見出しには、「2回目の銀行救済の危機に瀕した蔵相」と書かれていました。

これは、英国政府が金融システムを崩壊から救うための取り組みに言及した物です。

同じ年、ビットコインの謎に包まれた発明者である「サトシ ナカモト」が、「ジェネシスブロック」と呼ばれる最初の50枚のビットコインを作成した時、彼はデータを永久に埋め込みました。

隠されたテキストはデジタル通貨の産声でした。

政府や中央銀行の管理から解放された分散型暗号通貨という全く新しいものが生まれたとナカモトは認識しました。

ナカモト氏は公の場から姿を消しましたが、彼の発明は注目を集めており、最近では価値も急上昇しています。

2013年、その価格が400ドルを上回ったとき、金融界から最初に注目を集めました。

2017年、価格は2万ドルまで急上昇しましたが、すぐに急落しました。

2018年12月には3,200ドルにまで落ち込みました。

つい最近の10月には、たったの$ 10,600しか価値がありませんでしたが、その後、再び上昇し始め、1月3日に34,000ドルを超えました。

暗号通貨は、少数のビットコイン億万長者を生み出しました

彼らの仲間入りを熱望する人も後を絶ちません。

先週、アメフトのプロチームであるパンサーズのラッセル・オクングが、ビットコインで給与を支払われる最初のプレーヤーになると報告されました(彼はその方法で半分の支払いを受け取ります)。

ロンドン地下鉄は、潜在的な投資家を刺激する広告で埋め尽くされています。

そして、最近の急増は、金融機関からの関心によって刺激されたようですが、そのほとんどは長い間ビットコインを軽蔑していました。

220億ドルを管理しているTudorInvestmentsのマネージャーは、彼のファンドはビットコインのポジションを彼のファンドの「一桁台前半」の割合まで増やすことができると述べています。

ジョージ・ソロスの元同僚であるドラッケンミラー氏も、無政府状態やインフレに対する防衛策としてよく使用される金の代わりにビットコインをヘッジとして使用するという考えに熱心に取り組んでいます。

長い間検討されていたビットコイン上場投資信託(ETF)は、2021年にようやく実を結ぶ可能性があります。

一部のポートフォリオマネージャーがビットコインへの投資に取り掛かった場合、その価値はさらに上昇する可能性があります。

少なくとも、その価値には下限があるかもしれません。

大衆がETFを介してビットコインに投資する場合、ビットコインの需要が維持されるでしょう。

しかし、巨額の年金基金の運用会社などの他の投資家は、ビットコインに対する投資に慎重であり続ける可能性があります。

彼らは通常、債券や株式など、将来安定したキャッシュフローを生み出すものに投資し、金やビットコインなど、そうでないものを敬遠する傾向があります。

 

ビットコインは、支払いと取引のための通貨として考案されました。

そのためには、安定していて使いやすい必要があります。

ドラッケンミラー氏はビットコインが好きですが、それは正反対の理由からです。

つまり、取引量が少なく、流動性が低く、金よりも価格の変動性が高いからです。

それはますます売買する人々によって、そして規制当局によって投機として扱われます。

他の人がビットコインを買い漁る事はビットコインを持っている人にとっては朗報かもしれませんが、この様な投機家の熱意は、暗号通貨が創設者の高い目標(支払いと取引のための通貨になる)をはるかに下回ることを示唆しています。

ビットコインの将来

私は金融の専門家ではありませんが、ビットコインが最近注目を集めている背景として次の様な物が挙げられると思います。

  1. 新型コロナ感染が拡大する中、各国政府とも過去に例のないほどの規模で金融緩和を行った結果、市場に資金が溢れ、有望な投資先がない中で、ビットコインが注目を集めた。
  2. 金融緩和のせいで、各国通貨の価値が下落する可能性がある一方、ビットコインはマイニングという時間とコストの掛かるプロセスでしか数を増やせないため、希少性がある事が投資家に注目された。
  3. ビットコインの欠点は、直接商品の購買に使えなかった事でしたが、最近米国のPaypalなどがビットコインを商品購入に直接使える様にした事が評価された。

ビットコインの上昇が今後も続くかどうかは、私には全くわかりません。(投資は自己責任でお願いします。)

一つ言える事は、Economist記事が指摘する通り、支払いや取引のための通貨とし考案されたビットコインが発明者の思いとは裏腹に投機の対象となっている事でしょう。

 

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日本はデジタル後進国から抜け出せるか

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デジタル化が決定的に遅れた日本

日本のお役所に行くと、そこで働いている人々の感じの良さと勤勉さには驚かされます。

外国ではつっけんどんな対応しか期待できません。

しかし、一方で日本はデジタル化において致命的に遅れています。

戸籍抄本一枚取るにしても、手書きの申請書を書かされます。

その上様々な書類に印鑑が必要で、その効力を証明する書類として印鑑証明書の取得が求められます。

更に言えばこれらの書類取得に関する決済は現金払いしかありません。

効率が悪いのはお役所だけではありません。

民間企業でも決済書類には印鑑が必要で、このコロナのご時世で、書類に印鑑を押すためだけに出社するというサラリーマンがいる様です。

昭和のシステムをそのまま引きずっている日本を外国人はどの様に見ているのでしょうか。

英誌Economistが「Few reforms would benefit Japan as much as digitising government - It is one of the world’s most wired countries. Yet its public sector lags behind Mexico’s」(政府のデジタル化ほど日本に利益をもたらす改革はない - 世界で最もネット環境が整った国ですが、そのお役所はメキシコにも遅れをとっています)と題した記事を掲載しました。

かいつまんでご紹介したいと思います。

Economist記事要約

毎年恒例の桜の観賞会と同じくらいつかの間の儀式です。

新しく樹立された日本政府は、より多くの公共サービスをオンラインに移行することを約束します。

約束がなされるとすぐに、それは桜の花びらのようにあっという間に散ります。

2001年、政府は2003年までにすべての手続きをデジタル化すると発表しましたが、20年後、行政手続きのわずか7.5%しかオンラインで完了できません。

韓国とアイスランドはいうまでもなく、メキシコとスロバキアにも大きく遅れをとっており、日本人のわずか7.3%しか公的サービスにオンラインを利用しません。

日本は電子政府の失敗例です。

 

それは役所で窓口から窓口へとさまよっている不幸な日本人にとってだけではなく、日本人全員にとって残念なことです。

日本の人口は減少し、高齢化しています。

労働力の衰退により、日本は繁栄を維持するためには、他国よりも生産性を向上させなければなりません。

大和総研は、政府をオンライン化すると、一人当たりの国内総生産が恒久的に1%増加する可能性があると考えています。

日本の富と技術の高さを考えると、この問題は不可解です。

何年にもわたって、地元の大手IT企業は、政府部門向けのシステムを開発するために、公的サービスに関する契約を争ってきました。

ほとんどの場合、ジョブごとに特注のソフトウェアを設計することになりました。

その結果、互換性のないシステムが大量に発生されました。

 

幸いなことに、2020年9月に首相に就任した菅義偉政権は、問題解決に通常の儀式以上の関心を持っている様です。

政府機関をデジタルの世界に引きずり込むことを目的とした新しい政府機関を創設しています。

この政府機関はは、政府全体のシステムの調達を担当し、真の影響力を与える様です。この機関は官僚ではなく、民間の技術者によって率いられます。

 

先進国の中で、デジタル公共サービスの採用が遅れている日本には、他国の経験から学ぶことができるという利点があります。

政府部門全体にデータ標準を課すためのアドバイスをエストニアに求めることができます。

エストニアはモデルとなる国民IDシステムも運用しています(日本は人口の20%未満しかマイカードを使用しておらず、パンデミックはその欠点を浮き彫りにしました)。

韓国の例に倣って、公開データ、プロセス、サービスを「デフォルトでオープン」にし、ポリシーを考案してサービスを設計する際のデータの使用について透明性を持たせることができます。

そして、実際の運用を後押しするために、デンマークからも学ぶことができます。

デンマークでは、州の年金の95%と出産給付金の100%の申請がデジタルで処理されています。

これらの成功は、官僚やIT慣れしていない年金受給者から予想される反発を抑えて、前進することによって達成されるでしょう。

日本はこれまで、デジタルシステムの使用を強制しない事で、そのような人々をなだめる傾向がありました。

デジタルサービスの利用を増加させるには、市民や公務員に使用を強制させる必要があります。

実際、当局は、デジタル政府をよりスムーズに機能させると、オンラインで事務処理を行うことから生じる利点とコスト削減がより明らかになるため、デジタル政府に対する抵抗の多くが解消されることに気付くかもしれません。

待ったなしのデジタル改革

日本はもはやデジタル後進国になってしまった様です。

この様な事態に陥ってしまった原因として次の様なものが挙げられます。

  1. 日本は大きな変革を行うのをためらいます。最近よく使われる言葉に「ゆでがえる」という言葉がありますが、日本全体が世界第3位の経済大国である事に満足し、改革に消極的になってしまっているのではないかと思います。日本の人口は先進国の中で米国についで二番目に大きいので、GDPが世界第三位なのは当たり前です。しかし、一人当たりのGDPは毎年順位を下げており、今や世界25位(IMF2019年)で韓国との差は急激に縮小しています。世界三位と喜んでいる場合ではないのですが、都合の悪いことは耳に入れようとしないのがゆでがえるの特徴です。
  2. もう一つの理由は、役所の縦割り制度です。省ごとに採用したITシステムが異なり、その間に互換性がないというのは縦割り制度の弊害です。これでは国民に効率的なサービスは提供できません。マイカードの普及が進まないのは、運転免許証や健康保険証もIDカードとして機能しており、敢えて追加のカードを持つ必然性を国民が感じていないからだと思います。

菅政権はこの問題に着目し、デジタル庁を創設して、本格的に取り組む様です。

これは大変結構な事ですが、生半可な姿勢で望めば、デジタル化とは名ばかりの中途半端な変更に終わるでしょう。

お手並み拝見です。

 

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小売業の最先端を走る中国企業

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中国で急速に進行する小売業革命

アマゾンの台頭は小売業のビジネスモデルにおいて革命と言えるものでした。

アマゾンの例が示す通り、小売業の新しいビジネスモデルは常に米国で生まれると信じられてきましたが、この常識は過去のものになりつつある様です。

中国でのネット小売業の革命は米国を凌駕するスピードで進行しており、英誌Economistが「Why retailers everywhere should look to China - That is where they will see the future of e-commerce」(小売業者が中国に目を向けるべき理由 - eコマースの将来は中国にある)と題して記事を掲載しました。

かいつまんでご紹介したいと思います。

Economist記事要約

過去10か月間、先進国のほとんどの人々が最大のショッピング革命に参加してきました。

新型コロナ感染拡大はオンライン支出の急増につながり、実店舗からのシフトを5年ほど早めました。

アマゾンやウォルマートなどは、オンライン注文をさばくために超人的な努力をし、ウォール街では西洋の小売業が最先端にあるという認識からアマゾンの株が買われました。

しかし、eコマースの将来が賭けられているのは欧米ではなく中国です。

その市場ははるかに大きく、より創造的です。

一方、中国は規制の最前線でもあり、年末のニュースでは、中国政府当局がジャック マーによって設立されたアリババを取り調べています。

一世紀の間、世界の小売企業は、1970年代に開発されたバーコードが良い例を示す通り、、新しいトレンドを見つける際には、アメリカに目を向けてきました。

しかし、今、彼らは中国を見ているは​​ずです。

電子商取引における中国のリードはつい最近生じた訳ではありません。

サイズ的には、その市場は2013年に既にアメリカを追い抜きました。

アリババが2014年に上場したとき、それは世界最大の新規株式公開でした。

今日、この国の電子小売市場は、アメリカとヨーロッパを合わせたものよりも大きく、2兆ドルの価値があります。

しかし、その巨大な規模以外にも、いくつかの重要な点で、西洋を凌駕しています。

 

まず、それはよりダイナミックです。

過去数年で、「美団」(Meituan)「拼多多」(Pinduoduo)含む新しい電子商取引企業が急成長しました。

激しい競争が生じた事を裏付ける事実として、中国のeコマース業界の時価総額に占めるAlibabaのシェアが、上場時の81%から今日の55%に低下しました。

競争により、eコマースやその他のテクノロジー企業は、さまざまなサービス間の境界線を取り壊すようになりました。

中国の電子商取引フォームは、デジタル金融サービス、グループディール、ソーシャルメディア、ゲーム、インスタントメッセージング、短い形式の動画、ライブストリーミングなどを融合させています。

 

今後の焦点は、中国の電子商取引モデルが世界に広がるかどうかです。

何十年もの間そうであったように、シリコンバレーの巨人たちは依然として中国を過小評価する傾向があります。

アメリカと中国の電子商取引業界の間には、双方の保護貿易主義のせいもあって、直接的なつながりはほとんどありません(米Yahooが2012年にアリババの株式の多くを売却したのは時期尚早でした)。

そして、欧米の企業は長い間、居心地の良い専門分野でそれぞれ活動してきました。

つまり、Visaは支払いを専門とし、Amazonはeコマースを、Facebookはソーシャルメディアを、Googleは検索を専門としています。

専門分野に特化した欧米の電子小売り業のやり方が世界の主流になる可能性は低いでしょう。

すでに、先進国以外では、中国のやり方が勢いを増しています。

東南アジア(グラブ)、インド(ジオ)、ラテンアメリカ(メルカドリブレ)など多くの大手eコマース企業は、豊富なサービスを取り揃えた「スーパーアプリ」を提供するという中国の戦略の影響を受けています。

欧米と中国の市場にまたがる巨大な消費財企業も、中国のアイデアやビジネス戦術に倣う可能性があります。

ユニリーバ、ロレアル、アディダスなどの多国籍企業は、アメリカよりもアジアで多くの収益を上げており、カリフォルニアやパリではなく、アジアで最新の動きを吸収しています。

すでに、中国の特徴が欧米に影響を与え、企業間の境界線は崩壊しつつあります。 Facebookは現在、ソーシャルネットワークでショッピングサービスを宣伝しており、商人と買い物客の間のメッセージングのために、WhatsAppを使用する「ソーシャルコマース」に取り組んでいます。

 

中国式のビジネスモデルのグローバル化は、消費者にとって素晴らしいニュースになるでしょう。

しかし、中国の電子商取引には欠陥があります。

そこでは、詐欺がより一般的です。

そして、独占禁止法上の懸念があります。

アリババのオーナーであるマー氏への取り締まりは、共産党権力の発露として見ることができます。

一方、中国の独占禁止法規制当局のやり方には学ぶべき点もあります。

彼らは、あるeコマースプラットフォームの決済サービスをライバルのプラットフォームでシームレスに使用できるようにさせる事で、商人が複数のプラットフォームで商品を販売する事を可能にしました。

これまでのところ、アメリカとヨーロッパの独占禁止法当局はビッグテック(巨大IT企業)の管理に効果的な手が打てていません。

彼らもまた、業界がどこに向かっているのか、そしてどのように対応すべきかについて、中国を研究する必要があります。

欧米が中国のイノベーションについてどう考えるかにはパターンがあります。

電子機器から太陽光パネルに至るまで、中国の製造業の進歩は無視されるか、真似事だとして軽視されました。

現在、グローバル化しているのは中国の消費者の嗜好と習慣です。見て学びましょう。

中国を軽視するなかれ

中国の電子商取引については、以前のブログで取り上げた通り、中国政府の国民に対する監視を容易にさせる仕組みが組み込まれており、警戒が必要です。

中国のプラットフォームが顧客から吸い上げる個人情報は全て政府と共有されると思った方が良いでしょう。

一方、中国のeコマースプラットフォームが、顧客にありとあらゆるサービスを提供できる利便性の高いものになっている事も事実であり、この点、過小評価すべきではないと思います。

記事の中に出てくるPinduoduoという企業は中国で急成長している電子商取引関連企業ですが、そのビジネスモデルは大変興味深いものがあります。

Pinduoduoでは、単品だけを購入すると大変割高な価格となりますが、既定の販売個数をクリアすると、かなり割安な価格を享受できる仕組みになっています。

商品が欲しいユーザーは、自らその商品のセールスマンと化して友人知人を巻き込んで行くというビジネスモデルになっています。

中国人は金儲けが大好きな民族ですから、こういう斬新なプラットフォームが生まれるんですね。

新しいビジネスモデルを模索する人は、今後欧米だけでなく、中国の動きにも注意を払う必要があるでしょう。

 

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