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トルコとイスラエル突然の雪解けの背景

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中東での地殻変動

クライナの情勢は緊迫度を高めている様ですが、これは米国のインド太平洋地域へのシフト、即ち主敵である中国への対応が影響している様に思われます。

米国が世界の警察官としての旗を降ろせば、世界の至る所に権力の空白状態が生まれます。

アフガニスタンからの米軍の撤退が象徴する様に、中東で大きな地殻変動が生まれようとしています。

トルコとイスラエルは第二次世界大戦後、米国の同盟国として長い間緊密な関係を維持し、両国の軍隊は定期的に共同演習を行う間柄でした。

その後、エルドアン政権になってから、両国の関係は冷却化しましたが、驚くべき事に、イスラエルの大統領が来月トルコを公式訪問する様です。

両国の雪解けの背景について、米誌Foreign Policyが「Embattled Erdogan Signals Turkish-Israeli Thaw - The ground in the Middle East is shifting yet again」(苦境に立つエルドアン大統領イスラエルに雪解けのサイン - 中東の地殻変動再び)と題した論文を発表しました。

かいつまんでご紹介したいと思います。

Foreign Policy論文要約

中東の外交地図は再び変化しています。

イスラエルとトルコの間で驚くべき雪解けが起こっているようです。

トルコのエルドアン大統領の下で関係が急速に冷却化しましたが、両国は元々親密なパートナーでした。

先週、エルドアン大統領は、イスラエルのヘルツォーク大統領が、3月中旬にアンカラを訪問することを発表しました。

これにより、ヘルツォークは、シモン ペレスの2007年の訪問以来、トルコを久々に訪問するイスラエル大統領になります。 

 

エルドアン大統領が新しいパートナーを探していることは理解できます。

崩壊する経済、国内の反対の高まり、アラブの隣人や西側の同盟国との対立、そして隣国ウクライナでの混乱等に彼は直面しています。

トルコは、1949年にイスラエルを承認した最初のイスラム教徒多数国であり、両国は、長年にわたって強力な外交、安全保障、および諜報協力を享受してきました。

しかし、2002年にエルドアン氏のイスラム教に根ざした公正発展党が政権を握って以来、二国間関係は激動の時代を迎えました。

現在、エルドアン氏は、東地中海での孤立の高まりと国内の経済的苦境により、敵に手を差し伸べることを余儀なくされています。

 

エルドアン大統領の頻繁な反ユダヤ主義と反イスラエルの行動履歴を考え、イスラエルは慎重に対処しようとしています。

「私はトルコに関して幻想を抱いていません」とイスラエルのベネット首相は語りました。

イスラエルが最も懸念するのは、ガザを支配する米国指定のテロリストグループであるハマスに対するエルドアン大統領の揺るぎない支援です。

イスラエルとトルコの関係の正常化は、イスラエルとUAE(アラブ首長国連邦)との間の場合ほど急速には起こりません。

イスラエルが疑っているのは、エルドアン大統領が、イスラエルとアラブ諸国の関係を正常化するという米国が仲介した合意であるアブラハム協定を妨害しようとしたからです。

トルコ政府は、イランとハマスと共にこの協定を非難し、イスラエルとの和平に加わったことに対する罰として、UAEとの外交関係を停止すると脅迫しました。

しかし、その後、エルドアン大統領は、UAE、エジプト、サウジアラビアそして現在はイスラエルとの関係を修復する取り組みの一環として、UAEに対する外交的圧力を弱めてきました。

2021年11月にUAE皇太子モハメッド ビン ザイードがアンカラを訪問しました。両国は49億ドルの通貨スワップ協定に署名し、アブダビのソブリン ウェルスファンドはトルコに100億ドルを投資することを約束しました。

UAEは、バ​​イデン政権が新しい核取引のためにイランに手を差し伸べているため、トルコをイランに対する潜在的なヘッジと見なしています。

 

イスラエルには、オイルマネーはありませんが、この国には財政的、経済的、技術的な力があります。

イスラエルとの関係の改善は、特に投資先として、トルコの傷ついた世界的なイメージを改善させるのに役立つ可能性があります。

ここ数年間のトルコからの前例のない西側資本の流出は、主要な金融機関による新興市場としてのトルコを危険にさらし、いわゆるフロンティア市場のカテゴリーへの降格をもたらし、トルコの債券と株式を投資不能にする可能性があります。

それはトルコの経済悪化を早め、エルドアン首相の政治的懸念を悪化させるでしょう。

 

イスラエルの天然ガスをトルコに、そしてそこからヨーロッパに運ぶために、東地中海のパイプラインを建設するという魅力的な将来の可能性もあります。

エルドアン氏はイスラエル-キプロス-ギリシャルートの替わりにイスラエル-トルコの代替案を提案するかも知れません。

 

東地中海においてトルコは、イスラエル、エジプト、UAE、ギリシャ、キプロスの間の前例のない外交的および軍事的パートナーシップを目の当たりにしており、エルドアン大統領は、イスラエルとの関係を修復することが、この地域におけるトルコの孤立を解消することに役立つと考えています。

 

トルコとの関係を徐々に改善することについて、イスラエル当局は慎重ですが、楽観論もあります。それはイランとその代理人に対する戦術的協力も可能にするでしょう。「控えめに言っても、トルコはイランの親友ではありません。」と、匿名のイスラエル外交官は語りました。

 

イスラエルとトルコの関係の正常化は、イスラエルと、長年緊密に協力してきたUAEとの間ほど迅速には起こりません。

エルドアン大統領が過去20年間にイスラエルとの関係において、頻繁に方針を変えたことを考えると、信頼を再構築するには時間と労力がかかります。

しかし、トルコ政府は、イスラエルがアブラハム協定のおかげで、トルコよりも東地中海で孤立しておらず、トルコとの関係正常化の試みが失敗した場合に失うものが少ないことを知っています。

したがって、エルドアン政府は関係の改善に積極的に取り組む必要があるでしょう。

 

最終的に、真の和解は、新しいトルコ政府を待たなければならないかもしれません。

2023年の大統領選挙と議会選挙で、大規模な野党ブロックがエルドアン首相を打ち負かす可能性があります。

しかし、追い詰められたエルドアン首相が、彼がもたらした経済的および外交政策上のダメージの一部を打ち消そうと、イスラエルとの関係修復を開始する事は間違ってはいません。

ユダヤ民族の恐るべき底力

中東における米国の同盟国は1970年代はイスラエルとトルコとイランでした。

当時イランはホメイニ革命前のパーレビ国王の時代でしたが、今やイランは米国にとって最も警戒すべき敵の一つとなり、トルコと米国の関係も冷却化しています。

面白い事にトルコと米国の関係悪化はイスラエルとトルコの関係悪化と軌を一にしています。

エルドアン大統領になってからパレスチナへの支援姿勢を鮮明にしたトルコはイスラエルから猛反発をくらい、急速に両国の関係は疎遠になりました。

 

現在、エルドアン大統領は欧米メディアで強権的君主の代表格として批判されていますが、アラブの春が始まった頃、彼の政権は中東における民主的政府のモデルとして評価されていました。

西側メディアが手のひらを返した様にエルドアン批判を始めたのは、エルドアン氏がパレスチナに関するイスラエル批判を始めた頃からだと思います。

ユダヤ民族は世界中に根を張っています。

特にメディアと金融におけるその影響力は他の民族の追随を許しません。

ここにきてのエルドアン大統領のイスラエルへのアプローチは、さすがのエルドアン氏もユダヤ人を敵に回すとこっぴどい目に会うことが身にしみたのではないでしょうか。

最近のリラ暴落はユダヤ系の金融資本やメディアがエルドアン氏を標的にしている事に彼は気づいたものと思われます。

変わり身の早いエルドアン氏の事ですから、パレスチナに関する批判は当面封印すると思われます。

中国の援助が必要な際に、ウイグル族への支援を封印したのと同じ様に。

 

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欧州から見た中国のゼロコロナ政策

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続くゼロコロナ政策

中国では現在冬季オリンピックが開催されています。

選手や役員等の入国は許されていますが、それ以外の外国人の入国は厳しく制限されている様です。

ほぼ鎖国と言っても良いほどのゼロコロナ政策を欧州の人々はどの様に見ているのでしょうか。仏紙Les Echosが「​​Chine, un Grand Bond en arrière… sur l'ouverture」(開国へ中国が見せた大きな後退)と題した記事を掲載しました。

かいつまんでご紹介したいと思います。

Les Echos記事要約

上海の特派員の報告によれば、エールフランスはパリと中国の大都市間のフライトをキャンセルせざるをえませんでした。

コロナの陽性例が発見されたときにフランスの航空会社を制裁するのは地方自治体であり、これにより、中国と他国の間でこの2年間ほぼゼロになっている国際便は更に減少します。

2020年の始め週10,000便あった国際便は200便になりました。

 

月曜日に、我々の上海駐在員は、もはや中国に帰ることができなくなった欧米の駐在員の悪夢を伝えました。

「本社」の代表者はいなくなり、特定の国との路線はほぼ遮断されました。

昨年1,040億ユーロ(約14兆円)に上る商品を中国に輸出したドイツと中国の間の定期便はなくなりました。

 

中国政府は既に厳格な処置の理由を説明しています:コロナ、現在オミクロン、そしてオリンピックです。

パンデミックが始まって以来、ゼロコロナ戦略が適用されており、習近平主席のトレードマークになっています。

これにより、何百万人もの人々が封じ込められたとしても、その方針が問題視される事はありません。

この国境の閉鎖は、ナショナリズムといわゆる西洋の価値観との対立を煽る政権にふさわしい事は明らかです。

中国の主席はこの2年間一度も国を離れていませんが、多くの外国政府首脳を受け入れています。

先週はプーチン大統領と北京で面会し、天然ガスの大型契約について話し合いました。

同盟関係は日々高まっています。

 

2023年または2024年に中国製のメッセンジャーRNAワクチンを開発して、全国民に接種できれば、国は再開される可能性がありますが、微小な信号を見逃してはなりません。

例えば、中国の国際社会への統合における梃子として長い間みなされてきた、英語学習に対する公的機関の援助が減少した事です。

「ニューヨークタイムズ」の記事が示す様に、中国語以外の言語での入学試験の拒否、外国人によるレッスンの制限など、ここ数ヶ月で状況が変化しています。

ゼロコロナ政策による中国の縮小は現実のものになりそうです。

グローバリゼーションに逆行する中国

フランスもドイツほどではありませんが、中国で大きな利益を上げている国です。

数年前にパリを訪れた際、ルイヴィトンの本店前で行列を作っていたのはもはや日本人ではなく、中国人でした。

中国のブランド熱はフランスやイタリアの製造業者を潤すだけでなく、膨大な数の中国人観光客は欧州観光業においてドル箱でした。

そんな欧州諸国にとって、中国のゼロコロナ政策は一大事です。

イアン ブレマーが今年の「世界の10大リスク」のいの一番に中国のゼロコロナ政策を挙げていましたが、確かにこれは想像以上のダメージを世界に与えそうです。

20兆円を上回る貿易を行っているドイツとの直行便がなくなり、欧州の駐在員が中国に帰れないという事態は明らかに異常です。

この2年間、中国は観光ビザや学生ビザを発行していない様ですが、これは世界とのデカップリングを中国が自ら招いている様にも見えます。

中国当局は、2024年或いは2025年まで本格的な国際便の復活はないと発表している様ですが、それは内外の経済に大きな影響を与えかねません。

 

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評判の悪いドイツ外交は本当に間違っているのか

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ドイツ外交に厳しい批判

ドイツの外交政策は西側の同盟国から最近良く批判を受けます。

筆者の以前のブログでもこの点に触れました。

 

www.miyoshin.co.jp

 

その批判は軍事費がNATOにおける支出目標に達していないとか、中国やロシアに対する姿勢が手ぬるいといった類のものが多いのですが、ドイツの外交は本当に間違っているのでしょうか。

違う観点から見ればドイツの外交は評価できるとする論文が米誌Foreign Policyに掲載されました。

「The Gold Medal for Foreign Policy Goes to Germany」(外交政策の金メダルはドイツに)と題されたこの論文を今日はご紹介したいと思います。

Foreign Poicy論文要約

過去数十年の外交政策のを振り返ってメダルを配るとしたら、どの国が金メダルを取るでしょうか?

一部のオブザーバーは、経済力と軍事力を大幅に拡大し、主要な国際機関への影響力を高め、米国が仕掛ける泥仕合を巧みに回避した中国と言うかもしれません。

しかし、中国は習近平の下で最近つまずき、国内外でますます厳しくなる批判は、そのイメージを傷つけ、隣国を警戒させました。

 

ロシアはどうでしょうか?

プーチンは過去20年間、ロシアをより安全にしたわけではありません。

ロシアの指導者たちは、自国を世界の大国として認めることを切望しているかもしれませんが、その統治モデルは魅力がなく、ロシアは中国のジュニアパートナーに追いやられる可能性があります。

 

英米もメダル候補と見なすことはできません。

米国は民主党と共和党の下で、英国も労働党と保守党の両方の政府の下でつまずきました。

2003年にブッシュ政権を盲目的にイラクに追い込むという労働党首相のトニー ブレアの決定は明らかなオウンゴールであり、EUを脱退するという保守党主導の決定は英国をより貧しく、影響力を弱める事となりました。

 

金メダルを授与するなら、私はドイツを選びます。

外交政策の目標が、政治的価値に大きなダメージを与えることなく安全と繁栄を高めることである場合、過去数十年にわたるドイツの業績は間違いなく秀逸です。

しかし、この戦略を可能にした条件は今や消えつつあります。

 

1990年代初頭の再統一以来、ドイツは注目に値する三連勝を成し遂げてきました。

第一に、それは米国の緊密な安全保障パートナーであり続け、米国の保護のフリーライダーであり続けることができました。

ドイツは、2003年にイラクを侵略するという米国の決定に公然と反対し、集団的防衛の公正な分担を引き受けるべきという米国の繰り返しの要請に要領よく抵抗したにもかかわらず、その特権的な地位を維持することに成功しました。

歴代の米国政権は、ドイツに防衛力を強化させようとしましたが、ドイツの軍事費支出は、NATOが8年前に設定したGDP防衛費目標の2%をまだはるかに下回っています

しかし、ウクライナの現在の危機に対する米国の機敏な対応が示唆するように、ドイツは、オオカミがドアにいるときはいつでも、米国が援助に来ることを期待することができます。

 

同時に、2014年のロシアによるクリミアの押収と今日のウクライナ危機にもかかわらず、ドイツはロシアとの良好な協力関係を維持してきました。

ドイツはロシアで2番目に大きな貿易相手国であり(二国間貿易額は500億ドル近く)、貿易は1995年以来年率6%以上で拡大しています。

ドイツのロシアのガスエネルギーへの依存は、米国との繰り返しの論争を引き起こしましたが、トランプ前大統領の時代でさえ、完全な破裂には至りませんでした。

この政策は、ドイツの観点からは理にかなっています。

ドイツが原子力への依存を段階的に廃止する一方で、ロシアのガス供給は工場を動かし、家を暖め続けました。

第三に、ドイツは台頭する中国と良好な関係を維持しており、莫大な利益を得ています。

中国は現在、ドイツ最大の貿易相手国であり、2020年の貿易額はコロナ流行にもかかわらず2,120億ユーロ(約28兆円)を超えています。

ドイツ外務省によると、「中国はドイツを経済的および政治的に主要なパートナーと見なしています。」

人権問題は依然として摩擦の原因であり(特にドイツの緑の党にとって)、ドイツ国民はますます中国に対してネガティブなイメージを持っていますが、ドイツは中国との有利な商業的関係を維持することができました。

(ドイツの実利主義を非難する前に、トランプによって課され、バイデンの下で継続された関税にもかかわらず、中国と米国の貿易も増加していることを覚えておいてください。)

 

過去数十年にわたるドイツの外交政策は完璧でしたか?

もちろん違います。

完璧な国はなく、ドイツも例外ではありません。

1991年のドイツのクロアチアとスロベニアの時期尚早な独立承認は、ユーゴスラビアの崩壊を加速し、破壊的なバルカン戦争を助長し、ユーロ圏危機の際の緊縮財政の主張は、ヨーロッパの回復を遅らせ、ヨーロッパのポピュリズムの出現に貢献しました。

 

しかし、全体として、ロシア、中国、米国、およびそのヨーロッパの近隣諸国と良好な関係を維持するドイツの能力は注目に値します。

ドイツはNATOやEUなどの機関に関与する事で、大国の争いに巻き込まれるのを巧みに避けてきました。

ドイツ政府はまた、北京とモスクワとのホットラインを開いたままにし、対立するイデオロギーに基づくゼロサム競争として現代の世界政治を扱う努力に抵抗しました。

 

それでも、ドイツのこれまでの成功は持続可能ではないかもしれません。

米中関係がより競争的になり、中露関係が深まり続けるにつれて、ドイツが三大国と良好な関係を維持することはより困難になるでしょう。

そのような状況では、ベルリンはどちらか一方を選ばなければなりません。

ドイツが教えてくれる事

米中露の三大国とうまくやっていく事は大変難しい事ですが、今後の世界情勢を考えると極めて重要なタスクです。

ドイツがこの仕事をうまくやっていけているのは何故でしょうか。

筆者は二つの重要な要素があると思います。

一つはドイツはうまくEUというものを使っていると思われます。

おそらく意識してやっていると思いますが、ドイツは常にEUという隠れ蓑を使って政策を打ち出しています。

ドイツだけなら米国も中国も押さえつける事が可能ですが、EU27国の総意となれば、重みが変わってきます。

先日署名された中国とEUの投資協定(批准はされていない)もドイツが単独で結べば、米国の猛烈な反発を受けたと思いますが、EUが署名するとなると、米国も批判の矛先を定めにくくなります。

二つ目はドイツの東半分(旧東独)は元社会主義国であったという事です。

ほんの30年ほど前はベルリンの壁の向こう側の住民だった人々にとって、ロシアや中国というのは身近な存在なのだと思います。

少なくとも英米のシステムに諸手を挙げて賛成する人々ばかりではないのでしょう。

中露とうまくやっていける理由がここにあります。

 

我が国にはドイツと似た処が多く存在します。

両国とも経済大国であり、米国と安全保障条約を締結しています。

一方、経済的には中国との関係が深い点も似ています。

ロシアは日本にとっても隣国です。

ドイツの現在のやり方は、故吉田茂首相が唱えた軽武装経済重視政策に近いものが感じられます。

3大国と今後対峙する上で、ドイツのやり方は参考になります。

 

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渋滞ランキング世界一に輝いたイスタンブール

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ヨーロッパとアジアに跨がる都市

大都市における交通渋滞はしばしば耐えがたいレベルにまで達します。

筆者が過去に住んだ事のある大都市(イスタンブール、ロンドン、パリ)の中で、交通渋滞が最悪なのは何と言ってもイスタンブールでした。

この街はヨーロッパとアジアに跨がる都市と言われており、ボスポラス海峡を挟んで東西に広がっています。

その海峡を毎日膨大な人々が通勤で往復するため、朝晩気の遠くなる様な渋滞が発生します。

もちろん海峡に橋はありますが、何十万人もの通勤者の往来を捌くには不十分です。

この街で仕事を効率よく行うためには、先ず脇道を熟知する有能な運転手が不可欠です。

表の道しか知らない運転手と付き合っていれば、車の中で無為に時間を浪費する事になります。

私の運転手は、場合によっては、一方通行も逆に入るし、誰も知らない脇道を疾走するのを得意としていました。

カーナビやグーグルマップの様な交通アプリの登場により、熟練した運転手でなくても、近道を見つける事ができる様になってきました。

欧州においてカーナビの大手メーカーであるTomTomが世界の都市の渋滞度に関するランキングを発表した様です。

仏紙Les Echosの「Quelles sont les villes les plus embouteillées en France et dans le monde ?」(フランス及び世界都市の渋滞度ランキング)と題した記事をご紹介したいと思います。

Les Echos記事要約

2020年は、ロックダウンのために、大都市の道路が数週間にわたって封鎖されました。

したがって、2021年は、世界の交通渋滞レベルは2020年よりも高くなりましたが、それでも2019年のレベルよりも10ポイント低いままでした。

これはGPSナビゲーションシステムTomTomが、世界58か国404都市の交通渋滞を分析した結果です。

 

渋滞の金メダルはイスタンブールで、渋滞率は62%です。

これは、この都市の車での移動時間が、自由に流れる交通状況よりも62%長いことを意味します。

イスタンブールに続いて、61%のモスクワと56%のキエフが続きます。

この3都市は2020年よりも渋滞率が上昇しました。

コロンビアのボゴタとインドのムンバイもその後に名を連ねます。

フランスでは、パリが最も混雑している都市であり、世界ランキングで37位です。

パリは2021年に36%の渋滞率を記録し、パンデミック前のレベルと比較して3ポイント減少しましたが、2020年と比較して4ポイント増加しました。

 

TomTomは、世界中の多くの都市でパンデミック前の時代からのピーク時間の変化に注目しています。

フランスでは、道路の混雑が2019年と比較して平均で3%減少しましたが、この減少はピーク時に9%とより顕著になります。

これは、働き方の変化、または終日行われる宅配の増加によって説明することができます。

この研究はまた、初めて、都市の混雑の環境コストを調査します。

パリでは、2021年に自動車交通が13.80メガトンのCO2を排出しました。

これには、交通渋滞に関連する1.85メガトンが含まれます。

TomTomによると、ディーゼル車がこれらの排出量の71.5%を占める一方、ガソリン車は24%、ハイブリッド車は0.5%、電気自動車は4%でした。

TomTomによれば、ソフトモビリティの開発と消費者の行動や習慣の変化は、自動車交通の改善につながる可能性があるとの事です。

渋滞を凌駕するイスタンブールの魅力

イスタンブールで渋滞に巻き込まれないコツは、渋滞が起きそうな時間帯(朝晩のラッシュアワー)には絶対に橋を渡らない事と、アポイントは出来るだけ空いている時間帯に入れる事でした。

それでも渋滞にはまって天を仰ぐ事は珍しくなく、そんな時は車の中で寝る様にしていました。

やはりイスタンブールは世界一の渋滞都市なんですね。

でも愛するイスタンブールのために弁護するならば、渋滞率の高さはこの大都市が多くの観光客を魅了し、経済活動が活発な証拠だとも言えると思います。

コンスタンチノープル時代からの小道が多く残るこの街で渋滞にはまるのは当たり前です。

皆さん多少の渋滞はありますが、イスタンブールは魅力満載です。

是非お越し下さい。

 

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健康な老後を模索する日本

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英国人から見た日本

人生を幸せに全うするには、健康寿命を伸ばす事が重要と思います。

高齢化社会の先進国と言われる我が国がこの課題にどの様に取り組んでいるか英誌Economistが「Japan is searching for the secrets to healthy old age」(健康な老後を模索する日本)と題した記事で取り上げました。

かいつまんでご紹介したいと思います。

Economist記事要約

ほとんどの人は長生きすることを良いことだと考えています。

しかし、健康を害して年をとることはあまり魅力的ではありません。

配偶者と一緒に旅行したり、孫と遊んだりできれば良いですが、寝たきり状態はごめんです。

長生きする人は、人生の最後に何年かの不健康な年を過ごすでしょう。

世界保健機関によると、平均寿命と健康寿命(HLE)の間のギャップは、世界的に見ればほぼ10年です。

それは個人とその家族にとって憂うべきものですが、多くの高齢者が公的資金を費やす可能性のある高齢化国にとっても懸念されます。

世界で最も高齢化が進んだ日本では、男性の平均寿命は81.6歳、女性は87.7歳です。

しかし、2019年のデータでは、健康寿命は、男性で9年、女性で12年、平均寿命に比べ短かった様です。 

このギャップを縮めることは、日本政府にとって重要な目標となっています。

健康を長く維持することで、人々はより幸せになり、医療システムや政府の予算にかかる負担が軽減されます。

「長い間、日本は平均寿命を延ばすために努力してきました」と東京大学老年学研究所の秋山弘子は言います。

「平均寿命が80歳に近づくにつれ、私たちはそれを達成したと思い始めましたが、寝たきりの高齢者が多く、60代の就職難者も多いことに気づきました。」

厚生労働省は、健康寿命を伸ばす事をその政策の中心的な柱にしました。

毎年その目的達成に貢献した人々に賞を授与します。

最近の受賞者には、福井県で、高齢者にスニーカーを履かせて歩数を増やす「スニーカービズ」プログラムや、青森県での、糖尿病への意識を高めることを目的とした「高血糖ストッパー」プログラムが含まれます。

 

多くの努力は、平均寿命を延ばすための処方箋によく似ています。

確かに、一般的な死亡原因は健康的な生活にも影響を及ぼします。

青森県の健康寿命が低いのは喫煙率と塩分消費量が高い事に一部起因します。

長寿で有名な山梨県は全国で有数のがん検診率を誇ります。

しかし、健康寿命が最も長い人が、必ずしも最も長く生きるわけではありません。

腰痛、眼病、メンタルヘルスの問題など、生活の質を損なう多くの症状は致命的ではありません。

人々が単に生きているのではなく、健康を維持するのを助けるには、より広く社会的および環境的配慮に目を向ける必要があります。

仕事は不可欠です。

長く働くことで、人々は肉体的および精神的に活発になりますが、他の人とのつながりも保たれます。

山梨県は全国で2番目に高い高齢者雇用率を持っています。

ソーシャルネットワークも大きな役割を果たします。

友人、家族、隣人との強い絆は、より良いメンタルヘルス、よりアクティブなライフスタイル、そしてより良いサポートにつながります。

多くの公衆衛生の専門家が、相互扶助の金融サービスから社交クラブのようなものに進化した山梨市の「無尽」の存在を指摘しています。

長期的な研究によると、無尽に積極的に参加する人々は、より長く健康を維持することがわかっています。

グループ活動は、目的意識を提供するだけでなく、安全メカニズムとしても機能し、メンバーは、誰が不在か誰が調子が悪いか気づきます。

孤独であることは健康に最も有害です」と、最近、無尽に補助金を提供し始めた山梨県知事の長崎幸太郎は言います。

健康的な生活の秘訣は、幸せな生活に似ています。

頻繁に、定期的に友達に会うことです。

友達に会いましょう

平均寿命と健康寿命の差は10年近くあるんですね。

これを何とか短くしたいものです。

この記事に書いてある通り、人との関係を保つ事、出来れば何らかの形で仕事を続ける事が健康寿命を伸ばす秘訣だと思います。

孤独になれば、頭を使う機会も少なくなり、どんどん悪いサイクルに入ってしまいます。

昨年、筆者は同窓会名簿や会社のOB名簿を引っ張り出して、出来るだけ沢山年賀状を書く様にしました。

これが人との縁を復活させるきっかけになってくれればと思います。

 

最後まで読んで頂き、有り難うございました。

中国は資本主義経済国か

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高度経済成長が産んだ歪み

お隣の中国では現在冬季オリンピックが開催されています。

門戸開放路線に舵を切って以来、40年にもわたる高度経済成長を続けてきた中国ですが、国民の所得水準が上昇すると共に綻びも見えてきている様です。

米紙ウォールストリートジャーナル(WSJ)が「To Achieve ‘Common Prosperity,’ Xi Jinping Seeks to Scale China’s ‘Three Big Mountains」(共同富裕を達成する上で習近平氏が直面する三つの壁)と題した記事を掲載しました。

社会主義国である筈の中国で驚くほど大きな格差が生まれている事が理解できます。

かいつまんでご紹介したいと思います。

WSJ記事要約

何十年にもわたって経済成長を優先した後、中国の指導者たちは最近、教育および住宅セクターの見直しに力を注いできました。

これらの取り組みの背後にあるものは、中国の人々が「3つの大きな山」と呼んでいるものです。

この用語は、帝国主義、封建制、縁故資本主義の悪を指すために使用された共産主義革命家の標語の現代的なひねりであり、住宅、教育、医療に関連するコストを説明するためにここ数年使われてきました。

これらのコストに関する懸念は、中国に固有のものではなく、アメリカにおいてもよく見られます。

 

都市部の富裕層とはるかに貧しい田園地帯の間の格差を広げた40年間の爆発的な経済拡大の後、指導者の習近平は、共産党の正当性を強化するための彼の「共同富裕」キャンペーンの中心にこれらの家計の問題を置きました。

これは下層階級を保護し、社会の不安を抑えようとするものです。

中国当局は、急騰する住宅市場を落ち着かせることを目的とした措置を課し、かつて活況を呈していた家庭教師業界に厳しい制限を課し、医療を改善する計画を打ち出しました。

暮らしに直結する問題を解決できれば、習近平氏の異例の3期目続投も可能になるでしょう。

中国がまだ完全に計画経済であったとき、国家はゆりかごから墓場まで社会の基本的なニーズを満たすことを目指しました。

しかし、不十分な政府サービスに不満を持ち、起業家精神を生かすことを狙った中国の指導者たちは、それらを民間資本に開放し始めました。

その政策は過去40年間で生活水準を劇的に引き上げましたが、それはまた多くの市民には手の届かないところへそれらのコストを押し上げ、出生率は急落しました。

北京で専門職として働く28歳の黄荘は、住宅、教育、医療の費用を考えると、家族を持つという考えでさえ彼を恐怖で満たすと言います。

黄氏は「選択肢は子供を全く持たないか、少し年取ってから子供を1人だけ持つことだ。」と語ります。

 

3つの大きな山のそれぞれを詳しく見てみましょう。

 

教育

中国のエリート大学での競争が激化する中、子供を入学させたい中国人の両親の間で家庭教師サービスは加熱し、家庭の教育費を押し上げています。

中国の最大の都市では、最も人気のある学区に申込者が殺到し、住宅価格が急騰しました。

2020年の調査によると、北京、上海、深センでは、4〜17歳の子供を持つ家族の78.4%が学習塾に子供を行かせています。

テンセント ホールディングスが2019年に実施した調査によると、中国の28の都市で、夏休み子供の教育に月の世帯収入の3分の1以上を費やした家庭が44%に上り、更に12%は収入の半分以上を費やした様です。

 

医療

中国の人口の95%以上が何らかの形で政府支援の健康保険に加入していますが、多くの人々は依然として質の高い医療を受けるのに苦労しています。

農村部と都市部の格差も激しい様です。

癌や糖尿病などの重篤な疾患のある人の負担は法外なものになり、多くの人が貧困に陥る可能性があります。

中国政府は2020年に、医療費によって家計が破綻していた1,000万人を貧困から脱却させたと述べました。

中国では医療費のコストがはるかに低い公的な診療所ではなく、熱や頭痛などの単純な病気でも私立病院に行く患者が多い様です。

2018年に中国の全人代が発表したレポートによると、中国の医療サービスの大部分を提供する公立病院は、不必要な処方やサービスに対して高額な価格で患者に請求することで利益を得るように動機付けられています。

 

住宅

中国の不動産市場は、国営企業が中国の都市住民に住宅の大部分を提供していた1990年代以降、指数関数的に成長しました。

市場の自由化により、広範囲にわたる住宅不足が緩和され、世界最大の不動産ブームが生まれました。

2019年までに、中国の都市の平均住宅価格は平均年収の9.1倍に上昇しました。

経済的機会を求めて大都市に移住した多くの家族は借金漬けになっています。

上海財経大学によると、2020年末までに、住宅ローンは平均世帯の債務水準を可処分所得の130.9%に引き上げました。

これは、サブプライム住宅ローン直前の2007年の米国の133%に匹敵します。

中国は資本主義国家か

上記の記事を読むと、中国は西側の資本主義国家と同様の問題を抱えている事に気付きます。

数字だけみると、資本主義が作り出す格差やバブルといった問題の深刻さは中国が上回っているのではという印象さえ受けます。

北京や上海の住民が購入する住宅価格は世帯の可処分所得の20年分を超えているそうです。

東京でさえ10倍程度で、サンフランシスコでは5倍程度です。これでは中国の大都市で家庭を持つのは不可能でしょう。

政治は社会主義、経済は資本主義というのが中国の実態という事でしょう。

そんな中で習近平主席が共同富裕を打ち出し、格差是正に乗り出したのは当然だと思います。

逆に言えば、このまま格差が拡大していけば、大多数を占める中国の貧困者が中央政府に反旗を翻す危険性があるのだと思います。

米中共に格差とバブルという共通の問題を抱える現在、どちらの体制がこれをうまく解決できるかが勝敗を分けるかもしれません。

上記の記事で全人代のレポートが中国の医療体制の問題を的確に指摘しているところを見ると、一党独裁だから自らの欠点を指摘できないという批判は中国に関しては必ずしも当たらない様な気がします。

 

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METAの業績が急速に悪化した理由

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米国株価の急落

昨日の米国株価は大きく下げました。

その主因はビッグテックの一角を占めるMetaの業績が急速に悪化したことから生じた様です。

フェイスブックとインスタグラムを有するこの会社の成長に急ブレーキがかかった理由は何故でしょうか。

英誌Economistが「How Apple’s privacy push cost Meta $10bn」(アップルのプライバシー村長がMetaに100億ドルもの損害を与えた訳)と題する記事を掲載しました。

100億ドルとは日本円にしてなんと1兆1千億円です。

かいつまんでご紹介したいと思います。

Economist記事要約

Metaにとって、iPhoneを動かすAppleのiOSオペレーティングシステムは、頭痛の種です。

2月2日、FacebookとInstagramを所有するMetaは投資家に、iOSのプライバシーに焦点を当てた変更は、2022年に約100億ドルの損害を与えたと語りました。

ユーザー数の伸び悩みは、Metaの株価を23%急落させ、Appleの力を示しました。

しかし、Appleは実際に何をしたのでしょうか。

 

デジタル広告の魅力は、常に人々を正確に標的にできる能力でした。

デジタル時代以前は、企業は新聞などに広告を配置していました。

オンラインでは、企業は代わりに、人々の閲覧履歴と興味に基づいて広告をターゲティングする事が可能になりました。

これにより、ユーザーに関する膨大な量のデータを保持しているMetaのような企業の利益が高まりました。

何年もの間、Appleは「広告主のための識別子」(IDFA)を提供することで支援し、広告主に人々の行動を追跡する方法を提供しました。

しかし昨年、プライバシーの懸念を理由に、AppleはデフォルトでIDFAをオフにし、アプリに閲覧履歴の追跡を希望するかどうかを尋ねるように強制しました。

ほとんどの場合、人々は希望しない様です。

12月の調査では、Appleユーザーの54%が閲覧履歴の追跡を希望しなかった様です。

 

この変更により、デジタル広告は非常に扱いにくくなりました。

Metaは、この変更により広告ターゲティングの精度が低下し、広告が機能するかどうかを示すデータの収集が遅くなると投資家に語りました。

これらの変更は「ダイレクトレスポンス広告」を作成する広告主にとって魅力的ではなくなります。

Metaのような広告販売者への経済的影響は著しいものでした。

Metaが推定した100億ドルの損害は、2021年の収益の8%以上に相当します。

一方、Appleは好調です。見積もりによると、Appleは、アプリ追跡ポップアップを導入して以来、自社の広告ビジネスが大幅に成長していることを示しています。 

 

Metaとその競合他社にとって、問題はおそらく悪化するでしょう。

Googleはまもなく、Androidとそのモバイルオペレーティングシステムのほとんどのユーザーに、広告追跡を確認する機能を提供する予定です。

課題を認識しているメタは、問題から抜け出す方法を検討しています。

彼らは、メタバース用の独自のオペレーティングシステムを開発することで、GoogleとAppleの手の届かないところに行こうとしています。

これは、次の大きなコンピューティングプラットフォームになる可能性があります。

オペレーティングシステムを制御することで、Appleのような企業が将来Metaのビジネスモデルを覆すことを防ごうとしています。

ビッグテックの熾烈な主導権争い

1兆円を超える損害とは穏やかではありませんね。

このままMetaが黙っているとは思えず、熾烈な主導権争いが続くのは間違いなさそうです。

それにしても、いつのまにかパソコンの画面上に広告が頻繁に登場する様になったなと思いましたが、それはこのダイレクトレスポンス広告とやらのせいだったのですね。

しつこく登場する広告をモグラ叩きの様に消して行こうと無駄な努力を払いましたが、今後アップルが退治してくれるなら歓迎です。

でもおそらくアップルは自分の広告を増やすんでしょうね。

広告を全部消してくれる様なアプリがあればすぐ飛びつきます。

 

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再生エネルギー先進国のEUが直面するエネルギー危機

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高騰する欧州でのエネルギー価格

欧州は再生エネルギー先進国として知られています。

特に風力発電が占める割合は急速に高まってきました。

それでは、彼らが最近の石油ガス価格の高騰に無縁かと言えば、そんな事は全く無い様です。

仏紙Les Echosが「Les énergies renouvelables encore loin derrière les hydrocarbures en Europe」(ガス石油に未だに大きく依存するEU)と題した記事を掲載しました。

かいつまんでご紹介したいと思います。

Les Echos記事要約

西側諸国ではインフレが顕著です。

ユーロ圏では1年間で5%を記録し、これは1999年の単一通貨ユーロ発行以来最高の数字です。

このインフレは特に石油とガスの高騰によりもたらされました。

特にガス価格はロシアが欧州の主要サプライヤーである事から、ウクライナ危機のために10月から12月の間に3倍になりました。

一方、石油価格は、ブレント1バレルあたり88.3ドルに達し、前年の57ドルに対して、54%上昇しました。

ユーロスタットによると、石油はヨーロッパの一次エネルギー消費量の36%を占めており、天然ガス(22%)を上回っているため、その影響はさらに大きくなります。

再生可能エネルギー(太陽、風力、バイオマス)は、原子力(13%)と石炭(13%)を上回り、15%(1990年にはわずか5%)と石油ガスに次ぐポジションを獲得しました。

原子力発電は、発電所の閉鎖により、何年にもわたって着実に減少しています。

ヨーロッパの主要経済国であるドイツは、2022年末までに原発を完全に放棄し、2030年には石炭を放棄する予定です。

この政策により、ヨーロッパは、炭化水素の供給と外国に対して、二重の依存状態に置かれています。EUでの石油またはシェールガスの生産は消費された総燃料の3%にしか相当しません。

合計すると、EUは、それが生成するエネルギーの39%しか生成せず、それは主に再生可能エネルギーと原子力です。

残りの61%の内訳は石油から3分の2(ロシア、イラク、ナイジェリア、サウジアラビア)、ガスから4分の1(ロシア、ノルウェー、アルジェリアおよびカタール)そして石炭となっています。

この依存関係はヨーロッパ諸国間で大きく異なります。

原子力のおかげで、ガスはフランスで消費されるエネルギーの6分の1に過ぎず、しかもガスはロシアよりノルウェーから多く輸入しています。

対照的に、ロシアはドイツのガス輸入の半分を提供しており、それは家庭の半分を暖めます。

 

ロシアがウクライナに侵攻した場合の懸念事項:EUがとる制裁措置により、ロシアは報復として、真冬にガス供給を遮断する可能性があります。

ロシアは6,000億ドル(約70兆円)の外貨準備のおかげで、しばらくの間ガス収入なし​​で耐える事が出来ますので、このシナリオは本当に可能性があります。

EUはLNGの大量の在庫または代替供給を持っているので、この措置は、物理的な不足を引き起こす可能性はすくないですが、ガス価格をさらに上昇させるでしょう。

しかしそうなれば、ロシアは信頼できる供給業者としての評判を損ない、ヨーロッパにエネルギー多様化計画を加速させることにより、「虎の尾を踏む」リスクを冒すことになります。

冷戦の最も緊張した瞬間でさえ、ロシアが決して西欧へのガス供給を止めなかったのは偶然ではありません。

我が国にも同様なリスクが

欧州のエネルギーはこれまでロシアからのガス石油とフランスを中心とした原子力、そして欧州に広く存在する石炭によって主に賄われてきました。

地球温暖化対策で先頭を走るというEUの方針は再生可能エネルギー分野で多くの欧州企業を世界トップレベルに押し上げましたが、一方で、化石燃料と原子力のシェアを急速に縮小しようとしたため、今回の様なエネルギー価格の高騰を招いてしまったと言う事だと思います。

以前のブログでもご説明した通り、ロシアが欧州向けのガス供給を止める様な事態は起こらないと筆者は思います。

それはロシアにとって自殺行為であり、欧州のロシアガス離れを促す行為です。

しかし、ウクライナの危機を演出することにより、ロシアはガス価格を高騰させる事が出来ます。

今回の欧州エネルギー危機を我が国も他山の石とすべきだと思います。

地球温暖化と価格高騰リスクを睨みながら最適のエネルギーミックスを構成して欲しいものです。

 

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韓国大統領選が重要な理由を米誌に寄稿した韓国系学者

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国際情勢を左右する大統領選

韓国大統領選挙が目前に迫って来ました。

お隣の韓国と我が国との関係は現在お世辞にも良いとは言えません。

しかし、重要な隣国です。

誰が大統領になるかによって、アジアの情勢も大きく変わる可能性がありますので、大統領選挙から目を離せません。

米国の外交誌であるForeign Policy韓国系学者であるVictor Cha氏が「Why South Korea’s Presidential Election Matters to the U.S.」(韓国大統領選が米国にとって重要な訳)と題した論文を寄稿しました。

かいつまんでご紹介したいと思います。

Foreign Policy論文要約

アメリカ人は、3月9日に予定されている韓国の大統領選挙に注意を払う必要があります。

 

北朝鮮に対するスタンス以外にも、与野党の間に大きな外交政策の違いがあります。

今回は、重要な同盟問題すなわちエネルギーと気候変動、中国との関係そして、韓国が米国、日本、インド、オーストラリアで構成される日米豪印戦略対話(クワッドと呼ばれる)に加わるかどうかにおいてスタンスが異なります。

 

つまり、野党の保守的な「国民の力党」を代表する元検察総長兼弁護士の尹錫淳氏と、元知事であり、与党の進歩的な「民主党」の候補者である李在明氏のどちらが勝利するかどうかはインド太平洋地域全体に大きな相違を生じるでしょう。

 

韓国では、進歩的か保守的かの尺度は主に北朝鮮に対する態度によって定義されます。

現在の韓国の文在寅大統領のような進歩派は、北朝鮮との関わりを重視しており、北朝鮮の核兵器計画を北朝鮮政権の不安と政治的孤立の現れと見なしています。

彼らは平和宣言の進展と南北の経済的および人道的プロジェクトを支援するでしょう。

一方、保守派は北朝鮮の意図に対してより懐疑的な見方をしており、より厳しい方針を取っています。

両党の違いは、米国との合同軍事演習を再開するかどうかなど、他の外交政策においても顕著です。

トランプ大統領と金正恩主席の2018年のシンガポール首脳会談後、韓国政府は一方的にこれらの演習をキャンセルしました。

進歩的な与党候補は、北朝鮮の強硬策の引き金となるかもしれないそのような演習の再開を約束していません。

保守党の候補者は、演習の無期限の停止は、半島での抑止力の信頼性を損ない、北朝鮮の誤算を招く可能性があり米韓軍の準備を低下させると主張しています。

これは米国にとって重要な問題です。

 

もう一つの問題は、戦時中の作戦指揮権の韓国への移管です。 「OPCON移管」として知られるものですが、米国ではなく韓国が北朝鮮との戦争を支配することを意味します。

米国は、原則としてOPCONの移管を適時に完了することに同意する一方で、韓国が移管を実施するために必要な運用上の要件を満たしていることを確認したいと考えています。

与党の進歩党は早期の移管を提唱していますが、十分な準備を怠れば同盟を危険にさらす可能性があります。

 

3番目の問題はエネルギーと気候変動に関係しています。

与党は、2011年の福島第一原発事故後、民間原子力産業の段階的廃止を支持しましたが、野党はその計画に反対しています。

原発は、韓国のような国が2050年までにカーボンゼロの目標を達成するために重要です。

現政権以前、韓国は、アラブ首長国連邦への原子炉の受注で、主要な原子力エネルギープレーヤーの1つとして浮上していました。

野党候補が現在の原発政策を逆転させれば、国は再び重要なプレーヤーになる可能性があります。

米国にとって、韓国のような同盟国が原子炉と燃料の安全性と安全性に関する世界の民間原子力エネルギー市場の基準を形成する事が期待されます。

そうでなければロシアと中国が市場を支配することになります。

 

中国との関係については、与野党間に大きなギャップがあります。

保守派は「戦略的明晰さ」と民主的価値観に基づく政策を求め、中国の経済的重要性を認めながら、2016年に米国が迎撃ミサイル防衛システム(THAAD)設置する計画を発表した後、中国が韓国に課した非公式だが痛烈な制裁などの強制的な戦術に反発しています。

対照的に、与党は、中国との戦略的競争に移行しようとするバイデン政権に加わることにより慎重です。

彼らは、北京冬季オリンピックに対するバイデン政権の外交的ボイコットを支持せず、米国との追加のミサイル防衛協力に慎重です。

彼らは依然として中国を北朝鮮との関わりにおいて重要であると見ています。

THAAD制裁の記憶は簡単には消えませんが、進歩派は、経済制裁と安全保障上の優先事項のバランスを取る事が重要であると考えています。

 

両者の違いは、クワッドで最も明白です。

信頼できる筋の情報によれば、韓国は2021年3月の最初のクワッドサミットに招待されましたが、辞退した様です。

与党の大統領候補は、韓国のクワッドへの加盟の可能性について沈黙を守っています。

対照的に、野党の候補者は、韓国は即時にクワッドメンバーシップを求めるだろうと公然と述べています。

 

韓国はメモリチップ、電池、感染対策用個人防護具などの重要なグローバルサプライヤーであるため、韓国が実際にクワッドメンバーになるかどうかは、現在の米国政権にとって非常に重要です。

この国を米国の同盟国の外に置くことは、コロナワクチンの製造、次世代ワイヤレスネットワーク、および気候変動への取り組みに関連するサプライチェーンに影響を与えるでしょう。

 

今回の選挙は初めて、これらすべての問題について韓国で真の国民的議論を引き起こし、その結果はは米国とそのアジア政策にとって非常に重要なものなるでしょう。

韓国の良いところは素直に認めるべき

韓国大統領選は両陣営のスキャンダルが噴出し、泥仕合の様相を呈しており、その事は日本のマスコミでもよく取り上げられています。

韓国を批判するのは簡単ですが、韓国経済がしたたかに実力をつけてきた事は素直に認める必要があります。

そして米国の外交誌であるForeign PolicyやForeign Affairsなどにも、今回の様に韓国系の学者が頻繁に寄稿している一方で、日本の学者の論文が掲載される事はほとんどありません。

国際世論に訴える韓国と内向きの我が国の間に今後大きな差が生じる可能性があります。

日本の立場を外向きに発信する学者や政治家が現れることを期待したいと思います。

 

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中国AI技術の進展とその限界

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既に営業開始した無人運転タクシー

中国は猛烈な勢いでAI技術を進展させている様です。

北京市では既に無人運転タクシーが営業を開始している様ですので、西側諸国をこの分野では凌駕している様に思えます。

実際のところ、彼らの技術はどこまで進んでいるのでしょうか、

米中対立が進み、西側の技術を以前の様に安易に入手できない中、問題は生じていないのでしょうか。

この点について英誌Economistが「Can China create a world-beating AI industry?」(中国は世界をリードするAI産業を作り出せるか)と題した記事を掲載しました。

かいつまんでご紹介したいと思います。

Economist記事要約

2017年に中国共産党は技術経済マスタープランの中心にAIを置きました。

その計画は良いスタートを切っている様です。

電子商取引企業であるJD.comのロジスティクス部門は、上海近郊で世界で最も先進的な自動倉庫の1つを運営しています。

5月、中国の検索大手であるBaiduは、北京で自動運転タクシーを開始しました。 SenseTimeの「スマートシティ」AIモデル(交通事故から違法に駐車された車まですべてを追跡する都市監視カメラ)は、中国および海外の100を超える都市に配備されています。

中国は、他のどの国よりも多くのAI支援産業用ロボットを配備しています。

そして2020年には、この分野での論文発行でアメリカを上回りました。

上場している中国の最も著名な5つのAI関連企業は、合計で約1,200億ドル(13.5兆円)の価値があります。

 

確かに、中国のAIは進歩を遂げている様ですが、投資と最先端のイノベーションの両方の点で、アメリカに遅れをとっています。

中国の5年前のAIマスタープランは、いくつかの目標を設定しました。

たとえば、2025年までに、技術の「主要なブレークスルー」を達成し、一部のアプリケーションで世界をリードするとしました。

この目的達成のために、国は様々な形(補助金、減税、政府調達)でAI企業を支援してきました。

国はまた、AI企業に直接投資しています。

ウイグル人の少数民族に対する弾圧を理由に制裁対象となったSenseTimeは中国政府の基金より直接投資を受け入れました。

しかし、中国のAI産業は未だに西側に後れを取っています。

出版された論文数は確かに多いですが、引用された論文の数はそれほどではありません。

それは、次の3つの理由で持続する可能性があります。

 

第一に、資本が効率的に配分されていない可能性があります。

ランカスター大学のZengJinghanは、補助金を吸い上げるためにAIを開発していると虚偽の報告を行う企業が存在すると主張しています。

コンサルタント会社であるデロイトは、2018年の自称AIスタートアップの99%が偽物であると推定しました。

そのような大騒ぎは公的資金だけでなく、人的資本も浪費すると予想されています。

 

中国の2番目の問題は、世界最高のAI研究家を採用できないことです。

シカゴを拠点とするシンクタンクであるMacroPoloによる2020年の調査によると、この分野のトップクラスの研究者の半数以上が母国以外で働いています。

アメリカとヨーロッパは、彼らにとり中国より魅力的に見える様です。

世界のトップAIタレントの約3分の1は中国出身ですが、実際に中国で働いているのは10分の1にすぎません。

 

党にとってさらに問題なのは、そのマスタープランがAIに不可欠な最先端の半導体を無視したことです。

事実上そのような半導体の全てがアメリカ製であるか、アメリカ製の機器で作られています。

そのため、トランプが採用し、バイデンが延長した中国企業への禁輸により、中国が追いつくには何年もかかるでしょう。

 

これらの課題は、今後数年間、中国のすべてのハイテク産業を悩ませ続けるでしょう。

現在彼らが置かれた状況を考えれば、彼らが当面できる事は、新境地を開拓するのではなく、既存のテクノロジーを改善することです。

いくら税金を中国政府が注ぎ込んだところで、この状況を変える事はできません。

海亀は母国に帰るか

少し前まで、中国は多くの留学生を米国に派遣していました。

その数は20万人以上と言われています。同時期の日本人留学生は2万人に満たない数ですから10倍以上の留学生を送っていたわけです。

米中対立の煽りを受けて、中国の留学生は減少していくと思いますが、この20万人の中国人留学生が母国に帰り、米国で学んだ技術を普及させていった事が、中国のAI技術の発展に大きく貢献した事は想像に難くありません。

しかし上記のEconomist記事によれば、米国でAIを研究した中国人留学生は母国に帰らず、欧米に留まっている模様です。

中国が米国との技術競争に勝利するためには、少なくとも中国人留学生を母国に帰還させる必要があるでしょう。

外国で勉強し、その後母国に帰る学生のことを中国語で「海亀」と呼ぶそうですが、この海亀の数が、米中の技術競争の勝敗を分ける事になるかもしれません。

 

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フランスから見た日本のオミクロン対策

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ジレンマに悩む日本

我が国でもオミクロン株の感染が広がっています。

全国の新規感染者数は22日、5万人を超えました

一足先にオミクロン株の洗礼を受けた欧米の国々は日本政府のオミクロン対策をどの様に見ているのでしょうか。

仏紙Les Echosが「Zéro risque ou zéro croissance : le dilemme japonais face à Omicron」(ゼロコロナか経済成長か:オミクロン株のジレンマに直面する日本)と題した記事を掲載しました。

かいつまんでご紹介したいと思います。

Les Echos記事要約

東京で深夜営業は不可能となりました。

オミクロン株の急速な拡大を懸念して、政府は東京都と他の十数の都道府県を「緊急事態宣言」に近い状態に置きました。

これらの地域の知事は、「人間との接触」を制限するために、レストラン、バー、その他のナイトライフ施設を夕方早く閉店するよう呼びかけることができます。

レストラン等のオーナーが公的資金によって補償される一方で、一連の制限は、経済を圧迫し始めています。

それは、岸田政権のオミクロン対策に疑問を投げかけています。

 

極めて少ないPCRテスト

1億2600万人の人口を持つ国は、今週の金曜日に47,000を超える新規症例を特定しました。

記録的な数字をマークしていますが、流行の正確な範囲については何も述べていません。

常にクラスターを特定することだけを求めており、フランスが毎日200万人近くをテストする一方で、日本でのテストは25万人にも達しません。

 

今のところ、対策がなまぬるいと批判される事を恐れる日本の指導者は、西側各国で既に確認されている重症化率の低さを無視して、デルタ株と同様にオミクロン株を扱っています。

岸田首相は、すべての感染者に10日間の隔離を課し、感染者と同居の濃厚接触者には最大20日間の隔離を課しました。

 

労働力不足

この処置により、少子高齢化によってすでに弾力性を失っている労働市場から毎日何十万人もの人々が、「撤退」してます。

全てのセクターが影響を受けています。

20日に世界一の自動車メーカーであるトヨタは、労働者と下請け業者の従業員の感染により、国内11工場の21の生産ラインを数日停止する事を発表しました。

 

サービス部門でも、懸念が高まっています。

東京の原宿地区にある大手携帯電話会社の従業員は、「感染者は一人しか出ませんでしたが、店内を消毒してチーム全体を検査するために2日間閉店する必要がありました」と述べています。

政府は、観光セクターを支援することを目的とした「Go-To Travel」キャンペーンを延期したばかりです。

そして、「現在の不確実性は、企業が投資をすることを思いとどまらせるでしょう」と専門家は警告します。

日本経済は昨年第4四半期に回復した後、再び低迷する可能性があります。

 

コロナの法的​​位置付け

強い影響力を持つ元首相の安倍晋三氏は、インタビューで、経済活動を解放するためにコロナの法的位置付けを変更する事を提案しました。

彼は、現在感染者が出るたびに展開される非常に厳格な管理および医療処置に言及し、 「私たちは季節性インフルエンザのようにコロナを扱う事ができるでしょう。」と主張し、ワクチンと治療が今では重症化を予防していると述べました。

日本は非常に高齢化していますが、80%がワクチン接種を受けています

21日夜の時点で、日本ではウイルスによる重症者は287人に過ぎず、1日あたりの死亡者数は12人未満です。

 

「緩和」する必要

この「緩和」という概念が一部の経済エリートによって支持されている一方、専門家は慎重なままです。

「このウイルスの重症度を下げるのはまだ時期尚早です」と、感染症専門医で神戸大学の講師である岩田健太郎教授は言います。

「緩和は医療制度にあまりにも多くの影響を与えるでしょう」と彼は説明します。

「突然、すべての病院がコロナ患者の受け入れを余儀なくされることになります。現在、彼らはコロナに適応した全国で450の医療施設によってのみ受け入れられています」と研究者は指摘します。

「さらに、オミクロンが単純なインフルエンザのように扱われた場合、患者は医療費の30%を自己負担する必要があり、高価な治療費を払えない人も出るでしょう。」と岩田教授は付け加えます。

 

政府は、他人に感染させるリスクのない感染者を「無視」すれば、450の医療センターの仕事を軽減することができます。

彼らは医療センターによってテストされることなく、医師によってオンラインで聴診する事が可能でしょう。

そろそろWithコロナへの移行を

「同居の濃厚接触者は最長20日間の隔離が必要だ。」との記述にちょっと驚きました。

これはフランス人記者の事実誤認かと思い、調べたところ間違いではありませんでした。

感染者と同居している人間は、感染者の療養期間が終了してから更に10日間隔離が必要の様です。

20日間も出勤、登校ができないとなると、確かに社会生活に大きな影響が出かねません。

それとPCRテストの数、日本はこんなに少ないんですね。

実際の感染者数はもっと多い可能性があります。

 

日本は高齢化していますので、用心は必要ですが、そろそろWithコロナを考える時期に来ていると思います。

しかし岸田政権は慎重姿勢を崩さないでしょう。

6月に参院選挙があり、岸田首相の任期がそこで決定する事を考えれば、同首相は安全策をとる可能性が高いと思われます。

菅政権のコロナ対策が最近見直されていますが、同政権はワクチンを大量にかき集める事に成功する一方で、Go toトラベルなどで経済を回そうとの意欲も持っていました。

結果的にGo toトラベルは不評で、政権の命取りの一つになってしまいましたが、人流を制限する一方では、経済が死んでしまう事を前政権は理解していたと思います。

 

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ウクライナへの軍事援助は役に立つのか

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ウクライナをめぐる米露の睨み合い

ロシアとウクライナの紛争は今も続いています。

プーチン大統領は本気で米国に譲歩を迫っている様で、ロシアが米国に要求している内容もウクライナをNATOに加盟させない事と明確です。

米国は金融制裁をちらつかせて、ロシアを思いとどまらせようとしていますが、どうなるでしょうか。

一方で、米国はウクライナに対してスティンガー対空ミサイル(歩兵が肩に担いでヘリコプターなどを狙う)など武器供給を最近決定しました。

この様な動きに対して米誌Foreign Policyが「The West’s Weapons Won’t Make Any Difference to Ukraine - U.S. military equipment wouldn’t realistically help Ukrainians—or intimidate Putin.」(ウクライナに何の違いももたらさない​​​​西側の軍事援助- ウクライナを助けたり、プーチンを威嚇する事ができない米国兵器)と題した論文を掲載しました。著者は米国シンクタンクRand CorporationのSamuel Charap氏です。

Foreign Policy論文要約

ロシア軍がウクライナとの国境に集結する中、米国政府は、ウクライナの防衛を如何に支援するかにますます焦点を合わせています。

今週、バイデン政権はウクライナへのスティンガー対空ミサイルの供給を承認しました。

 

一部の人々は、ウクライナへの米国の軍事支援がロシアが攻撃を開始するのを思いとどまらせる可能性があると主張しています。

また、ウクライナが勝つことは期待できないが、ロシアに高い代償を払わせる事ができる、すなわち、ロシア軍の人的損害を増やす事によりロシア国内でプーチン大統領に対する批判を引き起こす事が可能だとする声もあります。

これらの議論はどれも説得力がありません。

それはウクライナとの安全保障協力をやめるべきだという意味ではありません。

軍事援助がこの危機を解決するための効果的な手段ではないと申し上げたいのです。

 

2014年以来、ロシアによるクリミアの併合とドンバスの侵略に続いて、米国はウクライナに25億ドルを超える軍事援助を提供してきました。

この支援は主に、ドンバスでのロシアが支援する分離主義勢力との紛争におけるウクライナの能力を改善することを目的としています。

しかし重要なことは、ウクライナ軍はドンバスでロシア軍と戦っているわけではない点です。

確かに、ロシアはウクライナにおける分離主義勢力を武装させ、訓練してきました。

しかし、ウクライナ政府自身も説明していますが、反乱軍の大多数はウクライナの人々で構成されており、ロシア軍の兵士ではありません。

 

今回、報告された大規模なロシア軍の国境近くへの集結は、過去7年間の小競り合いとは根本的に異なることを示唆しています。

ロシアには、数万人の要員、数千台の装甲車両、数百機の戦闘機が関与する大規模な共同攻撃作戦を実行する能力があります。

その気になれば、壊滅的な空爆とミサイル攻撃を皮切りに、ウクライナの奥深くに侵入して、基地、飛行場、および兵站部隊を攻撃するでしょう。

 

要するに、今回ロシアが企図する戦争はウクライナにおける現状の小競り合いとは全く異なるのです。

それはロシアを抑止するという米国の軍事援助の正当性を損ないます。

ウクライナ軍はドンバスでの小規模の紛争で戦うように形作られているため、ロシア正規軍の脅威に対する抑止力はありません。

米国の提供する兵器にも抑止力はありません。

ロシアが大規模な戦争を開始し、西側からの莫大な経済制裁を受ける覚悟があるのであれば、米国の軍事援助が何であれ、それを阻止することはできないでしょう。

 

戦争が始まると、ウクライナ軍はほぼ即座に絶望的な状況に陥ります。

ドンバスにあるウクライナの要塞は、現代のマジノ線(第二次世界大戦前に構築されたフランスの要塞、難攻不落と言われたがヒトラーに簡単に突破された。無用の長物の例え)のように見えるかもしれません。

簡単に迂回され、破壊されます。

 

ウクライナの国土が大きいという事は、陸軍が広い地域を移動する必要があることを意味します。

機動戦は、はるかに優れた訓練と装備を備えたロシア軍に有利です。

ロシア軍は、シリアでの戦闘で、無人機による長距離攻撃や偵察を実践してきました。

そのパイロットはシリアで実戦を経験しています。

ウクライナ軍は主に古いソ連製兵器を運用しており、ロシア軍はその弱点を熟知しています。

要するに、軍事バランスはロシアに圧倒的に有利ですので、米国が提供するかもしれない軍事援助は、紛争の結果を決定する上でほとんど無意味になるでしょう。

 

今回の軍事援助は、ウクライナがロシアに占領された場合、ウクライナの反乱軍がロシアの占領軍に代償を払わせる事が可能だとの議論もあります。

多くの人が、1979年のソ連侵攻後のアフガニスタンのムジャヒディンに対する米国の援助の類似性を念頭に置いています。

ロシアが敵対的なウクライナ人の多い地域で長期占領を試みた場合、これらの形態の支援は、ロシアに問題を生じさせる可能性があります。

しかし、ウクライナ蜂起軍への米国の支援は、紛争が始まる前に議論されるべきではなく、長期にわたる紛争中の最後の手段であるべきです。

 

平時であれば、米国がウクライナに軍事支援を提供するのには多くの正当な理由があります。

しかし、現在は平時ではありません。

軍事援助は今や危機の解決には役に立ちません。

侵略の危険にさらされている米国のパートナーを助けることは道徳的に正当化されるかもしれません。

しかし、ウクライナに対する潜在的な脅威の規模を考えると、米国が支援できる最も効果的な方法は、外交的解決策を見つけることです。

駆け引き上手のプーチン大統領

プーチン大統領は究極の現実主義者であり、彼はウクライナへの侵攻の損得を冷静に分析している筈です。

冷戦後徐々に旧共産圏の国々をNATOに侵食されたロシアにしてみれば、ウクライナは最後の砦であり、この国がNATOに加盟することだけは何としても食い止めなければならないと考えているでしょう。

そしてバイデン 政権がウクライナに対してできる事が限定的な今こそ、絶好の攻め時だと考えているものと思われます。

勿論、ロシアがウクライナに侵攻すれば、西側から厳しい経済制裁を課されることはプーチン氏は十分認識しており、彼はぎりぎりまで外交交渉を続けようと思っている筈です。

しかし振り上げた拳はおろしません。

それは外交交渉に役立ちます。

この点、ロシアに比べて米国の対応は不手際が目立ちます。

「ウクライナに軍隊は派遣しない」とか「小規模の侵攻ならロシアへの制裁は厳しいものにならない」とか、ロシアとの交渉を不利にする声明を続け様に発していますが、この調子で行けば、ロシアに足下を見られるのは必至です。

 

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米国ビッグテックの野望と脅威

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MAAMAとは

GAFAという言葉は米国のビッグテックを称する言葉として有名でしたが、マイクロソフトの復権と共にGAFAMという言葉に変わり、更にFacebookがMetaと改称した事により、最近は「MAAMA」という言葉が使われる様になった様です。

彼らの時価総額は優に日本の会社全体の時価総額を上回り、トップのアップルは3兆ドルを超えています。

彼らの投資意欲は衰えを知らず、先日はマイクロソフトがビデオゲーム会社を8兆円近い金額で買収し、話題になりました。

彼らが抱える問題とその戦略について英紙Economistが「Big tech’s supersized ambitions - From metaverses to quantum computing」(ビッグテックの巨大な野望 - メタバースから量子コンピューターまで)と題した記事を掲載しました。

かいつまんでご紹介したいと思います。

Economist記事要約

ビッグテック企業の野心と貪欲さに限界はあるのでしょうか?

10月、Mark ZuckerbergはFacebookの名前をMetaと変更しました。

1月18日、マイクロソフトは、ビデオゲーム会社であるActivision Blizzardを690億ドル(7.8兆円)で買収しました。

これらの決定は、アメリカの5大企業であるAlphabet、Amazon、Apple、Meta、Microsoftでの大規模な新規投資の一部であり、彼らを総称してMAAMAと呼んでいます。

彼らは過去1年間に2800億ドルを投資しました。これは、米国の投資の9%に相当し、5年前の4%から倍増しました。

 

彼らは過去の巨大企業の衰退の歴史に目を向けています。

フェアチャイルドセミコンダクターは1950年代に支配しましたが、現在は存在していません。

かつて携帯電話では無敵に見えたノキアは、スマートフォンへの移行に失敗しました。

パンデミックは、ビッグテックの売り上げを一気に押し上げましたが、彼らすべてが次に来るものに備えようとしています。

問題は、それが何になるか誰にもわからないということです。

しかし、それはおそらく、人々を情報やサービスに接続する手段として、スマートフォンに取って代わる新しいデバイスを伴うでしょう。

これは、AppleがMetaやMicrosoftに対抗してVR(仮想現実)ヘッドセットを開発する理由を説明しています。

Alphabet、Apple、Amazonはすべて自動運転車に巨額の投資をしました。

そして、新しいデバイスに高度な処理能力を提供するために、特殊な半導体の設計や量子コンピューティングなどの新しいアプローチの追求に莫大な金額が費やされています。

 

MAAMAのもう1つの優先事項は、ユーザーを引き込むことで毎月の使用料を引き出すことができるプラットフォームを作成し、ネットワーク効果を利用してさらに顧客を増やすことです。

Alphabet、Amazon、Microsoftが運営するクラウドコンピューティングプラットフォームは、文字通り、他社のコンピューティング環境をホストするために定額払いを請求します。

 

これらの企業があまりにも強力であることを顧客は警戒するかもしれません。

1つの見方は、彼らの大規模な顧客基盤と、AIをトレーニングするための膨大なデータの蓄積が、競合先が乗り越えられない利点を与えるというものです。

しかし、これらの新しい分野はすべて、当面は競争が確保されている様に見えます。

Epic Gamesが作成した「Fortnite」には世界中で3億人以上のプレーヤーがいますし、半導体会社のNvidiaもこの分野に参入しています。

Microsoftは今回のActivision買収で、ゲームの市場シェアを10〜15%に引き上げるだけであり、独占ではありません。

自動運転車では、ビッグテックはテスラ、GM、フォルクスワーゲンなどと戦わなければなりません。

世界の新興企業は2021年に6,210億ドルのベンチャー資金を調達し、ビッグテックが投資した額をはるかに上回っています。

さらに、将来、ビッグテックの有する集中型プラットフォームによって支配される可能性が低くなるという推測があります。

今日のAIの主流である深層学習技術は、大量のデータに依存していますが、将来はWeb3と呼ばれるユーザーが所有および運用する分散型ブロックチェーンサービスが普及すると予想されています。

現時点では、Web3は多くのエネルギーを消費し、見た目ほど分散化されているとは限りません。

しかし、分散型ファイナンス(DeFi)という分野では、急速な進展が既に見られています。

 

それにもかかわらず、規制当局は先手を打って取り締まりたいとの誘惑に駆られるかも知れません。

現在アメリカの独占禁止法の最高責任者であるリナ・カーンは、大手ハイテク企業が隣接分野に進出することを禁止することを推奨しました。

しかし、現時点では軽い規制が最善のポリシーです。

テクノロジーへの投資は生産性の向上に関連しており、ビッグテックが再投資したキャッシュフローのシェアは10年前からほぼ2倍になっています。

それはまだ危険ではありません。

歴史は、テクノロジーの巨人が新しいテクノロジーを習得できなかったために衰退した事を示唆しています。

現在の巨人がその運命を回避するために新しい分野に移動するために何十億ドルも費やしたいのであれば、それを止める理由はありません。

我が国はどう対処すれば良いのか

上記の記事の中でWeb3に関しての記述がありますが、これはもう少しかみ砕いてご説明する必要があると思います。

現在、我々はアップルやGoogleといったビッグテックの用意したプラットフォームで情報をやり取りしており、彼らは吸い上げた膨大なデータをAIを使って解析する事により、他社を寄せ付けないアドバンテージを得ているのが現状です。

しかし、Web3と呼ばれる次世代のインターネットシステムはブロックチェーンを使った分散型になり、ビッグテックがデータを一方的に吸い上げるわけではなくなります。

これがゲームチェンジャーになるのではと期待されているわけです。

 

それにしても、1980年代に一斉を風靡した日本企業の名前は上記の記事には一切出てきません。

最近日本企業の影は薄くなるばかりです。

米国以外の企業が全て埋没しているかといえばそうではありません。

韓国のサムスンや映画、音楽は世界市場で存在感を示しています。

先日日本の芸能プロダクション、エイベックス社の会長さんが韓国の芸能市場における成功について「韓国は自国の市場が小さいので、最初から世界市場で勝負しようと国際スタンダードを採用している。日本は中途半端に自国市場があるので、ドラマの長さなども日本しか使わない仕様になっている。」と語っていました。

ここでもガラパゴス化極まれりです。

全部がそうとは言いませんが、そろそろ日本も茹でガエル状態から脱する必要がありそうです。

本日の日経は、円の実力は50年前の水準に低下したと報道しています。

 

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とっておきのアネクドート(続編その8)

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お硬い話題が続いたので、久しぶりにロシアのアネクドート(小噺)を取り上げます。

最近は強権主義の国が増えてきていますが、そういう国では政府や高官をからかっただけで侮辱したと罪に問われるケースもある様です。

旧ソ連時代のアネクドートは罪に問われないギリギリの線を狙っており、庶民の知恵が感じられます。

アネクドート

1980年のモスクワオリンピックで、ブレジネフ書記長はスピーチを開始します。 「O!」 —拍手。 「O!」 —大喝采。 「O !!!」 —聴衆全員が立ち上がり、拍手喝采します。

補佐官が書記長に駆け寄り、ささやきます。

「ブレジネフ同志、これらはオリンピックのロゴ(五輪の輪)です。すべてを読む必要はありません。」

注)ブレジネフ氏は原稿を棒読みするので知られていました。

 

ブレジネフがイギリスを訪問した際、サッチャー首相はゲストに「チャーチルに対するあなたの見方はどうですか?」と尋ねました。

「チャーチルとは誰?」 ブレジネフは答えました。

大使館に戻ると、ソビエトの使節は次のように述べました。

「おめでとうございます、ブレジネフ同志、あなたはサッチャーに敬意を表しました。 彼女はもう愚かな質問をすることはないでしょう。」

「サッチャーとは誰?」 とブレジネフは答えました。

 

男は妻と小さな子供と一緒にドライブしていました。

民兵が彼らを引っ張って、飲酒検査を受けさせました。

「あなたは酔っています」と民兵は主張しました。

男は飲酒検知器が壊れていると抗議し、警官に子供を検査するように要求しました。

子供も酔っ払っているとの結果が出ると、警官は肩をすくめ、「確かに検知器は壊れている様だ」と言って、彼らを開放しました。

男は妻に「ほら、子供にウォッカを数杯飲ませても害はないと言っただろう」と言いました。

 

英国の科学者は、ロシア人観光客のように振る舞う2週間の実験を実施しました。

その結果、彼らはアルコールが最初の3日間だけ有害であることに気づきました。

翌週には、アルコールが有用になり、後で必要になる事を発見しました。

 

アメリカの犬、ポーランドの犬、ソビエトの犬が一緒に座っています。

アメリカの犬は、「私の国では、十分に長く吠えると、買主に聞こえて肉が与えられます」と言います。

ポーランドの犬は「肉とは何ですか?」と聞きました。

ソビエトの犬は「吠えるとはどういう事ですか?」と聞きました。

 

地方共産党会議は、社会主義革命の記念日を祝うために開催されました。

会長はスピーチをします。

「 革命後の党の驚くべき成果を見てみましょう。 たとえば、このマリア、革命前の彼女は読み書きのできない農民でした。 彼女は服を1つしか持っておらず、靴も持っていませんでした。 それが今、模範的な乳搾り女です。 イワンを見てください。 彼はこの村で最も貧しかった。 彼には馬も牛も斧さえもありませんでした。 それが今、靴を履いたトラクターの運転手です! そして、セメノビッチ・アレクセイエフ–彼は厄介なフーリガンであり、酔っぱらっいの与太郎でした。 彼は手当たり次第何でも盗むので、信用する人は誰もいませんでした。 それが今、党の書記長です!」

 

フランス人、日本人、ロシア人が外国人に捕らえられています。

彼らを独房に閉じ込め、2つの鋼球を使って彼を驚かせるように要求しました–勝者は解放され、残りは処刑されます。

1週間後、フランス人は鋼玉でジャグリングを行いました。

日本人は石庭を作りました。

しかし、ロシア人が勝者と判定されました。

彼は一つのボールを壊し、もう一つのボールを失いました。

 

1937年のスターリンによる粛清の嵐の時代に生きた2匹のウサギの会話。

最初のうさぎ:「そんなに急いでどこへ行くんですか?」

2番目のウサギ:「聞いてませんか? すべてのラクダが去勢されるという噂が流れています。」

最初のウサギ:「あなたはラクダではありません。」

2番目のウサギ:「彼らがあなたを捕まえて去勢した後、あなたがラクダではないことを証明しても意味がありません。」

 

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急拡大するサイバー攻撃の脅威

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麻痺する社会インフラ

パンデミックの最中にハッカーは医療システムを攻撃し、英国をはじめとする多くの病院が機能不全に陥りました。

全てのものがインターネットに繋がるIOTの時代、医療、運輸、金融など全てのインフラが攻撃対象となっており、我々の生活は麻痺しかねません。

しかも、ハッカーに対して身代金を払った企業は泣き寝入りするケースが多く、その被害は表に出てきません。

従って公表されているサイバー攻撃は氷山の一角であると推測されます。

現在のサイバー対策にどの様な問題があり、それをどう解決すべきかについて米誌Foreign Affairsが「How to Cyberproof the Private Sector」(民間企業をサイバー攻撃から守る方法)と題した論文を掲載しました。

著者のRaj M Shah氏はResilience Insurance社の創始者で、サイバーセキュリティーの専門家ですが、米国防総省の元顧問という経歴をお持ちです。

Foreign Affairs論文要約

世界中でサイバー攻撃が発生する中、民間企業はサイバーセキュリティへの支出を劇的に増加させました。

最近の調査によると、従業員数が1,000人を超える企業は、2021年4月までの1年間に平均1300万ドル以上(約15億円)をサイバー防衛に費やし、わずか2年前から3倍以上に増加させました。

その支出はもっともです。

昨年の夏、米国の石油パイプラインへのサイバー攻撃により、OPECの石油禁輸を連想させる様なダメージが発生しました。 

しかしこの支出の増加は脅威を回避するという点で、あまり役に立っていません。

サイバー攻撃の大部分は、フィッシングや既知の脆弱性のパッチの適用が遅いなどの基本的なエラーが原因であり、攻撃者は低コストのやり方で高価なサイバー防御システムに侵入しています。

企業は、進化するサイバー脅威への対応が遅すぎ、脆弱なソフトウェア製品を調達しており、セキュリティ支出を正しく割り当てていません。

 

しかし、より大きな欠陥は、標的となる民間企業が現在のサイバー脅威に関するタイムリーで包括的な情報を入手できないことです。

何故なら特定の攻撃に関するインテリジェンス、および特定の防御の有効性は、サイバーセキュリティ会社によって秘匿される傾向があるからです。

これらの問題に対処するために、米国政府は、サイバー脅威に関するインテリジェンスデータの共有を促進する必要があります。

しかし、それだけでは不十分です。

包括的なサイバー防御戦略には、企業自身が脅威に迅速に対応し、最善の防御を実施する事が必要になります。

 

イスラエルの企業Cyber​​sixgillは、企業の情報セキュリティ責任者の90%が古いインテリジェンスデータに基づいてサイバーセキュリティの意思決定を行っていると推定しています。

また、情報共有がほとんどないため、サイバー攻撃者は同じ脆弱性を何度も突いて、世界中の何千もの企業に損害を与えることが可能です。

一方、企業は、評判を損なうことや訴訟にさらされることを恐れて、サイバー攻撃が発生してもそれを開示することを躊躇する傾向があります。

その躊躇により、ハッカーは他の会社に対して同じ方法を再利用できます。

また、サイバーセキュリティー会社も、同様に、特定のセキュリティ防御の有効性に関する情報を共有することを望んでいません。

その結果、多くの企業は、データではなく、マーケティングや口コミに基づいてサイバーセキュリティ投資の決定を下しています。

 

この問題は克服できないものではありません。

20年前、航空業界は、航空会社に墜落やニアミスに関する情報を共有させる際に同様の困難に直面しました。

しかし、2007年に、連邦航空局(FAA)は共有(ASIAS)プログラムと呼ばれる自主的な情報共有機関を設立しました。

現在、米国が運営する航空会社の99%から安全性データを受け取っています。

この成功にはいくつかの理由があります。

ASIASと共有されるすべてのデータは、完全な匿名性が保たれます。

同時に、航空会社は、ASIASと積極的にデータを共有する場合にのみ、FAAの監査を免除されます。

これはフリーライダー(データを共有しない会社)を排除する意味で重要な条件です。

この手法により、安全性が高まりました。

今世紀の最初の7年間に16件の死亡事故が発生したのに対し、その後の10年は2件のみです。

 

サイバーセキュリティー庁(CISA)は、連邦航空局(FAA)のこの成功モデルを真似しようとしました。

しかし、情報提供者の数が極めて少ないため、期待された機能を発揮できませんでした。

CISAは、自社の脅威データを積極的に共有している企業のみがデータを利用できるようにする必要があります。

そうすれば、多くの企業が同業他社の1つが攻撃されたときに特定の防御を迅速に強化できるようになります。

これにより、サイバー攻撃を開始する難しさとコストが大幅に増加します。



サイバー脅威への企業の対応を強化するために、一部の専門家は政府による監視の強化を求めています。

しかし、政府の規制は絶えず変化する脅威に対してあまり効果的ではありません。

新しい攻撃法は、一部の規制を一夜にして時代遅れにする可能性があります。

 

一方、政府はサイバー保険業界と提携することができます。

サイバー保険業界は、サイバー侵害に対する請求の規模と頻度を減らすために、企業に費用対効果の高いセキュリティ対策を実施させることに強い関心を持っています。 

すでに、多くのサイバー保険会社は、絶えず変化するリスクに対応する変動価格モデルを採用しています。

たとえば、ランサムウェア攻撃がより頻繁かつ破壊的になるにつれて、サイバー保険料は昨年の間に96%上昇しました。

この様な保険料の急上昇は、脆弱性を改善し、サイバーセキュリティ予算を効率的に割り当てるよう企業に圧力をかけます。

変化する脅威に機敏に対応する人は、保険料が下がるのを目にするでしょう。

火災保険会社が建築基準法の改善と消防署の数の増加を促進するのと同様に、サイバー保険会社は企業に最も効果的で最新のセキュリティ基準と慣行を採用させることができます。

政府機関や企業に最低レベルのサイバー保険を義務付けることにより、政府は効果的なサイバーセキュリティを急速に広めることができます。

 

現在、重大な障壁が、サイバー保険の広範な使用を妨げています。

マカフィーは世界経済がサイバー攻撃から受ける損失は年間1兆ドル(約115兆円)を超えると集計していますが、サイバー保険市場全体で年間保険料は55億ドル(約6千億円)しかありません。

ランサムウェアやサプライチェーン攻撃の急増に伴い、多くの保険会社が市場から撤退しています。 

最近の調査によると、77%の企業が、できるだけ広範囲なサイバー保険に加入したいと考えている様ですが、多くの保険会社は、保険範囲の拡大に消極的です。

更に、民間保険会社は最も深刻なサイバー攻撃、特に国家によって行われる可能性のある大規模なデジタルネットワークを狙った攻撃に対して保険を提供できません。

たとえば、米国経済の大部分が依存しているクラウドインフラへの直接攻撃は、1兆ドル近くの費用がかかる可能性があります。

保険業界は、そのような損失を吸収するための集合的なリソースを欠いています。

 

この問題の1つの解決策は、政府を最後の砦の保険会社にすることです。

パンデミックが発生した時、政府の救済により多くの企業が破産しませんでした。

同様に、真に壊滅的なサイバー攻撃が発生した場合、民間企業は政府の支援を受ける必要があるかもしれません。

ただし、前提条件が必要です。

政府の救済を受けられることを企業が知っている場合、サイバーセキュリティに投資するインセンティブが低下します。

代わりに、政府は、厳格なサイバーセキュリティ基準を満たし、最低限の民間保険を付保した企業にのみバックストップを提供する必要があります。

如何に増大するサイバー攻撃の脅威に備えるか

マカフィーの試算では、世界のサイバー攻撃損害額は年間1兆ドル(115兆円)に達する様ですが、これは驚くべき数字ですね。

日本の国家予算を上回ります。

地球温暖化のリスクも金融業界や保険業界が吸収できるリスクの上限を超える可能性があると言われますが、サイバー攻撃も同様のリスクをはらんでいると思います。

しかしこの論文の提唱する情報の共有は、この業界ではなかなか難しい様に思います。

ワクチンの製造ノウハウを無償でシェアすべきとの話も結局実現しませんでしたが、サイバー対策を専門とする会社にしてみれば、彼らのノウハウは飯の種です。

航空会社の事故データ共有とは若干性質が異なる様に思います。

ここのところをどう解決するかが今後の最大の難問だと思います。

上記論文では民間企業の防御に焦点を当てていますが、我々個人の資産もハッカーに狙われています。

デジタル化は世の流れですが、サイバー攻撃のリスクは高まります。

十分気をつけましょう。

 

最後まで読んで頂き、有り難うございました。