MIYOSHIN海外ニュース

世界の役立つ情報をわかりやすくお伝えします。

カザフスタン暴動の真相とは

f:id:MIYOSHIN:20220114114551j:plain

プーチン大統領の即断

市民デモから始まったカザフスタンの暴動事件は、カザフスタン政府の要請に答えたロシア政府が即座に空挺部隊を現地に派遣しました。

暴動は鎮圧された様です。

燃料高騰をきっかけに始まった今回の事件の真相は何だったのか。

この点について英誌Economistが「Central Asia will remain unstable, however many troops Russia sends - Events in Kazakhstan are not what they seem」(不安定な中央アジアに送られるロシアの軍隊 しかしカザフスタンでの出来事の本質はそこではない)と題した記事を掲載しました。

かいつまんでご紹介したいと思います。

Economist記事要約

先週、旧ソ連における自由と民主主義の新たな後退、そしてプーチン大統領の新たな軍事的示威活動が見られました。

それはカザフスタンの最近の出来事を読む一つの方法であり、そこにはいくつかの真実があります。

 

燃料価格の高騰に対する不満が、腐敗した独裁政権に対する広範な抗議行動にエスカレートし、その後、政府の建物に対して暴徒が攻撃を始めた時、当局はこれに反撃を開始しました。

彼らは警官隊に警告なしに発砲する事を命じただけでなく、ロシアのプーチン大統領に空挺部隊を派遣することを要請しました。

カザフ人の権利は激しく踏みにじられ、プーチン氏は再びこの地域の王者としての地位を確認しました。

彼は、旧ソ連ではこれ以上「カラー革命」を許さないだろうと宣言しました。

これは腐敗した抑圧的な政府が、市民による平和的な抗議を常に打ち砕くことができるようにすることを意味します。

 

しかし、この見方は誤解を招く可能性があります。

確かに、権威主義体制は権力に固執して武力を行使し、プーチン氏は地域でのロシアの優位性を主張しています。

しかし、それは今回の暴動が実はカザフスタンのエリート間の権力闘争であった事を覆い隠します。

今週まで、カザフスタンの大統領、トカエフ氏は、彼の前任者であるナザルバエフ氏によって構築されたシステムを守るための単なる中継ぎと見なされていました。

しかしデモ隊が非難したのはナザルバエフ氏であり、混乱によって明らかに最も弱体化したのはナザルバエフ氏です。

彼の取り巻きは、市民のデモを自分の目的のために利用したとして非難され、政府の上級職から解任され、ナザルバエフ氏自身も国家安全保障評議会の議長から解任されました。

今回の事件の結果、穏やかな改革派のトカエフ氏にとって、ナザルバエフ氏が遺した歪んだ国家を彼の意に沿ったものに作り替える事が容易になった事は間違いありません。

 

同様に、プーチン氏がキングメーカーとして支援を要請された事は彼にとって喜ばしいことですが、カザフスタンと更に言えば中央アジアの国々が、今後、彼にとって問題の原因になる可能性を忘れてはなりません。

一つには、彼はナザルバエフ氏を真似て、彼と仲間の利益を保護するような引退の形を作り上げようとしていた節があります。

しかし、今回の事件はそれが難しいことを示唆しています。

さらに、カザフのエリート間の権力闘争は、中央アジアがいかに手に負えないかを示しています。

この地域は、多くの言語と民族があり分裂した地域です。

中央アジアの7,500万人の人々のほとんどは、少なくとも名目上はイスラム教徒ですので、世俗的な政府は、信心深い国民が彼らに反旗を翻すのではないかと恐れています。

影響力を増したロシア

今回のカザフの騒乱がカザフ政府内の権力闘争に発展したとの分析は正しいと思います。

ひょっとするとトカエフ大統領は最初からシナリオを書いて、事前にプーチン大統領から協力の約束を取り付けていたかもしれません。

今回、ナザルバエフ大統領の右腕と言われたマシモフ元首相が逮捕されたり、前大統領の長女ダリガ氏が一昨年国会議長を解任されたりした事を考えると、トカエフ大統領は周到にナザルバエフ氏から権力を奪い取ろうと工作してきたふしがあります。

 

一方、「プーチン大統領は今回の権力闘争の勝者では必ずしもない」との分析はどうかなと思います。

カザフスタンは中央アジアの中では、圧倒的にロシア系住民の数が多い事(約2割)で知られています。

ロシア系住民が多いと言う意味ではウクライナと似ています。

そんなカザフスタンの初代大統領となったナザルバエフ前大統領は、慎重にかつ巧妙にロシアの影響力を排除しようと動いてきました。

公用語にカザフ語を加えたり、ロシアとのバランスをとるために中国が提唱する上海条約機構に加盟したり、西側の投資を引き込んだのもロシア離れの一環です。

しかし、今回トカエフ大統領はプーチン氏に軍隊の派遣を要請しました。

これはロシアにとってみれば渡りに船だったと思います。

今後、トカエフ大統領はロシアに足を向けて寝れません。

以前ナザルバエフ前大統領が目指したロシアから一歩距離を置いたカザフスタンは実現不可能になったのではないでしょうか。

今後、注目は中国の出方です。

既に習近平主席は、今回の暴動に関して政府による鎮圧を肯定する声明を発表した様ですが、中国にとってもカザフスタンは長い国境線を共有する重要な隣国です。

しかも国境を挟んでウイグル系の民族が両国に居住しており、カザフスタンの安定は中国にとっても重要です。

一帯一路の重要拠点であるカザフスタンにおいてロシアの影響力が増していくことに、中国がどう対処するか注目されます。

 

最後まで読んで頂き、有り難うございました。



コロナで変化を迫られる宗教界

f:id:MIYOSHIN:20220113141336j:plain

コロナの直撃を受けた宗教界

新型コロナは様々な業界に大きな影響を与えました。

一番大きな被害を受けたのは、航空産業やホテル業かも知れませんが、どうやら宗教界も例外では無い様です。

英誌Economistが「The world’s religions face a post-pandemic reckoning」(パンデミック後の審判に直面する世界の宗教)と題した記事を掲載しました。

かいつまんでご紹介したいと思います。

Economist記事要約

コロナ感染の広がりと共に、教会は信者を維持する事がこれまで以上に困難になっている事が明らかになりました。

パンデミックはオンラインサービスへの移行を加速させ、かつて忠実だった多くの信者に教会に行かなくなる言い訳を与えました。

多くの宗教団体は一晩で教会のドアを閉め、サービスをズームに移しました。

現在、教会が再開されるにつれて、彼らは何人の信者が戻ってくるか確信が持てません。

おそらく、戻ってくる人が少なければ、すでに目立っていた2つの傾向が強まる可能性があります。

多くの宗教団体は、十分に活用されていない財産を売り払うでしょう。

そして、より多くの教会が合併されるでしょう。

 

経済学者は、宗教団体をまるで企業のように分析してきました。

1776年、アダム スミスは、「国富論」で、教会は肉屋、パン屋、醸造所に似た企業であると主張しました。

自由で競争の激しい市場であり、寄付やボランティアに頼って目的を達成するため、聖職者は「熱意」と「工夫」で、教会を信者で埋める必要があります。

合併、買収、破産は避けられません。

 

今日、宗教の市場は、おそらくこれまで以上に流動的です。

需要側では、西側世界の教会は、パンデミックのずっと前に始まった世界的な世俗化に苦しんでいます。

米国では、キリスト教徒として特定される市民の割合は、2000年の82%から2020年には75%未満に低下しています。

最新の世論調査によると、アメリカ人の約30%が、少なくとも週に1回は宗教的奉仕に参加していると述べています。

それは他の先進国と比較して高いですが、20年前の45%から着実に下がっています。

 

米国には約1,200のキリスト教宗派があり、競争は激化しています。

信者を獲得するために彼らはあらゆる方法で崇拝を魅力的にする必要があります。

ギャラップの調査によると、アメリカ人の4分の3は、音楽が要因であると述べています。 85%が社会活動を魅力だと考えています。

 

パンデミックは、世界中の教会の革新に拍車をかけています。

たとえば、英国のミルトンキーンズクリスチャンセンターは、オンラインと対面の両方で宗教教育コースと祈りのグループを開発しました。

しかし、多くの教会は追いついていません。

一部の聖職者は、ロックダウン中にオンラインに移行しませんでした。

一方、サービスのストリーミング化は信者の教会変更を容易にしました。

米国の世論調査では、14%が教会を切り替え、18%が複数の教会に出席し、32%が教会に行くのを完全にやめました。

 

一方で、教会はそのバランスシートに関心を払う必要があります。

客が来ないショッピングモールや空いているオフィスの家主の様に彼らの財産を再考する必要があります。

何世紀にもわたって、宗教は財産の形で地上の富を蓄積してきました。

バチカン市国は何千もの建物を所有しており、そのうちのいくつかはロンドンとパリのおしゃれな場所にあります。

モルモン教会はおそらく1,000億ドル相当(11兆円)の財産を米国に有していると言われています。

寺院、シナゴーグ、モスクそれらはすべて、不動産価格の上昇を注意深く見守っています。

これは、信者の教会礼拝が減少し、寄付が減少するにつれて、ますます重要になっています。

英国の教会の建物は、過去10年間で年間200以上の割合で閉鎖されています。

今後数年でさらに数百が売却または取り壊される可能性があります。

アメリカでさえ、何万もの建物が永遠にドアを閉める危険にさらされています。

アメリカのシナゴーグのほぼ3分の1は、過去20年間に閉鎖されました。

広大な赤レンガのゴシック建築であるベルリンの聖マリア教会は、この傾向を反映しています。

何世紀にもわたるフレスコ画で満たされる空間に信者はまばらです。

そのホーベルク神父は、ほとんどのドイツ人は教会が時代遅れだと思っていると言います。

一方、世界中で、光熱費と修理費用の高騰は法外になりつつあります。

英国国教会は、今後5年間の修理には、10億ポンド(13億ドル)(2020年の年収の7倍以上)が必要であると述べています。。

多くのモスク、特に西側のモスクは財政難に陥っています。

彼らは多くの場合、教会よりも多くの信者を引き付けますが、収入は十分でありません。

 

インターネットは祝福と呪いの両方でした。

2020年のカンタベリー大主教による仮想説教は、推定500万人の人々に聞かれました。これは、パンデミック前の英国の毎週の教会に通う人々の5倍以上の数です。

しかし、オンラインでの参加には代償が伴います。

信者が教会を訪ねるのをやめると、教会の建物は不要になります。

したがって、宗教団体は以前よりも早く不動産を売却するか教会を合併させる事を検討し始めました。

教会が合併する傾向は、コロナの前に始まりましたが、ペースは上がるでしょう。

ウイルスは宗教界を大きく変えています。

生き残りを賭けた競争

アダムスミスの教会の定義が興味深いですね。

確かに教会は他の多くの宗教や同じ宗教の隣の教区の教会との厳しい競争に晒されています。

信者の獲得、維持には相当な努力が必要と思われます。

そして宗教サービスは最もオンライン化が難しいものの一つではないでしょうか。

教会やモスクにおけるあの厳粛な雰囲気やお香の香りなど、オンラインでは再現する事が不可能です。

懺悔をZoomで行う事も難しい様な気がします。

しかし以前の形の礼拝はソーシャルディスタンスの確保という意味で不可能になりつつあります。

今後宗教界がどの様な方向に向かっていくのか注目です。

ひょっとするとメタバースに行くかもしれませんね。

 

最後まで読んで頂き、有り難うございました。

 

ユーラシアグループが予言する中国リスクとは

f:id:MIYOSHIN:20220111190925j:plain

今年の10大リスク

米国のシンクタンク、ユーラシアグループが年初に発表する「今年の10大リスク」は我が国のマスコミにも頻繁に取り上げられます。

今年はそのトップに「中国のゼロコロナ失敗」が挙げられました。

中国のコロナ対策は今のところ成功し、死者数や感染者数は14億人の人口を持つ国としては不釣り合いに少ないのに、何故ゼロコロナ失敗が大きなリスクとみなされるのでしょうか。

この点について仏紙「Les Echos」が「La politique zéro Covid de la Chine mise à rude épreuve」(厳しい試練に直面する中国のゼロコロナ政策)と題した記事を掲載しました。

かいつまんでご紹介したいと思います。

Les Echos記事要約

彼の名前は公表されたことがありません。

中国の保健当局は、武漢の生鮮食品市場に頻繁に出入りした61歳の男性であると漠然と示しています。

2年前の1月11日、中国は武漢での不審な肺炎の最初の死を発表しました。

2年後、新型コロナの感染により、世界中で550万人が命を落としました。

そして、前例のない速度でワクチンを開発したにもかかわらず、地球はまだこのコロナとの戦いを終えていません。

 

武漢では、中国の他の地域と同様に、パンデミックは2020年の春からほぼ抑え込まれており、公式の死者は4,636人のままです。

武漢の封じ込めが終わって以来、世界で最も人口の多い国は、2人の死者を追加しただけです。

しかし、中国は、流行が再発することを恐れており、オミクロン変異株の拡大を恐れています。

北京オリンピックと旧正月の開催は、国内で大規模な移動が行われると予想され、当局は警戒を怠っていません。



中国は2020年3月からゼロコロナの方針を採用し、国境を閉鎖しました。

国内では、正常な日常生活への復帰は、最初から厳格な管理の下に実現されてきました。

兵馬俑で知られる西安の1300万人の住民は、たった150人の感染が出た事から、2週間以上アパートに閉じ込められました。

北京から遠くない天津では、日曜日から1,400万人の住民が検査を受け、20人が陽性であり、そのうち少なくとも2人はオミクロン変異体が発見されました。

春以降、中国では散発的な感染が発生しており、ゼロコロナ戦略に負担がかかっています。

コロナのわずかな症例も排除するという頑固さは、これまでのところ保健面で成功していますが、経済的或いは社会的コストが増大しています。

閉じ込められた住民は食糧不足を訴え、空腹の住民はコーヒーを卵に、タバコをインスタントラーメンに交換しました。

大規模な多国籍企業も影響を受けています。

サムスンとマイクロンの2大半導体メーカーは、西安工場の操業を調整しなければならなかったと述べ、それは彼らのグローバルなサプライチェーンに損害を与えました。

 

中国は12億人の住民に中国製ワクチンを接種しましたが、ゼロコロナ政策から逸脱することを拒否しています。

人口14億人と不十分な病院システムを考えると、北京大学の研究者はこれらの制限を緩和すると国が「とてつもない感染」に苦しむだろうと警告しました。

経済的には、ゼロコロナ政策は全国的な流行からの復帰よりもコストが低いと中国は信じています。

「中国製のワクチンがオミクロンの拡散を防ぐのに効果がないと予想されるため、中国はゼロコロナ政策を変更しようとしないだろう」と、米国のシンクタンクであるユーラシアグループは予測しています。

Withコロナを排除する中国

中国は今後オリンピックを控えていることもあり、オミクロン変異株の感染に晒されます。

もし市中感染が始まれば、感染力が強いオミクロンは瞬く間に感染を拡げる可能性があります。

中国製のワクチンはメッセンジャーRNA型では無いため、オミクロンに対して有効では無いのではと推測されています。

もしユーラシアグループの予測が当たるとすれば、影響は海外にも広がり、我が国も無傷では収まりません。

中国は今や我が国の最大の貿易相手国であり、市場としてもサプライチェーンとしても重要です。

中国からの部品供給が止まれば、自動車が日本で作れないという事態も十分ありえます。

中国にファイザーやモデルナがmRNA型のワクチンを供給するという可能性もありますが、そうなれば、我が国に入ってくるワクチンは激減します。

いずれにせよ中国のゼロコロナ政策の成否は世界中に甚大な影響を与えることは間違いありません。

 

最後まで読んで頂き、有り難うございました。

三分の一の大使が依然空席な米国

f:id:MIYOSHIN:20220110184059j:plain

大使を決められない米国

バイデン 大統領は就任後一年が経ちましたが、未だに多くの大使が派遣されない異常事態となっています。

日本は漸く新しい大使が上院で承認されましたが、多くの国で大使は以前空席です。

それが小国かと思ったらそうではありません。

英国、ドイツ、イタリアも空席だというのだから驚きです。

この問題について英誌Economistが「Can Joe Biden’s relentless diplomacy work without diplomats?」(バイデン 大統領の厳しい外交は外交官なしに可能か)との記事を掲載しました。

Economist記事要約

ロシアのウクライナ侵攻を回避するためのアメリカの外交キャンペーンは今週、米露の高官の会談で山場を迎えます。

バイデン大統領の外交チームは、心配になる程上級外交官を欠いています。

彼らは、まだドイツ、英国、イタリアなど欧州の主要国に大使を派遣していません。

大統領就任からほぼ1年が経ち、驚くべきことにウクライナにも2019年以来大使がいません。

ヨーロッパだけではありません。

イランとの核交渉が難航し、中東で問題が生じていますが、、サウジアラビア、アラブ首長国連邦、カタールなど、主要な湾岸諸国のいずれにも大使がいません。

中国との争いがアメリカの最大の地政学的関心事であるアジアでは、インド、フィリピン、タイ、または地域グループであるASEANへの大使もいません。

また、韓国には数万人の米軍が配備されていますが、アメリカ大使はいません。

ワシントンの国務省には、近東、国際安全保障と核不拡散、また軍備管理のための次官補がいません。

テロ対策コーディネーターや法律顧問もいません。

トランプ氏が2020年にスティーブ・リニックを解雇して以来、監察官のポストは空席のままです。

 

「これは大きな問題だ」

「私たちには完全な国家安全保障および外交政策チームが現場にいないという事実によって妨げられています。」とアメリカ国務長官のアントニー・ブリンケンは12月14日に警告しました。

年末に漸く30人の大使が承認されました。

その中には、中国大使、日本大使、EU大使などの大物が含まれます。

それでも、まだ合計190人の大使のうち68人のポストが空席です。

 

ここ数十年、すべての大統領は、同じ問題に苦労してきました。

彼らは約4,000人の政治任命者を決定する必要があり、、そのうち約1,200人は上院によって承認されなければなりません。

上院の確認を必要とするポストが多いため、特に国務省は苦しんでいます。

大きな問題は、共和党の上院議員による妨害です。

彼らは数十人の大使の指名を遅らせたり阻止しました。

民主党は「Build Back Better」法案など、優先議決事項がある場合は、外交官承認にわずかな時間しか与えられません。

大使がいない事による被害の大きさを評価するのは難しいです。

多くの仕事は国務長官と相手のリーダーの間で直接行われています。

他の役人が仕事を引き受けることができます。

しかし、どんなに専門的であっても、臨時代理大使は、大統領の指名した大使が持つ影響力を欠いている可能性があります。

昨年夏に原子力潜水艦をオーストラリアに提供するという米英の取り決めについてフランスに事前に伝えなかった不手際は、大使不在の結果かもしれません。

 

2001年9月11日の同時多発テロに関する超党派の調査では、国家安全保障の地位に主要な要員を任命するのが遅れたことが、アメリカが彼らを阻止できなかった一因となっていることがわかりました。

当時半分の要員が指名されていませんでしたが、現在その数は3分の2に増えています。

 

多くの国では、長期にわたる大使の欠員は苛立たしいものであり、米国が撤退するのではとの疑いを生じます。

バイデン氏がウクライナへの大使を指名することさえできない事は、ウクライナ側の懸念を強めています。

おそらくプーチン大統領も同様に認識しているでしょう。

機能不全に陥った米国

この状態は俄かに信じがたいですね。

これだけ多くの主要国の大使を欠いて外交が成り立つのでしょうか。

政治的任命者である米国の大使はお飾りで、実際は生え抜きの官僚が外交を行うのだから問題ないとの意見もあるかも知れませんが、やはり大使と臨時代理大使では重みが違います。

更に驚くのは、この大使や重要な政治任命者の人事が政党の党利党略の対象になってしまっている事です。

これは米国の政治システムが機能不全に陥っている様に思います。

米国大丈夫でしょうか。

他国に付け入る隙を与えている様な気がします。

 

最後まで読んで頂き、有り難うございました。

内戦が生じる理由

f:id:MIYOSHIN:20220109121058j:plain

アメリカの政治学者の分析

新年早々、カザフスタンでは全国にデモが広がり、政府はロシアの軍隊を導入してまで、鎮静化を図っています。

今年も幾つかの国で紛争が生じ、中には内戦に発展するケースもあるでしょう。

米国の政治学者バーバラ・ウォルターの著作である「How Civil Wars Start」(内戦が始まる理由)について、英誌Economistが書評を掲載しました。

この著作についてかいつまんでご紹介したいと思います。

Economist書評要約

バーバラ・ウォルターは内戦を引き起こす原因について鋭く分析しています。

独裁政権と自由民主主義の間のどこかにある時が、内戦に対して最も脆弱です。

民主主義が機能している場合、人々は武器を取る必要がありません。

本格的な独裁政権では、行動を起こせば殺される可能性があります。

独裁政権が緩んだ時、危険な道は開きます。

「民主主義と独裁のどちらを取るかと言われれば、ほとんどの人が民主主義を受け入れるでしょう」

「しかし、民主主義への道は危険な道です。」とウォルター女史は書いています。

 

二番目の危険因子は派閥主義です。

冷戦の終結以来、おそらく内戦の75%は、政治的グループではなく、民族的グループと宗教的グループの間で戦われてきました。

ここで重要なのは、国の多様性ではなく、政治がアイデンティティを中心に展開しているかどうかです。

自分たちの支持を得るために他のグループへの恐れをかき立てる政治指導者は、特に危険です。

旧ユーゴスラビアを思い起こしてください。

冷戦が終結すると、彼らは共産主義を捨て、民主主義に向かって動き始めました。

しかしすぐに崩壊し、ミロシェビッチなどの「民族扇動家」にリードされる様になりました。

 

彼は真の民族主義者ではありませんでした。

元共産主義者だった彼は、支持を得る最も簡単な方法だったので、セルビア民族主義に切り替えました。

スピーチの中で、彼はセルビアの歴史的偉大さを祝い、セルビア人に対して行われた過去の残虐行為に対して復讐を誓いました。

彼の信者は、彼の敵であるクロアチアの大物であるトゥジマンの行動によって増大しました。

トゥジマンの殺すセルビア人がが多ければ多いほど、彼らは保護のためにミロシェビッチに頼り、逆もまた然りです。

彼らは創造的な嘘つきです。

たとえば、セルビアのテレビはかつて、セルビアの子供たちがサラエボ動物園でライオンに餌として与えられていると主張していました。

元々、彼らは、セルビア人、クロアチア人、イスラム教徒などが自由に混ざり合い、結婚した都市に住んでいました。

それらのグループがお互いを殺し始めるとは想像もしていませんでした。

 

大規模なグループが権力や特権を失うことを恐れている場合、別のリスク要因が発生します。

ウォルター女史は、この理由で発生した例をいくつか挙げています。

サダム・フセインの下でイラクを支配していたスンニ派アラブ人は、彼が倒された後、権力を失いました。

彼らの一部はテロ組織イスラム国を創設しました。

2014年のキエフでの革命後、民族的にロシア人であると考えていたウクライナの一部は、新ウクライナ政府に反抗しました。

 

苦しんでいるグループの最も不満を持っているメンバーは武器を取るかもしれません。

ソーシャルメディアは流血へのエスカレーションを加速させる可能性があります。

ウォルター女史は、Facebookが2015年にミャンマーで使用可能になった後、仏教過激派の声がどのように増幅されたかを説明します。

ロヒンギャは大量虐殺に見舞われ、ミャンマーは現在、複雑な内戦に巻き込まれています。

 

これらはすべて説得力があり、たとえばエチオピアで今日起こっている事、またはレバノンで起こっている事への有用なガイドです。

難しい民主主義への道

確かに中途半端に民主化への道を開いた国は不安定になりがちです。

ミャンマーはその例ですが、フェイスブックの導入が事態を悪化させたとは知りませんでした。

確かにSNSによる情報の拡散は、人々の怒りや誤解をあっという間にエスカレートさせかねません。

意図的にフェイクニュースを流す輩も多く、これらは対立感情を煽り立て、危険な状況を生みやすいと思います。

現在、カザフスタンで生じている内紛も心配です。

この国は中央アジアの中で最も積極的に西側のシステムを導入した国ですが、貧富の差の広がりから、国民の不満が渦巻いています。

ウォルター女史の説によれば、独裁と民主主義のちょうど間にある一番危険な状態と言えるでしょう。

 

最後まで読んで頂き、有り難うございました。

中央アジアの優等生カザフスタンで全国に拡がった抗議活動

f:id:MIYOSHIN:20220106121909j:plain

全国に暴動拡がる

カザフスタンという国をご存知でしょうか。

1991年に旧ソ連から独立した中央アジアの国々の一つですが、国土は日本の7倍もあります。

天然資源に恵まれ、独立後も中央アジアの中で最も経済的に発展した国です。

私も仕事で何度も足を向けましたが、記憶に残っているのは冬の寒さでした。

彼らが新しい首都に定めたヌルスルタン(2019年まではアスタナと呼ばれていました。)はシベリアの一部と言っても良い地域で冬の寒さは格別です。

昔シベリアに抑留された日本軍兵士は今のカザフスタンの鉱山でも働かされたと聞きますが、冬の労働は苛酷を極めたと思います。

そんなカザフスタンで、暴動が生じた様です。

この暴動に関して英誌Economistが「Kazakhstan’s president vows to cling on despite nationwide protests」(全国に広がる抗議活動にも拘らず政権に固執するカザフスタン大統領)と題した記事を掲載しました。

かいつまんでご紹介したいと思います。

Economist記事要約

カザフスタン政府が3年前に液化石油ガス(LPG)への補助金を廃止することを決議した時、その決定はほとんど注目を集めませんでした。

国の指導者たちは、この決定が、体制そのものを脅かすとは予想できませんでした。

当局は、非効率なセクターへの補助金を廃止せざるを得なかったと説明しました。

しかし 燃料生産者は、赤字で売らざるを得ない状況下、供給を増やすインセンティブを持っていませんでした。

1月1日、市場に委ねられたLPG価格は急騰し、 車の燃料として使用する燃料のコストは、昨年末から倍増しました。

石油が豊富な西部ジャナオゼンですぐに抗議行動が起こり、瞬く間に国中に広がりました。

そして要求は燃料価格に止まらず、政権交代へと拡大しました。

1月5日までに、抗議者たちは最大の都市であるアルマトイの建物を襲撃し、空港を一時的に占領しました。

大統領は首相を解任し、非常事態を宣言しました。

 

中央アジアの中では安定していると定評のあったカザフスタンでは、大規模な抗議行動はめったにありませんでした

これは主に、国の権威主義的な統治者が抗議活動を厳しく取り締まっているためです。

従って、今回の抗議活動の広がりは驚きです。

莫大な石油の富は国民の生活水準を改善させませんでした。

インフレや失業率の上昇など、より広範な経済的不満は高まり、その後、「老いぼれ」の叫び声に変わりました。

「老いぼれ」は、ソ連が崩壊したときにカザフスタンを独立に導き、現在は長老政治家として君臨する、八十代の元大統領であるナザルバエフ氏を指します。

彼は自ら選んだ後継者であるトカエフ大統領と協力して統治しています。

一部の抗議者は、ナザルバエフ氏が国家の指導者としての地位を剥奪されることを望んでいます。

彼には、訴追からの免責を含む幅広い権限と特権が与えられています。

 

支配層の傲慢さが露出したきらびやかな首都ヌルスルタンは前大統領にちなんで名付けられました。

ナザルバエフ氏の一族郎党が天然資源からの収入を懐に入れる一方で、市民は高い生活費とわずかな賃金に苦しみ、長い間静かな不満がありました。

平均給与は年間7,000ドル未満です。

産業の多様化を政府が公約したにもかかわらず、経済は天然資源に大きく依存しています。

 

「老いぼれ」は、ナザルバエフ氏だけでなく、政府全体を対象として、より広い意味を帯びています。

2019年に大統領に就任したトカエフ氏は、民主的な改革を唱え、彼が「耳を傾ける国家」と呼ぶものを作ることを約束しましたが、変化をもたらすことができませんでした。

市民の自由に対する厳しい制限が残っており、野党は存在しません

抗議者たちは、政府を追認するだけの議会を非難し、現在政府が任命している地方自治体の指導者を選挙で選ぶ様求めています。

 

ロシア政府も心配して見守っています。

プーチン大統領に近いコメンテーターは、西側がカザフスタンで革命を促進しようとしていると示唆しています。

この計画の目的は、ロシアがウクライナ問題でNATOと話し合う準備をしている時に、ロシアを不安定にする事だとしています。

1月5日遅く、ロシアを含めた旧ソ連6か国の軍事同盟である集団安全保障条約機構は、平和維持軍を介入させると述べました。

これは、1994年の結成以来初めてのことです。

 

トカエフ氏は内部の挑発者、外部の扇動を今回の暴動の理由としました。

1月5日のテレビ演説で、彼は「何が起こっても、私は首都に留まる」と述べました。

しかし、その発言が国民が聞きたい内容であったかどうかは不明です。

トカエフ氏の言う「耳を傾ける国家」は難聴である事が判明しました。

市場主義経済は万能か

カザフスタンはこれまで中央アジアの国々の中では、最も経済成長し、政府も安定していると見られていました。

それだけに今回の全国に広がった抗議活動は驚きです。

この国は石油資源に恵まれていましたので、外資特に欧米のオイルメジャーが油田開発に巨額の投資を行いました。

当時のナザルバエフ大統領は外国資本に門戸を開き、市場経済の導入を中央アジアの中で最も積極的に進めました。

中央アジアの優等生と言われた国でしたが、問題はどこにあったのでしょうか。

社会主義経済の国であったカザフスタンの様な国に一気に資本主義、市場経済を導入すると、極端な貧富の差が生じがちです。

カザフスタンも例外ではありませんでした。

大統領の取り巻きは大金持ちになる一方で、国民はインフレや失業に喘いでいる訳です。

西側の国なら経済がダメになれば、政権交代もありえますが、野党も存在しないカザフスタンではそれも望めません。

同じ様に急激な市場経済導入を経験したロシアの国民も、旧ソ連時代の生活の方が良かったという人が多い様ですので、政権交代が可能な体制が整わない中で、市場経済を導入するのは無理がある様です。

西側もそろそろ気づかないといけないと思います。

Economistなど欧米のメディアは、今回のカザフの抗議活動から国民が欧米の様なシステムを望んでいると理解している様ですが、実際、カザフスタンの国民が望んでいるのは、旧ソ連時代の様な、「皆が貧しいが、配給品でなんとか暮らしていける社会」かも知れません。

 

最後まで読んで頂き、有り難うございました。

独ビオンテック社創業者が語るmRNA療法の将来

f:id:MIYOSHIN:20220105112536j:plain

世界を救ったビオンテック社

米製薬大手ファイザーが販売しているコロナワクチンは、独ビオンテック社との間で共同開発されたものです。

このビオンテック社がmRNA技術を長年に亘って研究してきた事が、新型コロナの感染拡大を食い止めた訳ですが、同社の創業者である​​Ugur SahinOzlem Tureci英誌Economistに今後のmRNA技術の可能性に関して投稿しました。

トルコ系移民である彼らの「Ugur Sahin and Ozlem Tureci on the future of mRNA therapies」(ウール シャヒン、オズレム ツレジmRNA療法の将来について語る)と題した記事をご紹介したいと思います。

Economist寄稿文要約

複数のコロナワクチンの急速な開発は、医薬品開発において前例のない成果です。

しかし、これから更に良いニュースがあります。

メッセンジャーRNA(mRNA)技術に基づくワクチンの開発は、他の疾患の治療法の開発における新時代の到来を告げるものです。

 

mRNAの飛躍的進歩は、有望な概念をバイオ医薬品プラットフォームに変換するのに役立った30年にわたる科学的協力によって可能になりました。

15年以内に、新たに承認される薬剤の3分の1がmRNAに基づく様になると私たちは信じています。

複雑で時間のかかる発酵プロセスに頼って薬を製造するのではなく、mRNA療法は、患者自身の細胞を薬工場に変えます。

各mRNA分子は、特定の目的のタンパク質を製造するように細胞に指示するレシピです。

私たちの新型コロナワクチンは、細胞にコロナウイルスの外側のコーティングに見られる「スパイク」タンパク質を製造するよう促し、免疫系を刺激して、ウイルスを認識して防御できるようにしました。

 

この技術は、40年以上前の組換えDNA技術(インスリンなどのヒトタンパク質医薬品の生産を可能にした)、または実験用発酵槽でのモノクローナル抗体の発足に匹敵する、製薬業界のターニングポイントです。

この技術を薬に応用することは、業界を変革することを約束します。

mRNAに基づくコロナワクチンの開発は、感染症の予防におけるこのアプローチの有効性と安全性を証明しています。

安全で効果的なワクチンがパンデミックの真っ只中に12か月以内に開発され、その後大規模に製造されたという事実は、mRNAワクチンが将来の感染症対策プログラムで重要な役割を果たすことを示唆しています。

 

それはまた、mRNAワクチンが他の感染症に対して展開される道を開きます。

そのような病気に対するワクチンの多くは、mRNAを使用して再処方され、より効率的になる可能性があります。

私たちは、mRNAテクノロジーの多様性が、さらに進んで、不治の病と戦う機会を提供すると信じています。

ビオンテック社では、現在、新型コロナを超えて、低所得国で多くの死者を出しているマラリア、結核、HIVなどの病気に対処するためのmRNAワクチンプログラムに協力しています。

mRNAテクノロジーは、これらの病気との戦いに希望を生み出しています。

これらの疾患の最初のmRNAワクチン候補は、2022年と2023年に臨床試験に入ると予想されています。

 

現在、先進国での加齢性疾患や低所得国での手頃な価格の基礎治療薬の必要性の高まりなど、世界は困難な健康問題に直面しています。

これらは、用途が広く費用対効果が高く、希少疾患の治療と標的化の個別化を可能にする持続可能なイノベーションによってのみ克服することができます。

これらのニーズはmRNAによって完全に対処できると信じています。

 

mRNAテクノロジーの豊富なツールボックスには、ますます多様化するフォーマットが含まれています。

細胞内で増殖する機能を備えたものもあれば、体内のさまざまな臓器や細胞にmRNAを送達するためのさまざまな方法があります。

将来的には、mRNA薬は、個別化された癌治療、再生医療、およびアレルギー、自己免疫状態、炎症性疾患などのさまざまな疾患に使用される可能性があります。

バイオテクノロジーと製薬の展望を再定義する新しいヘルステクノロジー産業の出現に向けた準備が整いました。

成功の鍵となるのは、当局や国際機関が市場への新しい破壊者を歓迎し、支援することです。

イノベーションへの投資をさらに奨励し、相互協力の文化を育むことによってのみ、この新しい産業は公衆衛生の変革者となるでしょう。

この新世代のハイテク製薬会社は、2022年以降、世界中の人々の健康を大きく改善させる可能性があります。

mRNAが救った多くの命

mRNAベースのワクチンがもし開発されていなかったら、現在世界はどうなっていたでしょうか。

おそらく遥かに多くの犠牲者が出て、各国とも遥かに長いロックダウンを余儀なくされていたでしょう。

経済にも甚大な影響が出て、株価は暴落したかもしれません。

貧困を理由に亡くなる方も多かったでしょう。

そんな惨劇を救ったのはビオンテックやモデルナというmRNAを地道に研究してきた会社の知見でした。

mRNAは不治の病を直す可能性があると言われています。

日本の様な高齢化が進んだ国においては、アルツハイマー病の様な認知症に効く薬が開発されるといいですね。

既に研究開発が進んでいる様ですので、期待しましょう。

 

最後まで読んで頂き、有り難うございました。

クラウド業界が通信業界に侵食する可能性

f:id:MIYOSHIN:20220104133756j:plain

クラウド業界の通信業界への参入

昨年、5Gの運用サービスが世界中で開始されました。

しかし、どの国でもその利用はかなり限られている様です。

映画がほんの数秒でダウンロードできると言われても、現在ストリーミングで十分に鑑賞できているのに、敢えて5Gを利用する価値を消費者が感じていないというのが実情だと思います。

しかし、通信業界には今年大きな動きが生じるかもしれません。

5Gでは膨大なデータの処理が必要になってきますが、この扱いに長けたクラウドコンピューティング業界が通信業界に参入してくる可能性がある様です。

英誌Economistが「Will the cloud business eat the 5G telecoms industry? (クラウドビジネスは5Gで通信業界を食い荒らす事ができるか?)と題する記事を掲載しました。

かいつまんでご紹介したいと思います。

Economist記事要約

これまで、アメリカで実際に5Gネットワ​​ークに接続する機会は限られていました。

現在3大キャリアの1つであるT-mobileだけが、幅広い5G接続を提供しています。

しかし AT&Tとベライゾンが、ついに今週5Gサービスを開始することを発表しました。

 

しかし、業界の話題となっているのは、5G通信に別のプレーヤーが登場したことです。

今後数か月以内に、衛星テレビサービスで最もよく知られているDish Networksが、アメリカで4番目の大手通信会社を立ち上げると予想されています。。

さらに重要なのは、Dishのネットワークは、ほぼ完全にクラウドコンピューティングに依存するアメリカで最初の通信ネットワークになることです。

アンテナとケーブルを除いて、そのサービスは主に、アマゾンののクラウドコンピューティング部門であるアマゾンウェブサービス(AWS)で実行されます。

これによりクラウドコンピューティングが通信業界を「食い荒らす」かもしれません。

この試みが成功した場合、米国だけでなく、年間収益が約1兆ドルの世界のモバイル通信市場を塗り替える可能性があります。

そして、それは通信をクラウドビジネスと密接に結びつけるでしょう。

 

現在、AWSやマイクロソフトのAzureなどのコンピューティングクラウドは急速に成熟しており、最終的にはモバイルネットワークにデータを供給するという厳しいタスクに対処できるようになっています。

モバイルテクノロジーの最新基準である5Gは、最初から交換機やその他のハードウェアのコレクションとしてではなく、ソフトウェアまたは「仮想化」に変換できる一連のサービスとして考案されました。

これはすべて、Dishのネットワークで実現されます。

従来のモバイルネットワークで使用されていた大きな基地局の代わりに、その技術はアンテナポストに取り付けられた細いボックスに収容されています。

これらはAWSクラウドに直接接続されており、同社が通信機器メーカーから購入しているのはソフトウェアだけです。

その結果、Dishのネットワークの構築とオペレーションは安価になります。

Dishはこの「クラウド化」において先端を走っていますが、世界中の他の通信事業者もそれほど遅れをとっていません。

6月、アメリカ最大の携帯電話会社であるAT&Tは、5Gネットワ​​ークのコアを強化するテクノロジーをマイクロソフトに販売し、マイクロソフトはAzureクラウド上のAT&Tでそれを実行します。

インドのテクノロジーの巨人であるRelianceJioは、クラウドベースの5Gネットワ​​ークを構築するという野心的な計画を立てています。

大手クラウドプロバイダーのAWS、マイクロソフト、グーグルは各社とも通信会社と提携を始め、対応を開始しています。

 

新規参入者もまた、ビジネスを開始しています。

日本のオンライン大手である楽天は、すでに日本でクラウドベースのネットワークを構築しています。

楽天は、クラウド運用をアマゾンなどビッグテックにアウトソーシングするのではなく、独自に構築し、楽天シンフォニーという子会社を立ち上げ、他の事業者にシステムを提供しています。

彼らは、ドイツのWebホスティング会社である1&1がネットワークを構築する事を支援しています。

「私たちは通信会社のクラウドにはなりたくありませんが、彼らが自分でそれを構築できるようにします」と楽天シンフォニーの責任者であるターリク アミンは説明します。

 

既存のモバイルネットワークは一夜にして置き換えられることはありません。

楽天のネットワークは遅れに直面し、Dishは当初昨年末に立ち上げられる予定でした。

いくつかの技術的な障壁が残っています。

5G基地局の制御は非常に複雑で、何百ものパラメータを監視する必要があります。

少なくともしばらくの間、必要な制御ソフトウェアは、アンテナの近くの特殊な機器で実行する必要があるかもしれません。

先駆者である楽天

菅前政権が実現した公約の中で出色だったのは通信料金の低減でした。

それを実現させたのは、楽天に通信ライセンスを与え、通信各社の価格競争を激化させた事でした。

その楽天ですが他通信大手と一つ異なる点があります。

同社は、いち早くネットワークの仮想化を実現し、実際に通信キャリアとしてそのネットワークを運用してきました、

この点では、世界の先駆者の一人と言って良いと思います。

以前、楽天の本社を訪れた際に、インド人と思われるエンジニア集団をたくさん見かけました。

国籍を問わず優秀な人材を登用する同社のカルチャーが感じられました。

自前のクラウドサービスを利用する楽天がAWSなどビッグテックに対抗できるかという点に不安はありますが、今後の楽天の動きに注目です。

 

最後まで読んで頂き、有り難うございました。

原子力と天然ガスをグリーンなエネルギーに分類したEUの舞台裏

f:id:MIYOSHIN:20220103222611j:plain

EUが下した注目すべき判断

地球温暖化対策において、世界をリードしているのはEUである事は衆目の一致するところです。

EUで決められたカーボンニュートラルの到達目標は世界各国に大きな影響を与えました。

そんなEUが先日注目すべき決定を下しました。

それは原子力と天然ガスを持続可能なエネルギーとして分類したのです。

単に分類しただけではないかと思われるかも知れませんが、このEUの決定は、プロジェクトへの融資が可能になるという点で非常に大きな意味を持ちます。

仏紙Les Echosがこの点について「Nucléaire, gaz : Bruxelles lève enfin le voile sur son projet de label « vert »」(EUは遂に原子力と天然ガスにグリーンラベルを与えた」と題する記事を掲載しました。

かいつまんでご紹介したいと思います。

Les Echos記事要約

これは、フランスの原子力発電の将来にとって極めて重要な決定です。

EUはついにグリーンラベル分類法に関する草案を発表しました。

これにより、原子力発電所またはガス発電所への投資は「持続可能な」投資として分類できるようになる予定です。

この分類法の目的は、温室効果ガスの削減に貢献する活動に民間および公的機関の資金を振り向けることです。

この草案は何ヶ月も議論されていましたが、大晦日深夜に加盟国に連絡されました。

 

炭素を排出しない電力源である原子力産業の再開を望んでいるフランスは、ヨーロッパの分類法に原子力を含める様長い間主張してきました。

フランスのエネルギー会社は今回のEUの決定に満足しています。

EUが発表した条件により、大規模な改修の継続と、新しい原子炉の建設(輸出を含む)の両方でグリーン資金を調達する事が可能になります。

ポーランドやチェコ共和国などの中欧諸国も、そのような内容を求めていました。

彼らの非常に汚染された石炭火力発電所を取り替えなければならない状況下、原子力発電プロジェクトにとって資金調達コストの削減が可能になります。

 

逆に、ドイツは長い間、ヨーロッパの分類法に原子力を含めることに反対してきました。

彼らの見方では、廃棄物処理や事故のリスクに関する不確実性は、グリーンラベルの基準を満たしていません。

ドイツは、今年の終わりに原子力発電を段階的に廃止することを公約しました。

12月31日、国は電力網から最後の6つの原子炉のうち3つを切断しました。

ドイツは日曜日に原子力をグリーンエネルギーとして認定するプロジェクトに反対を表明し、この点での立場は「変わらず、政府は原子力を持続可能なものとして認定することはできないと確信している」と述べました。

委員会によって協議された加盟国および専門家は、現在、この文書の変更を要求するために約2週間の猶予があります。

最終テキストの公開は1月中旬に予定されています。

しかし、文章はあまり変わらないはずです。

ドイツが直面する難問

ドイツは言わずと知れた欧州随一の経済大国であり、その競争力の高い製造業は欧州の屋台骨を支えています。

しかし、そこにはアキレス腱があります。

それは高価なエネルギーコストです。

ドイツは欧州の先陣を切って地球温暖化対策を講じ、再生可能エネルギーの大胆な導入を進めました。

その過程で主要な電源であった石炭焚き発電所の閉鎖を進めました。

一方で、ドイツは地球温暖化対策上有効な原子力も廃止を決定しました。

この結果、不安定な電源である再生可能エネルギーを補完するベース電源としてガス焚き発電所しか残らなくなってしまったのです。

そこへウクライナ問題に端を発する天然ガス価格の高騰がドイツを襲います。

エネルギー価格の高騰はそこで作られる製品のコスト高に繋がります。

今回のEUの決定は、ひょっとするとフランスの原子力発電所から電力を融通してもらっているドイツが裏でフランスと手を握ったのではないかと思います。

ドイツ政府の原子力に依然反対だとの声明は政治的ジェスチャーの可能性があります。

 

最後まで読んで頂き、有り難うございました。

英国から見た日本人の中国観

f:id:MIYOSHIN:20220102172757j:plain

複雑な日中関係

日中両国は隣国として2000年を超える関係を持っていますが、20世紀に入ってからというもの、幾つかの戦争を経験しました。

現在も民主主義陣営に属する日本は中国と様々な問題を抱える一方、最大の貿易パートナーとして緊密な関係を有しています。

この二国間の関係を欧米はどの様に見ているのか。

この点について英誌Ecoinomistが「How Japan sees China」(日本から見た中国)と題した記事を掲載しました。

かいつまんでご紹介したいと思います。

Economist記事要約

日本から中国への公式訪問の最初の信頼できる記録は紀元前238年ににさかのぼります。

そのとき、日本の女王である卑弥呼が、10人の奴隷と織物を捧げて中国の魏王朝に代表団を派遣しました。

7世紀には、当時日本の大部分を支配していた大和は、隋と唐の宮廷に敬意を表して使節を定期的に派遣していました。

日本は中国の漢字を採用しました。

 

日本は、何世紀にもわたって、大きな隣国を警戒しながらも、緊密な関係を築いてきました。

1970年代後半から1980年代にかけて、戦時中の残虐行為に対する罪悪感に一部動機付けられて、日本は中国の近代化を支援しました。

日本企業は、成長する市場にいち早く参入しました。

日本の指導者たちはまた、特に2010年から2012年にかけて、日本が尖閣諸島と呼び、中国が釣魚島と呼ぶ東シナ海の無人島をめぐって衝突した後、中国の拡大主義について早期に警鐘を鳴らしました。

「私たちは警告しました。これは日中間の小さな問題ではなく、この地域で中国の力が高まっている兆候です」と元駐米日本大使の佐々江賢一郎は言います。

 

当時、中国を世界経済に統合することに夢中になっていた欧米は、その様な見方に耳を貸しませんでした。

しかし、近年、香港での中国の侵略、新疆ウイグル自治区での弾圧、台湾周辺での緊張は、多くの西側政府を中国に関して懐疑的にしました。

中国との競争の時代に突入する中、日本の視点は見直されています。

一部の米英の当局者は、中国への理解を深めることを期待して、日本を英語圏の情報共有ネットワークであるファイブアイズに招き入れる事を検討しています。

「15年前、中国のネガティブな側面について[西洋の同僚]と話をした際、私は右翼で中国を嫌う日本人学者として扱われました」と東京大学の中国専門家である松田康博は言います。

「今、彼らは私たちの言うことに耳を傾けます。」

 

中国に関する日本人専門家は現在、3つの懸念される傾向について語っています。

1つ目は中国の自信過剰です。

「彼らは、西側諸国が衰退していると本当に信じています」と、元日本の国家安全保障問題担当補佐官である兼原信克は言います。

彼らの中には第二次世界大戦前の日本の自信過剰状態との類似性を指摘する人もいます。 

 

2つ目は、習近平国家主席の下での集団的リーダーシップから個人的リーダーシップへの移行です。

日本の当局者は、一人の男性の決定に依存していることで、中国が北朝鮮のようになる事を心配しています。

確かに、この点では、習氏は、スイスで教育を受けた金正恩よりも西側の世界を知らない可能性があります。

 

最後に、中国経済の状況があります。

「共通の繁栄」を求める中、最近の大企業に対する習氏の取り締まりにより、東京の多くの人々は中国経済の将来について懸念を抱いています。

「中国人が私たちのところにやって来て、私たちにもっと投資するように勧めています」と日本の大手銀行の顧問は言います。

「しかし、中国人がこれを言うとき、それは彼らが問題を抱えていることを意味します。」

一帯一路イニシアチブを通じた中国の海外インフラプロジェクトへの支援は、近年劇的に低下しました。

中国経済が国内で「深刻な問題」に直面している兆候であると、国際協力銀行の前田匡史総裁は語ります。

 

中国の経済減速は、日本自身の経済に劇的な影響を与えるでしょう。

中国は、最大の貿易パートナーであり、日本の輸出の22%は中国向けです。

日本の中国ウォッチャーは、台湾や尖閣/釣魚島周辺でナショナリズムをかき立てることによって、習氏が経済の低迷から注意をそらす可能性があることを恐れています。

それでも、多くの日本の学者は、台湾をめぐる戦争が差し迫っている点についてアメリカの学者よりも懐疑的です。



日本の対中政策はここのところ変化しようとしています。

コロナが発生する前は、日本と中国は比較的好関係を維持していました。

安倍首相は2020年4月に習近平氏を公式に招待しました。

コロナはそれらの計画を中止させました。

岸田文雄新首相は慎重ですが、いくつかのタカ派的アプローチを採用しました。

彼の内閣には「経済的安全保障」のための新しい大臣が含まれており、重要な物資に対する中国への依存を減らす任務を負っています。

彼はまた、新疆ウイグル自治区と香港での中国の虐待に対してより厳しい姿勢を取ることを視野に入れて、中国に対するタカ派として知られる元国防相の中谷元を人権担当補佐官に任命しました。

2022年、日本と中国は戦後の関係正常化から50周年を迎えます。

これを祝おうというムードはほとんどありません。

2021年には、日本人の約71%が、中国が「脅威」をもたらしたと述べ、2020年の63%から増加しました。

同様に、中国人の66%は、53%から増加して日本に対して否定的な見方をしました。

日中関係は今後混乱する可能性があります。

欧米の日中両国を見る目は変化する

上記の記事を読むと、日本の中国を見る目が変わったのではなく、欧米が日中両国を見る目が大きく変わった事に気付きます。

基本的に、欧米は中国と仲の良い時は、日本を軽視し、中国と関係が悪化すると日本をちやほやする傾向にあります。

第二次世界大戦直後は国民党の中国を欧米は重視しましたが、冷戦時代に入ると共産党の支配下に入った中国を敵視し、日本を同盟国に引き上げました。

今回も中国が欧米の最大のライバルになるや否や、日本をファイブアイズといったアングロサクソンの諜報網に仲間入りさせようなどと言い出します。

大事なことは、日本は自分の国益をよく考えて行動することだと思います。

欧米は移り気です。

その内、中国とよりを戻し、日本を冷遇するかも知れません。

そういうシナリオも頭の隅に置いておく必要があるでしょう。

 

最後まで読んで頂き、有り難うございました。

外国人入国禁止に対する英国の厳しい意見

f:id:MIYOSHIN:20211231175617j:plain

自宅隔離の経験

海外出張から帰国し、今日漸く14日間の自主隔離期間が終了します。

生まれてこの方これほど長い期間外出しなかった事はなく、正直言ってかなりしんどい経験でした。

それでも筆者などは運が良い方で、同じ飛行機に同乗した乗客の中にオミクロン患者が見つかれば、自宅ではなく指定されたホテルで隔離生活を送るはめになっていました。

我が国はオミクロンの感染が始まってからというもの、外国人の入国禁止(滞在許可を有している人も含む)など世界で最も厳しい検疫対策を講じました。

これが功を奏したのか、現時点で感染者は非常に少ない状態を維持しています。

しかし日本の常識は海外の常識ではありません。

英誌Economistが「Why travel bans are usually the wrong way to curb Omicron - Most such restrictions are disruptive and ineffectual」渡航禁止令がオミクロンを抑制するための間違った方法である理由 - そのような制限のほとんどは混乱をもたらすだけで効果が無い)と題した記事を掲載しました。

現在20万人近い新規感染者を出す英国にそんな事言う権利はないと思われる方も多いかと思いますが、彼らの言い分を聞いてみましょう。

Economist記事要約

2019年12月31日、世界保健機関は、武漢で生じた肺炎の症例と思われるもののクラスターについて知らされました。

次の数週間と数ヶ月の間に、最初は都市、次に国、そして最後に地球全体が閉鎖されました。

人類は過去2年間でコロナウイルスについて多くのことを学びました。

マスク、ソーシャルディスタンス、そして何よりも、ワクチンはその広がりを抑えるのに効果的であることが証明されています。

しかし、1つの教訓は浸透していません。

それは長期にわたる渡航禁止令はほとんど無駄という事です。

 

11月、南アフリカが急速に普及している新しい変異種であるオミクロンの発見を発表した時、多くの国の最初の対応は、南アフリカからの旅行者に対する入国禁止または面倒なホテル隔離でした。

日本やイスラエルなどの一部は、すべての外国人に対して国境を閉鎖しました。

シンガポール、韓国、タイなど、再開の過程にあった他の国々もすぐに考えを変えました。

ヨーロッパの国境のないシェンゲン圏でも、移動制限が復活しました。

 

発生の初期段階では、変異株の感染が少なく、検査そして追尾システムが感染経路をたどることができるため、渡航禁止令は理にかなっています。

 渡航禁止令によって、新しい変異株について調べたり、病院を準備したり、予防接種を展開したりするための時間を買うことができます。

しかし、渡航禁止令は、変異株が国内で勝手に拡大し始めると、ほとんど意味がないにもかかわらず、政府はそれに固執する傾向があります。

フランスが12月16日に英国からの必須ではない旅行を禁止し、オミクロンを締め出すことを望んだ時には、フランスはすでに1日平均50,000を超えるオミクロンの感染を記録していました。

これは、渡航禁止令によって引き起こされた経済的および社会的混乱を正当化するには十分ではありません。

 

渡航禁止令が長続きしない理由の1つは、禁止しても漏れるからです。

国は国民、居住者、その家族、不可欠な労働者、外交官、重要なビジネスマン、またはそれらのいくつかの組み合わせを許可しています。

オーストラリアやニュージーランドが行った様な長期渡航禁止令を課す国は、彼らの世界的なつながりだけでなく、国民自身にも莫大な負担が生じる事を覚悟しなければなりません。

2021年のほとんどの間、オーストラリア人は自国に戻るのに苦労し、そのために飛行機や検疫ホテルに法外な金額を支払わなければなりませんでした。

オーストラリア人は過去2年間、州境を越えることを許可されていません

メルボルン市は2021年に262日間封鎖されました。

 

そのような政策は人命を救うことができ、島国での感染は少なくなります。

しかし、非常に長い間それを容認することをいとわない民主主義国家はありません

依然として厳格なゼロコロナ政策を追求している唯一の国は中国であり、中国は最近のウイルスの発生を封じ込めるために必死の対策を講じています。

12月に毎日の感染がゼロから100以上に増加した西安市では、当局が猛烈な封鎖を課し、人口を繰り返し大量検査し、約3万人をホテルの検疫に押し込みました。

そのような措置は中国で人気があり、人々は厳しい支配者を信用しています。

しかし、オミクロンの高い伝染性を考えると、中国のゼロコロナ政策が持続可能であるかどうか、また中国が最終的にどのようにそれを超えて病気と共生するかは明らかではありません。

世界の他の地域にとって、最善のアプローチは、政府が最も費用効果の高い政策、特にワクチンブースターを促進する一方で、幻想を作り出すためだけに物事を禁止したいという衝動に抵抗することです。

英国とアメリカは、最近評価すべき常識を示しています。

両国は、変異株が国内で感染していることが明らかになった後、アフリカ南部の国々の渡航禁止令を撤廃しました。

アメリカは、旅行前にPCRテストを取得しなければならない期間を短縮しました。

英国は、到着してから2日以内に検査を受け、否定的な結果が出るまで自己隔離するように旅行者に求めました。

そのような措置は、最小限の混乱を目指すべきです。

合理的な判断を

今回のコロナ騒ぎで感じたのは、感染対策というのは極めて政治的な判断を求められるという事でした。

感染を食い止めるという観点から言えば、入国禁止が最も効果があります。

しかし、経済を回すという観点から言えば、それは零点に近い回答です。

従って、感染防止をとるのか経済を取るのかという極めて難しい方程式を解く事が必要になり、これは感染学の専門家ではなく、政治家の仕事になります。

ここで問題になるのは、政治家は選挙のことを最優先に考える点です。

マクロン大統領が英国からの入国禁止を主張したのは、やはり大統領選挙が視野に入っているからではないかと思います。

我が国も来年参院選挙があります。

これが政治家のメガネを曇らせなければよいなと思います。

 

最後まで読んで頂き、有り難うございました。

良い年をお迎え下さい。

プーチン大統領が築き上げた筋肉質のロシア

f:id:MIYOSHIN:20211230173323j:plain

悪役のロシア大統領

プーチン大統領は欧米メディアにおいては、明らかに悪役です。

ただし、どこの国のメディアにも何らかのバイアスがかかっていますので、彼を客観的に評価する努力は必要だと思います。

プーチン氏が冷血漢である事は間違いなさそうですが、政治家としての彼の評価は歴史の判断を待つ必要があるでしょう。

米国の外交誌Foreign Affairsが「What Putin Learned From the Soviet Collapse - To Preserve Its Global Ambitions, Russia Is Managing Its Economic Limits」(プーチンがソ連崩壊から学んだ事 - 世界的な野心を実現するために、経済面での弱点を補強している)と題した論文を掲載しました。

著者は米国のシンクタンクに務める二人のロシア専門家(Richard ConnollyとMichael Kofman)です。

Foreign Affairs論文要約

ソ連が30年前の、1991年12月25日に崩壊する前、経済的機能不全は数十年続いていました。

ソ蓮の指導者ゴルバチョフは、1970年代と1980年代を停滞の時代であるザストイと呼び、改革の実施を唱えました。

しかし、彼は問題を認識していましたが、病んでいる社会主義システムを救うことはできませんでした。

 

表面的には、ロシアの経済は今日も同様に機能不全に陥っている様に見えます。

一人当たりの収入は過去10年間改善されていません。

世界のGDPに占めるロシアの割合は2008年以降減少しています。

また、経済の大部分は技術的に後れを取っているか、近代化が必要とされています。

一般的な経済状態は、再び「停滞」と表現することができます。

 

それでも、プーチン大統領と彼の政府は、彼らのソ連の先祖と同じ運命に苦しむ可能性は低いと思われます。

北京の共産党指導者がソ連の歴史を研究したように、現在のロシアの指導者も1970年代と1980年代にソ連の衰退を逆転させようとしたが失敗した試みから教訓を得ました。

ロシアの経済学者セルゲイ・グリエフが最近述べたように、「ロシアのマクロ経済政策は保守的であり、インフレは抑制されており、大きな準備金があり、バランスの取れた予算があり、対外債務はありません。そして市場経済としてロシアはソ連よりはるかに効率的で回復力があります。」

 

確かに、ロシアは、継続的な成長と資源輸出への依存を減らすという点では、まだ苦労しています。

しかし、モスクワは米国との持続的な競争のために自らを強化することに成功しました。

経済は大きな弱点ではなく、政権の安定を確保し、西側が課した制裁を乗り切る事が可能になっています。

 

1986年と1997年の石油市場の暴落は、ソビエト連邦とその後誕生したロシア連邦に大きなショックを与えました。

2000年にプーチン大統領が就任直後に創設した安定化基金は、これらの不安への直接的な対応でした。

今世紀初めの石油価格の大幅な下落、および2014年と2015年の景気後退にもかかわらず、モスクワは外貨準備の再構築に成功し、将来の米国の制裁に対する脆弱性が低くなっています。

 

プーチン政権下では、輸入への依存を減らすことも目指してきました。

1986年オイルショックが発生したとき、ソ連のパンの3斤のうち1斤は輸入穀物を使用して生産されました。

 

ロシアの指導部はまた、財政の弱さが国際舞台での外交の自由を制限するという教訓も得ました。

1980年代後半、ワルシャワ条約機構の混乱とドイツ統一の可能性に直面したとき、ゴルバチョフは限られた選択肢に直面しました。

ワルシャワ条約機構の主要国は西側から多大な支援を受けていましたが、ソ連はこれらの衛星共産主義政権の衰退する経済を支える能力がありませんでした。

西ドイツの財政支援を獲得することも、ソ連がドイツ統一を黙認する要因でした。

 

その後、ロシアは、1990年代を通じて外交の世界で無視されました。

ロシアの指導部が国の債務を返済し、外部資金への依存を減らすと、ロシアの国際社会における地位も回復し始めました。

 

現在のロシアは今日、ソ連時代とはまったく異なる経済システムで世界に対峙しています。

そこにはいくつかの重要な違いがあります。

 

食料生産を見てみましょう。

ソ連は、史上、最も非効率的な農業システムを所有していました。

1980年代までに、国の予算の大部分は食糧生産への補助金に充てられました。

ソ連は矛盾に満ちていました。

世界最大の食料輸入国であり、膨らんだ食料輸入法案の資金を調達するために莫大な石油の販売を必要としていました。

対照的に、今日のロシアは世界最大の小麦輸出国であり、食料の純輸出国にもなりつつあります。

ロシア経済はソ連と比較して、重要なセクターではるかに市場ベースであり、非効率的ではありません。

 

ロシアの指導部はまた、ソ連時代の多額の軍事費を縮小することに熱心です。

ソ連時代の防衛負担は年間GDPの15〜25パーセントと推測されますが、今日、ロシアの防衛負担はGDPの5%未満です。

このレベルの軍事費は、低成長の条件下でも持続可能です。

 

ソ連は莫大な軍事的負担に加えて、中国と社会主義世界での指導力と米国主導の資本主義世界との競争を行ないました。

ソ連は東欧の生活水準を支え、世界中に助成金を支給しました。

現在、ロシアにはそのようなコミットメントはありません。

現在の海外での関与は、はるかに低コストであり、よりビジネス主導型です。

ロシアは、世界一になるよりも、グローバルな地位確保に重点を置いており、近隣諸国や旧ソビエト圏内に焦点を当てています。

 

ソ連の崩壊は、国際市場への市場開放(石油、穀物)が、経済安全保障のリスクをどのようにもたらすかを鮮明に示しています。

今日のモスクワの政策立案者は、特に炭化水素がロシアの輸出の圧倒的に大きな割合を占めている事を認識しています。

この観点から、米国などの経済的制裁から影響を減らすためにシステムを強化しました。

 

1986年に石油価格が暴落したとき、ソビエトの指導部は巨額の財政赤字を実行し、(インフレを引き起こした)お金を印刷し、国際市場から巨額な資金借入を余儀なくされました。

一方、2020年に、ロシアは財政赤字を3.5%(ヨーロッパ諸国の半分)に抑え、ほぼ完全に自国の財源から資金を調達しました。

これらの国内財源はまた、ロシアが2014年に西側の制裁が課されて以来直面した多くの課題に適応するのに役立っています。

 

今日ロシアの指導者が直面している長期的な経済的課題(低成長率等)は深刻ですが、それらはロシアの将来を決定するものではありません。

ロシアの世界GDPに占める割合が小さいため、経済的に矮小に見えるかもしれませんが、実際の国力はかなり高く、資源を動員するロシアの国力は、実質的で歴史的に永続的です。

 

1980年代の繰り返しを期待している人々は、ザストイ(経済停滞)自体がソビエトシステムを崩壊させなかったことを思い出さなければなりません。

 

ロシアが現在直面している経済停滞は、冷戦後期のソビエト連邦のようにゼロサムの権力の低下をもたらす可能性は低いでしょう。

逆に、米国が中国との対立に注力せざるを得ないため、ロシアが国際社会への影響力を高める可能性に、注意を払う必要があります。

プーチン大統領の統治能力を侮るなかれ

ソ連が崩壊した直接のきっかけは、時の米国レーガン大統領がソ連向けに小麦の輸出を止めた事でした。

上記の論文にもある様に、当時のパンの3分の1が外国産の小麦で作られていた時代に、レーガンの小麦制裁は強烈なパンチになったと思います。

兵糧攻めにされたソ連の轍は踏むまいと、プーチンは様々な施策を講じて、西側の制裁に耐える経済システムの構築に成功した様です。

これを見てもプーチンは無能な指導者とは思えません。

彼が民主主義者でない事は明らかですが、約束は守る男である事も様々な事例から明らかです。

この点、シリアで化学兵器が民間人に使用された時には軍事介入すると発言した後、約束を守らなかったオバマ大統領とは違います。

天然ガスの専門家に話を聞きましたが、ロシアは旧ソ連時代からガスを欧州に供給していますが、ロシアが供給義務に違反した事は現在に至るまで、一回もないとの事でした。

一方、パイプラインの通り道にあたるウクライナでは頻繁にガスが盗まれ、不払いも日常茶飯事だそうです。

ロシアの肩を持つ訳ではありませんが、西側の情報操作により、プーチン大統領の実像はかなり歪められている様に思います。

冷徹な現実主義者、反民主主義者であるが、ソ連時代の弱点を補強し、筋肉質の国に変える事に成功した彼の統治能力を侮ってはならないと思います。

今後も国際政治において、主役の一人として君臨する事は間違いなさそうです。

 

最後まで読んで頂き、有り難うございました。

米国18州で既に合法化されている大麻

f:id:MIYOSHIN:20211229191529j:plain

合法化が進む米国

大麻は麻薬の一種で、日本ではその所持、使用を厳しく禁じられています。

しかし、米国では一部大麻の使用が認められている様です。

しかし今日のウォールストリートジャーナル(WSJ)の記事を読んで驚きました。

大麻の使用を公に認めている州が18州にも上っているようなのです。

「​​Cannabis Overhaul in Washington Is Only Getting Harder 」(難度高い連邦レベルでの大麻合法化)と題されたその驚くべき内容をご紹介したいと思います。

WSJ記事要約

アメリカの大麻関連株にとって今年は良い年ではありませんでした。

1月と2月に上昇したにもかかわらず、大規模なファンドの1つであるAdvisor Shares Pure Cannabis ETFは年初来で23%減少しています。

連邦法案は、ここ数か月で民主党と共和党の両方によって導入されましたが、誰も議会で可決されると思っていないため、株価の上昇には繋がりませんでした。

 

最新の集計によると、現在までに18の州で合法的な成人用大麻産業が存在します。

連邦政府が大麻を非合法化している間は、薬物を州の境を越えて輸送することはできないため、州内で製造されたものはすべて、地元で販売する必要があります。

毎月大きくなっている各州の大麻産業は、連邦レベルの合法化によって混乱するでしょう。

 

最大の懸念の1つは、大麻が全国で取引されるときに何が起こるかです。

カリフォルニアやオレゴンなどのより成熟したマリファナ市場は、州を超える取引を過剰な在庫を捌く良い機会と見なしています。

ニューヨークやニュージャージーなど最近大麻が認可された州にとって、安価な他州からの大麻の流入は、生まれたばかりの彼らの大麻産業にとって脅威となるでしょう。

 

州はまた、大麻が生み出す税の急落を避けたいと考えています。

イリノイ州歳入局によると、イリノイ州は2月以降、毎月大麻から酒よりも多くの税金を徴収しています。

マリファナ政策プロジェクトによると、2014年にコロラド州とワシントン州で合法的な販売が開始されて以来、大麻は州のために79億ドル(約9,000億円)の税金を調達しました。

販売税は地元にとどまると思われますが、大麻が全米で認可された場合、特定の州では生産勢を維持する事が難しくなるでしょう。

栽培は、大麻を屋外で安価に栽培できる、暖かく低コストの州に移行する可能性があります。

 

連邦政府はまた、税収の分け前に預かろうと考えています。

今年の夏に民主党のチャック・シューマーによって提出された法案は、当初10%で始まり、5年後に25%に引き上げる連邦勢を提案しています。

MPGコンサルティングによると、これは、実効税率がそれぞれ36%と47%に相当し、すでに闇市場と競争するのが難しいと感じているカリフォルニアやワシントンなどの州にとって連邦税の導入はやっかいです。

 

今年大麻を規制する連邦法の変更に時間がかかり、投資家を失望させましたが、来年の見通しもそれほど明るくありません。

大麻の合法化は世界的な傾向か

米国の18もの州で既に大麻の生産、販売が認可されている事に驚きました。

米国では禁酒法時代にアル カポネなどマフィアが密造酒の販売で大儲けしました。

今回の合法化の動きは、闇市場で販売されている大麻をあぶり出そうとしているので、米国特有の現象かと思ったのですが、調べてみると大麻の合法化は米国だけでなく、世界に広がっている事がわかりました。

特に医療用の大麻は韓国やタイなどアジアでも合法化されており、タイなどでは外国人が大麻による治療を求めてタイを訪れる医療ツーリズムも始まっているそうです。

大麻は​​がん、てんかん、糖尿病、緑内障、パーキンソン病、リウマチなどの患者に有効で、特に今後高齢者の需要が見込まれるそうです。

 

大麻がどれほど人体に悪影響を及ぼすか断定的な事は言えませんが、医療用はともかく嗜好用に大麻が使われ始めると、この薬に溺れる使用者が増えるのではと危惧します。

中国は以前英国にアヘンを持ち込まれ、清帝国が中から崩壊しましたが、米国も嗜好用の大麻を不用意に合法化すると中から崩壊する危険性があります。

アヘンで痛い目にあった中国は今の米国を見て、内心ほくそ笑んでいるかも知れません。

 

最後まで読んで頂き、有り難うございました。

プーチンの強硬姿勢の裏にあるもの - ウクライナ問題

f:id:MIYOSHIN:20211228193159j:plain

ロシアの真の狙い

台湾海峡が米中の対決の舞台とすれば、ロシアと西側の戦いの場は現在ウクライナです。

ロシアはウクライナ国境に10万人の兵を集結させ、ウクライナに脅威を与えているというのが西側メディアのもっぱらの報道ですが、実態はどうなっているのでしょうか。

米誌Foreign Affairsが「What Putin Really Wants in Ukraine - Russia Seeks to Stop NATO’s Expansion, Not to Annex More Territory」(ウクライナに関してプーチンが本当に望んでいること - 領土の併合ではなく、NATOの拡大の阻止が狙い)と題した記事を掲載しました。

かいつまんでご紹介したいと思います。

Economist記事要約

2021年が終わりに近づくと、ロシアは、ウクライナでの大規模な軍事紛争の可能性を食い止めるために必要な条件を米国に提示しました。

ロシア政府は、旧ソ連領土におけるNATOの東方拡大の正式な停止を求めました。

ウクライナへの西側の軍事援助の終了、およびヨーロッパにおける中距離ミサイルの禁止等メッセージは明らかでした。

これらの問題に外交的に対処できない場合、ロシアは軍事行動に訴えざるをえないと主張しています。

ロシアは10万人近くの軍をウクライナとの国境に派遣しました。

米国と他のNATO諸国はロシアの動きを非難しましたが、同時に、NATO加盟国ではないウクライナを軍事的に守る事はないと発表しました。

プーチンの引くレッドライン(超えてはならない一線)

西側とロシアがウクライナに帰する重要性には、大きな非対称性があります。

西側諸国は2008年にNATO加盟の見通しをウクライナまで拡大しましたが、正式な加盟予定はありませんでした。

結局のところ、ウクライナのために軍隊を配備することに対して、米国国民の支援はほとんどないでしょう。

対照的に、ロシアはウクライナを重要な国家安全保障上の利益として扱い、その利益が脅かされた場合に軍事力を使用する準備ができていると公言しています。

これは、ロシアのウクライナ侵攻が差し迫っていることを意味するものではありません。

プーチンを無謀な指導者として描写したがる西側メディアが多いですが、彼は実際、力の使用に関しては慎重です。

プーチンはクリミアやシリアでの作戦でわかる通り、リスク回避的ではありませんが、損得の計算はしっかりします。

彼は、単にその指導者が西側を向いているからという理由で、ウクライナを侵略することはありません。

 

とは言うものの、ロシアがウクライナに軍事侵攻するシナリオがいくつかあります。

2018年、プーチンは、ウクライナがドンバス地域の領土を力で取り戻そうとすると、軍事的対応を行うと公に宣言しました。

もう1つのロシアのレッドラインは、ウクライナのNATOへの加盟、またはその領土への西側の軍事基地と長距離兵器システムの配置です。

プーチンはこの点で決して妥協しません。

しかし、今のところ、ウクライナをNATOに加盟させることについて、米国や他のNATO加盟国からの支持はほとんどありません。

 

ロシアがウクライナに侵攻する様な事になれば、ヨーロッパを超えて大きな影響を与える可能性があります。

より厳しい西側の経済制裁および金融制裁が予想され、ロシアは中国に頼るかもしれません。

プーチン大統領と習近平主席は、米国の制裁から自国を守るための財政的メカニズムについてすでに話し合っています。

その場合、2022年2月の冬季オリンピック時のプーチンの中国訪問は、表敬訪問以上のものになる可能性があります。

そうすれば、米国は現在の中国とロシアの関係がより緊密な同盟に変わるのを見る事になるでしょう。

 

西側ではウクライナ国境近くのロシア軍の増強に焦点が当てられてきましたが、これはNATO諸国が黒海地域とウクライナでの軍事活動を拡大したときに起こりました。

6月、イギリスの駆逐艦がクリミア沖の領海を航行しましたが、英国はクリミアがロシアに属していると認識せず、ロシア軍の発砲を促しました。

緊張が高まるにつれ、西側の軍事顧問、インストラクター、武器、弾薬がウクライナに流れ込みました。

プーチン大統領が彼が気にかけているのはウクライナへのNATO拡大を防ぐことです。

プーチンの行動は、彼の真の目標がウクライナを征服してロシアに吸収することではなく、ヨーロッパ東部の冷戦後の体制を変えることであることを示唆しています。

彼がNATOをウクライナ、ジョージア、モルドバから遠ざけ、米国の中距離弾道ミサイルをヨーロッパから遠ざけることができれば、冷戦が終わった後にロシアの安全保障が受けた損害の一部を修復できると彼は考えています。

それはプーチンが2024年に再選されるために役立つ事になるでしょう。

最後の砦ウクライナ

ロシアはペレストロイカ以降、旧ソ連時代その衛星国だった中東欧の国々をNATO側に取り込まれ、元は同じ国であったバルト三国も同様にNATOに加盟してしまいました。

過去に西側の国々に散々蹂躙されたロシア人にとって、ウクライナとベラルーシは最後に残された砦であり、これらがNATOに取り込まれる事は絶対避けたい事態なのだと思います。

それにつけても、欧米の送り込む「軍事顧問」という名称の怪しげなプロ集団の存在が気になります。

彼らは多くの紛争地域に送り込てきましたが、戦争で食っている人たちですので、戦線拡大に走りがちです。

彼ら傭兵軍団が雇い主の思惑とは裏腹に、戦線を拡大してしまうリスクは誰がとるのでしょうか。

軍事顧問は過去にベトナムやイラクやアフガニスタンにも送り込まれました。

非常に心配です。

バイデン 政権としては、プーチン政権と会話を続けるべきでしょう。

ロシアが中国と組んだ場合、相当やっかいです。

プーチン大統領とは休戦協定を結び、主たるライバルである中国と向き合うのがとるべき手段かと思います。

ウクライナは米国にとって核心的利益ではありません。

 

最後まで読んで頂き、有り難うございました。

イカゲームが映し出す韓国の世相

f:id:MIYOSHIN:20211227134406j:plain

若者が絶望する社会

Netflixで最大のヒット作となった「イカゲーム」は私が先日滞在したトルコでも高い視聴率を記録しました。

このドラマはK-Popで注目を集めた韓国に対するトルコ人の関心を更に高めた様で、日本よりも韓国に関心を持つ若者が増えた模様です。

しかし、「イカゲーム」が描く韓国の世相にはかなり暗いものがあります。

特に若者の現実社会に対する失望はかなり根深い様です。

この点について米誌Foreing Policyが「South Korea Is No Country for Young People - “Squid Game” reflects a landscape of despair.」(韓国は若者の国ではない - 絶望的な世相を映す「イカゲーム」)と題した記事を掲載しました。

かいつまんでご紹介したいと思います。

Foreign Policy記事要約

超暴力的なNetflixサバイバルドラマ「イカゲーム」は、K-POPとK-Beautyのスターが輝く一方で、絶望する若者が溢れる韓国をセンセーショナルに映し出しています。

イカゲームでは、借金を抱える個人が大金を得るために命を賭けたゲームに参加します。

これは、韓国社会に対する断片的な見方です。

しかし、2007年以来、自殺が若者の最大の死因となっている国では、若者は絶望に喘いでいます。

 

過去20年間、先進国の中で最も高い自殺率を示しています。

2017年米国では10万人あたり14.5人が自殺しますが、2019年、韓国では24.6人です。

韓国国家統計局によると、2018年から2019年の間に、自分の命を奪った40歳未満の韓国人の数は10%増加しました。

 

この絶望の核心は、パンデミックによって悪化した経済的苦境です。

20代と30代の韓国人は、持つ人と持たざる人の間の格差を感じてきました。

彼らはこの国を「ヘル朝鮮」と呼び、死や移住によってのみ逃げることができる地獄の王国に例えています。

大学の学位は、仕事を保証していましたが、それも今はかないません。

新型コロナ感染が広がる中、若者の失業率は全国平均のほぼ3倍でした。

2020年11月には、新卒者のほぼ40%が仕事を探すことを断念しました。

 

韓国の人口のほぼ半分が住む首都圏での住宅価格高騰は、事態をさらに悪化させました。

ソウルのアパートの平均価格は、政府の誤った方針の下で、過去5年間で2倍になりました。

4年前、ソウルでアパートを購入するには、韓国の年間世帯収入の中央値の11年分が必要でした。現在、18年以上の収入が必要です。

家賃が急上昇する中、若者の貯蓄は限られており、避難場所もありません。

 

うつ病を経験している20代の人々の数は、過去5年間でほぼ2倍になっています。

しかし、それを弱さの兆候と見なす文化では、治療法を探すことは困難です。

実際、韓国人のほぼ30%が、人生のある時点でうつ病やアル中などの精神疾患に苦しんでいますが、治療を求めているのは15.3%にすぎません。

そこには、幼稚園から始まる苛酷な教育レースのように、絶え間ないプレッシャーと果てしない競争があります。

国立青年政策研究所によると、ソウルの中高生の3人に1人は、学業上の負担と将来やキャリアへの不安から自殺を考えているそうです。

 

1953年に朝鮮戦争が終結したとき、貧困は広がりました。

しかし、誰もが貧しかったので、不平等は感じられませんでした

最も重要なことは、将来への希望があったことです。

たとえば、1960年代と1970年代に西ドイツに行って炭鉱や病院で苦労した鉱山労働者や看護師は、母国の子供たちが良い生活を送れることを知っていました。

 

残念ながら、急速な経済成長は繁栄の共有にはつながりませんでした。

2017年、文在寅が一生懸命頑張れば家を入手できる公正な社会を作ることを約束した時、記録的な数の若い有権者が彼を大統領に押し上げました。

しかしそうはなりませんでした。

エリートの腐敗は続いています。

政府当局者は、家賃の値上げと土地の投機を通じて住宅危機の恩恵を受けました。

法務大臣は賄賂と詐欺で起訴されました。

告発の1つには、娘を不法に大学に入学させることが含まれていました。

 

韓国も若者のメンタルヘルスの改善に投資すべきです。

フィンランドから学ぶことができます。

北欧諸国は、世界初の全国的な自殺予防キャンペーンを使用して、1990年以来自殺者の数を半分に減らしました。

全国的なメンタルヘルスシステムとコミュニティレベルのサービスを確立し、より多くのメンタルヘルス専門家を訓練することは、明らかな前進となるでしょう。

現在、メンタルヘルスは国の総医療予算の3パーセントでしかありません。

 

2018年に新法により週労働時間の上限が68時間から52時間に短縮された際に、高齢者はそれを嘆きました。

彼らは「朝鮮戦争の灰から国をここまで育てたのは彼らの汗と涙だった今、飢餓を知らない若者たちは、経済を台無しにしている。今の若者は一生懸命働くかわりにうつ病を訴えている。」と主張します。

 

おそらく、これは若者が根性がないからではありません。

むしろ、時代は変わり、人々はそれに伴って変化したという事でしょう。

苦しんでいるのは韓国人だけではないでしょうが、豊かで文化的に成功している人々と多くの人々の絶望との間の格差は痛ましいほどです。

韓国にはまだ希望が

大金を掴むために命まで賭けるというのは普通では考えられませんが、そこまで現実に失望しているのでしょう。

ただ貧しいだけでなく、将来に希望が持てない若者が絶望の淵に立たされている事が窺えました。

過酷な受験競争を潜り抜けて大学を卒業しても、まともな職にありつけず、運良く就職できても、アパート1戸さえ手に入れる事ができないとなれば、希望を失うのも無理はありません。

でも韓国には大きなチャンスがあります。

それは朝鮮半島統一です。

あの北朝鮮と一緒になるってありえないと思われるかも知れませんが、ドイツやベトナムも統一前は皆そう思っていました。

挑戦半島に基地を維持したい米国が反対するので、簡単ではありませんが、その内実現すると思います。

統一されれば、朝鮮半島は好景気に沸くでしょう。

現在、韓国が抱える少子高齢化問題は若者の多い北朝鮮が解決してくれますし、物のない北朝鮮で韓国製品は飛ぶ様に売れるでしょう。

筆者は韓国の将来は実は明るいと見ています。

 

最後まで読んで頂き、有り難うございました。