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欧州で再燃するコロナ感染から学ぶ事

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コロナ感染拡大の理由は何か

新型コロナ感染は未だに収まりません。

欧州では冬の到来とともに感染が再拡大し、ドイツを筆頭に多くの感染者と死者を出しています。

ワクチンの接種率も高く、医療システムも完備している欧州で感染拡大が進む理由は何か、効果的な対策はあるのかという問いに対して英誌Economistが「How Europe should deal with covid-19」(ヨーロッパは新型コロナに如何に対処すべきか)と題する記事で答えを出そうとしています。

かいつまんでご紹介したいと思います。

Economist記事要約

今後数年間で、新型コロナはおそらく季節性疾患として定着し、高齢者や健康状態の悪い人々にとっては致命的な脅威となりえますが、他のすべての人にとっては大した問題とはならないでしょう。

しかし、ヨーロッパが現在経験している様に、そこに到達するまでが大変です。

EUは、過去最高の、1日に約25万件の症例を記録しています。

予防接種が開始されてから11か月後、一部の地域の集中治療病棟はほぼ満員になりました。

世界保健機関は今週、3月までにさらに70万人のヨーロッパ人が死亡する可能性があると警告しました。

 

警戒感が高まる中、政府は再びロックダウンしています。

オーストリアは、ワクチンを摂取しなければ罰金を科すと国民に要求した最初の先進国になりました。

ドイツが続くかもしれません。

デモ隊は、オランダ、ベルギー、イタリアなど、新しい規制に抗議するために街頭に出ており、混乱が生じています。

 

第4の波に対処することは、それを引き起こしている原因を理解することから始まります。

冬の天候が人々を屋内に閉じ込め、ウイルスが容易に広がるため、新型コロナはヨーロッパで急増しています。

EUでは、12歳以上の人口の60%強が完全にワクチン接種されています。

しかし 英国の多くの人の様に、感染を生き延びたことから免疫を獲得していない限り、およそ1億5000万人の人々は無防備なままです。

これは免疫学的に弱いと見られる中国のような場所への警告です。

一方で、2回目の投与から約10週間後に免疫力が低下し始めます。

ブースターショットは不可欠ですが、EUはその準備に時間がかかりました。

ドイツでは、感染は12日ごとに倍増しています。

その理由の1つは、英国では23%であるのに対し、3回目の投与を受けたのはわずか8%からです。

 

パンデミックではよくあることですが、政府は感染の指数関数的成長に巻き込まれています。

彼らは遅れて行動するので、極端な手段に頼らなければなりません。

抗議者たちは、彼らの自由が踏みにじられていると言います。

予防接種を拒否する人々の多くは、国には彼らを強制する権利がないと主張しています。

その議論には欠陥があります。

理由の1つは、ワクチンを接種していないと、他の人に感染させる可能性が高くなることです。

ワクチンを受けていない人は医療システムを崩壊させ、コロナとは関係のない人を含む多くの死者を出します。

政府が病気の蔓延を遅らせるためにロックダウンに訴えなければならない場合、反ワクチン接種者はワクチン接種者の自由を奪っています。

 

政府の介入の目的は、コロナを根絶することではなく、新規感染者数を管理し、その広がりを遅らせることです。

そうする事で、医療システムを保護し、ワクチンを投与し、モルヌピラビルなどの強力な新薬を調達するための時間を稼ぐことで、命を救います。

 

簡単な方法は、手洗いとマスク着用を促進することです。

どちらも病気の蔓延を減らしますが、誰の自由にも大きな影響を与えません。

次にブースター接種が、感染を遮断し、個人と社会全体を保護します。

国はまた、公共の場所へのアクセスのために予防接種や陰性検査を要求するなど、既存の措置を実施することができます。

 

ドイツやオーストリアのように、病気が蔓延しているにもかかわらず、これらの対策のほとんどが実施されている場所での急増を抑えるには、それだけでは不十分かもしれません。

さらに、予防接種が国による陰謀であるとあなたが信じるならば、ワクチン強制はあなたの疑いを確認するだけであり、お金と人々を反ワクチンキャンペーンに引き付けます。

こういった動きは、今後何年にもわたってワクチンへの信頼を損なう可能性があります。

一部のヨーロッパ諸国のように、政府の政策が失敗した場合、唯一の緊急ブレーキは、より多くのロックダウンとなるしかありません。

我が国はどうすべきか

医療水準が高いドイツやオーストリアでこれだけの感染拡大が進むとなると、我が国も例外だとは言い切れません。

今、私はトルコのイスタンブールに居ますが、感染拡大が始まった昨年初めには全くと行っていいほどマスクの着用が見られなかったこの国でも、今や公共の場所ではほとんど皆マスクを着用しています。

町中至る所に手指の消毒液が置いてあり、その数は日本以上かもしれません。

マスク、手洗いこの二つを我が国も励行する事が必要でしょう。

そしてワクチンのブースター接種、幸いにも日本には反ワクチン論者が欧州ほど多くないですが、ワクチンを打たない人は結果的にワクチンを打った人の自由を奪っている事を認識して欲しいものです。

最後に水際対策も重要です。

島国という利点を日本は最大限に使って、変異株の流入を可能な限り食い止める事が必要でしょう。

 

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来年注目すべき新テクノロジー

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新しいワクチンが世界を救った

世の中の進歩は主に科学技術の発展によって実現されています。

昨年から世界中で猛威を振るった新型コロナに対するメッセンジャーRNA(MRNA)技術に基づくワクチンがなかったらどうなっていたでしょうか。

MRNAワクチンの様な革新的な技術は今後も続々と生まれる様です。

英誌Economistが​​「What next? 22 emerging technologies to watch in 2022」(来年注目される22の技術)と題する記事を掲載しました。長い記事なので、その中から幾つか注目すべき技術をご紹介したいと思います。

Economist記事抜粋

ソーラージオエンジニアリング

幼稚なほどシンプルに聞こえます。

世界が熱くなりすぎているなら、日陰を作ってみませんかというものです。

火山によって上層大気に放出された塵と灰は、冷却効果があることで知られています。

1991年のピナツボ山の噴火は、4年間で地球を0.5°Cも冷却しました。

ソーラージオエンジニアリングは、太陽放射管理とも呼ばれ、意図的に同じことを行います。

これは物議を醸しています。

それはうまくいくでしょうか?

022年に、ハーバード大学のグループが、2kgの物質(おそらく炭酸カルシウム)を成層圏に放出して、人工的な日陰を作る事を計画しています。

直接空気回収

大気中の二酸化炭素は地球温暖化を引き起こします。

では、機械を使って吸い出してみませんか?

いくつかの新興企業は、まさにそれを行う技術である直接空気回収(DAC)を追求しています。

2022年、カナダの企業であるCarbon Engineeringは、テキサス州で年間100万トンのCO2を回収できる世界最大のDAC施設の建設を開始します。

DACは、気候変動との戦いに不可欠となる可能性があります。

コストを削減し、テクノロジーをスケールアップする競争が続いています。

帆が付いたコンテナ船

船は温室効果ガス排出量の3%を生み出します。

これは帆船の時代には問題ではありませんでした。

帆はコストと排出量を削減するためにハイテク形式で復活するでしょう。

2022年、フランスのミシュランは、燃料消費量を20%削減することが期待される膨張式帆を貨物船に装備します。

日本の海運会社であるMOLは、2022年8月に伸縮式の剛性帆を船に搭載する予定です。

VRトレーニング

ほとんどの人は十分な運動をしていません。

多くの人が必要と思っていますが、やる気が出ません。

バーチャルリアリティ(VR)ヘッドセットを使用すると、接近する障害物を交わしたりパンチしたりしてカロリーを消費できます。

ロックダウンがジムを閉鎖し、低コストのヘッドセットであるOculus Quest 2がリリースされたため、パンデミックの最中、VRワークアウトの人気が高まりました。

仮想現実(VR)のキラーアプリはフィットネスかもしれません

HIVとマラリアのワクチン

メッセンジャーRNA(MRNA)に基づくコロナウイルスワクチンの目覚ましい成功は、ワクチン開発の黄金時代を告げるものです。

モデルナは、同じMRNAテクノロジーに基づいたHIVワクチンを開発しており、2021年に初期段階の臨床試験に入ります。

独BioNTechは、マラリアのMRNAワクチンに取り組んでおり、臨床試験は2022年に開始される予定です。

3Dプリントされた骨インプラント

何年もの間、研究者は生物学的材料の3Dプリントを使用して人工臓器を作成する技術を開発してきました。

究極の目標は、患者から数個の細胞を採取し、移植のために完全に機能する臓器を作成することです。

これにより、臓器移植を待つ長いウエィティングリストや拒絶のリスクを排除します。

その目標達成は、肉質の臓器より骨の方が易しい様です。

新興企業のAdamは、3Dプリントされた人工骨が自然な骨の成長を刺激し、徐々に生分解し、最終的には患者の骨組織に置き換わると言います。

すべてがうまくいけば、研究者たちは血管と心臓弁の3Dプリント化が有望だと言います。

静かな超音速航空機

科学者たちは半世紀の間、超音速機の形状を変えることでソニックブームの強度を弱めることができないか検討してきました。

ごく最近になって、これらのノイズリダクションに必要なシミュレーションを実行するのに十分なほど強力なコンピュータが登場しました。

世界初で唯一の商用超音速旅客機であるコンコルドは、陸上を飛行するときに音より速く移動することを許可されませんでした。

最新型の超音速機のソニックブームは、コンコルドの8分の1の大きさになると予想されます。人間に知覚される75デシベルは、遠くの雷雨に相当します。

ウェアラブルヘルストラッカー

FitbitやAppleWatchなどは現在、主にフィットネストラッカーとして使用されており、歩数、ランニングと水泳の速度、トレーニング中の心拍数などを測定しています。

しかし、そのようなデバイスは今後医療目的に使われる様になるでしょう。

スマートウォッチは、すでに血中酸素飽和度を測定し、心電図を測定し、心房細動を検出することができます。

2022年に予定されているAppleWatchの次のバージョンには、血圧と体温に加えて、血中のブドウ糖とアルコールのレベルを測定できる新しいセンサーが含まれる可能性があります。

このような機能の規制当局の承認にはしばらく時間がかかるかもしれませんが、すぐに医師もウェアラブルからのデータに注意を払うようになるでしょう。

バーチャルインフルエンサー

人間のインフルエンサーとは異なり、バーチャルインフルエンサーは写真撮影に遅れたり、パーティーで酔ったり、年をとったりすることはありません。

これは、バーチャルインフルエンサーが、Instagramなどに登場するコンピューター生成のキャラクターであるためです。

最もよく知られているのは、Miquela Sousa、または「Lil Miquela」です。

これは、300万人のInstagramフォロワーを持つ架空のブラジル系アメリカ人19歳です。

2022年には150億ドルがインフルエンサーのマーケティングに費やされると予想されており、仮想インフルエンサーが急増しています。

人工肉と魚

ウィンストン・チャーチルはかつて「胸や翼を食べるために鶏全体を育てるのはばかげている」と考えていました。

ほぼ1世紀後、約70社がバイオリアクターで肉を「栽培」しています。

動物から採取した細胞は、動物に害を与えることなく、タンパク質、糖、脂肪、ビタミン、ミネラルが豊富なスープで栄養を与えられます。

2020年、サンフランシスコを拠点とする人工肉の新興企業であるEat Justは、シンガポールで製品の販売を認定された最初の企業になりました。

環境に配慮する肉愛好家は、間もなく人工肉ステーキを食べられるようになるでしょう。

科学の進歩を実現するもの

科学の進歩は目覚ましいものがありますが、これらの新しいテクノロジーの殆どがコンピューター技術の進歩によって生み出されている事に気付かされます。

今後もコンピューターの演算速度が高速化されるにつれて、あっと驚く様な技術が生まれる事でしょう。

Economistの記事には上記以外に、下記の様な技術も記載されており、ご関心のある方は本文をお読みください。

 

ヒートポンプ

水素飛行機

空飛ぶ電動タクシー

宇宙旅行

配達ドローン

3Dプリントされた家

メタバース

量子コンピューティング

ブレインインターフェース

 

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「帝国の墓場」アフガニスタンで中国が直面する難問

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米国が抜けた空白を誰が埋めるのか

20年もの間続いた米国のアフガニスタン駐留は漸く終わりを告げました。

米軍撤退後生じる空白は誰が埋めるのでしょうか。

中国は細い回廊を通じてアフガニスタンと国境を接しており、しかもアフガニスタンが電池の材料であるリチウムなど地下資源を豊富に有していることから、早速アプローチを開始している様です。

しかし、アフガニスタンは「帝国の墓場」と称されるほど、過去に英露米など大国がてこずった土地です。

そう簡単であるはずがありません。

米誌Foreign Policyが「How China Became Jihadis’ New Target - International terrorist organizations long considered Beijing a secondary focus. That’s changed.」(イスラム過激派の新しい標的となった中国 - 国際テロ組織から二次的な標的と見られていた中国に変化が)と題した論文を掲載しました。

かいつまんでご紹介したいと思います。

Foreign Policy論文要約

10月初旬、テロ組織イスラム国がアフガニスタンのクンドゥズのモスクで50人近くを自爆テロによって殺害しましたが、イスラム国はこのテロを中国に関連づけることを決定しました。

グループは自爆テロリストはウイグル人であり、新疆ウイグル自治区でのウイグル人に対する中国の弾圧にもかかわらず、中国の緊密な協力に感謝したタリバンを罰することを目的としたと発表しました。

 

中国は長い間、国際テロ組織によって二次的な標的と見なされていました。

アルカイダやイスラム国のようなグループは、米国、より一般的には西側を標的にすることに集中していたため、中国に対して武器を向けることはありませんでした。

しかし、クンドゥズで、この物語は終わりを告げました。

中国は今や自分たちが明確な標的となった事を自覚せざるを得ません。

 

イスラム過激派と中国の歴史は複雑です。

長い間、「発展途上国の大国」としての地位を占めていた中国は、元植民地大国の影に隠れることができました。

中国はアルカイダの敵である米国と対立していたので、「敵の敵は味方である」という理屈があてはまりました。

現在、特にアフガニスタンでの関与が拡大するにつれて、中国が標的にされていることは否定できません。

中国は長い間アフガニスタンへの正式な関与を回避してきました。

しかし、現在タリバンとの協力関係においては地域の主要国の中で最も進んでいます。

タリバン政府は、中国政府と協力したいという願望を公に表明しました。

タリバンの指導者たちは、中国の投資と経済的パートナーシップを引き付けることに特に熱心です。

10月下旬、中国の王毅外相はカタールのドーハでタリバンの指導者と会談しました。

王外相は支援と引き換えに、ウイグル系過激派とのつながりを断ち切るようタリバンに要求しました。

 

イスラム国は、タリバンが中国に頭を下げていることを利用できる弱点として明確にとらえ、クンドゥズの自爆テロリストがタリバンが中国政府の要求を受けて国外追放の対象となったウイグル人であると公表しました。

メッセージは多くの層に向けられています。

第一に、それはタリバンへのシグナルであり、彼らが国のマイノリティを保護することができないことを強調しています。

第二に、それは中国へのメッセージであり、新疆ウイグル自治区でのウイグル人に対する弾圧を非難しています。

第三に、それはタリバンに見捨てられたり脅かされたりしていると感じているウイグル人へのメッセージです。

最後に、それは世界へのメッセージであり、イスラム国が戦場でイスラムの伝統を維持し、抑圧されたイスラム教徒のために戦っている有能な組織であることを示しています。

これらのメッセージは、世界中の潜在的な支持者の共感を呼ぶでしょう。

 

中国は、これが危険な展開であることを認識している可能性があります。

パキスタンでは、ますます多くの過激派グループが中国を標的としており、ダスとカラチでの攻撃は地元のバルチとシンドの分離主義者から来ています。

キルギスタンのビシュケクにある中国大使館は、2018年にカラチにある領事館と同様に、2016年に襲撃され、4人(および3人の攻撃者)が死亡しました。

しかしこれまで、攻撃のほとんどは地元の分離主義運動によって行われていました。

イスラム国が加わったことで、ついに中国はジハードの標的としてしっかりと組み込まれました。

 

中国にとっての問題は、そのような脅威に対処する準備が整っていないことです。

その軍隊は大規模で装備が整っているかもしれませんが、過激派組織に対抗する経験はほとんどなく、その対応を友好国に依存してきました。

しかし、中国に最も近い友好国であるパキスタンで反中の動きがますます高まっているため、困難に直面しています。

ある意味で、中国は立ち往生しています。

中国はアフガニスタンで最も強力で影響力のある隣国であり、ますます国際舞台でタリバンの偉大な支持者として見られています。

この役割を引き受けた為、中国は、米国がアフガニスタンに残した空白を埋めていると見なされるリスクを冒しています。

これは、中国が避けたいと望んでいたことです。

しかし、現実には、足を踏み入れてしまっています。

クンドゥズでのイスラム国のテロは、中国がすでにこの道をどれだけ進んだかを示したにすぎません。

新疆ウイグル 問題は喉に刺さった骨

中国は一帯一路政策を進める中で、経済援助や投資を餌に友好国の拡大を図ってきました。

アジアや中近東、アフリカといった国々で中国のアプローチにかなりの国が魅力を感じ、西側から中国に鞍替えした国も増えてきています。

しかしこの地域はイスラム教徒が多数を占める国がほとんどであり、彼らは一様に中国のウイグル族に対する弾圧に強い反発を感じています。

アフガニスタンでも政権についたタリバンは中国の経済援助が喉から手が出るほと欲しいのでしょうが、国民の中国に対する反発に悩まされる筈です。

 

本音を言えば、中国は米国がアフガニスタンの泥沼に出来るだけ長くはまっていて欲しかったのではないかと思います。

そうすれば、アフガニスタンで活動するウイグル系過激派も米国が対応してくれた筈です。

しかし今や中国は隣国としてこの「帝国の墓場」に対峙せざるを得ません。

そこにはウイグル系過激派の存在が難問として横たわります。

中国は新疆ウイグル自治区の問題を透明性のある形で解決しなければ、今後アフガニスタンのみならず、一帯一路といった国際的活動をする上で、大きな足かせとなる可能性が高いでしょう。

 

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アフリカの資源に群がる中国に対抗するには

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中国の動きがわかるメディア

中国の海外向け報道機関である「環球時報」には、時々おやと思う様な記事が掲載されているので、目を離すことができません。

今回同紙に「Five Chinese kidnapped in armed attack on Congo mine: Embassy」(コンゴ鉱山への武力攻撃で5人の中国人誘拐される)と題した記事が記載されました。

かいつまんでご紹介したいと思います。

環球時報要約

中国大使館は同日、コンゴ民主共和国(DRC)の鉱への武力攻撃で5人の中国人が誘拐されたと発表しました。

大使館によると、イトゥリ州、北キブ州、南キブ州の治安情勢は非常に厳しく、中国人を巻き込んだ武力攻撃が何度も発生している様です。

大使館は警告を発し、中国国民に上記の州に行かないよう警告し、すでに州にいる中国国民に直ちに避難するように勧告しました。

南キブ州のムケラ村の近くで誰が攻撃を行ったのかは明らかではありませんが、武装集団が警察と銃火を交わしました。

ロイター通信によると、この地域の陸軍スポークスマンであるデュドネ・カセレカ少佐は、5人の中国人が誘拐されたと発表しました。

 

コンゴ民主共和国は、電気自動車用バッテリーの主要成分である採掘コバルトの世界最大の生産者であり、アフリカ最大の銅生産者の1つです。

コンゴ民主共和国の中国大使館は、事件の詳細をまだ発表していません。

たくましい中国に対抗するには

コンゴ共和国の治安状況は良くわかりませんが、この記事を読むと中国の国家戦略に沿って多くの中国人がアフリカの奥地にまで入り込み、資源確保に躍起になっている様子がわかります。

上記記事に記載のコバルトと銅は電気自動車において極めて重要な資源と言われており、電気自動車で世界の覇権を狙う中国にとっては、何がなんでも欲しい資源なのでしょう。

彼らのたくましさには頭が下がります。

 

一方、中国人が多く誘拐されているとの報道から、中国が必ずしもアフリカの人々から良く思われていない状況も見て取れます。

中国企業の進出の仕方は、大量の中国人を現地に派遣し、現地にあまりお金を落とさないと言われていますし、お金を高利で貸付けて、返済できないと担保として港などインフラ設備の所有権を奪うと言ういわゆる「債務の罠」は多くの発展途上国において、中国に対する反感を高めています。

我が国も、中国のアフリカ進出を指を加えて見ているのではなく、アクションを起こすべきだと思います。

日本は中国と違い、相手国とウィンウィンの関係を作る様心がけるべきでしょう。

しかし、単独ではなかなか中国勢の積極攻勢に勝てませんので、アフリカで共に組むべきはトルコだと思います。

トルコ航空はアフリカのほとんどの国に既に就航しており、多くのトルコ企業がアフリカで橋頭堡を築き始めています。

親日のトルコと組むぐらいしか、日本企業がアフリカで中国に勝つ方法は無いのではないでしょうか。

 

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ドイツ新政権アメリカの核配備に反対か

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連立政権近々誕生

ドイツの連立政権樹立に向けての交渉は、早ければ12月初めに社会民主党、自由民主党、緑の党が合意に達すると見られています。

ドイツはNATOのメンバーであり、アメリカの核弾頭が国内に配備されていますが、ドイツの新政権はひょっとするとドイツ国内への核配備に反対するかもしれないと同盟国を不安にさせている様です。

この問題に関して、英誌Economistが「Allies fear Germany’s incoming government will go soft on nukes - What will happen to the nuclear bombs deployed there?」(同盟国は、ドイツの次期政府が核体制を弱体化させることを恐れている - ドイツに配備された核爆弾はどうなるのか?)と題した記事を掲載しました。

かいつまんでご紹介したいと思います。

Economist記事要約

 9月の選挙で過半数を獲得した後、社会民主党(SPD)、自由民主党、緑の党は、12月初旬に「信号連立」(党の色にちなんで名付けられた)と呼ばれる連立政権に関する交渉をまとめることを目指しています。

話し合いはおおむね問題なく進んでいる様ですが、ドイツの同盟国らは、1つの問題に注目しています。

 

「P3」(アメリカ、イギリス、フランス、国連安全保障理事会の常任理事国入りをしている3つの核武装NATO同盟国)には、2つの懸念があります。

第一に、ドイツは、NATOの「Nuclear Sharing」協定への関与を弱める可能性があります。

この協定では、アメリカはドイツのビューヒェル空軍基地に最大20発の原子爆弾を配備し、ドイツはそれを運ぶ航空部隊を維持しています。

第二に、次期独政府は、国際的な条約である核兵器禁止条約(TPNW)加盟に関心を持つかもしれないという事です。

 

Nuclear Sharing協定は同様にイタリア、ベルギー、オランダ、トルコなど、自国の核兵器を持たない国々に、NATOの核計画における重要な役割を与えています。

しかし、ドイツ人は国内にアメリカの核兵器が存在することに長い間不安を感じてきました。

1980年代初頭、パーシングIIミサイルの配備に反対して100万人以上がデモに参加しました。

歴代の政府は、同盟国からの圧力に対抗して、核兵器の撤去を求めてきました。

 

核兵器禁止条約は新たな懸念材料です。

非核国と圧力団体によって推進され、1月から施行されているこの条約は、批准国(これまでのところ56か国)に核兵器の開発、生産、所有権を放棄することを義務付けています。(現在のところ、NATO加盟国はこの条約に参加していません)

 

米英仏は、ドイツ政府と次期連立政権に働きかけました。

先月のバイデン、マクロン両大統領の同盟国に対する「核と軍備管理の問題に関する緊密な協議を継続する」という共同の呼びかけは、ドイツを標的にしている様に見えました。

次期首相と目されるオラフ・ショルツも圧力をかけられましたが、ほとんど影響を受けている様には思えません。

「私たちは彼が何を考えているのか分かりません」とある同盟国外交官は言います。

彼の党の左派は、核の共有に強く反対しています。

 

信号連立政権が一方的にNuclear Sharing協定を離脱したり、核兵器禁止条約に完全に参加すると予測する人はほとんどいません。

おそらくはNuclear Sharing協定にとどまる可能性が高いです。

核兵器禁止条約は同盟国のより大きな懸念です。

同盟国の懇願にもかかわらず、ショルツ氏の政府は、署名者としてではありませんが、3月にウィーンで開催される条約の最初の会議に出席すると発表する予定です。 (ノルウェー、一部のNATO加盟国も同様な形で参加する予定です。)

この行為は、NATOの結束を損なうことになります。

それでも、それはアメリカの核保護と核兵器に対する不安の間で揺れる国から期待できる最高の選択肢かもしれません。

ロシアの脅威は本当にあるのか

アメリカの核はドイツ以外にもイタリア、ベルギー、オランダ、トルコに配備されているんですね。

これは知りませんでした。

トランプ時代からドイツはアメリカの核にただ乗りしていると批判されてきました。

バイデン 政権になってからこの批判は和らぎましたが、ドイツの軍事費は経済大国の割に少ないとの批判は根強いものがあります。

しかしドイツ人の視線で言えば、アメリカの核は誰からドイツを守ってくれているのかという疑問があるのだと思います。

それはロシアだと言われるかもしれませんが、冷戦時代ならまだしも、現在のロシアにとってドイツは最大の貿易相手国ですし、ロシアがドイツを攻撃する理由は見当たりません。

クリミア併合などロシアは領地を拡大しているとの批判もありますが、クリミアは元々ロシアのものでしたので単に取り返しただけです。

ドイツ人の目からすれば、米英仏が主張するほどロシアの軍事的脅威を感じていないと言うのが現実だと思います。

ありていに言えば、核爆弾の様な物騒なものはロシアの脅威を直に感じている東欧のどこかに持っていってくれというのが本音でしょう。

従ってこれからもドイツは米国からの軍事費拡大に関する要求に抵抗し続けると思います。

彼らは軽武装、経済重視のこれまでのやり方で問題ないと判断しているはずです。

英米仏の武器売りつけをそう簡単には呑まないでしょう。

翻って、我が国もドイツのやり方を踏襲できるかと言えば、これはそう簡単ではなさそうです。

筆者は中国が我が国に対して事を構える可能性は極めて小さいと思いますが、東アジアには北朝鮮があります。

何をするかわからないこの国の存在はドイツと日本の間にある大きな違いだと思います。

 

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メタバースとは何 - Facebookが社名を変えた理由

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社名を変えたフェイスブック

フェイスブックのザッカーバーグ氏が社名を聴き慣れたFacebookからMetaに変更すると発表した時、Metaとは何だと思った人が多かったと思います。

私もその一人です。Metaをウィキペディアで調べると「​​メタヴァース は、SF作家・ニール・スティーヴンスンによる1992年の著作『スノウ・クラッシュ』の作中で登場するインターネット上の仮想世界のこと。転じて、将来におけるインターネット環境が到達するであろうコンセプトモデルや、仮想空間サービスの通称としても用いられる」と書かれています。

これだけだと何のことかわかりませんが、要すればインターネット上に自分の変身とも言えるアバターを登場させ、そのアバターに普通では体験できない様な事を体験させ、本人はその擬似体験を楽しむという事なのかと思いましたが、どうもそれだけではなさそうです。

英誌Economistが「Don’t mock the metaverse」(Metaverseを馬鹿にしてはいけない)と題した記事を掲載しました。

かいつまんでご紹介したいと思います。

Economist記事要約

「メタバース」は、ユーザーが内部で金儲けをし、遊び、買い物をする今日の2次元インターネットの3D続編です。

10月28日、ザッカーバーグ氏がFacebookのブランドをメタプラットフォームに変更したとき、多くの人がソーシャルメディアの巨人が自社のスキャンダルから注意をそらそうとしているのかと思いました。

ザッカーバーグ氏は、会社が抱える問題に対処するよりも、エキサイティングな新製品について考える方を好むタイプかもしれません。

そして誇大広告は巨大IT企業の常套手段です。

しかし、この新分野の分析をやめるのは賢明ではありません。

メタバースを真剣に受け止めるのには十分な理由があります。

 

1つは歴史的考察です。

コンピューターの機能が向上するにつれて、コンピューターが提供する内容はより豊かになります。

インターネットは、最初は黒い背景に白いテキストを映し出すことから始まりましたが、画像が1990年代に追加されました。

2010年代にはビデオが主流になりました。

そこから、3次元への移行は、コンピューティング能力の着実な成長の論理的帰結です。

 

その進歩は単なる理論以上のものです。

Googleマップは、現実世界の駅、ショップ、通りを含む仮想空間をすでに提供しています。

ビデオゲーム業界は、既に何年もの間、仮想世界を販売してきました。

1999年に発売されたオンラインゲーム「EverQuest」は、ピーク時に50万人の加入者を抱えていました。

5年後に発売された「Worldof Warcraft」は、1,200万人に達しました。

最近では、月に2億人が、ビデオゲームの「Roblox」に没頭しています。

多くの人が実際のお金を仮想商品に費やしています。

何百万人もの人々にアイデアが既に普及している場合、そのアイデアが決して普及しないとは言えません。

 

最後に言えるのは、馬鹿にされたからと言って将来モノにならないわけではない事です。

2005年にYouTubeが登場したとき、コメンテーターは、ケーブルテレビが手軽に観れる時代に、寝室で自分たちを撮影している10代の若者を見たいと思う訳がないと酷評しました。

20年の間に、オンラインデートは、人に会うための目立たない方法として、普及していきました。

スマートフォンは、これまでに製造された製品の中でも最高のベストセラー商品ですが、レンガほど重くて大きい初代の携帯電話は、1990年代に、投資銀行家のステータスシンボルとして嘲笑されました。

 

これは、すべてのシリコンバレーの思いつきが自動的に成功するという意味ではありません。

また、モバイルインターネットなどがそうだった様に、メタバースが一夜にして成功する訳でもありません。

しかし、比較的近い将来に何かメタバースの様なものが出現するという考えは、真剣に検討する価値があることを示唆しています。

ザッカーバーグ氏の目指すところ

確かにここのところの技術の進歩は目覚しく、今後VRなどの3次元の技術は、本物と変わらない擬似体験をさせてくれるかもしれません。

個人的には高さが20メートル以上もある大波に乗ってみたいですね。

本物であれば命を危険にさらしますが、擬似体験であれば問題ありません。

体を包み込む轟音、パイプラインの中をすり抜ける爽快感をコンピュータが味合わせてくれるのもそう先の事ではないでしょう。

ところでザッカーバーグ氏などITの巨人たちの狙いは何なのでしょうか。

任天堂の「あつまれ、どうぶつの森」というビデオゲームもアバターを使って擬似体験をしているという意味ではメタバースと呼べる様ですが、こんなのはかわいいもんです。

Facebook社が今年発表した独自のメタバース「Horizon Workrooms」はずっと先を行っています。

このプラットフォームでは、NFT(非代替性トークン)が使われており、メタバース内の土地やアバターを自由に売買する事が可能だそうです。

​​NFTとは、ブロックチェーン技術を用いてつくられる、唯一性を持つデジタルデータのことですが、どうもザッカーバーグ氏は仮想空間をマネタイズすることによって莫大な収入を得ようと狙っているのではないかという気がします。

GAFAはGAMAと今後呼ばれる様になるかも知れませんが、彼らが引き続き新しいビジネスモデルを開拓していくことになりそうです。

 

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原子力発電がCOP26で見直された理由

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フランス小型原発を提唱

英国グラスゴーで行われていた世界環境会議COP26が閉幕しました。

石炭火力の扱いに関して、最後まで紛糾し、結局「削減を加速化させる」という文言で関係国が同意したと伝えられています。

この会議は完全な成功とは言えないまでも、地球温暖化阻止に向け一歩前進したと評価されている様です。

会議の中で意外だったのはフランスが新しい小型原発の開発を唱えた事です。

我が国では脱炭素と同時に脱原発を唱える政治家が一部にいますが、フランスでは新しい原発の建設も今後行われる様です。

その背景には何があるのでしょうか。

英誌Economistが「The discreet charm of nuclear power - It makes fighting climate change a lot easier」(気候変動との戦いがはるかに容易にする原発の魅力)と題した記事を掲載しました。

かいつまんでご紹介したいと思います。

Economist記事要約

1992年のリオ地球サミットに至るまでの交渉において、サウジアラビアは「エネルギー源」と「エネルギー供給」の前に「環境的に安全」という文言を挿入しようと多くの時間を費やしました。

サウジアラビアが他のどの国よりも大量に輸出している石油は、現在、環境的に安全ではないと理解されていることを考えると、これは奇妙に思えます。

しかし、当時、その目的は関係者全員にとって明白でした。

この文言は、原子力発電を地球サミットの議題から遠ざける事を狙ったものでした。

 

1970年代のオイルショックにより、多くの国が原発への取り組みを強化しました。

1992年までの10年間で、世界中で消費される原子力エネルギーの量は130%増加しました。

さらに、原子力発電所を使用して電気だけでなく水素も生成し、それが合成燃料の基礎を形成する可能性がある点も注目されました。

サウジが環境について本当の懸念を持っていたかどうか定かではありませんが、彼らが競争相手が何かを知っていた事は確かです。

 

サウジが原発を恐れる必要がなかった事は、その後証明されました。

オイルショックとは対照的に、地球温暖化の脅威は原子力発電を増加させるに至っていません。

2006年にピークに達した後、2019年に消費された原子力エネルギーの量は1992年に比べてわずか18%しか増加しませんでした。

世界の一次エネルギーのシェアとして、それは6.1%から4.3%に減少しました。

原子力発電は高価ですので、気候へのダメージに関して化石燃料の燃焼にペナルティを付けられない状況下、これは驚くべきことではありません。

過去10年間の再生可能エネルギーのコストの急激な低下は、世界の脱炭素化の中心です。

しかし、クリーンエネルギーシステムには、再生可能エネルギーだけでは達成が難しい電力網の信頼性が必要です。

また、航空機に電力を供給したり、鉄鋼や化学薬品を製造したりするためにも、大量の水素が必要になり、これは原子炉が提供できる可能性があります。

 

原子力には、すべてのエネルギー源と同様に欠点があります。

しかし、十分に規制されている場合、それは信頼性が高く、その評判にもかかわらず、非常に安全です。

だからこそ、カリフォルニアのディアブロキャニオンのような優れた原子力発電所を閉鎖するのは、愚かです。

そのため、一部の国、特に中国は原発を増強しています。

これは、サウジアラビアを含む他の国が原子力発電に参入する理由を説明します。

そしてコスト競争力のある新世代の原子炉が産まれようとしています。

 

フランスは、大型原子炉を工期通りに予算内で建設することが不可能であり、その結果、輸出も困難であると考えており、よりコストの安い小型モジュール式原子炉(smrs)を開発中です。

英国のエンジニアリング会社であるロールスロイスも同様の原子炉を売り込んでいます。

11月4日、アメリカの会社NuScaleは、グラスゴーのCOP26で、同様の6基の原子炉をルーマニアに売却する契約に署名しました。

ロシアにはすでにフローティングSMR発電所があります。

多くの設計は、原則として工場で原子炉を製造し、必要な場所に出荷できるため、コストを抑えることができます。

現在、競合するメーカー同氏が学ぶことを可能にする規制アプローチを必要とされています。

これにより、競合する設計が互いに証明し合い、原子力発電が再びイノベーションの源となり、安全でなく健全でもない化石エネルギーを捨てる事が可能になります。

脱炭素社会を如何に実現するか

冷静に考えれば脱炭素と脱原発は両立が難しい議論です。

再生可能エネルギーの弱点を二酸化炭素を放出せずに補おうとすれば、原発が最も有力な選択肢です。

我が国は残念ながら欧州ほど風力発電に適していません。

原発なしに再生可能エネルギーを増やしていこうとすれば、化石燃料をかなり使わないと電源の安定性が保たれません。

もちろん核廃棄物処理の問題や地震対策など解決が必要な課題はありますが、原発を選択肢から現段階で外すのは時期尚早と思います。

小型原子炉など新しい技術が、原発の安全性に関する不安を払拭してくれるかもしれません。

 

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来年は終焉するか新型コロナ

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気がかりなドイツの感染拡大

我が国では嘘の様に新規感染者の数が激減していますが、欧州では第六波の襲来で感染者数が増大しています。

既に国民の6割がワクチン接種済みのドイツの感染者数が増えている事は気がかりです。

そんな中、英誌Economistが「​​Covid-19 is likely to fade away in 2022(新型コロナは2022年に消えていくだろう)と題した記事を掲載しました。

かいつまんでご紹介したいと思います。

Economist記事要約

パンデミックは死にたえる事はありません。

しかし彼らは消えていきます。

新型コロナも2022年にそうなる可能性が高いです。

確かに慢性的にワクチン接種が不十分な国では、地域的および季節的な再燃があります。

ワクチンによって提供される免疫を凌駕する可能性のある新しい変異体に注意する必要があります。

それでも、今後数年間で、インフルエンザや風邪などの様な風土病として新型コロナがその運命に落ち着くにつれて、世界のほとんどの生活は正常に戻るでしょう。

 

この見通しの背後には、驚くべき成功と憂鬱な失敗の両方があります。

成功したのは、非常に多くの人々がワクチン接種を受けており、軽度の症状から集中治療までの感染の各段階で、新薬が死亡のリスクを大幅に減らすことができるようになったことです。

当然のことと考えるのは簡単ですが、非常に多くのワクチンと治療法の迅速な開発と認可は科学の勝利です。

 

ポリオワクチンは、初期の試験から最初のアメリカのライセンスに至るまでに20年かかりました。

新型コロナウイルスが最初に発見されてからわずか2年後の2021年の終わりまでに、世界は毎月およそ15億回分のコロナワクチンを接種していました。

ライフサイエンスデータ会社であるAirfinityは、2022年6月末までに合計250億回分のワクチンが製造されるだろうと予測しています。

9月の首脳会談で、バイデン大統領は、世界の70%が1年以内に完全にワクチン接種されることを求めました。

供給の問題はこの目標達成の制約にはなっていません。

 

ワクチンは、完全な保護を提供しません。

しかし、ここでも、医学が課題に挑戦しています。

たとえば、初期の症状は、1日2回の抗ウイルス薬であるモルヌピラビルで治療できます。

モルヌピラビルは、治験ではで死亡と入院を半減させます。

重病患者は、安価なコルチコステロイドであるデキサメタゾンを投与することができます。これにより、死亡のリスクが20〜30%減少します。

他にも、レムデシビルやリジェネロン製の抗体カクテルなどの薬があります。

ワクチン接種と治療の組み合わせを一連の壁と考えてください。

それぞれの壁は、ウイルス攻撃の一部が致命的になるのを防ぎます。 

 

しかし、この成功と並んで、その失敗もあります。

新型コロナが将来害を少なくするもう1つの理由は、新型コロナが過去にすでに多くの人を感染させたことを物語っています。

非常に多くの人々が、すでに感染したという理由だけで、変異株から保護されています。

発展途上国では、2022年までワクチンや医薬品によって保護されないままになるでしょう。

この免疫は高いコストを払って獲得されました。

Economistは、パンデミック中の「過剰死亡」を追跡しました。

これは、通常の年に予想される以上の死亡率です。

10月22日の私たちの見積もりは、世界全体で1,650万人の死者(10.2百万から19.2百万の範囲)であり、公式の数の3.3倍でした。

致命的な感染の割合に関する仮定を使用して逆算すると、非常に大まかな見積もりでは、これらの死亡は15億から36億人の感染の結果であり、記録された数の6〜15倍であることが示唆されています。

 

感染とワクチン接種の組み合わせは、英国で、成人の93%で抗体を検出できた理由を説明しています。

英国が示すように、人々は再感染する傾向がありますが、ウイルスにさらされるたびに、免疫系はそれを撃退するように訓練されます。

新しい治療法とより多くの若者が感染しているという事もあり、英国の致死率が2021年の初めの10分の1に過ぎない理由を説明しています。 

 

これは一方で危険な新しい変異株によって覆される可能性があります。

ウイルスは絶えず変異しており、循環しているウイルスが多いほど、感染性の新しい株が出現する可能性が高くなります。

ただし、新しい変異株が出現したとしても、デルタほど致命的ではない可能性があります。

さらに、既存の治療法は引き続き有効である可能性が高く、ウイルスの変異を考慮してワクチンを迅速に調整することもできます。

 

一方で、ワクチン接種を拒否したために、人々は脆弱なままになることがあります。

これは健康教育の失敗です。

しかし、ワクチンは先進国に偏って備蓄されており、貧しい場所や遠隔地で針を腕に入れるのは困難です。

わずか数ドルの安全な注射がないため、生計が台無しになり、命が失われます。

 

新型コロナ感染ははまだ終わっていません。

しかし、2023年までに、それは先進国のほとんどの人々にとってもはや生命を脅かす病気ではなくなるでしょう。

それでも、発展途上国の何十億もの人々には致命的な危険をもたらすでしょう。

希望の光が

2年近くにわたり新型コロナに明け暮れたので、もういい加減に勘弁してほしいというのが正直なところですが、この記事を読んで少し安心しました。

長いトンネルの向こうに明るい光が見えた様な気がします。

それにしても新型コロナはやっかいな相手でした。

世界全体で1,650万人もの死者を出したとは驚きです。これだけの大きな犠牲を払わないと退治できない手強い感染症だったという事でしょう。

この人類の敵を倒す事に大きく役立ったワクチンや特効薬の開発に携わった人に感謝です。

 

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鍵を握る国インドに必要なもの

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重要性を増すインド

米中対立の構図が深まる中で、米国が最も注目しているのはどの国でしょうか。

もちろん我が国は東アジアにおいて重要ですが、それはインドではないかと思います。

インドは昨年、ヒマラヤの国境地帯において中国と激しい武力紛争を起こし、両国関係が急速に悪化しました。

敵の敵は味方と見た米国はインドにすかさずアプローチし、日豪とのクワッドに誘い込みました。

最近では中東版クワッドともいうべき米、イスラエル、UAEとの取り組みにも参加させました。

このインドに関して米紙ウォールストリートジャーナル(WSJ)が社説で「​​What New Delhi Needs to Stand Up to Beijing - The border clash hasn’t gone China’s way, but it’s also revealed the weakness of the Indian economy.」(​​インドが中国に立ち向かうために必要なもの - 国境の衝突は中国に有利に進んでいませんが、一方でインド経済の弱点を明らかに)と題した社説を掲載しました。

かいつまんでご紹介したいと思います。

WSJ社説要約

昨年、ヒマラヤの中国との国境地帯での武力衝突で、インドは負けはしませんでしたが、中国の前進を撃退することもできませんでした。

インドはその過ちから学ばなければ事態が悪化する可能性があります。

 

インドの積極的な対応は、おそらく中国にとって予期せぬものでした。

インド政府は経済的に反撃し、TikTokやWeChatなどの中国のアプリを禁止しました。

インドはまた、公共調達契約への中国の参加を制限し、HuaweiとZTEをインドの5G試験から締め出しました。

それは、インドの技術産業への中国の投資を抑制し、中国への依存を減らすことにより、輸入を国内生産に置き換えることを目的としました。

インドはまた、以前より中国に対して敵対的な外交姿勢をとる様になりました。

インドは、中国政府の覇権的な野心と戦うという明確な目的を持って、米国とその同盟国である日豪と緊密に協力し始めました。

 

シンガポールの中国外交政策の専門家である李明江氏は、インドと米国との関係が深まっていることについて、「これは中国政府が望んでいたことではない、彼らは逆のシナリオを望んでいたと思う」と述べました。

しかし、これによって戦況は変わっていません。

インドは中国に武力衝突の前に戻るよう説得することができませんでした。

インドは緩衝地帯の一部を中国に譲渡することによって「苦い薬」を飲むことを余儀なくされました。

 

こうなったのは、インドが経済を迅速に自由化できなかったことに起因しています。

1990年まで、インドの1人当たりの国内総生産は中国を上回っていました。(それぞれ374ドルと347ドル)

今日、中国の1人当たりGDPは12,000ドルで、インドの5倍以上です。

1979年以降、中国は、共産主義によって貧困に陥っていた経済において、市場の力がより大きな役割を果たすことを容認しました。

インドも経済改革を採用しましたが、1991年になって初めてであり、2004年に自由化の勢いが失われた後、遅いペースに留まっています。

いずれの主要政党も、経済生産性の向上より福祉に重点を置きました。

その結果、今日の中国の2500億ドルの軍事予算は、インドの約3.5倍になっています。

 

それでも、国境紛争は中国にとって良い結果をもたらしていません。

ニューデリーが30年前に経済の自由化を開始して以来、中国企業が今日のインドではるかに厳しい状況に直面していることは間違いありません。

グローバルリーダーになる為にインドの巨大な市場に目を向けたハイテク、通信業界の会社は、彼らの野心を実現するのは困難です。

 

重要な点は、習近平氏がヒマラヤ山脈の国境地帯で招いた偶発事故が、中国に打撃を与える形でアジアの地政学を根本的に変えたことです。

2年前、米国との戦略的関係の強化についてインドは今よりずっとためらいがちでした。

インドの人々は中国よりも、伝統的に敵対するパキスタンを警戒していました。

中国との貿易、文化関係を拡大し、国境問題を保留にすることが理にかなっていると主張するインド人の専門家や外交官を見つけるのは難しいことではありませんでした。

それがいまでは遠い過去の歴史のように感じられます。

米国からみると、中国政府は自ら災難を招き寄せたように思われます。

中国はセンシティブな地域であるチベット国境地帯で自ら新たな問題を作り出し、米印関係に新たな弾みを与えました。

「クアッド」は、インド太平洋における米国の政策で中心的存在となっています。

4カ国の艦船は10月、2年連続でベンガル湾での合同演習を行いましたた。

インドはこの数カ月間に北京を射程範囲に収める核弾頭搭載可能な大陸間弾道ミサイルの実験を行ないました。

しかし、インドの観点からみると、国境を舞台とする対立はありがたくない現実を認識させるものとなっています。

インドは中国に対抗しましたが、自国経済が今よりも競争力を持っていたならば、ずっとうまく対応できたはずです。

インドが中国の領土侵入を阻止したいのであれば、自国の軍事力にもっと多くの投資が必要でしょう。

そのためには中国との経済力の格差を埋める必要があります。

高まるインドの重要性

インドは重要です

インドが中国と組めば、世界の半分とは行きませんが、それに近い市場を形成する事になります。

地理的にもインド太平洋の枢要部を占めており、地政学的に重要です。

中国はインドの市場を抑えて更に強大になろうと目論んでいたのでしょうから、そのインドが米国側に回ったのは大きな誤算だったでしょう。

しかし、インドもしたたかですから、米国の従順な駒に留まる筈がなく、その立場を利用して米国に揺さぶりをかけてくると思います。

米国は対中戦略上不可欠な駒としてインドにかなり譲歩せざるを得ないでしょう。

いずれにせよインドは今後注目です。

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フランスでドナルド トランプと呼ばれる男

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ポピュリストの台頭

フランスでは来年4月に大統領選が行われます。

おおよその予測は決選投票で現職のマクロン大統領と保守強硬派ル ベン氏の一騎討ちというものでしたが、ここにきて様相が変わってきている様です。

エリック ゼムールというジャーナリスト上がりの右翼政治家が支持を急拡大しており、ルペン氏の代わりに決選投票に進出する勢いです。

この政治家について英誌EconomistがWho is Eric Zemmour, France’s wannabe Donald Trump? - The populist, anti-immigrant provocateur is outflanking Marine Le Pen」(フランスのドナルド・トランプたるエリック・ゼムールとは? - ポピュリストで反移民の挑発者がマリーヌ・ル・ペンに肉薄)と題した記事を掲載しました。

かいつまんでご紹介したいと思います。

Economist記事要約

この夏まで、エリック ゼムールは、右翼のメディアで反動的な週刊コラムを執筆し、テレビ番組で移民とポリティカルコレクトネス(特定のグループに不快感や不利益を与えないよう中立的な言葉を使う)に反対した挑発者でした。

誰も彼をまともな政治家として真剣に受け止めませんでした。

しかし、最近の世論調査で、63歳のゼムール氏の支持は急増しました。

来年4月の2回投票のフランス大統領選挙の最有力候補は、依然としてマクロン大統領です。

しかし、ゼムール氏は現在、決勝ラウンドに進む候補者として、保守強硬派のマリーヌ・ル・ペンを追い詰めています(グラフを参照)。

これにより、かつてのテレビ評論家は、一気に政治的注目を集める存在となりました。

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出典:Economist

党に所属しないゼムール氏は2つのテーマで勝負しています。

一つのテーマは、フェミニズム、消費社会、自由主義、「ジェンダーの優柔不断」、その他の輸入された「アメリカの病」に直面した権威、アイデンティティ、活力、伝統的な家族の崩壊に対する嘆きです。

もう1つは、ゼムール氏がフランス社会の「イスラム化」と呼んでいるものであり、「2000年前からキリスト教の土地」の移民による逆の征服です。

2018年に彼は人種差別への扇動で有罪判決を受けました。

 

パリ地方で生まれたゼムール氏は、彼自身がユダヤ人とアルジェリア人の血をひいています。

それでも、彼は、堅固なナショナリストを惹きつけるべく、最初に外国人ユダヤ人を国外追放し、フランスのユダヤ人を「保護」したという奇妙な理屈でヴィシーフランス(ヒトラー占領下のフランス政府)を擁護しています。

そのような歴史のゆがみを利用するに長けたゼムール氏は、ノスタルジア、衰退、喪失の物語で彼の主張を包み込みます。

彼は、ジャンヌダルク、ルイ14世、ナポレオン、ドゴールに言及します。

「私たちの歴史の中で、このような危険にさらされたことはありません。絶滅の危機に瀕しています。」と彼は最近の集会に語りました

 

ゼムール氏は、彼女がソフトに過ぎるとして、ルペン氏の支持層を部分的に取り組んでいます。

ゼムール氏は、イスラム教はフランスと「相容れない」ものであり、フランスのイスラム教徒には「フランス風」の名を与えるべきであると主張しています。

彼の魅力を極右を超えて広げるために、彼はまた別の有権者層をターゲットにしています。

ルペン氏は、以前は社会主義者と共産主義者の左翼に投票した、フランス北東部のブルーカラー労働者の間でキャンペーンを行っています。

ゼムール氏は、移民を恐れ、同性愛者の結婚に反対し、伝統的な家族の価値観を信じる、非常に保守的なカトリック系の共和党の主張を擁護します。

彼の支持の4分の1は、2017年の大統領選挙で、中道右派の有力候補であった共和党のフィヨン(元首相)に投票した人々からのものです。

 

ゼムール氏が大統領に勝つことができるとする世論調査はまだありません。

しかしゼムール氏は、2017年にマクロン氏がフランスの伝統的な政党を迂回して大統領になったかを注意深く見守っていました。

マクロン氏は、大統領選挙運動を支援し、国会で過半数を獲得するために、彼自身の党、「En Marche」を設立しました。

ゼムール氏はまた、ドナルド・トランプからビクトル・オルバン(ハンガリー首相)まで、勝利したポピュリストとナショナリストから熱心に学習しています。

テレビのパーソナリティは、恐怖をかき立て、複雑なものをシンプルに聞こえるようにし、博学とポピュリストスタイルを組み合わせる方法を知っています。

ゼムール氏はすでにフランスの選挙運動に大きな影響を与えています。

ポピュリストの台頭は民主主義の終焉か

フランスに行かれた方は感じられたと思いますが、想像以上に移民が多い国です。

ロンドンからの電車が到着するパリ北駅を降りれば、そこで見られるフランス人の半数以上は有色人種です。

その多くは旧植民地のアフリカから来た人々ですが、彼らは大都市や工業地帯のスラム街で劣悪な生活環境にさいなまれていますが、一方でフランス経済を安い労働力として底辺で支えています。

1980年代にフランスに私が留学していた頃は今ほど移民が多くありませんでしたが、当時もフランス人は移民に対して嫌悪感を持っていましたので、現在、カトリック系の白人フランス人が持つ不満は相当高まっているものと推測します。

この不満をゼムール氏は巧みに煽っているものと思います。

トランプ氏がラストベルト(米中西部、北東部の工業地帯)の白人労働者を票田にしたのを思い出させます。

この嫌悪や怒りを票に変える手法は効果的ですが、社会の分断を招く事は明らかです。

世界で初めて民主主義革命が生じた国でのポピュリストの台頭を、強権主義国家はほくそ笑んで見ているでしょう。

 

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英米メディアの主張が常に正しいわけではない - 意図的なキャンペーン

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英国メディアにご用心

英国という国は、国のサイズの割に国際的な影響力が大きい事で知られます。

それは米国に最も近い同盟国である事とか国際的な名声を得ているメディアの影響力等が背景としてあるものと推測されます。

私もBBCやEconomist、Financial Timesといったソースから得られる情報を重要視していますが、彼らの報道が常に真実を伝えているかと言えば疑問があります。

これらメディアは政府から独立性を確保していると言われますが、彼らの報道にはある程度英国政府の意向が反映されている様に思います。

一部の記事には読者の反感や嫌悪を引き起こそうと言った狙いさえ感じられます。

今日取り上げるトルコに大量に避難したシリア難民に関するEconomist誌の記事も同様で、一種のプロバガンダに近い感があります。

「Turkey’s government sees no humour in soft fruit - Refugees who ate bananas in a provocative fashion are to be deported」(トルコ政府はバナナに関するジョークを受け入れません - 挑発的な方法でバナナを食べた難民は国外追放される)と題した記事かいつまんでご紹介したいと思います。

Economist記事要約

トルコは以前にシリア難民を国外追放したことがあります。

一部は、当局への登録に失敗したか、軽微な犯罪のために、戦争で焦土と化した母国に送り返されました。

だまされて、自発的な帰国フォームに署名するように強制されたと言う人もいます。

しかし、バナナを食べた為に本国送還になるとは誰も思っていませんでした。

 

10月、政府は、ソーシャルメディアで「挑発的な」ビデオを発信したことで、7人のシリア人を国外追放すると発表しました。

これは、シリア人が家賃を引き上げたと非難し、彼らがバナナを買う余裕があると不平を言ったトルコ人男性へのインタビューに応えたものです。

 

バナナを食べる人は難民に対する偏見を嘲笑しているようでした。

しかし、当局は彼らを貧しい人々をあざけていると非難しました。

そして、それは非難だけでは終わりませんでした。

トルコの警察は、シリアのジャーナリストが、食料雑貨店からバナナを購入し、セーターの下に隠している様子を撮影し投稿した事で逮捕しました。 (彼は11月8日に釈放された。)

 

過去10年間で、約370万人のシリア人がトルコを故郷にしています。

かつて寛大だったトルコの国民は、不機嫌になりました。

リラが急落し、インフレが20%近くに上昇するにつれて、難民は欲求不満の標的になりつつあります。

世論調査の政府支持率が減少しているため、エルドアン大統領の政府は、シリア人がバナナを食べるという些細な事にも目くじらを立てざるを得ない様に思われます。

370万シリア難民の負担

上記ニュースには多少の背景説明が必要と思います。

トルコは隣国シリアから370万人、他にもイラクやアフガニスタンなどから難民が押し寄せ、既に500万人の難民を受け入れています。

これは圧倒的に世界最大の難民受け入れ人数です。

難民には住居、教育、医療等を無償で提供しています。

これらのサービスはトルコ国民の税負担において提供されていますので、多くのトルコ人は難民に対して内心不満をもっています。

しかし、困っている人々には手を差し伸べる寛容な国民ですので、難民に対するヘイトクライムなどは起こっていません。

最近のトルコ通貨リラの下落や高インフレの影響で、輸入品は皆高騰しています。

バナナは基本的に輸入品ですので、トルコの貧しい人々にとっては手の届かない高嶺の花になっている訳です。

それを援助を受けているシリア難民が食べている事に、トルコ庶民が不満を表明する事は当然と言えば当然です。

国外追放となったシリア人はそれをこれみよがしにSNSに投稿した訳ですから、トルコ政府が対抗処置をとった事はある程度理解できます。

もちろん輸入品高騰を招いた経済政策の失敗に関してトルコ政府は説明責任を果たす必要があるでしょうが、あたかもトルコ国民がシリア難民を虐待している様なEconomistの記事は客観性を欠いていると思います。

英国もこの様な記事を書くのであれば、自分たちがトルコと同じ様に難民を受け入れる度量を見せてから書いて欲しいと思いますが、彼らは絶対にトルコの様な寛容さを難民には示さないでしょう。

中東と英国は距離があるので、彼らはいつも難民問題については高みの見物を決め込んでいます。

 

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来年の10のトレンド

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来年はどんな年に?

来年2022年はどんな年になるでしょうか。

英誌Economistが「​​Ten trends to watch in the coming year」(来年注目すべき10のトレンド)と題して記事を掲載しました。

かいつまんでご紹介したいと思います。

Economist記事要約

2021年は世界がパンデミックに抵抗を開始した年でした。

2022年はパンデミックによって引き起こされた問題(新しい勤務形態、旅行の将来など)とより深い問題​​(中国の台頭、気候変動の加速)の両方で新しい現実に適応する必要があるでしょう。

来年注目すべき10のテーマをご紹介します。

民主主義対強権国家

 アメリカの中間選挙と中国共産党大会は、ライバルの政治体制を鮮やかに対比させます。

安定性、成長、革新を実現するのに優れているのはどちらでしょうか?

この競争は、貿易から技術規制、予防接種から宇宙ステーションまで、あらゆる分野で展開されます。

バイデン大統領が民主主義の旗の下で自由な世界を結集しようとしている時、機能不全で分断されたお膝元の国はそのメリットを宣伝する上で不十分です。

パンデミックから風土病へ

新しい抗ウイルス薬、改良された抗体治療、そしてより多くのワクチンが生産されています。

先進国のワクチン接種を受けた人々にとって、ウイルスはもはや生命を脅かすものではありません。

しかし、それでも発展途上国では致命的な危険をもたらします。

予防接種を強化できない限り、新型コロナは、貧しい人々を苦しめるが金持ちは苦しめない風土病の1つになっていくでしょう。

インフレの懸念

サプライチェーンの混乱とエネルギー需要の急増が価格を押し上げました。

中央銀行はそれが一時的なものだと言いますが、誰もが彼らを信じているわけではありません。

英国は、ブレグジット後の労働力不足と高価な天然ガスへの依存により、スタグフレーションのリスクにさらされています。

仕事の未来

将来の勤務形態は「ハイブリッド」であり、より多くの人々が自宅で仕事をするためにより多くの日数を費やすという幅広いコンセンサスがあります。

しかし、詳細については意見の相違がたくさんあります。

週に何日、何曜日?そしてそれは公平でしょうか

調査によると、女性はオフィスに戻ることにあまり熱心ではないため、昇進において不利になるリスクがある可能性があります。

税制や遠隔地労働者の監視についても議論が高まっています。

IT企業への規制

欧米の規制当局は、何年もの間、ハイテクの巨人を抑制しようとしてきましたが、彼らの成長や利益にまだ打撃を与えていません。

現在、中国が主導権を握り、テクノロジー企業を厳しく取り締まっています。

習近平主席は、ゲームやショッピングなど軽薄なサービスではなく、戦略的優位性を提供する「ディープテック」に焦点を当ててほしいと考えています。

しかし、これは中国のイノベーションを後押しするのでしょうか、それとも業界のダイナミズムを抑圧するでしょうか。

暗号の成長

すべての破壊的技術と同様に、規制当局が規則を厳しくするにつれて、暗号通貨は飼い慣らされています。

中央銀行は一方で、独自の中央集権化されたデジタル通貨の立ち上げを検討しています。

その結果、2022年には暗号ブロックチェーン-クラウドファンディング、より伝統的なテクノロジー企業、中央銀行の間で、金融の未来をめぐる3者間の戦いが生まれます。

気候変動

山火事、熱波、洪水の頻度が増加しているにもかかわらず、気候変動への取り組みに関しては、政策立案者の間で緊急性の著しい欠如が見られます。

さらに、脱炭素化は、地政学的な競争が深まる中、西側と中国が協力することを要求します。

ハーバードのソーラージオエンジニアリング研究チームに注目してください。

2022年に、彼らは高高度気球を使用してちりを放出し、太陽光を薄暗くすることをテストしたいと考えています。

これは、脱炭素化までに多くの時間を必要とする世界が必要とする手法かも知れません。

旅行業界が抱える問題

経済が再開するにつれ、経済活動は活発化しています。

しかし、オーストラリアやニュージーランドなど、コロナゼロ戦略を追求した国々は、ウイルスが流行している世界への移動を管理するという難しい課題に直面しています。

その間、出張の半分がなくなります。

これは高額のビジネス旅行客を失う観光業界にとっては痛手です。

宇宙開発競争

 2022年は、政府によって指名された宇宙飛行士よりよりも多くの人々が有料の乗客として宇宙に行く最初の年になります。

中国は新しい宇宙ステーションを完成させます。

映画製作者は無重力下で映画を作ることを競争しています。

そして、NASAは、ハリウッド映画のように聞こえますが、宇宙探査機を小惑星に衝突させます。

スポーツイベント

北京での冬季オリンピックとカタールでのサッカーワールドカップは、大きなスポーツイベントがしばしば政争の具になることを再認識させます。

代表チームによるボイコットは起きないと思いますが、開催国に対する抗議が活発化する事は間違い無いでしょう。

何とかなるでしょう

最近の日本におけるコロナ感染者数の激減は明らかにワクチンの接種率が高まったためと思います。

mRNAという手法でのワクチン開発が行わなければ、世界の多くの国は今でも経済活動を再開できていなかったかも知れません。

ワクチンの奇跡は、人類の叡智が今後の問題も解決してくれるのではないかという期待を持たせてくれます。

気候変動に対処する方法として挙げられた高高度空間への「ちり」放出という手法は面白いですね。

農業関係者等との調整が必要と思われますが、地球の温度を下げるという意味では注目すべきテクノロジーと思います。

 

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ドイツの経済発展を支えたトルコ系移民が抱える問題

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ドイツに住む3百万人ものトルコ系移民

トルコ系移民がドイツに多い事はご存知の通りですが、これは第二次世界大戦直後、高度経済成長期にあった西ドイツが大量の未熟練労働者をトルコから呼び寄せた事に起因しています。

その多くはドイツに定着し、三世代目、四世代目を迎えています。

トルコから出稼ぎ労働者が西独に渡ってから60年、この間にどの様な問題が生じたのでしょうか。

英誌Economistが​​「Sixty years of Turkish “guest workers” in Germany - More are integrated, but two-thirds of adults are not German citizens」(​​トルコからの「ゲストワーカー」の60年 - 未だに成人の3分の2はドイツ国民ではない)と題した記事を掲載しました。

かいつまんでご紹介したいと思います。

Economist記事要約

1968年にデミルビレク氏をトルコからドイツに引き寄せたのは貧困や野心ではなく、ドイツの車の魅力でした。

自分の車を持つことを長い間夢見ていた電気技師のデミルビレク氏は、西ドイツでの仕事に応募することにしました。

数ヶ月後、デミルビレク氏はケルンへの3日間の電車に乗りました。

 

非常に多くのトルコ人「ゲストワーカー」と同様に、短期間で終わるはずの彼のドイツ滞在は一生続くことになりました。

現在84歳の彼は、デュッセルドルフで行われたゲストワーカー条約の60周年記念式典に参加しました。

この式典は、ドイツに、現在275万人のトルコ人コミュニティ(民族別で圧倒的に最大)が存在し、その複雑な歴史を振り返る機会を提供しました。

 

協定が発効した12年間に、75万人の貧しい未熟練トルコ人が西ドイツにやって来ました。 (家族の再統合とその後の政治亡命の波により、その数はさらに増加しました。)

ゲストワーカーとその子孫に話しかけると、複雑な家族の歴史が聞こえてきます。

女性たちは経済的または文化的なつながりがない場所を理解するのに苦労し 、「スーツケースの子供たち」は両国の間を行ったり来たりしました。

ドイツも、短期滞在のゲストワーカーが恒久的な住民となったため、苦悩を経験しました。

統合政策は遅れました。

第一世代のトルコ人は、ドイツ人との出会いがめったにない飛び地の寮に住むケースが多く、ほとんどが力仕事でドイツ語を学ぶ必要はありませんでした。

子供たちは、いつか「母国に帰る」ことを前提として、移民のみのクラスに入れられました。

才能のある子供たちは、しばしば最高の学校から入学を拒否されました。

 

国民の移民に対する不信感は政府の政策に表れています。

1983年、ドイツのトルコの人口を半減させたいと考えていたコール首相は、ゲストワーカーに帰国を促すため、帰国費用の支払いを申し出ました。

トルコで生まれたトルコ系ドイツ人が成人期まで二重国籍を保持できるようになったのは2014年のことでした。

今日、成人の3分の2近くを含む約150万人のトルコ系居住者は、ドイツのパスポートを持っていません。

1990年代に生じたヘイトクライムは依然として脅威です。

昨年のハーナウでの銃乱射事件の犠牲者10人のうち、トルコ系とクルド系のドイツ人4人がいました。

 

ドイツ在住のトルコ人は約90,000の企業を所有し、50万人を雇用しています。

トルコ系ドイツ人はサッカーから映画までおなじみの顔です。

9月の選挙で、18人が連邦議会の議席を獲得しました。

しかし、困難は続きます。

トルコ系の子供は、他のドイツ人よりも学校を中退し、仕事に就くことが少ない傾向があります。

トルコ語風の名前を持つドイツ人は、依然として住宅と雇用において差別に直面しています。



移民の功績に対するドイツの遅れた認識でさえ、しばしば善意の背後に軽蔑が含まれています。

BioNTech 社のトップとしてワクチンを開発したトルコ系ドイツ人の科学者であるUgurSahinとÖzlemTüreciは、移民の模範的モデルとして政治家に取り上げられる事に違和感を感じています。

 

一方、ドイツはその過ちのいくつかから学びました。

2015-16年に押し寄せたシリアや他の移民を言語と統合のコースに素早く導きました。

ドイツには「移民の背景」を持つ人々は人口の4分の1以上であるため、国民を統合する必要性が高まっています。

 

ゲストワーカーを称える最近の式典で、ドイツのシュタインマイヤー大統領は、同胞であるドイツ人とトルコ人に、すべてのドイツ人居住者の貢献を認め、「歴史を共に発展させる」よう促しました。

急速に高齢化が進んでいるドイツは、再び外国人労働者を求めています。

海外からの移民の次の波が起こるとき、過去の経験は貴重な教訓を提供します。

猫の目の様に変わるドイツの移民政策

これを読むと、如何にドイツの移民政策がご都合主義で変化していったかがわかります。

第二次世界大戦直後の西ドイツは労働力が不足し、トルコから大量の移民を受け入れましたが、その後東西ドイツ再統合で失業率が高まるやトルコ人をトルコに追い返そうとしました。

そして最近は少子高齢化の影響で労働力が不足し、再び移民を受け入れようとしています。

トルコ人は勤勉な国民ですので、ある意味トルコ人が戦後のドイツの復興を底辺で支えたと言っても良いと思います。

しかし移民に対するドイツ人の目は厳しい様です。

サッカーワールドカップ ロシア大会でナショナルチームが惨敗した時、チームの司令塔であるトルコ系メスト エジル選手はマスコミから袋叩きにあいました。

彼の父親は「勝てばチームで団結して勝ったと言い、負ければメストのせいか」と嘆きました。

移民問題は本当に難しいです。

洋の東西を問わず、多様性を受け入れ、出自を問わず実力主義を貫いた国が過去に発展している事は史実ですが、島国で移民に慣れていない日本人にとって相当難易度が高い課題と思います。

 

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サマータイムは必要か

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サマータイムが引き起こす悲喜劇

サマータイムという制度は我が国には導入されていませんが、長く欧州やトルコに住んだ私にとっては頭痛の種でした。

夏時間や冬時間に切り替わる日というのは要注意です。

始業時間に遅れて上司に怒られるなんてのはいい方で、飛行機の出発時間を1時間間違えて出張に行けなかったなんてケースもあります。

このサマータイムという制度に関しては、導入している国においても賛否両論がある様です。

英誌Economistが「Changing the clocks is unpopular. Why do it? - The practice gives people a micro dose of jet lag, and can even be harmful」(​​​​時間帯の修正は人気がありません。 なぜそれをするのでしょう?修正は人々を時差ぼけにし、有害でさえありえます)と題した記事を掲載しました。

かいつまんでご紹介したいと思います。

Economist記事要約

国のタイムゾーンを変更するという決定は、政治的なものになる場合があります。

その広大な国土にもかかわらず、中国はすべて北京時間で運営されています。

これは、1949年に毛沢東が統一を確立するために下した決定です。(中国の最西端にある新疆ウイグル自治区の貧しい人々を憐れんでください。太陽が午前10時まで昇らないこともあります。)

2018年までのほぼ3年間、北朝鮮は南隣国から30分遅れた独自のタイムゾーンを設定していました。

しかし、多くの場合、国は実際的な理由で時刻を設定します。

主に南北アメリカとヨーロッパの約70か国が、夏にサマータイムを適用しています。

アメリカの時計は、今週末に再び1時間遅れます。

しかし、それは本当に必要でしょうか?

 

18世紀、ベンジャミン フランクリンは、夏に時計を前に進めるという考えを支持しました。

この慣習は第一次世界大戦中に実際に定着しました。

英国、フランス、ドイツは、夕方に1時間の日光を追加することで、石炭を節約できると計算しました。

これは、実際に、戦争努力を助けたでしょう。

その後、他の利点が注目されました。

買い物客は夜遅くまで外出することが出来るため、個人消費が増える可能性があります。

それは犯罪を減らすかもしれません。

ネールドゥウェルの格言のように:「日光が長ければ長いほど、悪事を働く事は少なくなります。」

 

それでも、サマータイムは人気がありません。

2019年、欧州議会は2021年からこの長年の慣行を終わらせることを決議しました(コロナの世界的大流行がその実行を無期限に延期しましたが)。

EUが市民の間で世論調査を行ったとき、それはほぼ500万の回答を集めました。

80%以上が、サマータイムの廃棄を望んでいましたが、これには正当な理由があります。

決定的に証明されたわけではありませんが、多くの科学者は、時刻を変えると人間の体内リズムが乱れると考えています。

それは、低度の時差ぼけに似ていると言う人もいます。

これにより、心臓発作や脳卒中の可能性が高まる可能性があります。

また、たとえば、日光の下で通勤していたドライバーが突然暗闇の中で通勤しなければならないため、自動車事故が増加する可能性もあります(またはその逆)。

生産性も低下する可能性があります。

おそらく、企業にとって最も不便なのは、国が異なる時間に時計を変更する可能性があるという事実です。

ヨーロッパのほとんどは10月31日に時計を戻しました。

アメリカの締め切りに間に合うヨーロッパ人は、通常より1時間早く開始するように仕事のスケジュールを変更する必要があり、月曜日からそのプロセスを忘れて、古いルーチンに戻る必要があります。

 

夏時間は維持されるでしょうか?

EUがすぐにそれを廃止する兆候はありません。

アメリカでは、超党派の上院議員グループが「2021年のサンシャイン保護法」という法案を提出しました。

これは一年中サマータイムに固定するものですが、実現する可能性はほとんどありません。

カリフォルニア州、フロリダ州、ワシントン州など、19の州議会が同じ趣旨の法律を可決しましたが、議会の承認がないため、住民は今週末も時計を元に戻すことになります。

サマータイムの功罪

中国という国は一つの時間帯を全ての地域が採用しているんですね。

中国より小さい欧州でも3つの時間帯がありますので、これを見ても中国が如何に中央集権的か良く解ります。

個人的にはサマータイムは廃止してほしいと思います。

軽い時差ぼけは克服できないものではありませんが、国際ビジネスを展開する上で、大きな障害になっているのは間違いありません。

Zoomで会議を行う時も、先方と何時間時差があるのか常に神経を尖らせる必要があります。

しかしサマータイムは廃止される可能性は少ないと思います。

何故ならサマータイムはエネルギーの消費を抑えると信じられているからです。

地球温暖化のカードを切られれば、今これに対抗するのは困難です。

 

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天然ガスで潤うノルウェーがアフリカでの天然ガス開発を阻止する訳

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地球温暖化の裏事情

物事には表と裏があります。気候変動を巡る議論にも当然それがあります。

既に経済発展を遂げた先進国はこれ以上の地球温暖化は地球に壊滅的な影響を与えるとして、発展途上国にもこれ以上の化石燃料の使用を控える様に求めています。

これ一見筋の通った議論の様に思えますが、発展途上国にしてみれば、安価なエネルギー源の使用を制限される訳で、先進国の都合しか考えない議論に見える筈です。

米誌Foreign Policyが「Rich Countries’ Climate Policies Are Colonialism in Green - At COP26, developed-world governments are working to keep the global south poor.」(​​先進国の気候政策は緑の植民地主義である - COP26では、先進国政府は発展途上国を貧しく保つために取り組んでいる)と題する論文を掲載しました。

かいつまんでご紹介したいと思います。

Foreign Policy論文要約

ヨーロッパでは天然ガスの価格が過去最高を記録しており、ノルウェーは好景気に沸いています。

ノルウェーはロシアに次ぐヨーロッパで2番目に大きなガス供給国であり、欧州の深刻なエネルギー不足を緩和するために天然ガスの輸出を20億立方メートル増やすことに合意しました。

裕福なノルウェー人がガス価格上昇のおかげで札束を数えている一方で、彼らの政府は世界の最貧国のいくつかが天然ガスを生産するのを阻止するために懸命に取り組んでいます。

ノルウェーは、他の7つの北欧およびバルト諸国とともに、2025年にアフリカおよびその他の地域での天然ガスプロジェクトへのすべての資金提供を停止するよう世界銀行に働きかけています。

COP26では、20か国がさらに進んで、来年から海外の化石燃料プロジェクトへのすべての資金提供を停止することを約束しました。

代わりに、北欧諸国とバルト諸国は、世界銀行は「グリーン水素やスマートマイクログリッドネットワークなど」の発展途上国におけるクリーンエネルギーソリューションに資金を提供すべきであると主張しています。

 

地球上で最も貧しい人々たちがグリーン水素(おそらく存在する中で最も複雑で高価なエネルギー技術)を使用し、わずか数年で「スマートマイクログリッドネットワーク」を構築するという考えはばかげています。

太陽エネルギーや風力でさえ、迅速に建設できたとしても、化石燃料を使用したバックアップ電力なしでは、発展途上国の開発に燃料を供給することはできません。

化石燃料の中で、ガスは群を抜いて最もクリーンです。

沖合に大きなガス田があり、世界の最貧国の多くが含まれるサハラ以南のアフリカでは、ガスプロジェクトへの資金提供の禁止は、経済発展を支援し、生活水準を高めるために必要な重要なエネルギーインフラ整備を断念するに等しいです。

 

この例は、ノルウェーの天然ガスとの戦いが世界の貧困層にとって何を意味するのかを明らかにしています。

世界保健機関によると、毎年約380万人室内空気汚染の影響で早期に死亡しています。

これらの死者の大多数は、調理のために屋内で木材、石炭、木炭、または動物の糞を燃やしている貧しい国の26億人の人々の間で発生しています。

家事をしている女性や子供たちは、肺の奥深くまで浸透するこの有毒な煙にさらされています。

インド、中国、国連によって推奨されているボンベ入り調理ガスへの切り替えは、発展途上国の無数の命を救っています。

これが、開発途上国が、クリーンなエネルギー源の中に天然ガスを挙げ、持続可能な開発目標に照らして天然ガスへの切り替えを推進している理由の1つです。

 

世界銀行にロビー活動をしている国々も、再生可能エネルギーのバックアップ電源として、化石燃料で生成された電力の必要性を認めています。

COP26に先立ち、ノルウェーの Store首相は、将来の石油とガスの掘削が再生可能エネルギーへの移行に不可欠であると主張しました。

言い換えれば、ノルウェーはガスの必要性を認識していますが、貧しい国々がそのガスを生産することを望んでいません。

ノルウェーは植民地主義のグリーンバージョンを推進しています。

そして問題はノルウェーだけではありません。

発展途上国に貧しいままで発展をやめるように先進国は通告しているのです。

ウガンダのムセベニ大統領は先月、先進国とその援助機関によってアフリカに押し付けられている再生可能エネルギーへの移行の加速について、「アフリカの貧困からの脱却の試みを阻止しようとしている」と述べました。

 

アフリカでは4億人以上が1日2ドル未満で生活しています。

彼らのニーズは大きすぎて、現在のグリーンエネルギー技術だけでは満たすことができません。

どこの国でも、天候に依存する風力と太陽光のバランスをとるために、化石燃料による発電が依然として必要です。

肥料、セメント、鉄鋼の生産に関しては、低コストで低炭素の天然ガス代替品はまだありません。

電気以外にも、化石燃料はアフリカの発展にとってさらに重要です。

大陸が人口を養い、自給自足農業よりも良い未来を農村の若者に提供する必要がある現代の農業は、石油とガスに大きく依存しています。

収量を向上させる合成肥料は、天然ガスで最も効率的に生産されます。

道路や建物の建設は、食品や医薬品の冷蔵と同様に、エネルギーを大量に消費します。

運輸部門は、ほぼ完全に石油とガスに依存しています。

 

ノルウェーは、世界で最も化石燃料に依存する豊かな国です。

原油と天然ガスは、輸出の41%、GDPの14%、政府歳入の14%、雇用の6〜7%を占めています。

ノルウェーはヨーロッパで最大の炭化水素埋蔵量を持ち、天然ガスの世界第3位の輸出国です。彼らはアフリカにこう伝えています。

「排出量を抑える限り、私たちは豊かさを保ち、アフリカの発展を妨げ、我々は慈善団体を送ります。」

 

もちろん、偽善は他の国にも広がっています。

バイデン大統領は高い目標を設定しましたが、米国の石油需要を満たすために生産を増やすよう主要なエネルギー供給業者に呼びかけました。

メルケル首相は、野心的な気候目標を概説し、ドイツ人に石炭からの離脱に十分な時間(ほぼ20年)を与えました。

 

皮肉なことに、気候正義の名の下に、貧しい国々に対する制限を支持する多くの人々は、世界の貧しい人々が気候の影響から最も危険にさらされていることを正しく指摘しています。

しかし、開発を行えない場合、世界の貧困層はどのようにして異常気象やその他の気候変動の影響に対してより抵抗力を持つようになるのでしょうか。

世界の貧困層は、空調や灌漑などの適応策を講じることができないため、最もリスクにさらされています。

 

一方、サハラ以南のアフリカの48か国で10億人以上が、世界の累積炭素排出量の1パーセント未満を占めています。

これらの国々が天然ガスのみで発電量を3倍にしたとしても、水力発電などのアフリカの再生可能資源を考えると、世界の排出量は約1%しか増加しません。

一方、これらの10億人の人々がより多くの電力にアクセスすることを拒否すると、彼らは貧しいままでいる可能性がはるかに高くなり、豊かな国が圧倒的に責任を負っている温暖化に対してより脆弱になります。

 

ノルウェーなどの豊かな国々は、公平で持続可能な開発に取り組んでいると主張しています。

彼らは天然ガス開発を阻止するのではなく、貧しい国々を支援するためにクリーンテクノロジーとインフラに多額の投資をするべきです。

彼らは、社会的および経済的影響を考慮に入れて、安易なスローガンをやめ、化石燃料の支援をいつどのように終了するかについて慎重に考える必要があります。

貧しい国々が貧困から抜け出すことができるように、少なくとも今後20年間は天然ガスプロジェクトへの融資を可能にする必要があります。

世界で最も貧しい人々の背後で気候変動の野心を追求することは、偽善的であるだけでなく、最悪の場合、不道徳で不公正な緑の植民地主義です。

地球温暖化を影で操る人々の企み

地球温暖化はどうも事実の様に思われますが(地球は過去に何度も温暖化と冷却化を繰り返しており、今回の温暖化が永続する事は科学的に完全に立証されている訳ではありませんが)、今やこの動きに棹をさす人間はまともでは無いと言われかねない状況となっており、若干地球温暖化の議論に胡散臭さを感じています。

地球温暖化論者は地球温暖化と言いながら実はもっと違う狙いを持っているのではとの疑いさえ湧いてきます。

発展途上国に対して化石燃料を使わせない論理は、現在の国際序列を固定化したい先進国の利己的な議論かもしれません。

欧州は国際世論を形成するのに巧みで、今回も世界中の国々を地球温暖化の渦に巻き込み、彼らが狙っている方向に世界を導こうとしていますが、この論文が指摘する通り、発展途上国の言い分にも十分耳を傾けないといけないと思います。

岸田首相にもお得意の「聞く力」を発揮して、アフリカのエネルギー問題解決に一肌脱いで頂きたいものです。

 

最後まで読んで頂き、有り難うございました。