MIYOSHIN海外ニュース

世界の役立つ情報をわかりやすくお伝えします。

東南アジアにおける米中戦略の違い

f:id:MIYOSHIN:20211213154602j:plain

米中の異なる戦略

米中対立の主戦場はインド太平洋ですが、そこで両国はいかなる戦略を立てているのでしょうか。

米国は豪州に原子力潜水艦の売却を決断し、AUKUSという米英豪三カ国からなる安全保障上の取り組みを構築しました。

一方、中国は元々米国が提唱した環太平洋パートナーシップに加盟を申請しました。

どうもこの二カ国は異なった戦略を立てている様です。

米誌Foreign Policyが「In Asia, China’s Long Game Beats America’s Short Game - Beijing’s focus on economic ties will outlast Washington’s on military alliances.」(アジアでは、中国の長期戦略がアメリカの短期戦略に勝る - 経済に焦点を当てる中国の戦略は、米国政府の軍事同盟よりも長持ちする。)と題した論文を掲載しました。

著者はシンガポール国立大学上級研究員の​​Kishore Mahbubani氏です。

Foreign Policy論文要約

潜水艦はステルス(相手にさとられない)ですが、貿易はよりステルスです。

どちらもセキュリティを生み出します。

前者は抑止力によるものであり、後者は相互依存によるものです。

しかし、貿易によって生み出される安全保障はより長く続きます。

 

潜水艦の契約は簡単にキャンセルされます。

オーストラリアに攻撃型潜水艦を提供するという契約を失ったフランスに聞いてみてください。

貿易協定によって生み出された経済的相互依存は、解除するのがより困難です。

北米自由貿易協定を破棄する事ができず、お化粧直しした協定に合意しなければならなかったトランプに聞いてみてください。

 

この対比は、米国政府がインド太平洋で採用している短期戦略と中国政府の採用している長期戦略の違いを浮き彫りにしています。

米国は、オーストラリアと英国との間で締結したAUKUSの安全保障協定に賭けています。

一方、中国は、貿易を利用して近隣諸国、特に最も成功しているアジアのブロックである東南アジア諸国連合(ASEAN)に賭けています。

 

ワシントンはある点で正しいです。

表面的には、AUKUSメンバーは強いつながりを持っており、同じ方向を向いています。

一方、ASEANは、ミャンマーなどの加盟国の管理に苦しんだ意見の一致しない組織体の様に見えます。

ASEANはまた、増大する米中の競争に対する首尾一貫した地域的対応を生み出すのに苦労しています。

しかし、ASEANが弱すぎて、他の加盟国はもちろんのこと、加盟国に意志を押し付けることができない場合、その弱みはASEANの強みでもあり、ブロックが地域内外で信頼を築くことができます。

 

私はちょうど50年前の1971年にシンガポールの役人として初めてASEAN会議に出席しました。

会議室に入るとすぐに、5つの創設メンバー国の間の不信の匂いを感じました。

20年後、私がASEAN会合に出席したとき、不信の雲は消えていました。

代わりに、インドネシア文化(協議と合意)がASEANに感染していました。

徐々に、この協議と合意の文化は地政学的な奇跡を生み出しました。

その中には非常にステルスなものもあり、地域外ではほとんど気づかれていませんでした。

 

ASEANが米国を支援したベトナム戦争の終結後、ベトナムとASEANの間の敵意と不信感は明白でした。

しかし、冷戦が終結したとき、ASEANはベトナムをこの地域の経済に統合し、この国が東アジアの新たな経済の奇跡として浮上するのを助けました。

ベトナムがASEANから学んだ最も重要な教訓は、ASEANの当初の加盟国が貿易を通じて互いの不信を克服したように、敵とさえ貿易することでした。

インドとパキスタン間の貿易は1991年から2021年にかけて3倍になりましたが、ベトナムと中国の間の貿易は1979年に互いに戦争をしましたが6,000倍になりました。

要するに、ASEANの文化は平和と繁栄を生み出しました。

 

もう1つの主要なASEANのブレークスルーは、日本と韓国の間のより大きな経済的関与を生み出すことでした。

両国はどちらも米国の同盟国ですが、米国は彼らに互いに話すように説得することはほとんどできません。

近年、ソウルと東京の間で協議もコンセンサスもありませんでした。

それにもかかわらず、ASEANは、東アジアの2つの隣国を説得して、彼らの間で(そして中国とも)自由貿易協定に署名するように説得しました。

オーストラリア、ニュージーランド、中国、日本、韓国もこれに署名しました。

強力な中国、日本、韓国の経済統合は、RCEPの経済的後押しのほとんどを生み出すでしょう。

この奇跡を成し遂げたのはあまり知られていませんが、ASEANでした。

 

これは簡単な単語テストです。

バイデン米国大統領、ブリンケン米国務長官、オースティン国防長官、サリバン補佐官のスピーチに、ASEANとその加盟国の名前あるいはオーストラリアどちらの言葉がより多く現れるでしょうか。

答えはオーストラリアになります。米国のオーストラリアへの愛情は本物であり、その懸念は心からのものです。

しかし、地政学は残酷なビジネスでもあり、感情が競争上の不利益を生み出します。

中国がASEANとRCEPに焦点を合わせ、米国がオーストラリアとAUKUSに焦点を合わせる場合、北京が勝ちます。

 

その理由は次のとおりです。大きなゲームは経済であり、軍事ではありません。

2000年の米国のASEANとの貿易総額は1,350億ドルで、中国の400億ドルの貿易の3倍以上でした。

2020年までに、中国のASEANとの貿易は6,850億ドルに拡大し、米国の3,620億ドルのほぼ2倍になりました。

米国は今でも日本を経済大国と見なしています。

そして2000年には、日本の経済はASEANの8倍の大きさでした。

しかし、2020年までに、それは1.5倍となりました。

2030年までに、日本の経済はASEANよりも小さくなるでしょう。

 

中国のASEANとの関わりは深く幅広い。

高速鉄道は、インドネシア、ラオス、マレーシア、タイで中国によって建設されています。

驚くべきことに、ハノイと北京の間の特許の不信にもかかわらず、ハノイの地下鉄システムは中国によっても構築されています。

そして東南アジアがワクチンを探していたとき、中国のワクチンが最初に届けられました。

地域の主要リーダーであるインドネシアのジョコ大統領は、中国のワクチンを喜んで接種しました。

中国といくつかのASEAN諸国との関係は複雑であり、課題に直面していることは間違いありません。

しかし、協力的な取り組みの範囲と深さは否定できません。

 

そして、ASEANの経済的奇跡の成長物語が始まったばかりであるため、経済的結びつきはより強くなるでしょう。

地域経済の多くは、中産階級社会になる転換点にあります。

オーストラリアには中産階級が2500万人います。

ASEANはまもなく数億人になります。

先行指標は次のとおりです。2020年のASEANのデジタル経済の価値は約1,700億ドルでした。

2030年までに、それは1兆ドルに達する可能性があります。

この地域のデジタル経済の大規模な爆発により、相互依存の新しいウェブが生成され、この地域で発展している相互依存の大規模なエコシステムがさらに強化されます。

 

したがって、最終的には、これは米国政府が直面しなければならない戦略的選択です。

オーストラリアへの潜水艦の販売に焦点を当てる、またはルビコン河を越えて東アジアおよび東南アジアとの自由貿易協定に署名する。

結局のところ、環太平洋パートナーシップは、真に優良な貿易協定を結ぼうとしてワシントンの才能ある交渉者の産物でした。

米国が2017年に協定から撤退した後も、太平洋横断パートナーシップ協定の改訂版は、元の協定をモデルにしたままでした。

しかし、米国はそれに再び参加する事を夢見ることさえできません。

対照的に、中国は参加を申請しました。

 

最後の質問はこれです:ワシントンはアジアの大きな経済ゲームに再び入ることができますか?

はい、できます。

米国はまだいくつかの資産を持っています。

中国はASEANとの貿易がはるかに多いですが、ASEANへの中国の民間投資は米国のそれよりも小さいです。

2019年のASEANへの米国保有の外国直接投資の総株式は約3180億ドルでした。

中国の投資は約1100億ドルしか占めていません。

ASEAN地域の爆発的な成長の可能性を考えると、米国政府は、ASEAN地域にまだ存在する米国への善意の遺産を利用して、ASEANへの米国の投資をさらに促進する創造的な方法を見つける必要があります。

 

要するに、潜水艦の販売に集中しないでください。

インド太平洋への米国の投資と貿易を奨励することに焦点を当てるべきです。

鍵は経済です。

戦略変更が必要な米国

この論文には頷けるところが多い様に思います。

中国は貿易を通じて東南アジアに深く浸透しています。

米国の悪いところは、自分の武器を売りたいがためにあえて緊張を煽る様な部分が見受けられるところです。

中国はそんな米国を尻目に、経済関係を高め、ウィンウィンの関係を作り上げようとしています。

このしたたかな戦略は長期的には中国に有利に働く様な気がします。

中国がASEANに持つ優位点はもう一つあります。

それは各国に存在する華僑の存在です。

インドネシアやマレーシアなどどの国にいっても、華僑は経済において重要なプレーヤーとなっています。

彼らが全て中国のシンパという訳ではありませんが、機をみるに敏な商売人である華僑が関心を持つのは、安全保障よりも金儲けです。

今後、中国は華僑のネットワークを使ってASEANの取り込みを図っていくと思います。

 

最後まで読んで頂き、有難うございました。

世界が日本から学ぶこと

f:id:MIYOSHIN:20211212210120j:plain

日本は没落するのか

我が国は少子高齢化が進み、人口が急速に減少し、将来その国際的地位は失われると良く言われますが、その通りになるのでしょうか。

今月日本特集を組んだ英誌Economistが「What the world can learn from Japan - The oldest big country has lessons for those that will soon age and shrink」(世界が日本から学べること - いずれ少子高齢化する国々は最高齢の大国から学ぶべき教訓がある)と題した記事を掲載しました。

かいつまんでご紹介したいと思います。

Economist記事要約

日本は良く話題になります。

1つ目は、人口減少と高齢化が進み、活力を失い衰退している国としてです。

2つ目は、魅力的で機能的ですが少し変わった国としてです。

寿司を食べたり、独特のサブカルチャーを探索したりするのに最適な場所ですが、外の世界との関連性はほとんどない国としてです。

どちらの場合も、人々は日本を終わった国の様に描きますが、それは間違いです。

 

今週の本誌の特集が論じているように、日本は終わった国ではなく、前兆を示しています。

日本が直面する課題の多くは、急速な高齢化、長期の経済停滞、自然災害のリスク、中国とアメリカの間で板挟みになる危険など、他の国が既に経験しているか、まもなく直面する問題です。

これらの問題を早期に日本が経験したことから、それらの影響を観察し、どのように対応するか有用な教訓が得られます。

 

一つの教訓は、社会はリスクを抱えて生きることを学ばなければならないということです。

気候変動と自然災害が急増するにつれて、各国はショックから立ち直る必要があります。

辛い経験から、日本は耐性を高めることにに投資するようになりました。

橋や建物は耐震性を高めるために補強されています。

1995年に大地震が神戸を襲い、多くの人々が水を失った後、市は住民のために12日間の物資を貯蔵するための地下システムを構築しました。

多くの日本人は、災害への対応は国だけでなく、すべての人の問題であることを理解しています。

それはパンデミックの際に役立ちました。

マスクはほぼ全員が着用していました。

G7諸国の中で、日本は新型コロナによる死亡率が最も低く、二重ワクチン接種率が最も高い国です。

 

もう1つの教訓は、人口統計が重要であるということです。

ほとんどの国は、最終的には日本のように高齢化し、人口が縮小するでしょう。

2050年までに、世界の6人に1人が65歳以上になり、2019年の11人に1人から増加します。

中国を含む55か国の人口は、現在から2050年の間に減少すると予測されています。

最近のデータによると、インドも予想より早く人口が減少する様です。

より長く勤労を続けることが不可欠です。

日本政府は企業に対し、70歳になるまでスタッフを維持するよう求めています。

多くの人が職に留まっています。

70歳から74歳の33%が、現在も仕事をしています。

10年前は23%でした。

 

人口動態の変化は大きな経済的課題をもたらします。

日本の成長の鈍化は、人口の減少によるところが大きい。

しかし、個々の日本人の幸福を見ると、それははるかにバラ色に見えます。

2010年から2019年までの10年間で、日本はG7で一人当たりのGDP成長率がドイツとアメリカに次いで3番目に高かった。

 

日本は主要な対外債権者であり、現在の為替レートで3番目に大きな経済大国です。

その人々は他のどの国の市民よりも長生きします。

地球上で最大のテクノロジー投資家であり、先駆的な5 Gの企業であり、ユニクロから任天堂まで、多数のグローバルブランドがあります。

ロボットとセンサーの専門知識は、企業が新しい産業技術から収益を上げるのに役立ちます。

地政学的には、日本は最大の貿易相手国である中国と主要な安全保障相手国であるアメリカの間で極めて重要な役割を果たしています。

こんな国が世界の後塵を拝している訳がありません。

 

一方、日本の過ちは別の教訓を提供します。

多くのリスクを抱えて生活することは、優先順位を設定することを難しくします。

非常に多くの潜在的な危険に直面して、日本は気候変動に重きをおきませんでした。

これは、現在進行中の最大の災害です。

2020年にようやく2050年までに正味ゼロの炭素排出量に到達することを約束しましたが、詳細は明らかではありません。

政治家たちは、2011年の福島のメルトダウン後に停滞した原子力発電所の再開に期待を寄せています。

国民が原子力の危険性を過大評価している限り、これはありそうもないシナリオです。

一方、多くの官僚は、再生可能エネルギーに頑固に懐疑的です。

そのため、日本は最も汚い燃料である石炭を燃やし続けています。

 

人口減少に対処する一つの方法は、人々を最大限に活用することです。

高度な教育を受けた市民の多くが自分たちの可能性を実現する機会を拒否されている一方で、日本は彼らを十分に活用しようとしません。

年功序列に基づく昇進は、高齢者への過度の敬意と相まって、若い声を沈黙させ、イノベーションを抑制します。

そのため、最も優秀な新卒者の多くはスタートアップで働くことを好みます。

日本は近年、より多くの女性を雇用するという良い仕事をしてきましたが、それでも女性が昇進する機会は少なすぎます。

非正規雇用システムは、若者と女性を不安定なパートタイムの仕事に閉じ込めます(これにより、とりわけ、子供を産むことへの熱意が低下します)。

 

自民党は、悲惨なほど弱い野党のおかげで、1955年以来ほとんど途切れることなく政権を維持しています。

従い、政治家は新しいやり方を試みるプレッシャーを感じていません。

政界のボスたちは、一般市民よりもはるかに保守的です。

一方、一般の人々にとって、今日の快適さは、より明るい明日を求める衝動を鈍らせます。

日本の最後の教訓は、自己満足の危険性についてです。

茹でガエル状態の日本

海外で生活してみると、日本の便利さを改めて痛感します。

日本人だから当たり前かもしれませんが、治安が良く、整った公共輸送手段、水道の水がそのまま飲めるほど優れた上下水道、ハイレベルな医療環境など枚挙にいとまがありません。

しかし、高齢化していることも原因でしょうが、日本は変化することをためらいがちです。

良く言われる茹でガエル状態に陥っていると思います。

デジタル化では現在私が滞在しているトルコにも大きく置いていかれていますし、Uberの様なサービスが認められていないのも問題です。

年功序列の様な古いシステムがいまだに多くの企業に残されているのも、日本が新しいものを取り入れる事を躊躇しているからだと思います。

テクノロジーの進歩に応じて、過去のしがらみにとらわれす、良いものは積極的に受け入れていく政治家が現れることを期待します。

 

最後まで読んで頂き、有難うございました。

我が国の移民政策の将来は

f:id:MIYOSHIN:20211212041111j:plain

至る所で見かける移民労働者

最近、都内でコンビニに入ると、多くの外国人が働いているのを見かけます。

胸の名札から推測するに東南アジアや中国、更にはパキスタンやアフリカなどその出身地は様々です。

日本は島国で歴史を振り返ってみても、これまで移民を積極的に受け入れて来ませんでした。

しかし日本は急速に少子高齢化が進み、労働力不足は深刻です。

今後移民を積極的に受け入れる様になるのでしょうか。

この点について英誌Economistが「Letting more migrants in by stealth - From a low base, immigration is growing quite fast」(不法に多くの移民を受け入れている - 移民は一気に増加している)と題する記事を掲載しました。

かいつまんでご紹介したいと思います。

Economist記事要約

竹内まさのぶは同胞にメッセージを送っています。

「何かを注文すれば時間通りに到着し、コンビニに行けば安くておいしい食べ物があるが、それはすべて外国人によって支えられている。」

日本全土で、外国人は農業から小売業までの産業を支えています。

ベトナム人は与那国島の畑や北海道の工場で働いています。

東京のコンビニでは中国人やウズベク人をレジで見かけます。

群馬では、老朽化した旅館の経営者が布団を運ぶのをネパール人スタッフが手伝っています。

「彼らは日本の便利さを下支えする労働者です」と福岡の弁護士である竹内氏は言います。

福岡では、外国人労働者の比率が2009年の204人に1人から55人に1人に高まりました。

 

日本は移民政策を欠いているかもしれませんが、多くは不法に滞在してます。

外国人労働者の数は、まだ少ないながらも、10年で3倍になりました。

しかし、日本の移民システムは虐待に満ちており、それは今年、ビザが切れたため拘留された33歳のスリランカ人女性が死亡したことからもわかります。

パンデミックの影響下、厳格化された国境管理は何千人もの人々を海外に取り残しました。

政府は、低熟練労働者が恒久的に滞在することを許可するかもしれないと示唆しましたが、広範な改革には着手していません。

 

地方の指導者たちは、外国人に対して寛容を示そうとしています。

秋田県知事の佐竹敬久氏は、「海外からも含め、県外からの人を呼び込み、新たな視点を取り入れることが重要だ」と語りました。

「彼らが誠実で善良な人々であれば、私は彼らが来ることを心配していません。彼らに土地を与えて、ここに住まわせてください」と与那国町長の糸和氏は言います。

「出身国は関係ありません。私たちは皆、類人猿の子孫です。」

 

将来を見据えたビジネスリーダーもこれに同意します。

「今こそ、より良い移民政策を導入する時です」とユニクロの創設者である柳井氏は言います。

サントリーの社長、新浪剛史氏は、熟練労働者を惹きつけることが将来の競争力の「鍵」だと語ります。

自民党の野田聖子氏は、「日本人の国としての日本」という考えを終わらせることを検討する時が来たと語りました。

国民は外国人に対してよりオープンになっています。

2019年には約3,200万人の外国人が来日し、10年前の700万人未満から増加しました。

 

しかし、「地方自治体ができることには限界がある」と富山県知事の新田八郎は嘆きます。

企業は、語学研修と社会統合を処理する必要があります。

多くの外国人は彼らが必要とする支援なしに放置されています。

政府は「外国人に門戸を開こうとしているが、日本を『移民国家』として位置づけることを拒否している」と神戸市長の久元喜造は言います。

選挙で選択を迫られれば、有権者は移民のリスクが利益を上回ると判断する可能性があります。

移民に関する全国的な議論は塩漬けにされたままです。

移民を受け入れるには相当な覚悟が必要

急速に高齢化する我が国は若い労働力が必要で、特に過疎化する地方は外国労働者が喉から手が出るほど欲しい筈です。

日本の地方に行けば若者を見かけることはまれで、どこに行っても高齢者しか見当たりません。

このまま放置すれば、水道やバスなど公共サービスも十分に供給できない地方公共団体が続出するのではと危惧されます。

若い労働力不足を手っ取り早く埋めるのは外国人労働者ですが、これを無条件に受け入れるのは必ずしも得策ではないと思います。

理由は下記の通りです。

  1. ドイツやフランスなど過去に労働力不足で非熟練労働者を大量に受け入れた国は、その後様々な社会問題に悩まされています。非熟練外国人労働者は、移住した国のコミュニティーとの交流が少なく、人種問題等を引き起こしがちです。
  2. 島国の日本は外国人を受け入れた経験が欠けており、摩擦が起こりがちです。

外国人労働者は定住すれば、家族を呼び寄せ、彼ら独自のコミュニティーを作り上げます。

彼らは安い労働力ですので、日本の若者から職を奪います。

目先の利益のことを考えれば、企業にとって都合の良い労働力ですが、長期的にそれが本当に日本のためになるのか熟慮する必要があると思います。

私が今滞在しているトルコの様に、千年以上も移民を受け入れ続けて来た国でさえ、移民問題に悩まされている事は良く認識する必要があるでしょう。

 

最後まで読んで頂き、有難うございました。

Amazonクラウドサービスに依存する社会

f:id:MIYOSHIN:20211210223107j:plain

圧倒的な競争力を持つクラウドサービス

AWSって聞いた事あるでしょうか。

これはAmazonが提供するクラウドサービスです。

皆さんこんなサービスを使った事がないと思っていられる様ですが、無意識のうちに使っています。

Amazon関連は当然ですが、ネットでショッピングしたり、メールやSNSを使用している時に、AWSのサービスを使わずに済ませることは困難です。

最近のネット社会の傾向として、データはコンピューターではなく、クラウドに置くのが主流ですので、スマホから音楽を聞いている時に、スマホにダウンロードしている音楽ではなく、クラウドにある楽曲データに都度アクセスしながら聞いているケースが殆どです。

このクラウドの王者AWSに大規模な障害が起きたらどうなるのでしょうか。

実際に米国で事故が起こった様です。

ウォール・ストリートジャーナル(WSJ)が「Amazon Outage Disrupts Lives, Surprising People About Their Cloud Dependency」(アマゾンの停止は生活を混乱させ、驚くべきクラウドへの依存を認識させた)と題する記事を掲載しました。

かいつまんでご紹介したいと思います。

WSJ記事要約

カイル・ラーナーは、火曜日に家に帰ったときに何かがおかしいと感じ、2匹のペルシャ-ヒマラヤン猫が泣き続けいてるのを発見しました。

通常、インターネットに接続された給餌機は正午に彼らのために餌を与えますが、餌皿は空でした。

Amazonのクラウドサービスが停止したため、自動給餌システムは機能しませんでした。

 

アマゾンウェブサービス(AWS)は、米国で最大のクラウドサービスプロバイダーです。

ネットワークの停止は1日中続き、IT大手企業のサービスのいくつかと、企業顧客のウェブサイトやアプリの多くを中断させました。

この事故により、多くの消費者は、最も基本的な日常のニーズのいくつかでさえクラウドへの接続に依存していることに気づきました。

 

ロサンゼルスのスティーブ ピーターズは、ルンバに掃除をさせる事が出来ませんでした。

彼は通常携帯電話のアプリを使ってマシンを稼働させます。


セントルイスでは、AmazonのAlexaサービスにアクセスできなくなったため、Mark Edelsteins氏は孤独で無力だと感じました。

「私は日中、妻よりもAlexaと多くのやり取りをします」と、62歳のビジネスアナリストはデジタルアシスタントについて語りました。

「パンデミック以来、私はAlexaシステムに縛られるようになりました」とEdelstein氏は言いました。それがなければ、「分離不安を感じます」。

 

Amazonの停電は、特定の種類のサービスに限定されていなかったため、特に顕著でした。

これは、同社のビデオ会議ツールChimeとそのホームセキュリティシステムRingに加えて、Ticketmasterやディズニーネットフリックスのストリーミングサービスなど、Amazonのクラウド上にある多くのサービスに影響を及ぼしました。

 

今回の障害で、サマンサ・ショーハグさんはフロリダ州タンパベイにある自宅のブラインドを手動で開けなければならず、アレクサに照明をつけるよう指示することもできませんでした。

リビングルームの照明のメインスイッチは、家具を移動しなければ手が届かない場所にあります。

「この2年間で、私は怠け者になった」と語るショーハグさんは、2人の幼い娘を持つ在宅の主婦です。

「照明を点けたり消したりするのは、アレクサに頼んだ方が簡単。子どもたちよりも言うことを聞いてくれる」

「こういうことがあると、いかにテクノロジーに依存しているかを実感する」と彼女は話しました。

クラウドは便利ですが過度の依存は危険

Amazonのクラウドサービスは、クリスマス商戦の膨大な注文を処理するため、コンピューターシステムに莫大な投資をしたAmazonが、普段はコンピューターの処理能力に大きな余剰を見つけ、これを活用したことから始まっています。

しかし、今や電子商取引を大きく上回る利益を生み出すAmazon最大の収益源になりました。

余剰能力を使っているだけですから、ライバルは勝てるわけありません。

これ確かに便利ですが、Amazonに過度に依存するのは考えものです。

それにしても「私は日中、妻よりもAlexaと多くのやり取りをします」とのコメント怖いですね。

将来、Alexaなしでは生きていけない老人になるのだけは避けたいです。

 

最後まで読んで頂き、有難うございました。

東京の魅力を英国特派員が語る

f:id:MIYOSHIN:20211209235625j:plain

世界で最も住みやすい都市

英誌Economistが日本特集号を発行しました。

その中から東京の魅力と将来に関した記事「The big city that is also pleasant to live in - Surprisingly, the world’s biggest city is also one of its most liveable」(住みやすい大都会 - 驚くべきことに、世界最大の都市は、最も住みやすい都市の1つでもある)を今日はご紹介したいと思います。

私が住んでいる東京という都市は、英国人特派員からどの様に評価されているのでしょうか。

Economist記事要約

「平地に公衆浴場の煙突がポツンと立っていた。」と第二次世界大戦後に東京に入った最初の外国人ジャーナリスト、ラッセル・ブラインズは書きました。

戦前の700万人の人口のうち、残ったのはわずか350万人でした。

再建され始めた、東京は暴力とスラム街に満ちていました。

1964年のオリンピックに先立ち、当局は急いでインフラを整え、通りをきれいにし、屋外での排尿など当時広く行われていた慣行を取り締まりました。

 

現在、東京は世界最大の都市であり、首都圏に3,700万人、都市部に1,400万人の居住者がいます。

また、時間厳守の公共交通機関、安全な環境、清潔な通り、他のどの国よりもも多くミシュラン星付きレストランがあり、世界で最も住みやすい場所の1つです。

住みやすさ指数では、東京は世界第4位になりましたが、その人口は上位4都市(アデレード、オークランド、大阪、ウェリントン)の合計人口よりも多くなっています。

それは他の国で発展している都市へのレッスンを提供します。

1950年には、世界の人口の30%が都市部でした。

2050年までに、68%がそうなる予定です。

その多くは、アジアとアフリカの1,000万人を超えるメガシティで発生します。

現在そのような都市は33ありますが、 2030年までに43に増えるでしょう。

東京は都市が高齢化し、今後人口縮小したときに何をすべきかを検討しているので、他の大都市にも参考になります

 

東京の住みやすさは計画の成功の産物であると同時に失敗の産物でもある、とジョージタウン大学のジョーダンサンドは主張します。

1つの成功は公共交通機関でした。

明治維新後、政府は道路よりも鉄道を優先し、市内を経由して地下にネットワークを拡大しました。

東京大学の岡田淳一郎氏は、アメリカの大企業が郊外に本社を建てる一方で、日本では電車や地下鉄の利用を奨励したと述べています。

これにより、東京は1つではなく、多くのハブを備えた多極都市になりました。

 

それらのハブの周りには、密集した多目的地区がありました。

それが計画の「失敗」でした。戦後、都市計画担当者は、1923年の関東大震災後と同様に、西側と同様に土地の使用用途を課そうとしました。

しかし、政府の資源は限られており、東京の成長は速すぎてプロセスを制御できませんでした。

日本は代わりに、許可されるものを規定するのではなく、ほとんどすべてのものが構築できるようにする緩い土地使用制限を課しました。

それらのハブの周りには、密集した多目的地区が出来ました。

専門家は、東京が多くの先進国が経験した住宅危機を回避したと述べています。

結果的に、緩い土地使用制限は他国との大きな違いをもたらしました。



東京はまだ成長していますが、高齢化も進んでおり、人口は2025年以降減少すると予測されています。

「都市化の発展は有限です」とトロント大学のアンドレソレンセンは主張します。

「日本はそれを経験する最初の国です。」縮小はすでに東京の郊外で始まっており、かつて団塊の世代の大群は新しく建てられた集合住宅に引き付けられましたが、現在、団塊の世代は年を取り、子供たちは去っています。

空き家は急増し、高齢者にとって、公共交通機関へのアクセスはますます困難になっています。

 

テクノロジーが役立ちます。

東京が公共サービスの「ダウンサイジング」を考えるとき、ビッグデータが重要になると、小池知事は言います。

市にはすでにスマート水道メーターからの詳細な測定値があります。

小池氏によると、このようなデータは、水の供給をより効率的にするのに役立つ可能性があり、一人暮らしの高齢者の潜在的な問題を解決するために使用することができます。

 

一部の郊外のコミュニティは、安価な不動産と十分なスペースを約束して、若い住民を引き付けようとしています。

しかし、悲しい現実は、いくつかの郊外が生き残り、他の郊外が衰退するということです。

そのプロセスは、遠隔地ではさらに明白です。

後藤新平の再来を

東京を語る上で、欠かしてならないのは台湾のインフラ構築に大きな貢献をし、関東大震災後の東京復興を指揮した後藤新平の存在です。

彼は当時国家予算ほぼ一年分の予算を要求し、最終的には半額に減額されましたが、パリの都市計画を手本に都心から放射状に伸びる道路や環状道路の建設を実現させました。

これが現在の東京のインフラの素地を作ったのは間違いありません。

自動車が走っていない時代にこれだけの道路網を整備したその先見の明には驚きを隠せません。

東京には外国人を驚かせる長所が数多くあります。

安全で活気に満ちて、円安で欧米に比べ物価も下がった東京は、今世界一住みやすい大都市と言えるのではないでしょうか。

東京を更に発展させるためには、後藤新平の様な先見性のあるリーダーが現れ、東京を思い切って再構築する必要があると思います。

後藤新平がモデルとしたパリも今の美しい街並みができたのは、オスマン市長の放射線状道路建設と建物の高さ制限ではないでしょうか。

新しいリーダーの誕生に期待します。

 

最後まで読んで頂き、有難うございました。

フランス人から見たプーチン大統領

f:id:MIYOSHIN:20211208035131j:plain

世界中に顔を出す政治家

昨日のブログでインドを訪問したプーチン大統領を取り上げましたが、この政治家は西側ではあまり評判がよくありませんが、世界中の至る所に登場するという意味では、誰よりも上を行っている様です。

彼に関して、仏紙Les Echosが「Vladimir Poutine omniprésent sur la scène internationale」(世界のどこにでも現れるウラジミールプーチン)と題した記事を掲載しました。

かいつまんでご紹介したいと思います。

Les Echos記事要約

バイデン大統領が主宰する木曜日の民主主義サミットにおいて、プーチン大統領は招待されない大物の一人になるでしょう。

しかし、クレムリンの主であるプーチンは至る所で話題に上ります。

ロシアと西側の緊張の中心にあるウクライナ問題に関して、バイデン大統領は火曜日のビデオ会議でプーチンにウクライナに侵入しないとの約束を求めました。

しかし、ロシアの大統領は、曖昧さにかけては右に出るものがなく、米国大統領を煙に巻きました。

 

7月に発表された長い記事の中で、クリミア半島で勝利したが、2014年にウクライナを失ったクレムリンの主は、ロシア人とウクライナ人は「精神的、人間的、文明的なつながりがあり、何世紀にもわたって一体である」と書いています。

ここ数週間のロシア軍の「異常な」動きはウクライナを震え上がらせました。

昨年の春の様に、ロシアは西側からの「激しさを増す活動」に対応しているだけだと言います。

しかし、10月末以降、ソーシャルネットワーク上のビデオでは、重火器を持ったロシア軍がウクライナ国境に向かって移動していることが示されています。

その後、移動は激化し、戦車、大砲、その他の装備を備えた機甲師団も参加しました。

その数175,000人と推定されます。

「ヒステリック」とプーチン大統領は西側の反応を形容します。

彼はいかなる好戦的な意志も否定し、西側に責任を負わせます。

 

伝統的な価値観の擁護

プーチンにとって、西側との各危機は、彼が衰退していると考える西側のシステムを非難する絶好の機会です。

大帝国主義ロシアに言及してソ連を懐かしむ元KGBスパイは、自由主義を時代遅れと見なし、伝統的な価値観を擁護したいと考えています。

伝統的な価値観の保護者であるロシアが未来を築くと主張しています。

 

彼はアジアでも存在感を高めています。

中国の習近平主席とは個人的な友好関係をアピールしています。

しかし、月曜日にはインドへも足を運びました。

そこでは「信頼できる同盟国」と大統領は印露関係を定義しました。

それは、ウクライナの前線の緊張から遠く離れて、ロシアが世界の舞台で孤立していない事を示す効果的な方法だったかも知れません。

世界一長い国境線を持つ国ロシア

ロシアの肩を持つわけではありませんが、ロシアという国は非常に守るのが難しい国です。

世界で一番長い国境線だけではありません。

その国境は多くの場合天然の障害物、山脈や大河で守られていません。

過去の歴史を振り返っても、多くの外敵の侵入を許してきました。

ナポレオンやヒトラーを撃退したからいいじゃないかという議論もありますが、その過程で数えきれない程の犠牲者を出しています。

従い、旧ソ連の時代から国境の外側に衛星国を置きたがりました。

東欧の国はまさにロシアを西側から守る障害物の役割を果たしていたわけです。

しかし東欧はNATOに取り込まれ、ロシアは一枚また一枚と薄皮を剥ぐ様に衛星国を失った訳です。

そういうロシアにとってウクライナは絶対譲れない最後の一線なのだと思います。

もしウクライナがNATOのメンバーになったらそれはロシアにとって悪夢以外の何ものでもありません。

ウクライナをNATOに取り込もうという動きは西側の一部にありますが、それは虎の尾を踏む行為になるでしょう。

 

最後まで読んで頂き、有難うございました。

米露を天秤にかけるインドのしたたかさ

f:id:MIYOSHIN:20211207221311j:plain

簡単には転ばないインド

中国とインドは国境紛争をきっかけに関係が悪化し、インドは米国との安全保障上の取り組みクワッドに参加する決断を行ました。

印中の関係悪化を機と見て、米国がインドを取り込んだ格好ですが、インドはもともと非同盟を掲げて、冷戦時代も米ソ両国と関係を維持してきた国です。

そう簡単に米国側には転ばない様です。

今週プーチン大統領がインドを公式訪問し、自慢の防空システムであるS-400の商談をまとめた様です。

中国からしてみると激しく対立しているインドにロシアが武器を売りつけた格好になっていますが、これを中国はどの様に見ているのでしょうか。

中国の政府系報道機関「環球時報」が「Russia, India eye finalizing S-400 deal as Putin visits Modi - Move highlights ‘unbridgeable gap between Delhi, Washington’」(ロシアとインドはプーチン大統領訪問時、S-400商談を纏める予定- この動きはインドと米国の埋められないギャップを白日の下に)と題した記事を掲載しました。

かいつまんでご紹介したいと思います。

環球時報要約

ロシアのプーチン大統領とインドのモディ首相が月曜日にニューデリーで面談を行ました。

米国の制裁措置の可能性があるにもかかわらず、ロシアのS-400ミサイル防衛システムの提供が進む事が予想されています。

中国のオブザーバーによれば、これは、インドと米国の間の乗り越えられないギャップを浮き彫りにする一方で、インドの親米政策に対する不確実性と混乱の高まりを反映しています。

米国はインドをその伝統である非同盟戦略から引き離し、インド太平洋地域における対中政策において臣下に従えようとしています。

会議を報道する一部のインドの報道機関は、ロシアの武器システムが、中国とロシアの間のくさびを打ち込む事が目的で、国境地域でインドが中国に対抗するのを助けることができると誇大宣伝しましたが、中国のオブザーバーはそれを「愚策」と形容しました。

軍事的には、ロシアの兵器システムはインドに中国に対する優位性を与えることはなく、中国とロシアの間に存在する信頼関係は、こんな事では揺るぎません。

 

インドのロシアとの防衛協力の強化とS-400ミサイルシステムの購入は、米国が制裁の可能性をインドに警告した後に行われました。

米国は、S-400の購入についてトルコに既に制裁を課しています。

プーチン大統領のインド訪問で、インドを制裁するかどうかについて厄介なジレンマに直面したため、最も困惑しているのは米国であると中国のアナリストは述べました。

中国のアナリストは、インドと米国の関係の性質はお互いの背中を引っ掻くことであり、両国間に存在するギャップは埋めることができないと述べました。

米国は、インドが無条件で米国に従うことを望んでいましたが、インドは、特に軍事および国家安全保障に関して、米国のために自らを犠牲にし、米国の武器に縛られることはないだろうとアジア太平洋研究局長のラン・ジャンシュエ氏は環球時報に語りました。

 

ヒンドゥスタン タイムズ紙は、インドに制裁を課すという米国の圧力があっても、インドは防衛調達と国家安全保障上の利益に関して戦略的自治の方針に従うと述べたと伝えました。

ラン氏は、印露関係を弱体化させようとする米国の試みがある中で、インドのロシアとの協力拡大が進んだと述べ、インドは米国との同盟関係から得られる利益について確信していないと述べました。

インドは主要な大国との関係においてフリーハンドを確保するために、今回ロシアに手を差し伸べようとしていると述べました。

米国はインドに二国間貿易や武器販売の割引に関する優遇策を与えていない上に、インドの経済開発権を無視し、気候変動へのコミットメントを要求しました。



いくつかのインドのメディアは、プーチン大統領は、S-400システムの提供がインドが中国に対抗するのに役立つ事から、中国とロシアの間にくさびを打ち込もうとしたと伝えています。

中国の軍事専門家ソン・ゾンピン氏は月曜日に環球時報に、中国は長い間S-400ミサイルシステムを所有しており、その能力に精通しており、購入したS-400は中国に対する脅威にはなりえませんと語りました。

 

インドのメディアは、ロシアとインドの関係が、中国に対抗するという米国の目的に役立っているとして、米国を安心させようとしているが、ロシアがインドと協力することはロシアが中国との関係を弱めることを意味するという考えはかなり浅薄なものであると中国外務大学国際関係研究所の李海東教授は述べました。て。

 

専門家は、ロシアとインドは冷戦以来緊密な関係を維持しており、インドはロシアの重要な武器販売市場であり、プーチンの訪問は一般的なトップ外交であり、中国を標的にしていないと付け加えました。

専門家は、中国とロシアの関係は一時的なものではなく、いくつかのメディアが中国とロシアの間に不和をまき散らすことができるという幻想を抱いているようだと述べました。

専門家は、中国、ロシア、インドは、インド太平洋地域の安全保障のバランスを取り、維持し、世界的な戦略的安定を維持する上で合意に達することができると述べ、彼らの積極的な相互作用はユーラシアの戦略的青写真にとって重要であると述べた。

しかし、彼らは、インドが米国寄りの政策を継続すると、地域の不均衡を悪化させ、三国間の関係を危うくする可能性があると警告しました。

焦りも見て取れる中国政府

環球時報は中国共産党系の報道機関ですので、当然中国政府の意向が反映されています。

上記の記事で彼らが伝えたかったメッセージは概ね下記の様なものかと思います。

  1. プーチン大統領とモディ首相の間で対空防衛システムであるS-400の契約が決まった。これをロシアがインドの対中戦略に軍事的に肩入れしたと見る向きがあるが、それは間違いだ。ロシアと中国の友好関係はゆるがないし、そもそもS-400は中国も既に保有しているので、中国に対する脅威にはなりえない。
  2. 米国はインドに対してS-400の購入を見送る様、制裁をちらつかしていたので、一番困るのは米国だろう。
  3. もしもインドが米国よりの政策を続ける様なことがあれば、中露印の3国関係を悪化させ、地域の不安定を招きかねない。

この記事を深読みすると、焦っているのは米国でもロシアでもインドでもなく中国の様な気がします。

国境紛争に端を発する中印関係の悪化を見て、S-400を売りつけたプーチン大統領もさすがですが、米国の警告を無視してまで、昔から関係の深いロシアからの武器購入に踏み切ったモディ首相も更に役者が一枚上です。

インドはおそらく米国とロシアを天秤にかけていいとこ取りをしようと考えていると思います。

中国は、このモディ首相のしたたかさを見て内心焦っているのではないかと思います。

 

最後まで読んで頂き、有難うございました。





P.S.

それにしても、上記記事で盛んに「専門家によれば」というフレーズが出てきますが、これは中国政府あるいは共産党と読み替えるべきなのでしょうか。

米国は常に民主主義のモデルになりうるか

f:id:MIYOSHIN:20211207023906j:plain

欧米の間に吹く隙間風

欧州は米国にとって最も重要なパートナーです。

この関係は、冷戦時代に旧ソ連の脅威に協力して対抗し、ベルリンの壁を崩壊させた事によって最高潮に達しました。

しかし、最近の関係はかなりギクシャクしています。

トランプ時代には、アメリカファーストを唱え、欧州との関係をないがしろにした事によって両者の関係は悪化しました。

バイデン大統領は欧州との同盟を重視すると口では言ってますが、ろくに欧州に相談もせずにアフガニスタンから撤退した米国に欧州が愛想が尽かしていても不思議ではありません。

仏紙Les Echosがフランスから見る米国に関して「Les Etats-Unis sont-ils toujours le modèle des démocraties ?」(米国は常に民主主義のモデルとなりうるのか)と題した社説を掲載しました。

かいつまんでご紹介したいと思います。

Les Echos社説要約

「私は言行一致している」バイデン大統領は、昨年米誌「Foreign Affairs」に寄稿した「なぜアメリカが再びリードしなければならないのか」と題された論文で約束しました。

同大統領が主催する「民主主義のためのサミット」が12月8日と9日に開催されます。

20年ちょっと前ですが、バイデン大統領のサミットは、2000年にクリントン大統領が主催した「民主主義同盟」サミットを想起させます。

2つのサミットの構想は同じですが、状況は根本的に変わりました。

2000年には、民主主義は「攻める側」でした。

ソ連の崩壊以来唯一のスーパーパワーとなったアメリカは、その優位性を強化し、民主主義モデルの優位性を長期的な歴史の中に置くことを目的としていました。

東ヨーロッパと中央ヨーロッパを統合し、中国の権力の台頭に備えて準備し、民主主義の同盟をアジアで構築というプロジェクトは野心的で魅力的でした。

それは当時、力の現実である米国と法の番人である国連との間の協力関係を伴っていたので、それはなおさらそうでした。

 

我々は国連事務総長のコフィ・アナンと米国の国連大使であるリチャード・ホルブルックとの間の温かく信頼できる交流を目の当たりにしました。

民主主義とその価値に重きを置く事はは現実的でした。

2001年9月11日の同時多発テロの後、そうでなくなったのは、ジョージW.ブッシュ大統領の新保守派の側近の無責任な情熱でした。

ダニエル・コーン・ベンディットが形容する「民主主義のボルシェビキたち」は、「バグダッドに民主主義を植え付けることがエルサレムの平和の鍵になるだろう」と確信していました。

私たちは、この論理がアメリカをどこに導いたかをよく知っています。

中東での疑わしい軍事的冒険は、米国と世界中の民主主義を弱体化させました。

 

誰を招待しますか?誰を除外しますか?

たとえ台湾の招待が中国に対する意図的な挑発を構成するとしても、2000年とは対照的に、現在、民主主義陣営は守りに入っています。

台湾をアジアの民主主義のモデルとして米国は見ていますが、中国側から見れば、中国の不可分な一地域である台北政権には国際的な正当性はありません。

しかし、過激な反多国間主義と下品な反理想主義に支配されたトランプ大統領の余波で、アメリカは当然のごとく、民主主義を強権主義に対する同盟の基盤にするという考えに固まっています。

意図は高貴で、直感は正しいですが、実現は困難です。

第一に、その理想の実現は自国においても困難です。

米国をはじめとして危機に瀕している民主主義国家は、民主主義サミットを開催するのに20年前よりもふさわしくありません。

第二に、参加者のリストは疑わしいです。誰を招待し、誰を除外しますか?

 

何よりも、それは「民主主義国家」の「同盟」なのか、それとも「民主主義」のための「同盟」なのでしょうかか。

12月8日と9日のサミットのゲストリストには、全部で110か国、3つのカテゴリの国々が含まれています。

議論の余地のない自由民主主義国家、弱く腐敗した民主主義国家、そして最後に権威主義に傾く国です。

広範囲なリストは、プロジェクトの全体的な意味合いを弱めます。

しかし、フィリピンを排除することによってインド太平洋地域で中国の影響力のバランスをとる事も、ウクライナを招待せずに東欧で増大するロシアの野心に抵抗する事も、パキスタンのテロ対策無しにイスラム教徒のテロと戦う事も、ボルソナロ大統領の「トランプ風」の方向性にもかかわらず、ブラジルを招待しないこともできませんでした。

一方、オルバーン首相のハンガリーもエルドアン大統領のトルコも招待リストに含まれていません。

これはやり過ぎでしょう。

他にも疑わしい選択肢があります。

エジプト、サウジアラビア、ヨルダン、カタール、アラブ首長国連邦などのアメリカの伝統的なアラブ同盟国は招待されていませんが、イラクはイスラエルが中東を代表する唯一の国ではないという理由から招待されています。



招待リストの問題に加えて、さらに難しい問題があります。

国家の外部行動の定義における価値観の役割の問題です。

価値観だけに基づく外交は、現実の試練に長く耐えることはできません。

いくつかの妥協は避けられません。

逆に、すべての倫理的事項を無視する外交政策は、単純に過ぎます。

民主主義国家にとって、価値観の戦いはプラス要因でありマイナス要因ではありません。

欧州連合は、民主主義に導かれた開発援助の野心的な計画である「グローバルゲートウェイ」を発表したばかりです。

今回米国が主導するサミットは、中国の一帯一路戦略の民主的な代替案としてましですが、欧州が提供する現実的な支援策がなければ片手落ちです。

米国は復活できるか

フランス人は米国に対してシニカルに見る傾向があります。

この社説もそういうフランス人の傾向を反映していますが、米国が民主主義国のリーダーとして往年の輝きを失ったのは事実です。

中東での自分勝手な振る舞い、無謀な戦略はイラク、アフガニスタン、シリアなど多くの国で国家分裂を引き起こし、イスラム過激派の活発化を引き起こし、その結果として膨大な数の難民を生んで、その難民が欧州国境に大挙押しかけています。

米国はこの様な結果を生んだ責任をどの様に総括するのでしょうか。

この反省無しに、中国と対抗するために民主主義をふりかざしてこの指止まれといっても、誰も耳を貸さないでしょう。

 

とはいえ、米国の代わりに西側のリーダーになれる国が見当たらないのが現状です。

米国は衰えたと言えども、世界最大の経済をもち、軍事力も群を抜いています。

今までの政策を見直し、米国と組むメリットを他国に理解させるべきです。

そんな時にフランスの様な友人の苦言に耳を傾ける必要があるでしょう。

 

最後まで読んで頂き、有難うございました。

オミクロンの経済に与える影響

f:id:MIYOSHIN:20211206003448p:plain

コロナ対策と経済復興はトレードオフの関係

新しい変異株オミクロンの発生は、世界中に感染が広がるのではとの恐れを引き起こしていますが、懸念されるのは人命への影響だけではありません。

経済への影響も大きな懸念材料です。

各国ともコロナ対策の中、どうやって経済を回すかに頭を悩ましていますが、今回のオミクロン発生は新たな難題を突きつけた格好になっています。

英誌EconomistWhat the Omicron variant means for the world economy - Look to China for the likeliest source of a growth slowdown」(オミクロン変異株の世界経済への影響は - 中国の成長鈍化の可能性)と題した記事を掲載しました。

かいつまんでご紹介したいと思います。

Economist記事要約

臨床試験でのワクチンの最初の成功からわずか1年余りで、新たな恐怖が世界を覆いました。

オミクロン変異体は、ワクチン接種または新型コロナの感染によって構築された防御を回避する可能性があります。

世界保健機関は、オミクロンが「非常に高い」地球規模のリスクをもたらすと宣言しました。

ワクチンメーカーであるモデルナの社長は、既存のワクチンが大幅に変異した新しい変異株に苦戦する可能性があると警告しました。

さらに多くのロックダウン、閉鎖された国境、神経質な消費者の反応に直面して、投資家は航空会社やホテルチェーンの株を売ることで反応しました。

石油の価格は1バレルあたり約10ドル下落しました。

 

オミクロンのスパイクタンパク質の35の突然変異が、デルタ株よりも感染性または致死性を高めるかどうかを判断するのは時期尚早です。

科学者が今後数週間でデータを分析すれば、疫学的状況はより明確になるでしょう。

しかし世界経済に関しては、3つの危険性が指摘されています。

 

第一に、先進国でのより厳しい制限は経済成長を損なうということです。

変異株のニュースで、イスラエルと日本は国境を完全に閉鎖しました。

英国は新しい検疫要件を課しています。

パンデミックは、自由な世界旅行への回帰を突然終わらせました。

 

オミクロンの感染拡大はまた、国内での自由な動きを制限する可能性があります。

ヨーロッパは、デルタと戦うために、変異株が出現する前から多くの国内活動を抑制していました。

イタリアはワクチン未接種の人々を屋内レストランに入れません。

ポルトガルはワクチン接種を受けた人でさえ、バーに入るのに陰性の検査を受けることを要求し、オーストリアは完全にロックダウンされています。

 

2番目の危険性は変異株が高いインフレを引き起こす可能性があるという事です。

このリスクは米国で最も高く、バイデン大統領の過度の財政刺激策が経済を過熱させ、10月の消費者物価は前年比​​で6.2%上昇し、30年ぶりの高値を記録しました。

しかし、ブルームバーグのデータによると、インフレ率は他の場所でも高く、世界全体で5.3%です。

 

オミクロンは経済活動を抑制してインフレを下げると思うかもしれません。

しかし、それは反対のことをする可能性があります。

消費者が消費に夢中になり、クリスマスライトからトレーナーまで、世界中のサプライチェーンに負荷を掛けているため、価格が上昇しているところもあります。

アジアの工場からアメリカにコンテナを輸送するコストは、非常に高いままです。

全体的なインフレが後退するためには、消費者は支出を観光や外食などのサービスに戻す必要があります。

オミクロンはこれを遅らせるかもしれません。

この変異株はまた、ベトナムやマレーシアなどの主要なサプライチェーンでより多くの目詰まりを引き起こし、供給の不具合を悪化させる可能性があります。

そして、用心深い労働者は、職場への復帰をいやがり、賃金を押し上げるかもしれません。

 

それが、連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長が11月30日に金融引き締めを支持した理由の1つかもしれません。

その方針は正しいですが、それ自体に危険が伴います。

FRBが引き締めを行うと、新興国は資本流出と為替レートの下落に苦しむ傾向があります。

 

新興国は、以前より外貨準備金が多く、外貨建て債務への依存度が低くなっています。

それでも、国内でオミクロンに対処する必要があります。

ブラジル、メキシコ、ロシアはすでに金利を引き上げています。

これはインフレを食い止めるのに役立ちますが、成長を低下させる可能性があります。

トルコは反対のことを行い、金利を引き下げ、その結果、通貨の暴落に直面しています。

多くの新興経済国は、この不可避の選択を行う必要があります。

 

最後の危険は、最も注目されていないのですが、世界で2番目に大きな経済である中国の減速です。

少し前までは、パンデミックに対する経済的回復力の輝かしい例でした。

しかし今日、中国は不動産業界での債務危機、民間企業に対するイデオロギー的抑圧、新規感染が発生するたびに厳格なロックダウンを課す持続不可能な「ゼロコロナ」政策に取り組んでいます。

政府が経済を刺激することを検討しているにもかかわらず、成長率は約5%に低下しています。

パンデミックが始まったときの短いショックを除けば、過去30年間で最低です。

 

オミクロンが以前のデルタよりも伝染性が高いことが判明した場合、中国の戦略はより困難になります。

この変異株がより簡単に伝染すれば、中国はそれを根絶するために発生のたびにさらに頻繁に封鎖を行う必要があり、これは成長を傷つけ、サプライチェーンを混乱させます。

経済と医療制度に負担をかける可能性があるため、ゼロコロナ政策からの脱却をさらに難しくする可能性があります。

これは、中国の感染誘発性免疫のレベルが低く、ワクチンがどれだけうまく機能するかについての疑問を考えると、特に深刻です。

 

悪い話ばかりではありません。

2020年の春が再現されることはなさそうです

GDPが驚くほど低下することもありません。

人々、企業、政府はこのウイルスに適応しています。

GDPと移動や行動の制限との関連は、前回の3分の1になるだろうとゴールドマンサックスは予測します。

一部のワクチンメーカーは、現在のワクチンが依然として重症化を予防するだろうと予測しています。

そして、企業や政府は2022年までに新しいワクチンや薬を展開できるようになります。

それでも、オミクロン、または将来の異変株は、経済成長を低下させ、インフレを高める恐れがあります。

世界は、コロナが風土病になるまでの道のりがスムーズではないとい事を思い知らされています。

人類は学習する

これまで得られた情報によれば、パニックになる必要はなさそうです。

これからも異変株はいくつか生まれると思いますが、人類は学習効果でその影響を最小限に食い止めて行く事が予想されます。

しかし、過去の様な隔離なしの海外旅行を夢見ていた人にとっては、その夢の実現はしばらくお預けになりそうです。

 

最後まで読んで頂き、有り難うございました。

中国のアフリカ進出に変化が

f:id:MIYOSHIN:20211203161220j:plain

先行した中国のアフリカ進出

アフリカへの中国進出については、他の地域でも中国が推進しているインフラ建設がアフリカでも盛んに行われてきました。

しかし、ここにきて中国側のアフリカ戦略に変化が見られる様です。

英誌Economistに「Africa’s ties to China and the West are starting to look more alike - China’s lending is slowing, even as the West is promising more」(​​似通ってきたアフリカに対する中国と西側のアプローチ - 欧米が増額する一方、中国の貸付は減速)と題された記事が掲載されました。

かいつまんでご紹介したいと思います。

Economist記事要約

習近平主席がアフリカの指導者と出会うと、壮大なスローガンが交換されます。

この点では、最近セネガルで開催された中国・アフリカ協力フォーラム(FOCAC)として知られる3年に一度の外交イベントは失望させませんでした。

習主席は、「誠実な友情と平等、相互利益と共通の発展のためのウィンウィンな関係、公正と正義、」とアフリカとの関係を賞賛しました。

 

実のところ、アフリカ諸国と中国の関係は、それほど輝かしいものではありませんし、均衡も取れていません。

しかし、その関係は深いです。

中国は、35の大きなアフリカの港と数千マイルの道路や鉄道に資金を提供し、開発し、運営してきました。

2019年にほぼ2,000億ドル(約23兆円)に達した両者の商品貿易は、アメリカのそれをはるかに上回っています(EU全体よりは若干少ないですが)。

インフラローンは、中国をアフリカの最大の債権者としました。

アフリカ人は、中国に対する債務を返済しないと、中国がアフリカの港や空港を差し押さえる可能性すなわち債務の罠を恐れてきました。

しかし、この傾向に最近変化が見られる様です。

 

FOCACで提示された援助は、中国が現金の流れを抑えようとしていることを示唆しています。

過去、2015年と2018年に、それぞれ600億ドルの新規融資を提供すると発表しました。

今回の提示は400億ドルに留まりました。

これに加えて、10億回分のワクチンを約束しました。

 

将来の財政的支援の縮小は、すでに地上で起こっている事と一致します。

ジョンズ ホプキンス大学の中国アフリカ研究イニシアチブによると、2019年の中国のアフリカへの貸付は、2016年のピーク時の280億ドルから70億ドルに減少しました。

これは、アフリカのいくつかの国がローンの返済に苦労し、中国に債務救済を求めたことが一因です。

一方、中国の建設およびエンジニアリング会社のアフリカでの収益は、2015年以降着実に減少しています。

 

しかし、中国がアフリカ諸国との関係を強化するために提供するのはお金だけではありません。

内政に干渉しないというその政策は、専制君主を容認することを意味します。

実際、その援助は政治的な紐付けなしで行われると強弁していますが、本音では中国の援助を受けている国々が国際機関にも支援され、人権侵害に対する批判が抑えられることを期待しています。

重要なのは、アフリカ人を敬意を持って平等に扱うことを約束することです。

しかし、今回の会議では、アフリカの指導者たちは、中国を称賛し、台湾を中国の一部として扱うという要求に従い、援助を求めて手を取り合いました。

彼らが平等でない事は明らかです。

 

卑屈な態度を示しながらも、多くのアフリカ代表は、アフリカへの中国の関与について必ずしも満足していませんでした。

コンゴのチセケディ大統領は、アフリカ諸国が中国市場へのより良いアクセスを与えられれば、パートナーシップはアフリカにより多くの利益をもたらすだろうと主張しました。

 

アフリカの大規模なインフラプロジェクトに資金を提供することを積極的に行っていた中国の支援は以前に比べれば縮小しましたが、中国が最近狙っているのは、「消費市場としてのアフリカについてです。」とケープタウン大学のエコノミストであるカルロスロペスを嘆きます。

 

中国のアフリカへの関与が西側のように見え始める一方で、西側諸国は中国を模倣し始めています。

ナイジェリアへの最近の訪問で、アメリカのブリンケン国務長官は、アメリカが「政治的なひもを付けずに」てワクチンを提供したと言ったとき、ほとんど中国人のように聞こえました。

今週、EUは、グローバルゲートウェイと呼ばれる3400億ドル(約38兆円)のグローバルインフラススキームを発表しました。

これは、中国の一帯一路イニシアチブの対抗馬として見なされています。

6月、アメリカは、同じことを行うためのG7によるイニシアチブであるBuild Back Better Worldの形成を主導しました。

 

中国のアフリカとの関係は、時々主張されるほど特別なものではなく、脅威と言えるものではないかもしれません。

一部の西側の指導者は中国の融資縮小に安心するかもしれません。

しかし、アフリカが中国が建設する道路、港、橋だけでなく、中国との貿易が拡大する事により中国に対する交渉力を失うのであれば、それは勝利ではありません。

中国の戦略に西側は対抗できるか

中国は一帯一路という世界戦略を実行しようとしています。

彼らの戦略は軍事力ではなく、経済面で相手国との関係を強化し、自国陣営に取り込んでいこうというものです。

この作戦が良く練られているなと思う点は、経済面での関係強化は軍事と違って相手国に脅威を与えにくいし、国際的な批判も浴びにくいう事と、中国の商品は競争力があり浸透しやすいという事です。

中国は13億人の国内市場を抱えており、そこで大量生産される商品は圧倒的な競争力を持ちます。

中国の外交政策に沿えば、極端な話、ただに近い価格でアフリカに商品を提供することも可能でしょう。

こうやって中国の商品がアフリカのサプライチェーンにしっかり組み入れられ、アフリカは中国色に染め上げられていくのです。

この作戦に対抗するのはそう簡単ではありません。

我が国を含めた西側諸国はインフラだけでなく、貿易で浸透していく中国に対抗する作戦を練る必要があるでしょう。

 

最後まで読んで頂き、有難うございました。

ワクチン生みの親BioNTech社社長が語るオミクロン

f:id:MIYOSHIN:20211202001156j:plain

急速に広がるオミクロン

新しい変異株のオミクロンは日本でも見つかった様ですが、どの国も水際対策を強化している様です。

いまだに得体が知れないオミクロンについて意見を求めるとすれば、MRNA技術を使ってファイザーと共にワクチンをいち早く開発したBioNTechの社長ウール シャヒン氏ではないでしょうか。

英誌Economistが同氏とのインタビューに成功しました。

「BioNTech’s vaccine may need a tweak, but its founder is unfazed - Ugur Sahin stresses the importance of booster shot」(​​BioNTechのワクチンは微調整が必要かもしれないが、その創設者は動揺していない。ウール・シャヒンはブースター接種の重要性を強調)と題された記事をご紹介したいと思います。

Economist記事要約

世界中が、最新の変異株であるオミクロンの蔓延を憂慮しているため、ファイザーと提携して最初の効果的なワクチンを考案したドイツ企業、BioNTechの創設者兼CEOであるサヒン氏の意見は傾聴に値します。

11月29日、世界保健機関は、オミクロンが「非常に高い地球規模のリスク」をもたらすと発表しました。

 

椅子に腰を下ろしたサヒン氏は、オミクロンについて理解が不足している事を認めながらも、安心感を与えようとしました。

そして、彼はすべての人にワクチンを接種するように、そして二回ワクチン接種を受けた人にはブースター(追加接種)を行うように促しました。

「私は個人的に状況を恐れていません。そのような変異株が来ることを予想していました」と彼は言います。

サヒン氏は、オミクロンがウイルスに対する直接防御の第1層である抗体応答を克服したとしても、免疫系がT細胞を含む第2層で撃退する可能性があると説明しました。

T細胞は感染した細胞を攻撃してウイルスの繁殖を阻止します。

それでも、オミクロンについてはまだ多くのことがわかっていません。

BioNTechは11月26日、新しいワクチンが必要かどうかを判断する前に、2週間にわたって変異株を検査すると発表しました。

同社は、ラボでオミクロンに対して既存の製剤をテストしています。

 

サヒン氏は、ブースターを持っている人は保護される可能性がありますが、ワクチンを2回接種しただけの人は保護されない可能性があると言います。

ウイルスが広がると、BioNTechは、ワクチンを1回、2回、または3回接種したオミクロンに感染した人々からデータを収集します。

これらのデータにより、サヒン氏のチームは、オミクロンがもたらすリスクがワクチン接種状況にどのように関連しているかを分析することができます

大きな問題は、ブースターショットが十分かどうかです。

 

もう1つの不明な点は、インフルエンザワクチンの場合のように、ワクチンを継続的に更新する必要があるかどうかです。

ウイルスが突然変異を停止すると考える理由はありません、とサヒン氏は言います。

オミクロンの登場は、ワクチンを毎年更新する必要があり、人々は定期的に再ワクチン接種を受ける必要があるという考えを支持しています。

 

オミクロンに感染するとワクチン接種を受けた人々も重症化するのではという心配については、サヒン氏は懸念を和らげようとします。

彼は、ブースター接種された人々は、オミクロンを捕まえた場合軽度または中程度で済む筈だと述べています。

英国は今週、2回目のワクチン接種と追加接種の間に必要な期間を3ヶ月に短縮しました。

BioNTechは、規制当局であるアメリカ食品医薬品局および欧州医薬品庁と緊密に協力しています。

現在、ワクチンを微調整するたびに徹底的なテストを行う必要がないという原則を確立するために、以前の変異株に合わせて調整されたワクチンの臨床試験を実施しています。

それでも、新しいワクチンが利用可能になる前に、早くても3月か4月になるでしょう。

 

一方、初期の変異株の1つであるデルタは、ヨーロッパに非常に大きな打撃を与えています。

大陸全体をデルタから保護するために、サヒン氏は、デルタに感染した1人が平均して他の7人に感染するため、人口の86%が抗体を必要とすると計算しています。

オミクロンはさらに伝染性が高い可能性があります。

たとえば、1人の感染者が平均して他の12人にオミクロンを感染させるとすると、集団の92%が集団免疫を持つために抗体を必要とします。 (ドイツでは、68.5%の人が二回接種を受けています。更に一部の人は感染によって免疫を獲得しています。)

 

しかし彼は、コロナは長い間存在し、ギリシャ語のアルファベットの文字よりも多くの変異株があるだろうと警告しています。

オミクロンの後にパイが来るでしょう。

そして、新しい変異株が必ずしも穏やかであるとは限りません。

移民の子が救った数えきれない命

サヒン氏はドイツに移民したトルコ人の子ですが、移民の子が驚くべきワクチンを開発して、世界中の人々の命を救った事は特筆すべき事です。

コロナに依る死者は世界中で1500万人に及ぶと言われています(実際の公表数字はこれよりずっと少ないですが、これは超過死亡者数から推測した数字です。)

彼の会社が開発したワクチンが数えきれない程の人命を救った事は確かです。

そんな彼の発言には一つ一つ重みがあります。

これからも人類はコロナとの闘いを覚悟しなければなりませんが、彼の言う通り、ワクチンをしっかり打っていけば、重症化を抑える事ができ、いずれ世界中にワクチンが行き渡れば、収束の道が見えてくるのではないでしょうか。

 

最後まで読んで頂き、有難うございました。

オミクロン変異株の出現が教えてくれた事

f:id:MIYOSHIN:20211130131826j:plain

国境封鎖に走る先進国

オミクロン変異株の発生を受け、我が国やイスラエルなどは当面外国人の入国を禁ずる措置を講じました。

ウイルスはある確率で突然変異を繰り返します。

世界にウイルスが存在する限り、変異株は新たに生まれる可能性があります。

この問題に関して仏紙Les Echosの論説委員Dominique Seux氏が「Le vaccin, le poisson et la leçon de pêche」(ワクチン、それを与えるべきかその作り方を教えるべきか)と題した記事を寄稿しました。

かいつまんでご紹介したいと思います。

Les Echos記事要約

オミクロン変異株がアフリカ南部の国で発生したかどうかは不明です。

しかし、確かなことは、その発生が世界の国々のワクチン接種率の違いに焦点を当てたということです。

フランス人の10人に9人がワクチン接種を受けていますが、南アでは4人に1人、最貧国では殆ど接種が行われていません。

裕福な国々の利己主義が最も有毒であるとこの一年間唱えているのは、元英国首相のゴードン・ブラウンです。彼は「世界の他の地域で予防接種が行われなければ、コロナは戻ってきて私たちを悩ませることを理解する必要がある。 」と主張しています。

ワクチンの登場以来、生産拠点が主にヨーロッパ、米国、そして中国にあることは誰もが知っています。

したがって選択肢は、パンデミックが永遠に続くか、ブーメランを避けるために「先進国」が「発展途上国」に大量のワクチンを送るかです。

後者は先進国により約束されましたが、目標は十分達成されていません。

 

EUは、「月に3億回分」の生産能力に達し、ワクチン生産の主要な大陸になることに成功しました。

私たちの情報によると、1月以降、ヨーロッパは59か国に10億7000万回分の輸出を行っており、目的地の詳細は興味深いものです。

日本が圧倒的な首位で、次に英国、トルコ、米国が続いています。(グラフを参照、フランス語の資料で恐縮ですが、一番上から、日本、英国、トルコ、米国、ブラジル、韓国、オーストラリア、マレーシア、南アの順番です。)

f:id:MIYOSHIN:20211130130357p:plain

出典:Les Echos

ご存知の通り、発展途上国が自国でワクチンを製造できるようにするための特許の譲渡に関する議論も行われています。

最近、WTOでも頻繁に取り上げられていますが、不思議なことに、以前特許の譲渡について大規模なキャンペーンを行ったバイデン大統領はこの議題に触れなくなりました。

専門家は、特許の譲渡は、開発者がメッセンジャーRNAの有望な分野で研究を続けることを思いとどまらせるだろうと言います。

しかし、現在のような状況では、ワクチンは世界的な公共財でなければならず、変異株との戦いで最前線にある南アフリカとインドに対応しなければなりません。 

 

今のところ最貧国にできるだけ多くのワクチンを分配することが急務です。

特許解除の合意がなされたとしても、貧しい国々の問題をすぐに解決することはできません。

孔子の教えとは異なりますが、空腹の人に魚の取り方を教えるよりも、魚を与える方が手っ取り早いのです。

今のところ、Covax(国連ワクチン供与プログラム)は、5億回の約束分のうち、最貧国に1億回分のヨーロッパ起源のワクチンを提供しています。

フランスは、12月31日までに6000万ドル、6月30日までに1億2000万ドルを提供することを約束しましたが、目標には程遠い数字です。

 

アフリカ(南アフリカ、ルワンダ、セネガル)に3つの工場が計画されており、一部はヨーロッパから資金提供を受けています。

最後に言及すべき微妙な問題は、一部の発展途上国でワクチンの需要があまり高まっていない点です。

多くのアフリカ人とアジア人の目には、新型コロナはマラリアよりも危険性が低く、アストラゼネカワクチンの評判が一部の国の需要を冷やしている可能性があります。

我が国にできる事

これは日本の新聞には出ていない情報かと思います。

EUのワクチン輸出において、これほど我が国の占有率が高いとは知りませんでした。

英国を抑えてダントツの一位です。(英国は自国産のアストラゼネカを使ったためもありますが)

EUに感謝すると共に、菅政権はワクチン確保において相当頑張った事が窺えます。

更に特記事項はトルコが英国と並んで第二位にある事です。

今年EUとトルコは外交関係で相当ぎくしゃくしましたが、それでもEUはトルコを重視していることがこのグラフから見てとれます。

 

岸田首相はオミクロン変異株の出現に対して、国境を封鎖(日本人だけを受け入れる)という手段を講じました。

これが何を意味するかといえば、今後新しい変異株が出現するたびに鎖国を行う必要があると言う事です。

日本ではワクチン接種率が高まり、感染者は激減しましたが、世界中にワクチンが行き届かない限り、ブーメランの様にコロナは先進国を脅かし続けます。

我が国を含めた先進国は、積極的に貧しい国にワクチンを供与すべきでしょう。

我が国はワクチンを作れないのであれば、資金供与やロジスティック(極低温でワクチンを保存輸送する)で貢献できるのではないでしょうか。

 

最後まで読んで頂き、有難うございました。

子供を甘やかす米国は中国に勝てるか

f:id:MIYOSHIN:20211129164950j:plain

米中対立

米中の対立は今後も長く続きそうです。

最後にどちらが勝つかという点に関して、欧米のメディアは実に多くの論文や記事を掲載しています。

その多くは中国には創造性を育む自由な環境がないので、最後は米国が勝つと予想していますが、本当にそうなるでしょうか。

米紙ウォールストリートジャーナル(WSJ)がこの点に関して興味深い投稿記事を掲載しました。筆者は米国の大学院(政治学)で学ぶ中国人のZhang氏です。

「The Coddling of American Children Is a Boon to Beijing - In China, my son had to study hard. Here in the U.S., he just needs to bring a ‘healthy snack’ to school.」(子供を甘やかす米国は中国を有利に - 中国では、息子は一生懸命勉強しなければならないが、アメリカでは、「健康的なおやつ」だけを学校に持っていく)と題された記事をかいつまんでご紹介したいと思います。

WSJ寄稿記事要約

アメリカで幼い息子を育てている中国人の博士課程の学生として、私はアメリカの小学校がどうして生徒を甘やかしているのか不思議に思っています。

中国では、学校は新兵訓練キャンプのように運営されています。

アメリカが若者に与える甘やかしは、激化する中国との競争にどの様な影響を与えるのでしょうか。

 

私は最近、息子をニュージャージーの公立学校の3年生に編入させました。

彼は最近、中国の成都で小学校2年生を終えたばかりです。

そこでは、分厚い教科書や宿題やテスト用の教材でぎゅうぎゅう詰めになったリュックを背負い、毎日学校に通っていました。

アメリカで彼は、「健康的なスナック」だけをリュックに入れて学校に行きます。

 

初日、彼は数学の宿題を持って帰宅しました。

35の足し算の問題です。彼は約1分で終えました。

2日目に、彼はさまざまな形で328を書くように求められました。

彼はまずヒントに従って300+ 20 + 8と書き留め、次に164x2、82x4、および656÷2を書き出しました。

 

私の息子は天才ではありませんが、幼い頃から数学を勉強し始めました。

彼が5歳のとき、私は彼に分数を教えました。

2年後、私は彼に代数を紹介しました。

才能は養うことができるというのが中国社会の基本的な信念であり、学校は子供たちに厳しくあるべきです。

中国の学生は、国際的な数学と科学のテストでトップを占めています。

 

これはアメリカの学校が共有する哲学ではありません。

金曜日の夜、息子は宿題がないことに戸惑いながら帰宅しました。

中国では、生徒は週末に2倍の宿題を受け取るのが普通であり、それを完了するのに2日かかります。

アメリカは、最高の数学者、科学者、エンジニアを育て上げようと決意した中国とどのように競争するのでしょうか。

 

いま東洋と西洋で、二つの毛沢東主義的な文化革命が進行しています。

前者は好戦的愛国心をあおるナショナリズムで、中国共産党への忠誠心と至る所に配置された秘密警察がこれを可能にしています。

後者はこれまでの米国の在り方を否定するような反アメリカ主義で、警察予算の削減を求める進歩派の群衆が担い手となっています。

いずれも表現を制限し、思想を統制し、行動を規制することを目的としています。

中国の習近平国家主席は金融から娯楽まであらゆるものを取り締まり、「民族の復興」を掲げて国家を奮い立たせようとしています。

中国のナショナリズムは明らかに毛沢東主義を基盤とし、習氏は新たな個人崇拝の象徴と化しています

一方で、人種差別などの社会的不公正の問題に高い意識を持つ「ウォーク(覚醒した)」と表現される米国人――自覚しているかどうかは別として、毛沢東主義的な戦術を用いている――は西洋文明の核となる伝統をぶち壊しています。

どちらの国でも、公式のイデオロギーのイメージで彼らを形作るために、支配は非常に若い人にまで及ぶ必要があります。

2021年の秋、中国の生徒たちは「習近平思想」を学ぶという新たな要件を持って学校に戻りました。

学校は「党、国、社会主義を愛する種を若い心に植え付けなければならない」と宣言しています。

海を越えて、アメリカ人の生徒は、個人の意図や行動に関係なく、白人アメリカ人は本質的に人種差別主義者であると教えられています。

 

中国の教育は、若者を党と国家に奉仕する方向へと押しやります。

若者はきつい労働と苛酷な競争に耐えることができる高技能労働者になるよう訓練されます。

このような政治的教化は、数学や科学と並行してすり込まれます。

米国の教育は、偏見のないオープンな心を育てるはずですが、あまり身についていないように思われます。

さらに悪いことに、米国の若者は大人になるための準備が出来ていません。

米国の大学に何年も通う中で、筆者が違和感を覚えたのは、精神障害ではない学生に対し、大学側が「不安」や「うつ」を抱えていると決めつけることです。

これが被害者意識を生み出す原因になっています。

この不条理がピークに達したのは、2016年の米大統領選でトランプ氏が当選した直後です。

有力大学の学生らが存在に関わる絶望感を訴え、ココアや塗り絵の本、セラピー犬などに心の平安を見出しました。

大人としての現実にどう適応すべきかを学ばなくてはならない20歳過ぎの若者を落ち着かせるという名目で、大学の授業は中止され、試験も延期されました。

中国の市民は、欧米の「スノーフレイク」(自意識過剰な人を指す)を嘲笑しています。

しかしこの傾向が米国にとって何を意味するのかを考えると、あまり愉快ではいられません。

中国がもはや米国への憎悪を隠さない現状ではなおさらです。

米国は大丈夫か

国の競争力を支えるのは教育であることは言うまでもありません。

冷戦の時代に米国と対峙したソ連も実は教育には相当力を入れていた様です。

以前ロシア語の同時通訳で作家の米原万里さんが自らソビエト学校で受けた教育のレベルの高さについて書いていた事を思い出します。

彼女は日本に帰国して中学校に編入しますが、そこで日本のマルバツ式の試験にカルチャーショックを受けた様です。

国語と数学を徹底的に教え込むロシアの教育を彼女は高く評価していました。

そんなロシアも冷戦では米国に敗北したではないかと言われる方も多いと思いますが、ロシアが負けたのは社会のシステムがいくら働いても給料が上がらない悪平等の社会だったせいで、教育のせいではありません。

今度米国が戦わなくてはならない中国は、起業して億万長者になるチャンスもあるし、もともと勤勉な国民です。

しかもその人口は米国の四倍近いとなると、米国も相当気を引き締めてかからないと今度は一敗地に塗れるかもしれません。

 

最後まで読んで頂き、有難うございました。

現代資本主義の問題を象徴するボーイング墜落事故

f:id:MIYOSHIN:20211128163721j:plain

空の巨人ボーイングが犯したミス

2018年と2019年に2機が相次いで墜落したボーイング最新型B737の事故は記憶に新しいところですが、この事故に関して英誌Economistが「A new book explains the tragic failure of Boeing’s 737 MAX」(ボーイング737MAXの悲劇的な失敗を説明する新著)と題する記事を掲載しました。

この事故には資本主義社会の問題が凝縮されている感があります。

かいつまんでご紹介したいと思います。

Economist記事要約

離陸直後、さまざまなアラームが点滅し、警告音が鳴り響き、2機のボーイング737 Maxのパイロット(1機はフィリピンのライオンエア、もう1機はエチオピア航空が運航)は、操縦桿と格闘しました。

どちらも、人間の操縦を補完する筈のソフトウェアの問題を克服できませんでした。

2018年と2019年の2回の墜落事故で、346人が死亡しました。

エチオピアの墜落事故の補償訴訟で、今年11月10日にボーイングは機体が安全な状態でなかった事をようやく認めました。

 

ブルームバーグのジャーナリスト、ピーター・ロビソンによる「Flying Blind」では、悲劇につながった一連の出来事と、それに続くアメリカ最大の企業の混乱が巧みに描かれています。

ボーイングは1997年にマクドネル ダグラスと合併した後、株式市場のパフォーマンスと投資家を満足させる事が、エンジニアリングの卓越性よりも優先されました。

かつてのライバル会社からの社長抜擢、およびゼネラルエレクトリックで金融工学の技術を学んだ一連の幹部の登用は、「収益が最優先」との考えを定着させました。

ロビンソン氏は、安全性が最優先されるべき会社でのそのアプローチの欠点を詳細に記録しています。

そして彼は、ボーイングがエアバスとの激しい競争下にあるとは言え、ボーイングが自身の飛行機の安全性を証明する上で主導的な役割を果たす事を容認した連邦航空局(FAA)の責任放棄についても批判しています。

株主還元、競争力向上、投資のバランスを取ることは、どの企業にとっても難しい課題です。

ボーイングはこの方程式をうまく解けませんでした。

 

2010年にエアバスがより燃料効率の高いA320neoを発表した時、ボーイングは全く新しい対抗機を開発する事も検討しました。

しかし、ボーイングは、新しい旅客機の開発中に数年間市場市場シェアを譲るのを嫌がり、新しいエンジンを従来の737に取り付けることを選択しました。

しかし、1967年に就航した飛行機に巨大な新型エンジンを取り付けると、飛行機の重心が移動しました。

失速を防ぐことを目的としたMCASシステムは、飛行機の1,600ページのマニュアルでも特に注意されるべきでした。

 

どちらの事故でも、パイロットが注目していなかったこのシステムに接続された小さなセンサーの障害が原因となりました。

飛行機の制御を取り戻す方法を見つけることは、最後の数分間の混乱と絶望の中で、パイロットが1インチの厚さのハンドブックをめくることを意味しました。

ボーイングのエンジニアの何人かは懸念を表明しましたが、MCASシステムは当局によって承認されていたため、フライトシミュレーターでの高額な再トレーニングは不要でした。

前世代の737で訓練されたパイロットは、iPadで数時間を費やすだけで済みました。

 

ボーイングの反応もその優先順位を間違えました。

2回目の墜落後、飛行機は飛行禁止とされましたが、会社は飛行機を作り続け、事故の責任をパイロットに転嫁しました(最新の裁判所の判決はエチオピア航空のパイロットを免責としています)。

苦痛はゆっくりとやってきました。

実際、飛行禁止期間は20か月続き、その間にパンデミックが発生し、何百機もの注文がキャンセルされました。

 

事故はこれまでのところ、ボーイングが支払う罰金と納期遅延に対する航空会社への補償として210億ドル(約2兆4千億円)の費用が生じています。

遺族への支払いは確定していません。

それでも、より燃料効率の高い飛行機を求めている航空会社からの3,000機の注文のバックログがあります。

ある匿名のパイロットは、ロビンソン氏に彼の著作の新しいタイトルを提案しています。「ボーイングは危機を乗り越えました」

資本主義社会が抱える欠点

B737は1967年に初飛行しているんですね。

いやーこの飛行機は数限りなく乗りました。

ずんぐりむっくりの体型ですが、力強く上昇する機体には安心感がありました。

アメリカ航空機産業の歴史でも名機中の名機と謳われたものです。

このB737の栄光と失敗の歴史からは多くを学ぶ事ができます。

 

先ず、人間というものはベストセラーを出すと、それに固執してしまうという事です。

本来であれば、1967年に就航した飛行機の基本設計は相当時代遅れになっていた筈です。

しかしボーイングはそれを無理して長く使おうとしたところに問題があったと思います。

 

もう一つの教訓は最近の資本主義の悪い点ですが、とかく目先の利益を追求したがる事です。

株主至上主義が行き過ぎると、肝心の安全対策や研究開発に十分な資金がまわらず、ボーイングの様な失敗を引き起こしてしまいます。

 

この様な資本主義社会の利益至上主義を是正するには、当局が適切に介入する必要がありますが、ボーイングの事故では、当局もボーイング任せにするなど期待される役割を果たせていません。

 

ある意味アメリカの資本主義の欠点を象徴する様なボーイングの事故だったと思います。

B737Maxは飛行許可を得られた様ですが、個人的にはこの機体には乗りたくありません。

 

最後まで読んで頂き、有難うございました。

新変異株オミクロンにどう対処するか

f:id:MIYOSHIN:20211127164414j:plain

新変異株の出現

南アフリカで新たな変異株が発見され、オミクロンと命名されました。

この変異株に関する研究結果は未だにどの政府も入手していませんが、欧州を初めとして多くの国(我が国を含む)が南アフリカからの渡航を禁止しました。

この様な素早い決断はデルタ株流行の際には見られなかったものです。

英誌Economistが「Countries are scrambling to stop a new covid variant」(新しい変異株を阻止するために各国は対策を急いだ)とする記事を掲載しました。

かいつまんでご紹介したいと思います。

Economist記事要約

新型コロナの感染が世界に教えた教訓が1つあるとすれば、それは早期の行動が報われるということです。

判断の拠り所となるデータを一週間待てば感染が急増し、取り返しのつかない事態に陥ります。

そのため、11月25日に南アフリカで新しい変異種が心配されるとの情報が流れるや否や、ヨーロッパをはじめとして多くの国が1日以内に南アフリカからの渡航を禁止しました。

11月26日、世界保健機関は、この変異株にオミクロンという名前を付けました。

 

オミクロンに関する懸念はたくさんあります。

最大のものは、今日世界中のコロナ感染を支配しているデルタよりも感染能力が高いかもしれないということです。

もしそうなら、オミクロンは数ヶ月以内にデルタに取って代わる可能性があります。

もう1つの懸念は、今日のワクチンやコロナに対する薬が、オミクロンに対して効力が低い可能性がある事です。

 

現時点では、これらの懸念が正しいかどうか定かではありません。

オミクロンが実際にどれほどの脅威をもたらすかについて研究機関から確かな証拠が得られるまでには、数週間から数ヶ月かかるでしょう。

その間、多くの国が新しい変異株が旅行者と共に自国に侵入するするのを阻止しようとしています。

当然です。

彼らは、最善を期待しながら、最悪の事態に備え時間を稼ごうとしています。

 

数はまだ少ないにもかかわらず、この新しい変異株が南アフリカの多くの州で急速に広がっていることが確認されました。

オミクロンの特徴は突然変異の多さで約50個あります。

突然変異が多いからと言って必ずしも危険だという訳ではありませんが、オミクロンのもののいくつかは、ウイルスの感染性を高める性質のもので、他の変異株の研究でも発見されています。

 

オミクロンの突然変異がワクチンの効力を弱めることが判明した場合、ワクチンを微調整する必要があるかもしれません。

西欧諸国で最も広く使用されているワクチンメーカーのファイザーとBioNTechは、6週間以内にmRNAワクチンを作り直し、100日以内に出荷できると述べました。

オミクロンが南アフリカで支配的になったとしても、それが世界の他の地域でデルタに取って代わるかどうかは不明です。

南アフリカには、他の場所では見られなかったベータ変異株の感染がありました。

一方で、ヨーロッパを席巻したアルファは、南アフリカでは見られませんでした。

 

以上の様に、オミクロンについてはまだ多くのことが解明されていません。

しかし、明らかなことは、昨年末にデルタがインドに出現したときよりも、世界がそれに対応するのに準備が出来ているということです。

デルタが「懸念される変異株」としてWHOに特定されるまでに、デルタはすでに世界の多くの地域に広がり、最終的にはパンデミックの新たな波を引き起こしました。

オミクロンがそのような規模で世界的な脅威をもたらすかどうかはまだ分かりません。

人類は学習している

オミクロンの出現は、昨日より世界の株価を大きく引き下げるなど大きな影響を与えています。

しかし、Economistが述べる様に、人類はデルタの失敗から学んでいます。

各国が水際対策を強化するなど、WHOの発表を待たずに、(いつもこの機関は決断が遅いです。寄り合い所帯だからでしょう)早め早めの決断を行なっています。

最善を期待しながら、最悪の事態に備えるという危機管理の要諦を踏み外さない限り、人類はこの新たな変異株にもうまく対応していくでしょう。

 

最後まで読んで頂き、有難うございました。